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フィリピンにおける知的財産法の改正
2015年03月31日
■概要
フィリピンでは、知的財産法を改正する共和国法第10372号(共和国法第8293号、別名「フィリピン知的財産法」の特定条項の改正とそれ以外の目的のための法律)が2013年2月28日に公布され、2013年3月22日より施行された。主な改正点は、(1)知的財産庁に対する強制執行権と臨検権の付与、(2)著作権局の創設、および(3)寄与侵害に対する明示的な罰則の創設である。■詳細及び留意点
【詳細】
○強制執行権と臨検権
改正法は、フィリピン知的財産庁長官および長官代理に対して強制執行および臨検の権限を与えた。
改正法により知的財産庁長官および長官代理に与えられる強制執行権限は、フィリピン国家警察、国家捜査局、税関局、光メディア委員会(海賊版対策の機能を持つ))および地方自治体単位などの関連機関の支援を受ける。改正法は、情報または申立に基づいて関連機関が行動し、合理的な時間中に、知的財産権を侵害する活動に従事する施設を捜索すること(臨検)も認めている。
ただし、フィリピン憲法に従い、フィリピン知的財産庁は独自に捜索と押収を実行することはできない。知的財産庁は依然として憲法の要件を遵守しなければならず、裁判所から捜索令状を取得しなければならない。
改正法に従い、知的財産庁は、自らの強制執行と臨検の権限に適用される規則を公布した。
○著作権局の創設
従来から知的財産庁を構成してきた部局に加えて、著作権局が改正法により創設された。著作権局は、特に、著作物の公の実演に対する著者の権利が関係する紛争を裁定し、著作権管理団体の認定申請を決定するための管轄権を行使する。
改正法には著作権管理団体に関する規定が含まれている。この規定は、著作権者の代わりに著作権者の経済的権利および、または人格的権利を集合的に管理する団体を著作権者が指定できると定めている。ただし、この団体は、まず知的財産庁からの認定を受けなければならない。
○寄与侵害に対する罰則の創設
寄与侵害は、改正法に基づく違反行為である。改正法は、以下に該当する者を寄与侵害とし処罰する。
(1)直接侵害する
(2)他者の侵害活動から利益を得る者が、以下の条件にあてはまる場合
(i)侵害活動に関する通知を受けている、および
(ii)当該他者の活動を支配する権利と能力を有する
(3)侵害を知りながら、他者の侵害行為を教唆する、生じさせる、または、その侵害行為に寄与する
○共和国法第10372号の関連条文
第1条 共和国法第8293号、別名「フィリピン知的財産法」第6条をここに修正して、以下のように読み替える。
「第6条 知的財産庁(IPO)の機構
(中略)
6.2 庁は7つの局に分けられ,その各々は局長を長とし,局長は副局長により補佐される。局は、次の通りとする。
(中略)
(f)総務・財務・人事業務局
(g)著作権・著作隣接権局」
第3条 共和国法第8293号第9条の後に、下記第9A条を挿入。
「第9A条 著作権・著作隣接権局
著作権・著作隣接権局は、次の任務を有する。
9A.1 公の実演その他著作物の伝達に対する著者の権利が関係するライセンスの条件に関する紛争を解決するために独自の管轄権を行使する。
9A.2 著作権管理団体または同様の団体の認定申請を受理し、審査し、決定する。
9A.3 著作権と著作隣接権の分野の調査と研究を実施する。
9A.4 その他著作権・著作隣接権業務を提供し、その対価として妥当な料金を徴収する。」
第2条 ここに共和国法第8293号第7条を修正して、以下のように読み替える。
「第7条 長官および長官代理
(中略)
(b)長官は、法律局長、特許局長、商標局長、著作権・著作隣接権局長、および資料・情報・技術移転局長が下したすべての決定に対する訴について専属管轄権を有する。特許局長、商標局長、著作権・著作隣接権局長が下した決定に関して専属管轄権により長官が下した決定については、裁判所規則に従って控訴裁判所に訴えることができる。資料・情報・技術移転局長が下した決定に関する長官の決定については、通商産業大臣に訴えることができる。
(c)長官は、強制執行機能の任を負い、特に、フィリピン国家警察、国家捜査局、税関局、光メディア委員会および地方自治体単位などの関連機関の支援を受ける。
(d)長官は、庁が受理した報告、通報または申立に基づいて、合理的な時間中に、知的財産権および本法の規定に違反する活動に従事する企業や団体に対する捜索を実施する。
(e)知的財産権の保護と本法の目的さらに追求するためのその他の機能。」
第10条 ここに共和国法第8293号第183条を修正して、以下のように読み替える。
「第183条 協会の指定
著作権者および著作隣接権者またはその相続人は、それらの者に代わってそれらの者の経済的権利または人格的権利を集合的に管理するために、芸術家、著述家、作曲者その他の権利所有者の協会を指定することができる。当該協会がその構成員の権利を行使するには、協会は最初に知的財産庁から必要な認定を確保するものとする。」
第22条 ここに共和国法第8293号第216条を修正して、以下のように読み替える。
「第216条 侵害
以下のいずれかに該当する行為を行う者は、本法の規定により保護される権利を侵害する。
(a)直接侵害する
(b)侵害を行う他者の侵害活動から利益を享受しており、利益を享受する者が侵害活動に関する通知を受け、当該他者の活動を支配する権利と能力を有している場合
(c)侵害活動を知りながら、他者の侵害行為を教唆する、生じさせる、または、その侵害行為に寄与する」
■ソース
・フィリピン共和国法第10372号・フィリピン知的財産法
■本文書の作成者
Rouse & Co. International (Philippines) Ltd.■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.02.16