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ベトナムにおける特許制度のまとめ-実体編

1.特許制度の特徴
(1) 特許の種類
 ベトナム知的財産法(以下、「知的財産法」という。)では、「発明特許」と「実用新案特許」について規定されている。
 また、「発明の保護適格」について、新規性、進歩性、産業上の利用可能性が同法第58条に要件として記載されている。それらの新規性、進歩性、産業上の利用可能性の要件は、それぞれ第60条、第61条、第62条に規定されている。
 「発明特許」は、これらの3つの要件すべてが必要だが、「実用新案特許」は「新規性」と「産業上の利用可能性」の2つが要件となっている。

(2) 出願の変更
 発明特許出願から実用新案特許出願、実用新案特許出願から発明特許出願、といった出願種別の変更は、方式拒絶査定、登録査定、および拒絶査定の受領前であれば可能である。これについては、知的財産法第115条第1項(dd)、科学技術省令01/2007/TT-BKHCN(2016年改正)の17.3に規定がある。

(3) 秘密保持審査
 ベトナム国内で完成した発明は、ベトナムで特許(発明特許・実用新案特許)出願を行い、ベトナムの出願日から6か月の期間を経過した場合にのみ、外国において産業財産権保護登録出願を行うことができる。ただし、秘密特許の認定がされた場合には、外国において産業財産権保護登録出願を行うことができない。政府決議122/2010/NĐCPにより政府決議103/2006/NĐ-CPに修正・追加された「第3章a 秘密特許」に基づく規定である。なお、秘密特許は法律第 07/2022/QH15(2023年1月1日施行)の第4条第12a項に定義されている。

(4) コンピュータプログラム自体
 特許出願審査基準では、コンピュータプログラムは、知的財産法第59条に規定する「発明として保護されない主題」の一つとして説明されている(5.8.2.5 コンピュータプログラム)。

(5) 遺伝資源の出所開示
 科学技術省令01/2007/TT-BKHCN(2016年改正)第23.11条および法律第07/2022/QH15(2023年1月1日施行)の第100条第1項第dd1号には、特許出願における遺伝資源および伝統的知識の出所開示要件が定められている。発明がその遺伝資源・伝統的知識に直接的に基づく場合には、遺伝資源または伝統的知識、あるいはその両方に関する発明登録申請書には、発明者または出願人がアクセスした遺伝資源または伝統的知識、あるいはその両方の出所に関する説明資料を添付しなければならない。

関連記事:「ベトナムにおける第一国出願制度」(2019.8.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17627/

関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.6.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17469/

関連記事:「ベトナムの特許・実用新案関連の法律、規則、審査基準等」(2021.5.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19844/

関連記事:「ベトナムにおける特許審査基準関連資料」(2016.1.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10250/

関連記事:「ベトナムの改正知的財産法の概要について(特許編)」(2023.03.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/34001/

2.発明の保護対象
 「発明」とは、自然法則を利用して特定の課題を解決するための、製品または方法の態様に基づく技術的解決手段である(知的財産法第4条第12項)。

 特許審査ガイドラインでは、人間および動物の診断や治療の方法などは、知的財産法第59条に規定する「発明として保護されない主題」の一つであることを明確にしつつ、診断や治療を行うための器具や設備並びに物質や材料は、すべて特許の対象であるとして説明されている(5.8.2.9 人間・動物のための病気予防・診断・治療の方法)。

関連記事:「ベトナムにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.1.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16397/

関連記事:「既知の化合物の塩、多形、剤形、投与方式に関わる医薬発明のベトナムにおける保護」(2018.9.4)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15724/

関連記事:「ベトナムにおける医薬用途発明の保護制度」(2018.8.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15660/

関連記事:「ベトナム進出に際しての知的財産権保護の留意点」(2015.3.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/8529/

3.特許を受けるための要件
積極的要件:一般的特許要件(知的財産法第58条)
 「発明特許」と「実用新案特許」に関して、知的財産法第58条に「保護適格条項」があり、「発明特許」出願については、知的財産法第60条に規定する「新規性」を満たすか、知的財産法第61条に規定する「進歩性」を満たすか、知的財産法第62条に規定する「産業上の利用可能性」を満たすかという3つの要件がある。また「実用新案特許」出願については、「新規性」と「産業上の利用可能性」そして「通常の知識によらないもの」が要件であり、「発明特許」に対して求められる「進歩性」は要求されない。

消極的要件:発明として保護されない主題(知的財産法第59条)
(1) 発見、科学的理論、数学的方法
(2) 精神活動の実行、飼育動物の訓練、ゲーム、事業遂行を行うための計画、企画、規則または方法、コンピュータプログラム
(3) 情報の提示
(4) 審美的特徴のみの解決
(5) 植物品種、動物品種
(6) 植物および動物の生産のための本質的に生物学的性質の方法であって、微生物学的方法以外のもの
(7) ヒトまたは動物のための疾病予防、診断および治療

手続的要件(知的財産法第100条、第101条、第102条)
 産業財産権登録出願に関する一般的な要件(第100条)、出願の単一性要件(第101条)、および特許出願に関する記載要件(第102条)を満たしていなければならない。

関連記事:「ベトナムにおける特許事由と不特許事由」(2015.3.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8533/

関連記事:「ベトナムにおける特許制度について」(2013.9.6)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/3970/

4.職務発明の取り扱い
 知的財産法第86条に職務発明制度の規定がある。企業に雇用される従業員が職務上の発明をした場合、特許を受ける権利は、資金や開発手段を提供した企業に帰属するのが原則である。

関連記事:「ベトナムにおける職務発明・職務創作制度」(2013.12.3)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/4822/

5.特許権の存続期間
(1) 存続期間
 発明特許の場合、保護証書発行日に権利が発生し、出願日より20年で権利満了、実用新案特許の場合、保護証書発行日に権利が発生し、出願日より10年で権利満了となる(知的財産法第93条第2項および第3項)。

(2) 特許権の存続期間の延長制度
 なし

(3) 審査の遅延による存続期間の延長補償
 なし

関連記事:「ベトナムにおける特許年金制度の概要」(2018.10.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15961/

ベトナムにおける特許制度のまとめ-実体編

1. 特許制度の特徴

 

(1) 特許の種類

ベトナム知的財産法では「発明特許」と「実用新案特許」がある。

また、「発明の保護適格」の条文が同法58条にあり、新規性、進歩性、産業上の利用可能性が要件として記載されている。その個別の新規性、進歩性、利用可能性の要件は、それぞれ60条、61条、62条に規定されている。

「発明特許」は3つの要件すべてが必要だが、「実用新案特許」は「新規性」と「利用可能性」があれば良い。

 

(2) 出願の変更

発明特許出願から実用新案特許出願、実用新案特許出願から発明特許出願、といった出願種別の変更は、方式拒絶査定、登録査定、拒絶査定の受領前は可能である。知的財産法第115条第1項(d)、科学技術省令01/2007/TT-BKHCN(2016年改正)の17.3に規定がある。

 

(3) 秘密保持審査

ベトナム国内で完成した発明は、ベトナムで特許(発明特許・実用新案特許)出願を行い、ベトナムの出願日から6か月の期間を経過した場合にのみ、外国において産業財産権保護登録出願を行うことができる。ただし、秘密特許の認定がされた場合には、外国において産業財産権保護登録出願を行うことができない。政府決議122/2010/NĐCPにより政府決議103/2006/NĐ-CPに修正・追加された「第3章a 秘密特許」に基づく規定である。

 

(4) コンピュータ・プログラム自体

特許審査ガイドラインでは、コンピュータ・プログラムは、知的財産法第59条に規定する「発明として保護されない主題」の一つとして説明されている(5.8.2.5 コンピュータ・プログラム)。

 

(5) 遺伝資源の出所開示

科学技術省令01/2007/TT-BKHCN(2016年改正)第23.11条には、特許出願における遺伝資源および伝統的知識の出所開示要件が定められている。発明がその遺伝資源・伝統的知識に直接的に基づく場合には、遺伝資源または伝統的知識、あるいはその両方に関する発明登録申請書には、発明者または出願人がアクセスした遺伝資源または伝統的知識、あるいはその両方の出所に関する説明資料を添付しなければならない。

 

関連記事:「ベトナムにおける第一国出願制度」(2019.8.15)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17627/

 

関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.6.27)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17469/

 

関連記事:「ベトナムの特許・実用新案関連の法律、規則、審査基準等」(2019.2.21)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16556/

 

関連記事:「ベトナムにおける特許審査基準関連資料」(2016.1.29)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10250/

 

 

2. 発明の保護対象

 

「発明」とは、自然法則を利用して特定の課題を解決するための、製品または方法の態様に基づく技術的解決手段である(知的財産法第4条第12項)。

 

特許審査ガイドラインでは、人間および動物の診断や治療の方法などは知的財産法第59条に規定する「発明として保護されない主題」の一つであることを明確にしつつ、診断や治療を行うための器具や設備並びに物質や材料はすべて特許の対象であるとして説明されている(「5.8.2.9 人間・動物のための病気予防・診断・治療の方法)。

 

関連記事:「ベトナムにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.1.17)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16397/

 

関連記事:「既知の化合物の塩、多形、剤形、投与方式に関わる医薬発明のベトナムにおける保護」(2018.9.4)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15724/

 

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関連記事:「ベトナム進出に際しての知的財産権保護の留意点」(2015.3.31)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/8529/

 

 

3. 特許を受けるための要件

 

積極的要件:一般的特許要件(知的財産法58条)

「発明特許」と「実用新案特許」に関して、知的財産法第58条に「保護適格条項」があり、「発明特許」出願については、知的財産法第60条に規定する「新規性」を満たすか、知的財産法第61条に規定する「進歩性」を満たすか、知的財産法第62条に規定する「産業上利用性」を満たすかという3つの要件がある。また「実用新案特許」出願については、「新規性」と「産業上利用性」そして「通常の知識によらないもの」が要件であり、「発明特許」に対して求められる「進歩性」は要求されない。

 

消極的要件:発明として保護されない主題知的財産法第59条)

(1) 発見、科学的理論、数学的方法

(2) 精神活動の実行、飼育動物の訓練、ゲーム、事業遂行を行うための計画、企画、規則または方法、コンピュータ・プログラム

(3) 情報の提示

(4) 審美的特徴のみの解決

(5) 植物品種、動物品種

(6) 植物および動物の生産のための本質的に生物学的性質の方法であって、微生物学的方法以外のもの

(7) ヒトまたは動物のための疾病予防、診断および治療

 

手続的要件(知的財産法第100、第101条、第102

産業財産権出願に関する一般的な要件(100条)、出願の単一性要件(101条)、および特許出願に関する記載要件(102条)を満たしていなければならない。

 

関連記事:「ベトナムにおける特許事由と不特許事由」(2015.3.31)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8533/

 

関連記事:「ベトナムにおける特許制度について」(2013.9.6)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/3970/

 

 

4. 職務発明の取り扱い

 

ベトナム知的財産法第86条に職務発明制度の規定がある。企業に雇用される従業員が職務上の発明をした場合、特許を受ける権利は資金や開発手段を提供した企業に帰属するのが原則である。

 

関連記事:「ベトナムにおける職務発明・職務創作制度」(2013.12.3)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/4822/

 

 

5. 特許権の存続期間

 

(1) 存続期間

発明特許の場合、保護証書発行日に権利発生して出願日より20年で権利満了、実用新案特許の場合、保護証書発行日に権利発生して出願日より10年で権利満了となる(知的財産法第93条第2項)。

 

(2) 特許権の存続期間の延長制度

なし

 

(3) 審査の遅延による存続期間の延長補償

なし

 

関連記事:「ベトナムにおける特許年金制度の概要」(2018.10.11)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15961/