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台湾改正専利法要綱

2013年04月25日

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■概要
台湾専利法の2011年改正の概要を紹介する。新規性喪失の例外、優先権証明書提出期限、外国語書面での出願制度、補正の時期的制限、無効審判手続、侵害規定など、広範囲に亘って改正されている。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1)新規性喪失の例外

 特許及び実用新案については、刊行物による発表も新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能となり(専利法第22条第3項第2号、専利法第120条で準用する第22条)、新規性の判断に加え、進歩性の判断でも適用されることになった(専利法第22条第3項、専利法第120条で準用する第22条)。

 意匠についても、刊行物による発表に新規性喪失の例外が適用され、新規性の判断に加え、創作非容易性の判断にも適用される(専利法第122条第3項)。

 なお、詳細については、「台湾における新規性喪失の例外について」のコンテンツを参照されたい。

 

(2)外国語書面出願

 特許、実用新案、意匠において認められている外国語書面出願において、使用できる外国語がアラビア語、英語、フランス語、ドイツ語、日本語、韓国語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語の9カ国語になり(専利審査基準第一篇程序審査及專利權管理、第二章專利申請書、7.其他敘明事項)、外国語書面それ自体の補正ができないこと(専利法第44条第1項)、補正及び訂正の範囲も外国語書面の記載の範囲内で認められることが明記された(専利法第44条第2項、第67条第3項、第110条第2項、第133条第2項、第139条第3項)。

 なお、詳細については、「台湾専利法における誤訳対応」のコンテンツを参照されたい。

 

(3)専利明細書の出願様式

 特許及び実用新案について、国際的趨勢に対応するため「専利出願範囲」及び「概要」を明細書から独立させた(専利法第25条第1項、第106条第1項)。

 

(4)譲渡証の提出

 特許、実用新案又は意匠を出願する際に必要とされた譲渡証が不要となった。

 

(5)優先権主張手続

 特許及び実用新案の優先権証明書類の提出期限は最先の優先日から16ヶ月以内(専利法第29条第2項)、意匠は10ヶ月以内(専利法第142条で準用する第29条第2項)に、それぞれ延長された。

 特許、実用新案、意匠について、故意なく優先権主張をしなかった場合、優先権主張の回復申請が可能となった(専利法第29条第4項、専利法第120条又は第142条で準用する第29条第4項)。

 

(6)特許実用新案同日出願

 特許と実用新案の同日出願制度が導入された(専利法第32条)。同一人が同一の創作について同日に特許出願と実用新案出願を行い、特許査定前に実用新案権を取得している場合は、特許権か実用新案権のどちらかを選択しなければならない。特許を選択した場合、実用新案権は消滅する(専利法第32条第2項)。実用新案権がすでに期間満了している場合は、特許権を選択することはできない(専利法第32条第3項)。

 

(7)専利出願補正制度

 特許において、審査遅延防止目的で最後の拒絶理由通知制度が設けられ、出願人が特許庁から最後の拒絶通知を受領した後は、新規事項追加の制限に加え、補正目的も制限されることになった(専利法第43条第4項)。

 なお、詳細については、「台湾専利法における誤訳対応」のコンテンツを参照されたい。

 

(8)分割手続

 特許について、分割時期を明確化すると共に時期的制限が緩和され、出願人は初審の特許査定通知送達後30日内にも分割請求を行うことができるようになった(専利法第34条第2項)。

 

(9)年金追納

 特許、実用新案、意匠について、出願人又は専利権者が故意なく期限内に納付しなかったために失効した権利について、年金を追納することで権利回復を認める制度が導入された(専利法第52条及び第70条、専利法第120条又は第142条で準用する第52条第1項、第2項及び第4項並びに第70条)。査定後に納付すべき1年目の年金の場合は2倍、2年目以降の年金の場合は3倍の金額を支払う必要がある。

 

(10)存続期間延長

 特許のみに認められる存続期間延長について制限が緩和され、特許発明の実施不能期間が特許公告後2年未満でも延長請求可能になった(専利法第53条)。

 なお、詳細は「台湾における特許権の存続期間の延長制度」のコンテンツを参照されたい。

 

(11)専利権効力の制限

 特許、実用新案、意匠について、専利権者が商業目的ではない未公開の行為、第2年目以降の年金追納による権利回復の場合の善意による実施行為(準備完了の場合を含む)が、専利権の効力が及ばない事由に追加された(専利法第59条、専利法第120条又は第142条で準用する第59条)。

 また、特許についてのみ、薬事法の薬物査験登録許可等取得目的の研究試験等の行為が、効力が及ばない事由に追加されている(専利法第60条)。

 

(12)専利実施許諾

 特許について、実施許諾には専用実施権と通常実施権があり、専用実施権の範囲内では特許権者の実施も排除されること、特許権に複数の質権を設定した場合の優先順位は登録順位によることが明記された(専利法第62条)。

 また、専用実施権者と通常実施権者の再許諾権の存在を明記し、通常実施権者の再許諾権行使には特許権者及び専用実施権者の同意が必要であること、再実施は登記が第三者対抗要件であることを明記した(専利法第63条)。

 実用新案及び意匠も特許と同じ扱いである(専利法第120条又は第142条で準用する第62条及び第63条)。

 

(13)強制実施権の設定

 特許及び実用新案の強制実施権について、「特許実施」という名称を「強制授権」に変更し、強制授権処分の際、補償金を明記することになった(専利法第87条-第89条、専利法第102条で準用する第86条-第89条)。

 意匠に強制実施権制度はない。

 

(14)無効審判

 特許について、職権による無効審判の開始が廃止され、請求による開始のみになった(専利法第71条第1項)。無効審判の審理基準は特許査定時が基本であり(専利法第71条第3項)、請求項ごとに無効審判が請求できる旨が明記された(専利法第73条第2項)。

 実用新案には従来から職権による無効審判の開始はない。また、無効審判の審理基準は登録査定時であり(専利法第119条第3項)、その他の特許の無効審判の規定を準用しているので(専利法第120条で準用する第72条-第82条)、特許と同じ扱いとなる。

 意匠については、職権による無効審判の開始が廃止され、請求による開始のみとなり(専利法第141条)、無効審判の審理基準は登録査定時が基本であり(専利法第141条第3項)、その他の特許の無効審判の規定を準用しているので(専利法第142条で準用する第72条-第82条)、特許と同じ扱いになる。

 なお、詳細は「台湾における特許無効審判制度の概要」のコンテンツを参照されたい。

 

(15)損害賠償

 特許について、損害賠償請求の主観的要件として故意又は過失が必要である旨が明記された(専利法第96条第2項)。また、損害額の算定方法について、侵害品を販売することにより得た全収入を侵害行為により得た利益とする規定及び懲罰的損害賠償の規定が削除される一方、実施料相当額を損害額とする規定が追加された(専利法第97条第3号)。

 実用新案及び意匠も特許の損害賠償規定を準用しているので、特許と同様である(専利法第120条及び第142条で準用する第96条-第98条)。

 

(16)情報提供制度の導入

 特許について、特許公開公報発行から特許査定前までに、誰でもその特許出願が拒絶されるべき理由の陳述を証拠書類と共に、台湾特許庁に提出することができる(専利法施行細則第39条)。情報提供者の氏名を非公開にすることを特許庁に要求することもできる。

 実用新案及び意匠には、情報提供制度はない。

 

(17)意匠の重要改正

(ⅰ)名称の変更

 台湾では意匠を「新式樣専利」という表示を用いてきたが、「設計専利」に変更された(専利法第2条第3号など)。

(ⅱ)部分意匠の導入

 専利法第121条第1項は「意匠とは、物品の全部又は一部の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて遡及する創作を指す」と規定し、部分意匠を導入した。

(ⅲ)グラフィカル・ユ-ザー・インターフェースなど

 専利法第121条第2項により、コンピュータのアイコンやグラフィカル・ユーザー・インターフェースについても、意匠出願できるようにした。

(ⅳ)組物の意匠

 専利法第129条で一意匠一出願の原則が定められているが、2以上の物品がロカルノ分類で同一類別に属し、習慣上、組物の意匠として販売又は使用するものである場合、一意匠として出願することができると規定し、組物の意匠の規定が新設された。

(ⅴ)連合意匠の廃止と関連意匠の導入

 連合意匠制度が廃止され、関連意匠(中国語「衍生設計」)制度が設けられた(専利法第127条)。関連意匠は本意匠と類似でなければならない(専利法第127条第1項)。本意匠には非類似で関連意匠にのみ類似する意匠を関連意匠として出願することはできない(専利法第127条第4項)。関連意匠の出願は本意匠と同日かそれ以降に行い(専利法第127条第2項)、本意匠の登録公報発行前までに行う必要がある(専利法第127条第3項)。

 台湾意匠法も先願主義を採用しているので(専利法第128条第1項)、互いに類似する意匠は、出願人が同一であっても、一方の出願しか登録できないのが原則である。しかし、関連意匠制度を利用すれば、先願主義の適用を免れる結果、両意匠とも登録する道が開かれる(専利法第128条第4項)。

 

【留意事項】

 今回の法改正で日本の制度と共通点が増えたといえる。しかし、台湾には特許と実用新案の同日出願制度が存在し、意匠にも訂正制度があるなど、今回の改正と無関係のものも含め、日本と明らかに異なる点が幾つもあるので、注意すべきである。

■ソース
・専利法改正におけるすべての説明及び条文の対照表
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=418c564c-7ab2-41f7-a629-bea95d5fef95 ・専利法の新法規定における過渡期に適用される状況一覧
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=9ac3e3cc-6fa1-47f4-8faf-25500fdd5b64
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所(作成:1013年1月17日)
特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年7月16日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
■本文書の作成時期

2013.07.16

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