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香港における特許制度、登録意匠制度、および特許制度の改革、ならびに香港における産業財産権の各種統計
2018年05月01日
■概要
香港における2017年時点の特許制度および登録意匠制度、ならびに、進行中の特許制度の改革について紹介する。また、2017年を含む過去数年の香港における産業財産権に係る各種統計についても紹介する。■詳細及び留意点
1.特許制度
特許条例によれば、新規な発明または製品に特許保護を与える2種類の特許が存在する。
1-1.標準特許(存続期間:20年)
香港で標準特許を取得するには、最初に、3つの指定特許庁のいずれか1つに特許出願(「指定特許出願」という。)を行わなければならない。3つの指定特許庁は、中国特許庁、英国特許庁、および欧州特許庁(英国指定)である。その後、香港特許登録局(Hong Kong Patents Registry)に2段階の手続きを行わなければならない。
第1段階:記録請求の提出 - 指定特許出願の公開日から6か月以内。期間の延長は認められない。
第2段階:登録および付与請求の提出 - 指定特許の付与日から6か月以内。期間の延長は認められない。
1-2.短期特許(存続期間:8年)
香港特許登録局(Hong Kong Patents Registry)に直接、出願することができる。公式の調査および実体審査は行われない。方式審査のみを通過した後、短期特許が付与される。
明細書には1つまたはそれ以上の請求項を含めなければならないが、独立形式請求項は1つのみである。規定調査機関が作成した独自の調査報告を、短期特許が付与される前の所定期間内に提出しなければならない。規定調査機関は、特許協力条約第16条による国際調査機関、中国国家知識産権局、欧州特許庁、およびイギリス特許庁のいずれかである。
2.特許制度の改革
香港政府は、新たな独自の特許付与制度を創設し、既存の短期特許制度を改善することにより、香港の特許制度を改革する政策決定を行った。この改革により、独自に付与する特許出願および短期特許に基づく発明の実体審査が初めて導入されることになる。新特許制度の基盤となる法的枠組みを定めるため、2016年特許条例(改正)が、2016年6月に香港特別行政区立法会(Legislative Council)により制定された。
2-1.新たな独自の特許付与制度
新たな独自の特許付与制度は、香港における標準特許を取得するための代替のルートを提供する。独自の特許付与制度では、最初の出願として、または優先権主張を伴う出願として、香港独自の標準特許出願(以下「独自標準特許出願」という。)を香港特許登録官(Hong Kong Registrar of Patents)に直接、提出できる予定である。このため、上記指定特許庁における指定特許出願を行う必要がなくなる。独自標準特許出願は、付与手続へ進む前に実体審査を受けなければならない予定である。
新たな独自の特許付与制度は、再登録制度による既存の標準特許と並行して運用される予定である。
また、2016年特許条例(改正)に取り入れられた規定によれば、独自標準特許出願に関する第三者意見を登録官(Registrar)に提出でき、独自標準特許の付与後の補正を登録官(Registrar)に提出することもできる。
ただし、PCT出願からは独自標準特許出願を直接提出することはできない予定である。このため、PCT出願は依然として、再登録制度による既存の標準特許または短期特許に係る出願を行って香港に移行するしかない。
2-2.短期特許制度の改正
新たに導入される実体審査手続では、短期特許の所有者が、また、ある状況では第三者が、短期特許に関する付与後の実体審査を登録官(Registrar)に請求できる予定である。この手続の結果、(請求されたあらゆる補正を含む)短期特許の有効性を確認する「実体審査証明書」が発行される、または短期特許が最終的に無効と判断された場合には取り消される予定である。実体審査請求は、一度提出すると、取り下げることはできない予定である。
裁判所に短期特許の権利行使に係る手続を行うには、実体審査請求または実体審査証明書が必要となる予定である。
また、2016年特許条例(改正)に取り入れられた規定によれば、短期特許出願に関する第三者意見を登録官(Registrar)に提出でき、短期特許の付与後の補正を登録官(Registrar)に提出することもできる。
さらに、短期特許制度の改正により、2つ目の独立形式請求項が許される予定である。
2-3.特許条例の他の改正
2016年特許条例(改正)は、既知の物質または組成物の新規な特定用途に保護を与える、第二の医療用途の新規性に関する明示規定を盛り込んでいる。
独自標準特許および短期特許に関し、2016年特許条例(改正)は、出願人が全ての合理的注意を払っていたことを条件として、通常の12か月の優先期間満了から2か月後まで優先権を回復できると規定している。
2016年特許条例(改正)は、独自標準特許出願または短期特許出願において提出されなかった発明の記載または図面の一部を提出する機会を出願人に与える。ただし、記載または図面の欠落部分の提出は、出願日の変更を生じる可能性がある。
既存の特許条例は、中国を指定した実用新案の保護を求める国際出願が中国への国内段階に移行した場合、この国際出願の出願人は、当該出願に開示された発明についての短期特許出願を行っても良いと規定している。2016年特許条例(改正)は、発明への特許を求める国際出願であって中国へ移行するPCT出願に基づいて、香港での短期特許出願が可能であると規定している。
2016年特許条例(改正)は、香港で特許代理業務を提供する法的資格を有するまたは政府の承認を受けている人物であると他者に信じさせる合理的可能性のある呼称または肩書として「公認特許代理人もしくは公認特許弁理士」、「登録特許代理人もしくは登録特許弁理士」またはその他の呼称を香港で使用することを禁じている。ただし、この新しい規定は、香港以外の法域において特許代理業務を合法的に提供する個人的資格を指す場合に限り、該当する法域を明確に示すことを条件として、かかる呼称または肩書の使用を禁じるものではない。
3.登録意匠制度(存続期間:25年)
ロカルノ分類に従う物品の同じ分類に対応するまたは同じ組物に対応する複数の意匠は、1つの出願にまとめることができる。マルチプル意匠出願により費用を削減できる。
出願書類の受領時に、出願番号を出願人に通知する受領証が発行される。さらに、当該出願に出願日を与える通知が出願人に送付される。
出願日が与えられた後、出願の方式要件が審査される。方式要件とは、出願書類に要求される情報である。出願に不備がある場合、3か月以内に不備の訂正を求める通知が出願人に送付される。不備が訂正されない出願は取り下げられたとみなされ得る。
出願に不備がなければ意匠は登録され、この登録が香港知的財産公報(Hong Kong Intellectual Property Journal)に掲載され、登録証が発行される。登録証は通常、出願後3か月以内に発行される。
4.産業財産権の各種統計
4-1.商標、特許、意匠および著作権ライセンス機関の統計データ
4-2.登録/付与の件数
4-3.2017年の知的財産局の必達目標
出願もしくはその添付書類に不備がある場合、または出願を裏づける説明もしくは追加の証拠を求める必要がある場合、知的財産局はこれらの基準を達成できない可能性がある。
4-3-1.商標(商標条例第559章に基づく)
商標出願への最初の回答のうち97%における審査期間:2か月
商標出願への2回目の回答のうち80%における審査期間:3か月
商標に関する審決のうち97%における所要期間:6か月
4-3-2.特許
標準特許出願のうち86%における処理期間:10日
短期特許出願のうち86%における処理期間:10日
4-3-3.意匠
意匠出願のうち99%における処理期間:10日
4-4.知的財産局の実績
■ソース
1.制度1-1.香港政府の知的財産局の公式ウェブサイト
https://www.ipd.gov.hk/eng/intellectual_property/patents/how_to_apply.htm https://www.ipd.gov.hk/eng/faq/designs/ds_how2apply_e.pdf
1-2.2016年特許条例(改正)(2016年の条例第17号A1725)
https://www.ipd.gov.hk/eng/intellectual_property/patents/patent_amendment_bill2016.htm
2.統計
2-1.香港政府の知的財産局の公式ウェブサイト
https://www.ipd.gov.hk/eng/intellectual_property/ip_statistics/2017/ip_statistics_e.pdf https://www.ipd.gov.hk/eng/about_us/performance_pledge.htm
■本文書の作成者
聯合專利商標事務所有限会社ユニオンパテントサービスセンター
■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2018.01.19