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日本とベトナムにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
 日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

日本国特許法第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。
4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

2.ベトナムにおける特許出願の分割出願の時期的要件
 ベトナムでは、出願人は、特許出願についての保護証書付与の拒絶通知の決定あるいは付与の決定(日本での拒絶査定、特許査定に相当)の前であれば、いつでも出願を分割することができる(ベトナム知的財産法(以下、「知的財産法」という。)第115条)。

知的財産法 第115条 工業所有権登録出願の補正,補充,分割及び変更
1. 国家工業所有権庁が保護証書の付与の拒絶通知又は付与の決定を行うまで,出願人は,次の権利を有する。
a) 出願に補正又は補充を行うこと
b) 出願を分割すること
c) 出願人の名称又は宛先の変更を記録するよう請求すること
d) 契約に基づく譲渡の結果として,相続,遺贈の結果として,又は当局の決定に基づい
  て出願人変更を記録するよう請求すること
dd) 発明特許に係る願書付きの発明登録出願を,実用新案特許に係る願書付きの発明登
  録出願に変更すること,及びその逆に変更すること
2. 本条1項に規定する手続について請求する者は,手数料及び料金を納付しなければならない。
3. 工業所有権登録出願に対する如何なる補正又は補充も,出願書類において開示され又は明記された主題の範囲を拡張してはならず,かつ,当該出願において登録を求めた主題の内容を変更してはならず,また出願の単一性を確保しなければならない。
4. 出願の分割の場合は,分割された出願の出願日は,原出願の出願日と決定されるものとする。

    日本とベトナムにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 ベトナム
分割出願の時期的要件*) 補正ができる期間 拒絶査定または特許査定より前であればいつでも

*) 査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

ベトナムにおける分割特許出願

1.特許出願の分割の時期的制限
 法律に基づき、出願人は、特許出願についての拒絶通知または保護証書の付与の決定(日本での拒絶査定、特許査定に相当)の前であれば、いつでも出願を分割することができる(ベトナム知的財産法(以下、「知的財産法」という)第115条)。
 したがって、実務においては、出願人は、次の期限内に親出願から1つ以上の分割出願を提出することを検討することができる。

(a) 出願の受理または拒絶通知の発行前
(b) 単一性の欠如に関するオフィスアクションへの対応時
(c) 特許の拒絶通知または許可通知の発行前の任意の時点
(d) 再審査期間内(出願人が審査官の拒絶に対して査定不服審判を請求し、この請求が認められた場合、出願は再審査のために審査官に差戻される。この再審査の期間内に分割出願を提出することができる。)
(e) 親出願の取り下げ前
(省令01/2007/TT-BKHCN 17.2、ベトナム特許審査ガイドライン10.2(以下、「特許審査ガイドライン」という。))

 一つの技術的解決策について特許保護を求める企業にとって、その出願を複数の分割出願に分けることで有利になる場合が多いが、出願人は、その親出願がベトナム国家知的財産庁(Intellectual Property office of Vietnam 以下、「IP VIET NAM」という。)に係属している間に限り、分割出願できることに注意しなければならない。

2.特許出願の発明の単一性の欠如を理由とする分割出願
 特許出願の審査中に発明の単一性の欠如が指摘された場合に、分割出願をすることが最も一般的なケースといえる。特許出願は、独自の発明、または独自の発明概念として機能する技術的に密接な関係を有する発明群を主張する場合、単一性の要件を満たすとみなされる(知的財産法第101条第2項、省令01/2007/TT-BKHCN 23.3.b)、特許審査ガイドライン 20)。
 単一性の欠如は、予備審査段階または実体審査において指摘される。予備審査において、発明概念として技術的に密接には関係していない複数の独立クレームが出願に含まれている場合、発明の単一性は満たされていないと見なされる。このような単一性に対する拒絶理由通知は、実体審査で行われる先行技術に基づく審査をせずに提起される。逆に、発明の解決手段が既に先行技術において教示されていると推定された後に単一性が判断される場合には、実体審査において複数の独立クレームで共通する技術的特徴が顕著な特徴かどうかが判断される。
 例えば、独立クレームに記載された発明が、新規性または進歩性の要件を満たしていない場合、その従属クレームに記載された発明の単一性を慎重に検討する必要がある。その場合、当該独立クレームの一つの従属クレームに記載された発明の「顕著な技術的特徴」が、別の従属クレームに記載された発明に存在しない場合がある(特許審査ガイドライン 20)。そのような場合、単一性の欠如に関する拒絶理由が通知される可能性がある。
 上記のような単一性の欠如に対して、出願人は、親出願において審査対象として選択されなかった発明の数に応じて、一つ以上の分割出願に分けることができる。このような場合、出願人は、単一性の欠如の拒絶理由を解消するために、当該オフィスアクションへの応答時に一つ以上の分割出願をすることが要求される。
 さらに、出願人は、一つの分割出願において、親出願において審査対象として選択された発明を除く全部の発明をクレームすることもできる。依然として単一性が満たされない場合、単一性の欠如に関する更なるオフィスアクションが出されるだろう。その場合、出願人は、オフィスアクションへの応答時に、残りのいずれかの主題に関するさらなる分割出願をするよう要求される。知的財産法には明確に規定されていないものの、先に出願された分割出願から更なる分割出願をすることが可能である(いわゆる孫分割出願が許される)。
 なお、実務上この孫分割出願は、分割出願(子分割)が係属中であり、最初の親出願がまだ権利期間内にあるという制約下でのみ行うことができる(最初の親出願と全ての分割出願は同じ出願日を有し、特許が付与された場合、これらの特許は同じ権利期間が与えられる。この権利期間は、特許の場合は出願日から20年、実用新案の場合は出願日から10年である)。

3.特許出願の出願人による自発的な分割出願
 知的財産法の規定に従い、IP VIET NAMが拒絶査定、または特許査定通知を発行する前に、出願人は自発的に自己の出願を分割することができる。先述したように発明の単一性に関する拒絶理由通知に対する分割出願に加え、出願人は、拒絶されたクレームを含むクレームの審査を継続させる目的で、自発的に分割出願することもできる(知的財産法第115条)。
 例えば、ベトナム国内において、「用途」を主題とする発明は製品でも方法でもないため、特許付与可能な発明ではないという理由により、IP VIET NAMは「用途」に関する全ての発明を拒絶できる(知的財産法第4条第12項)。ベトナムにおいて用途クレームが特許適格性を有するかどうかは論争の対象となっているものの、今のところこのような用途クレームを含む特許出願に対して特許は付与されていない。そのため係属中の出願から用途クレームを削除し、分割出願することにより、残りのクレームの特許性審査を長引かせないようにすることが可能である。分割出願を利用する他の場合として、権利の移転や実施許諾の対象となる発明のみを個別に権利化するために行うことなどが考えられる。

4.特許出願の分割出願のクレーム
 ベトナム特許規則に基づき、分割出願のクレームは、下記(a)から(c)の要件を満たさなければならない(特許審査ガイドライン 33.5)。

(a)分割出願のクレームに記載された発明は、最初に出願された親出願に開示されていなければならない。つまり、出願人は権利範囲の狭いクレームを出願した後に、より広いクレームの分割出願をすることができるが、後の分割出願のクレームは、原出願の明細書の開示の範囲に含まれていなければならない。
(b)分割出願のクレームに記載された発明は、分割後の親出願のクレームに記載された発明と異なるものでなければならない。つまり、親出願と分割出願が同一の発明をクレームすることはできない。

5.特許出願の分割出願に関する二重特許
 ベトナムにおいて、一つの発明には一つの特許のみが許可される。同一の発明を保護するために二つの特許は認められない。言い換えると、複数のクレームが同一の範囲または重複した範囲を有することは許されない(特許出願審査規則33.5)。出願当初の一つ以上のクレームを分割出願することができる。しかし、出願人が先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームと全体的または部分的に同等である一つ以上のクレームを分割出願に含めた場合、IP VIET NAMは、二重特許問題を理由に、特に当該分割出願のクレームに記載された発明が先の親または分割出願の発明と同じであるという理由で拒絶する。
 実際、先の親出願において既に特許付与された発明を、その分割出願に含めることはできない。しかし、親出願において削除されたクレームを分割出願することはできる。それ故、ベトナムにおいて分割出願する場合には、先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームを考慮して分割出願のクレームを慎重に検討すべきである。

6.特許出願の分割出願に際しての留意事項
 分割出願には新たな出願番号が付与され、親出願と同じ出願日、および(存在する場合)親出願と同じ優先権が与えられる(知的財産法第115条、省令01/2007/TT-BKHCN 17.2および特許審査ガイドライン10.2)。分割出願に際しては、優先権主張に関する料金を除き、親出願と同じ出願料および各所定料金を支払わなければならない。これらの手数料は、優先権主張手数料を除き、元の親出願と同じである(省令01/2007/TT-BKHCN 17.2、特許審査ガイドライン 5.12)。分割出願は、新たな特許出願として扱われ、元の親出願で完了していない手続が引き続き処理される(省令01/2007/TT-BKHCN 17.2)。
 分割出願の実体審査は、所定の期間内(特許出願の場合は、出願日または「優先日から42か月以内(知的財産法第113条、省令01/2007/TT-BKHCN 25.1))に実体審査が請求された場合に限り行われる(特許出願審査規則 33.5)。上記の期間後に分割出願する場合は、分割出願時に実体審査請求しなければならない。実際に、分割出願時に実体審査を請求することは珍しくない。

7.分割出願に関する特許出願と実用新案出願の相違点
 ベトナムでは、日本での特許を「発明特許」、実用新案を「実用新案特許」としている。実用新案特許出願について、分割出願に関する制度は、発明特許と概ね同様であるが、分割出願の実体審査は、出願日または優先日から36か月以内に実体審査が請求された場合に限り行われる、点で相違する。

ベトナムにおける特許審査基準関連資料

【詳細】

 ASEAN主要国及び台湾における特許及び商標の審査基準・審査マニュアルに関する調査研究報告書【特許編】(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅲ部4

 

(目次)

第Ⅲ部 調査対象国・地域の審査基準関連資料の詳細

 4 ベトナム P.95

参考 調査対象国・地域の知的財産権担当官庁及び、ウェブサイト公開されている関連法規、審査基準関連資料の情報

 4 ベトナム P.212

日本とベトナムにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件

平成19年3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかによって、時期的要件が異なる。

平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。

平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

(ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

(i)前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

(ii)審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

(3)に規定する3ヶ月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条 特許出願の分割

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。

一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。

二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。

三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。

2~4(略)

5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

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ベトナムにおける特許出願の分割出願の時期的要件

・拒絶査定または特許査定の発行日より前であればいつでも、分割出願可能である。

条文等根拠:知的財産法第115条

 

ベトナム知的財産法 第115条 工業所有権登録出願の補正、補充、分割および変更

(1) 国家工業所有権庁が保護証書の付与の拒絶通知または付与の決定を行うまで、出願人

は、次の権利を有する

(a) 出願に補正または補充を行うこと

(b) 出願を分割すること

(c) 出願人の名称または宛先の変更を記録するよう請求すること

(d) 契約に基づく譲渡の結果として、相続、遺贈の結果として、または当局の決定に基づいて出願人変更を記録するよう請求すること

(dd) 発明特許に係る願書付きの発明登録出願を、実用新案特許に係る願書付きの発明登録出願に変更すること、およびその逆に変更すること

(2) (1)に規定する手続について請求する者は、手数料および料金を納付しなければならない。

(3) 工業所有権登録出願に対する如何なる補正または補充も、出願書類において開示されまたは明記された主題の範囲を拡張してはならず、かつ、当該出願において登録を求めた主題の内容を変更してはならず、また出願の単一性を確保しなければならない。

(4) 出願の分割の場合は、分割された出願の出願日は、原出願の出願日と決定されるものとする

 

日本とベトナムにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 ベトナム
分割出願の時期的要件(注) 補正ができる期間 拒絶査定または特許査定の発行日より前であればいつでも

(注)査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における分割出願の要件については、下記のとおりである。

分割出願の時期的要件および出願人による自発的な分割可否に関する各国比較

分割出願の可否(出願から審査請求まで) 分割出願の可否(審査請求から最初の指令書(拒絶理由通知などの通知)まで) 分割出願の可否(最初の指令書~査定まで) 出願人による自発的な分割の可否
JP 指令書応答期間のみ
BR
CN
HK ○*
ID
IN
KR 指令書応答期間のみ
MY 審査報告書郵送から3ヶ月
PH ○**
RU
SG
TH × × 分割指令発行から120日 ×
TW
VN

(*)香港の標準特許出願に対応する指定特許出願の分割についての可否

(**)単一性違反の指令後の非選択発明についての分割は、その指令書発行から4ヶ月以内または4ヶ月を超えない範囲で認められる追加の期間内

ベトナムにおける分割特許出願

【詳細】

○特許出願および実用新案出願の分割の時期的制限

ベトナムの特許実務に基づき、出願人は審査係属中、拒絶査定または特許査定通知の発行日より前であればいつでも、親出願から分割出願をすることができる。また、審査官の拒絶査定に対する不服審判請求の結果、審査官への差戻し審査となった場合の審査中においても分割出願できる。

 

一つの技術的解決策について特許保護を求める企業にとって、その出願を複数の分割出願に分けることで有利になる場合が多いが、出願人は、その親出願がベトナム国家知的財産庁(Intellectual Property office of Vietnam: IP VIET NAM)に係属している間に限り、分割出願できることに注意しなければならない。

 

○発明の単一性の欠如を理由とする分割出願

出願の審査中に発明の単一性の欠如が指摘された場合に分割出願をすることが、最も一般的ケースといえる。

単一性の欠如は、予備審査段階または実体審査において指摘される。予備審査において、発明概念として技術的に密接に関係していない複数の独立クレームが出願に含まれている場合、発明の単一性は満たされていないと見なされる。このような単一性に対する拒絶理由通知は、実体審査で行われる先行技術に基づく審査をせずに提起される。逆に、発明の解決手段が既に先行技術において教示されていると推定された後に単一性が判断される場合には、実体審査において複数の独立クレームで共通する技術的特徴が顕著な特徴かどうかが判断される。

 

例えば、独立クレームに記載された発明が新規性または進歩性の要件を満たしていない場合、その従属クレームに記載された発明の単一性を慎重に検討する必要がある。その場合、当該独立クレームの一つの従属クレームに記載された発明の「顕著な技術的特徴」が、別の従属クレームに記載された発明に存在しない場合がある。そのような場合、単一性の欠如に関する拒絶理由が通知される可能性がある。

 

上記のような単一性の欠如に対して、出願人は、親出願において審査対象として選択されかった発明の数に応じて一つ以上の分割出願に分けることができる。このような場合、出願人は、単一性の欠如の拒絶理由を解消するために、当該オフィスアクションへの応答時に一つ以上の分割出願をすることが要求される。

 

これにより親出願の手続が続行され、より速やかな特許許可が可能になる。一方、出願人は、単一性の欠如が指摘されているクレームが単一性を満たしているという理由を陳述した意見書を提出することもできる。そのような意見書が、単一性の欠如による拒絶理由を撤回するよう審査官を説得できるほど十分な根拠を示していない場合には、更なるオフィスアクションが発行され、出願人は一つの発明を選択し、一つ以上の分割出願をすることが要求される。

 

さらに、出願人は、一つの分割出願において残り全部の発明をクレームすることもできる。依然として単一性が満たされない場合、単一性の欠如に関する更なるオフィスアクションが出されるだろう。その場合、出願人はオフィスアクションへの応答時に、残りのいずれかの主題に関するさらなる分割出願をするよう要求される。特許法には明確に規定されていないものの、先に出願された分割出願から更なる分割出願をすることが可能である(いわゆる孫分割出願が許される)。

 

なお、実務上この孫分割出願は、分割出願(子分割)が係属中であり、最初の親出願がまだ権利期間内にあるという制約下でのみ行うことができる(最初の親出願と全ての分割出願は同じ出願日を有し、特許が付与された場合、これらの特許は同じ権利期間が与えられる。この権利期間は、特許の場合は出願日から20年、実用新案の場合は出願日から10年である)。

 

○出願人による自発的な分割出願

特許法の規定に従い、IP VIET NAMが拒絶査定、または特許査定通知を発行する前に、出願人は自発的に自己の出願を分割することができる。先述したように発明の単一性に関する拒絶理由通知に対する分割出願に加え、出願人は、拒絶されたクレームを含むクレームの審査を継続させる目的で、自発的に分割出願することもできる。

 

例えば、ベトナム国内において、「用途」を主題とする発明は製品でも方法でもないため、特許付与可能な発明ではないという理由により、IP VIET NAMは「用途」に関する全ての発明を拒絶できる。ベトナムにおいて用途クレームが特許適格性を有するかどうかは論争の対象となっているものの、今のところこのような用途クレームを含む特許出願に対して特許は付与されていない。そのため係属中の出願から用途クレームを削除し、分割出願することにより、残りのクレームの特許性審査を長引かせないようにする方が可能である。分割出願を利用する他の場合として、権利の移転や実施許諾の対象となる発明のみを個別に権利化するために行うことなどが考えられる。

 

○分割出願のクレーム

ベトナム特許規則に基づき、分割出願のクレームは、下記(a)および(b)の要件を満たさなければならない。(a)分割出願のクレームに記載された発明は、最初に出願された親出願に開示されていなければならない。つまり、出願人は権利範囲の狭いクレームを出願した後に、より広いクレームの分割出願をすることができるが、後の分割出願のクレームは、原出願の明細書の開示の範囲に含まれていなければならない。(b)分割出願のクレームに記載された発明は、分割後の親出願のクレームに記載された発明と異なるものでなければならない。つまり、親出願と分割出願が同一の発明をクレームすることはできない。

 

○分割出願に関する二重特許

ベトナムにおいて、一つの発明には一つの特許のみが許可される。同一の発明を保護するために二つの特許は認められない。言い換えると、複数のクレームが同一の範囲または重複した範囲を有することは許されない。出願当初の一つ以上のクレームを分割出願することができる。しかし、出願人が先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームと全体的または部分的に同等である一つ以上のクレームを分割出願に含めた場合、IP VIET NAMは、二重特許問題を理由に、特に当該分割出願のクレームに記載された発明が先の親または分割出願の発明と同じであるという理由で拒絶する。

 

実際、先の親出願において既に特許付与された発明を、その分割出願に含めることはできない。しかし、親出願において削除されたクレームを分割出願することはできる。それ故、ベトナムにおいて分割出願する場合には、先の親出願または分割出願において実体審査を受けたクレームを考慮して分割出願のクレームを慎重に検討すべきである。

 

○分割出願に際しての留意事項

分割出願には新たな出願番号が付与され、親出願と同じ出願日、および親出願と同じ優先権が与えられる。分割出願に際しては、優先権主張に関する料金を除き、親出願と同じ出願料および各所定料金を支払わなければならない。分割出願は、新たな特許出願として扱われる。

 

分割出願の実体審査は、所定の期間内(特許出願の場合は、出願日または「優先日から42か月以内、実用新案出願の場合は、出願日または優先日から36か月以内)に実体審査が請求された場合に限り行われる。上記の期間後に分割出願する場合は、分割出願時に実体審査請求しなければならない。実際に、分割出願時に実体審査を請求することは珍しくない。