ベトナム商標における指定商品・役務の留意事項
ベトナムでは、複数の指定商品・役務に基づく出願が認められ、また、1区分につき指定する商品・役務の数には制限がない(知的財産法第101条第4項)。指定商品・役務の記載に関する規則やガイドライン等は存在しないが、記載方法については、実務上のルールがいくつかあるので、注意が必要である。
(1) 指定商品・役務について
ベトナムにおいて商標登録出願を行う際には、指定商品・役務は、ニース協定に基づく国際分類に従う必要がある(知的財産法第105条第3項)。ベトナム国家知的財産庁(IP Viet Nam)は、常に当該国際分類を踏襲するようにしており、2024年1月1日より第12版が適用されている(日本の政令別表・省令別表のような商品および役務の区分リストは用意されていない)。なお、旧分類で出願した商標については、更新申請時に新しい分類に従って書き換える必要はなく、旧分類のままとなる。
(2) 指定商品・役務記載の際の留意事項
・ベトナムでは、商品および役務をクラスヘディングで指定すると指定範囲が広すぎるため認められない場合がある。つまり、IP Viet Namで商標登録出願が拒絶されないようにするためには、出願時から、商品・役務を詳細に特定する必要がある。ただし、このようなクラスヘディングを指定して出願してしまった場合には、審査過程において、詳細かつ明確な指定商品・役務に補正(自発補正または拒絶理由通知に対する対応)することが認められる。
・「機能性食品」(Functional Food)は、第5類として認められる。「機能性食品、ただし、医療用は除く」(Functional Food, not for medical purpose)として、第29類や第30類で指定することは認められない。
・「本区分に属するその他の商品/役務」(other goods/services belonging to this class)との記載は、認められない。
・「当該材料から製造される製品、ただし他の区分の当該製品は除く」(Products made from this material, not in other classes)および「本区分に属する当該材料から製造される製品」(Products made from the materials which belongs to this class)との記載も認められない。
・ベトナムにおいて、あまり使われない言葉、造語、ベトナムの方言、英語や日本語などの外国語による指定商品および指定役務は、認められない。もっとも、方言については、対応する通常使用される言葉とともに記載される場合には、認められることもある。ただし、その場合、方言を括弧書きで記載しなければならない。しかしながら、外国語は、たとえベトナム語と併記してあっても認められない。
・国際分類のガイドラインに基づいて分類できない場合には、国際分類の一般的注釈に従って取り扱われる。
・WIPOが提供するMGS(Madrid Goods and Services Manager)で指定商品を検索した後、「指定締約国における受入れの可否」について、「VN ベトナム」を選択することで、検索した商品・役務が、ベトナムにおいて受け入れられるか否かを事前に確認することができる。
(3) 費用:執筆時点でのベトナム国内商標出願について、拒絶理由通知などなく、順調に手続が進んだ場合の公的費用(VND:ベトナムドン)を以下に示す(通達No. 263/2016/TT‑BTC)。[ ]内のアルファベット及び数字は、当該通達料金表内の項番号に対応する。
(i) 出願時に必要な費用
・出願基本手数料[A. 1.1]: 150,000 VND
・優先権審査手数料(1優先権主張)[B. 1.2]: 600,000 VND
・出願公開手数料[B. 4.1]: 120,000 VND
・実体審査手数料
審査料(区分ごとに)[B. 1.1]: 550,000 VND
審査料加算(7品目以上の品目ごとに加算)[B. 1.1]: 120,000 VND
(ii) 登録時に必要な費用
・設定登録手数料[B. 4.2]:120,000 VND
・公告手数料[B. 4.1]:120,000 VND
・登録証発行基本手数料[A. 2.1]:120,000 VND
・登録証発行追加手数料(追加1区分あたり)[A. 2.1]:100,000 VND
ベトナムにおける「.vn」ドメイン名紛争の解決
1. はじめに
ベトナムにおけるドメイン名の占拠および転売などのサイバースクワッティング(Cybersquatting)については、ベトナム知的財産法07/2022/QH15(以下「知的財産法」という。)第130条第1項d、政令第99/2013/ND-CP号(以下「政令99/2013」という。)第14条第16項a号および通達06/2024/TT-BKHCN号(以下「通達06/2024」という。)第1条第10項により改正された通達11/2015/TT-BKHCN(以下「通達11/2015」という。)第19条第2項にて、不正競争行為と規定されている。すなわち、他人の保護された商標と同一または紛らわしいほど類似するドメイン名を、そのドメインが導くサイト上で、同一・類似または関連する商品やサービスを紹介、提供、販売するために、許可なく使用する行為、当該商標の名声・評判を利用して不当な利益を得る目的でドメイン名を使用して混同を惹起する行為、当該商標の使用権を有しない悪意の他人が当該商標と混同を生じるドメイン名を所有・占有する行為などは不正競争行為とされる。
また、「.vn」ドメイン名の登録、使用および占有について紛争の処理を申し立てできる者(以下「申立人」という。)は、不正競争行為により損害を受けた、または損害を受ける可能性のある者と規定している(通達06/2024第1条第10項で改正された通達11/2015第19条第2項(a))。
一方、「.vn」ドメイン名は、ベトナム・インターネット・ネットワーク情報センター(Vietnam Internet Network Information Center:VNNIC、日本における「JPNIC」に相当。)により管理されている。VNNICは、情報通信省の管理下で、インターネットドメイン名の管理、割り当て、使用の監督および促進を担っている。「.vn」ドメイン名の取得は、先着順(first come, first served)で行われる(政令第72/2013/ND-CP号第3条第8項bおよび第12条)。
VNNICには、「.vn」ドメイン名をめぐる紛争において取消決定を下す権限はなく、(1) 適切な管轄権を有する機関による行政救済(取消決定を含むこと)、(2) 当事者間の交渉による取消決定を含む和解合意、(3) 裁判所での民事救済(取消決定を含む判決または仲裁)などの決定に基づき、VNNICが「.vn」ドメイン名取消の実務を担当する(2016年6月8日付共同通達第14/2016/TTLT-BTTTT-BKHCN号第12条)。
2. 紛争解決手続
2-1. 予備的観察
「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為について、知的財産権者は裁判所に民事救済を求めることができるが(知的財産法第198条第1項dおよび第202条)、ベトナムにおいて極めて稀である。これは裁判所の知的財産に関する知識が不足していること、結果が出るのが遅いことおよび仲裁の裁定ならびに判決の結果予測性が低いことが原因となっている。
一方、行政救済については、知的財産法第198条第2項、政令99/2013第14条第16項aおよび通達11/2015第4条を改正した通達06/2024第1条第3項に「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為に対する行政救済が規定された。また、政令99/2013第35条第1項には、知的財産権の不正競争行為全般については科学技術省監査局に罰則措置を講ずる権限があることが規定され、同条第3項には「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為については、情報通信省監査局にも罰則措置を講ずる権限があることが規定されている。
よって、「.vn」ドメイン名をめぐる紛争を解決する最も一般的なルートとして、完全に満足いくものではないが、交渉と行政救済が実質的に残る選択肢となっている。以下、行政救済とそれに先立つ交渉について説明する。
2-2. 交渉
「.vn」ドメイン名をめぐる紛争の行政救済の前提要件として、警告書と事前交渉などにより合意に達することができなかったこと、との要件が通達11/2015第4条第1項bに規定されていた。この要件は通達06/2024第1条第3項に置き換わることによりなくなったが、依然として、交渉は推奨される。「.vn」ドメイン名登録者の善意次第では、行政救済よりも交渉の方がはるかに時間的効率の良い解決方法となる場合がある。また、商標出願係属中の出願人には「.vn」ドメイン名の登録取消を求める法的資格はないが、登録者が友好的な解決に同意すれば、交渉によって紛争解決の機会を得ることができる。
行政救済による法的措置が避けられない場合でも、警告書を発行して交渉を行うことは、権利者が問題を友好的に解決しようと努力した証拠となり、その後の法的措置の手続において有利になると考えられる。
交渉が不調に終わった場合は、中央または省レベルで科学技術省監査局経由での訴えを提起し、行政救済を申し立てることを推奨する(政令99/2013第16条)。
2-3. 行政救済
行政救済は、通常、次のように進められる。
ステップ1:申立書の提出
第一ステップは、知的財産権者である申立人が、科学技術省監査局など適切な管轄権を有する当局(以下「当局」という。)に、以下の(i)と、(ii)と、(iii)または(iv)との証拠を全て、ドメイン名に関する救済の申立書と同時に提供する必要がある(政令147/2024/ND-CP(以下「政令147/2024」という。)第16条および通達11/2015第19条2項を改正する通達06/2024第1条第10項c)。
(i) 不正競争行為に係わる「.vn」ドメイン名と同一または紛らわしいほど類似する商標、地理的表示もしくは商号を申立人が所有することを証明する登録証明書または同等の法的文書。
(ii) 被申立人が、不正競争行為に係わる「.vn」ドメイン名に関して、正当な権利または利益を有していないことを示す証拠。
(iii) 被申立人が申立人の商標、商号、または地理的表示の評判を不当な利益のために利用したと申立人が主張する場合、申立人は、以下のものを提出しなければならない。
・商標、商号、または地理的表示がベトナムで広く使用され、認識され、またはよく知られているとみなされていることを証明する情報。
・被申立人が、「.vn」ドメイン名を使用して、申立人の保護された権利に関連するものと同一または類似の商品またはサービスを販売または宣伝し、混乱を引き起こし、申立人の評判から不当に利益を得ていることを示す証拠。
(iv) 被申立人の悪意を主張する場合、申立人は、以下を提供しなければならない。
・被申立人が、申立人の商標、商号、または地理的表示がベトナムで保護されていることを認識した上で、「.vn」ドメイン名を販売、譲渡、またはその他の方法で利益を得る意図を持っていることの証明。
・「.vn」ドメイン名にリンクされたウェブサイトが、保護された商標、商号、または地理的表示の評判または信用を損なうことを示す証拠。
「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為の救済の申立は、通常、申立人の権利が「.vn」ドメイン名の登録または使用より前から存在していることを証明する必要がある。なお、新しく登録された商標に基づいて、ベトナムで当該商標が存在する前にすでに使用されていた「.vn」ドメイン名に対する申立は、当該商標が国際的に著名な場合などを除き、認められる可能性は低いと考えられる。
「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為の救済手続において、申立の根拠となる商標自体に争いがある場合(例えば、不使用取消請求の対象となっている場合)、権利の有効性が当該救済手続において重要な要素であるため、当該救済手続は一時停止されることがある。根拠となる権利が無効とみなされるか、不使用などの理由で取り消された場合、救済の根拠はもはや存在せず、救済は認められない。
なお、知的財産権者が「vn.」ドメイン名取消の行政救済を申し立てる期限は2年である。この期限起算日は、不正競争行為を発見した日または不正競争行為が終了していた場合は行為終了日である(政令99/2013第28条第1項cに引用される行政上の罰則措置法第6条第1項aおよびb)。ただし、侵害者が不当な遅延を理由に抗弁を主張することを防ぐために、不正競争行為を発見したらすぐに救済を申し立てることが望ましい。
ステップ2:当局との面談または被申立人の施設における検査
申立書が受理された場合、当局は、通常、「.vn」ドメイン名に関する不正競争行為を主張する申立人と「.vn」ドメイン名登録者である被申立人との面談を設定し、まずは友好的に解決するよう両当事者の説得を試みる。当局は、協議のために被申立人との面談を複数回にわたり試みる場合がある。代理人が、このような面談に参加するよう要請されることがある。
被申立人が面談の要請に応じないか、これを拒絶する場合、当局は、被申立人の事業所の検査を手配する判断を下すことができる(政令99/2013第26条第3項)。
ステップ3:通知および処分決定の発行
面談または検査の後、被申立人が「.vn」ドメイン名を所有する権利を有していないと判断し、かつ、「.vn」ドメイン名の取下または譲渡に応じない場合、当局は、(i) 制裁決定を発行するか、(ii) 当該「.vn」ドメイン名が申立人の権利を侵害しているとの書面による結論を発行することができる。
(ii) の場合、当局は当該結論を申立人および被申立人に通知し、両当事者が合意するための条件を定める(政令99/2013 第27条の英文に基づく)。
両当事者が合意に達しない場合には、当局が当該案件に対処するものとし、当局は処分決定を行うことができる(政令99/2013第30条)。
例えば、「.vn」ドメイン名の取消処分決定から30日後、被申立人が「.vn」ドメイン名登録の取下を行っていない場合、処分決定を下した当局は、VNNICに対し、「.vn」ドメイン名の取消を要請することができる(政令99/2013第31条第3項)。
【留意事項】
「.vn」ドメイン名の紛争解決については、特に行政救済による「.vn」ドメイン名の取消を求める処分決定に対し、被申立人(「.vn」ドメイン名登録者)は、原則、30日以内に対応しなければならず(政令99/2013第25条第3項a)、以前に比べ改善した。しかしながら、申立人(知的財産権者)は、当該紛争に対処するよう当局を説得し、当局が相応の決定を下すよう働きかけるために、手続のすべての段階において自ら密接に関与する必要がある。一般的に、処分決定を得られるまで12~18か月かかる。
さらに、行政救済においても以下の問題点が残されている。ベトナムの制度において、行政救済による処分決定は、ベトナム国内に拠点を有しない外国人に対し発行することができない。よって、外国人が登録した「.vn」ドメイン名については、行政救済による処分決定は適用されない。また、同制度は、ベトナム人のサイバースクワッター(ドメイン占拠者)であっても「通知の送達」、すなわち居所の特定ができない者に対しては無力である。当局は裁判所と異なり、「一方的な申立による(ex parte)」事件を扱わないからである。法令の規定には、申立人が、友好的な和解期間中に登録人の変更がなされるのを防いだり、当該ドメイン名が取り消されたり別の登録人に「譲渡」されるのを防いだりするための規定も存在しない。これらの状況を打開するための解決策が検討されており、より実効的な紛争解決の手段が示されることが期待される。
ベトナムにおける意匠の調べ方
IP Viet Namは、2022年9月1日からの工業所有権デジタルライブラリー(IPLIB)の運用停止、WIPO PUBLISHツールへの切替えを発表した(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2022/vn/20220913.pdf)。
(1) IP Viet Namウェブサイト英語版(https://ipvietnam.gov.vn/en/web/english/home)へアクセスし、トップページ中段、図1の「IP INFORMATION SEARCH」の赤線で囲んである「WIPO PUBLISH(Designs)」をクリックすると図2の画面が表示される。または、http://wipopublish.ipvietnam.gov.vn/wopublish-search/public/home?1&lang=jpに直接アクセスすると図3の画面が表示される。
なお、図3の緑線で囲んでいる画面右上部で、言語表記を変更することができる。初期設定は英語である。本稿では、日本語表記画面の紹介をする。
図3の画面右上部の赤線で囲んでいる「意匠」をクリックすると、図2の画面が表示される。



(2) 検索画面(図2)の緑線で囲んでいる初期設定で表示される項目は、以下のとおりである。日本語への翻訳が不正確と思われる項目があるので、参考に日本語、英語を併記する。
・出願番号(Filing Number)
・名称(Title)
・出願人(Applicant)
図2の赤線で囲んでいる欄から、検索項目を選択追加することができる。以下に、主な検索項目を紹介する。
・国(Countries)
〇出願人国籍(Applicant Country)
〇デザインカントリー(Design Country)
〇優先権の詳細(Priority Details)
・ファイル
○ステータスコード(Status Code)
・種別(Classification)
〇LOCARNO分類(Locarno Classes)
〇分類(Classification)
・年月日(Dates)
〇出願日(Filing Date)
■今日(Today)
■過去6か月(Last 6 Months):選択すると本日から過去6か月が設定される。
■年から日付(Year to Date):選択すると本年の元日から本日が設定される。
■特定日(Specific Date):カレンダーまたは直接入力(yyyy.mm.dd)して日にちを特定することできる。
■すべての日以前(All Dates Before):カレンダーから特定した日以前が設定される。
■すべての日以降(All Dates After):カレンダーから特定した日以降が設定される。
■期間(Date Range):調査したい日付(開始日と終了日)を選択し、Applyボタンをクリックすると設定される(図4を参照)。
〇公開日(Publication Date)
〇登録日(Registration Date)
〇優先日(Priority Date)
・国別ファイルを作成する(Designs)
○創作者情報(Designer information)
○名称(Title)
・名前(Names)
〇出願人(Applicant)
○創作者(Designer)
〇代理人名(Representative Name)
・計数(Numbers)
〇登録番号(Registration Number)
〇優先権主張番号(Priority Number)
〇出願番号(Filing Number)
〇出願番号(Filing Number)
○公開番号(Publication Number)
○元の登録番号(Original Registration Number)
・雑用(Miscellaneous)
〇出願人住所(Applicant Address)
〇代理人住所(Representative Address)
○デザイン住所(Design Address)
○官庁コード(Office Code)
○ステータス(Status)
○内部ステータスラベル(Internal Status)
○公報発行日(Gazette Date )
○公報番号(Gazette Number)
○REG_TYPE
○REG_SER
○REG_NBR
(3) 以下に、出願人、出願人国籍、日付を条件設定し、検索した例を紹介する。
(3-1) 図4のオレンジ線で囲んである「出願人(Applicant)」の欄に「HONDA MOTOR CO., LTD.」と入力する。
(3-2) 赤線で囲んである項目一覧の「出願人国籍(Applicant Country)」を選択すると、入力欄が追加される。青線で囲んである「出願人国籍」の欄に「JP」と入力する。
(3-3) 赤線で囲んである項目一覧の「出願日(Filing Date)」を選択すると、入力欄が追加される。「出願日(Filing Date)」の空欄をクリックすると緑線で囲んであるカレンダーと7つの設定項目が表示されるが、この内で使用できるのは下記の3つの設定項目のようである(検索時期により状況が異なる場合もあるようである)。
○今日
○過去6か月
○年月日
「今日」をクリックすると、検索を行っている日付が表示される。その他の日付を表示したい場合は、「今日」をクリックして表示された日付を修正することにより、設定することができる。
「過去6か月」をクリックすると、例えば、「2024.07.30 TO 2025.01.30」のように、検索を行っている日付(2025.01.30)から6か月前に遡った期間が表示される。また、「年月日」をクリックすると、例えば、2025年1月30日に検索を行った場合は「2025.01.01 TO 2025.01.30」のように、検索日までの一定期間が表示される。その他の期間を表示したい場合は、「過去6か月」または「年月日」をクリックして表示された期間を修正することにより、設定することができる。
図4では検索期間を、2024年1月1日から2025年1月30日までに設定した。
(3-4) 水色線で囲んである「検索」をクリックすると検索結果が表示される(図5)。


(4) 確認したい案件にポインターを当て、任意の個所をクリックすると案件の詳細が表示される(図6aおよび図6b)。確認したい欄をクリックすると詳細が表示される。図6aは、図5に示す画面の1番上の件(出願番号:VN 3-2024-01787)の詳細情報画面である。図6bは、図6aに示す画面の1番下に表示された「イベント(Event)」と「図面(Drawings)」をクリックした例である。図面は、矢印ボタンをクリックすることで順次表示させることができる。


(5) 図7の右上の青線で囲んであるごみ箱マークをクリックすると設定した検索条件を全てクリアすることができる。また、検索結果画面上部にある緑線で囲んである「×」を個別にクリックすると個別の検索条件をクリアすることができるが、残った検索条件の結果が表示されることはなく、全ての条件をクリアした結果が表示される。

ベトナムにおける登録商標の不使用取消請求
【詳細】
1. 不使用による取消請求の概要
ベトナムでは、商標権者は登録商標について使用義務を負う(知的財産法第136条第2項)。登録商標が、登録後に正当な理由なく、継続して5年間使用されていない場合、第三者の請求による不使用取消が可能となる(知的財産法第95条第1項d)。したがって、取消の対象とならないためには、登録商標の「使用」が要求される。
ベトナム国家知的財産庁(以下「IP VIETNAM」という。)は、登録商標を、第三者が取消請求した日の5年前からその3か月前までの間に、正当な理由なく、継続して使用していなかった場合、当該取消請求に基づき、登録を取り消すことができる。第三者は「如何なる組織又は個人」と定められており、利害関係人に限定されない(知的財産法第95条第1項d、同条第4項)。
2. 不使用による取消請求の流れ
2-1. 不使用取消請求
不使用取消請求の手続は、知的財産法第95条、第220条第3項の規定および政令第65/2023/ND-CP号(以下「政令」という。)第32条に従って処理される。
請求人は、以下の書類をIP-VIRENAMに提出する。複数の登録に対して請求を行う場合、登録商標が異なる以外に、不使用取消請求の書類内容が同一であれば、1件の取消請求にまとめて提出することは可能である。ただし、請求人は、各登録商標の取消請求手数料を納付しなければならない。
・政令の付録書IIの様式第08号に従った不使用取消請求書(政令ベトナム語版第頁)
・証拠(ある場合)
・委任状(請求人が外国人の場合、ベトナムの代理人が必要。知的財産法第119a条第2項)
・請求理由説明書(登録番号、登録の効力の一部もしくは全部の終了(不使用取消)に関する理由、法的根拠、請求内容を明記)およびその他の関係書類
・手数料の領収書の写し
2-2. 不使用取消請求において提出可能な未使用の「証拠」
請求人が自ら調査した資料を、関係当局、すなわち、産業貿易省の管轄下にあるベトナム産業貿易情報センター(Vietnam Industry and Trade Information Center)に提出して、問題の商標の使用または不使用についての当局の見解を求め、この見解書を不使用取消請求の不使用の証拠として提出することができる。
当該見解書が使用を肯定する場合、実際的には、不使用取消請求はなされないものとなるであろうが、請求が禁止されるものではない。関係当局の見解に反論することはできないが、使用が商標法上の使用に該当しない等、何らかの理由があれば、不使用取消は請求することができる。
なお、後述の通り、IP VIETNAMは、不使用取消請求時に提出された証拠資料に基づき審査を行うが、関係当局の見解が肯定的なものであろうと否定的なものであろうと、拘束されない。
2-3. 商標権者への通知、答弁
取消請求を受領したIP VIETNAMは、請求の提出日から1か月以内に商標権者に請求を書面で通知し、通知の発行日から2か月以内に答弁する機会を与える(政令第32条第3項b)。商標権者は、取消を免れるために商標を使用していることを証明する必要がある。
なお、財務省の管轄下にある経済財務研究所(Institute of Economics and Finance)が発行する“The Price and Market Bulletin News”に掲載された記事も証拠として受理される。
IP VIETNAMは、請求人と商標権者の間で意見を交換するための口頭審理を開催することができる(政令第32条第3項b)。
国際登録商標(マドプロに基づく商標)の場合、通知は国際事務局を通じて送付され、通知の発行日から3か月以内にIP VIETNAMに答弁する必要がある(政令第32条第4項a)。
商標権者の答弁があると、IP VIETNAMは3か月以内(3か月の延長あり)に決定することから、請求人は決定に間に合うように、弁駁することができる(政令第32条第3項c)。
2-4. IP VIETNAMによる決定
IP VIETNAMは、当事者の意見を考慮した上で、登録の効力の一部または全部を取り消す決定を下すか、または登録の効力の一部もしくは全部の取消を拒否する旨を通知する。登録商標の取消決定は、決定日から60日以内に公報に公告される(政令第32条第3項đ)。
不使用を理由として登録が取り消された場合、取消は、IP VIETNAMが取消を決定した日から効力を生じる(知的財産法第95条第6項第一段落)。
IP VIETNAMの決定には、決定日から90日以内に、IP VIETNAMの長官に不服申立することができる(知的財産法第119a条第1項、不服申立法第9条、通達第23/2023/TT-BKHCN号第35条第2項lおよびmならびに同条第4項および第5項)。
3. 登録商標の「使用」について
広告における商標の使用は、それが取引を目的とし、単に登録取消を回避する目的でなければ、適正な「使用」とみなされる(知的財産法第124条第5項b)。
関連会社などの黙示に許諾された使用者による使用も、適正な「使用」とみなされる。
「使用」は、必ずしも相当な量の使用である必要はなく、使用の事実があれば良い。
さらに、使用商標が登録商標と異なるものでも、商標の同一性を保っており、登録商標の特徴を実質的に変更するものでなければ、登録商標の使用と認められる。
【留意事項】
5年以上商標が使用されていない場合であっても、取消請求日の少なくとも3か月前の時点までに商標の使用を開始または再開していれば、取消請求は棄却される。
登録商標の一部取消も可能である。
日本とベトナムにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較
1. 日本における意匠権の権利期間
日本における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(意匠法第21条第1項)。ただし、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から15年間、平成19年4月1日から令和2年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から20年間である。
なお、関連意匠の意匠権の権利期間は、その基礎意匠の出願日から25年である(意匠法第21条第2項)。ただし、本意匠および関連意匠の双方が、平成19年3月31日以前の出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間であり、本意匠が平成19年3月31日以前の出願で、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から20年間である。
権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項、第43条第2項)。
日本意匠法 第21条 存続期間 意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録の出願の日から25年をもって終了する。 2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。 |
意匠法第42条および第43条は、省略(【ソース】の「日本国意匠法」を参照されたい。)。
2. ベトナムにおける意匠権の権利期間
ベトナムにおける意匠権の権利期間は、出願日から5年の終りに満了となるが、5年を単位として2回の更新が可能であり、出願日から最長15年をもって終了する(ベトナム知的財産法第93条(4))。
最長15年までの権利維持を希望する場合には、出願日を年金納付起算日として5年ごと(5、10年次の満了前6か月以内)に年金および手数料を支払う必要がある(知的財産法第93、94条、知的財産法に関する政令第65/2023/ND-CP号(以下「政令」という。)第31条(1),(2))。5年次まで、および10年次までの存続期間が満了する6か月前から満了日までの間に、次の5年分の存続期間の更新申請手続を行うことができる。期限徒過後6か月以内であれば、追加申請料を納付することを条件に更新可能である(政令第31条(3))。
ベトナム知的財産法 第93条 保護証書の効力 (4) 工業意匠特許は、付与日に始まり出願日から5年の終りに満了し、5年を単位とする2連続期間更新可能な効力を有する。 ((1)から(3)、(5)から(9)省略) |
ベトナム知的財産法 第94条 保護証書の効力の維持および更新 (2) 工業意匠特許または商標登録証の効力を更新させるためには、その所有者は、効力更新の手数料、料金を納付しなければならない。 (3) 保護証書の手数料、料金ならびに維持および更新の手続は、政府がこれを規定する。 ((1)省略) |
知的財産法に関する政令第65/2023/ND-CP号 第31条 (1) 工業意匠登録証は、1回の更新につき5年間効力を発揮し、最大2回まで更新することが可能である。保護される工業意匠に複数のバリエーションがある場合、基本バリエーションを含む全部または一部のバリエーションに対して登録証の更新を行うことが可能である。(以下省略) (3) 保護証書の効力の更新に関する請求書類、更新請求にかかる審査手数料、更新手数料、保護証書使用料、登記手数料および保護証書の効力更新決定の公表にかかる手数料に関して、当該工業意匠登録証、商標登録証の所有者は、工業意匠登録証、商標登録証における有効期間終了前6か月以内に(*)国家知的財産庁に提出すること。当該請求は、上記の所定期間後でも提出することが可能であるが、保護証書の有効期間の終了日から6か月を超えてはならないほか、保護証書の所有者は、料金・手数料に関する法律の規定に従って、遅延した月ごとに罰金を納付すること。 ((2)、(4)省略) |
日本とベトナムにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較
日本 | ベトナム | |
---|---|---|
権利期間 | 出願日から25年 | 出願日から最長15年 |
権利維持 | 登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金の支払い要 | 出願日を年金納付起算日として、5年ごと(5、10 年次の満了前6か月以内)に年金の支払い要 |
ベトナムにおける特許出願の補正および補充
1. 補正または補充の内容
特許出願に対するいかなる補正または補充も、(i)当初の出願書類で開示または記載された主題の範囲を拡張してはならず、(ii)出願において登録を求めた主題の内容を変更してはならず、(iii)発明の単一性の要件を満たす必要がある(ベトナム知的財産法(以下「知的財産法」という。)第115条第3項)。
2. 補正または補充ができる時期
IP VIETNAMにおいて特許出願が係属中であれば、出願を補正または補充することができる。すなわち、出願日から特許査定または拒絶査定の日まで、出願人が自発的に、またはIP VIETNAMの通知を受けて補正または補充を行うことができる(知的財産法第115条第1項a)。
2-1. 自発的補正または補充
具体的には、自発的補正または補充は、以下の場合に行うことができる。
(1) PCT出願がベトナムでの国内手続に移行するとき
(2) 方式審査結果通知の発行前または発行後
(3) 実体審査の請求前または請求後
(4) 実体審査結果通知(拒絶理由通知)の発行前または発行後
なお、特許を付与する意向の実体審査結果通知(特許査定)の発行後であっても補正または補充の申請書を提出することは可能であるが、この場合、出願は再審査される(政令65/2023/ND-CP(以下「政令」という。)第16条第3項c、通達23/2023/TT-BKHCN(以下「通達」という。)第13条第1項b)。
2-2. 指令への応答による補正または補充
出願人が、所定の期間内に出願を拒絶する旨の方式審査結果通知および/または実体審査結果通知(拒絶理由通知)へ応答する際に、出願を補正または補充をすることができる(知的財産法第109条第3項a、知的財産法第117条第3項a)。ここで、所定期間とは、方式審査結果通知の発送日から2か月(通達第9条第5項a)、実体審査結果通知(拒絶理由通知)の発送日から3か月である(通達第16条第8項a)。
3. 一般的な補正または補充
当事務所の実務で多く見受けられる明細書および請求項の補正または補充を以下に紹介する。
(1) 人間または動物の病気の診断または治療の方法に関する請求項の削除、または可能な場合これらの請求項の認容可能な形への変更。
(2) 用途請求項の削除、または可能な場合、用途請求項の認容可能な形式への変更。
(3) 装置・機器・システムを動作させる方法、方法を実行するためのプログラムをインストールした装置・機器・システム、方法を実行するためのプログラムを格納した記憶媒体などの要件を満たす形式のコンピュータプログラム請求項への変更。
(4) 発明の名称、および/または要約の補正、人間または動物の病気の診断または治療の方法に関する記載、用途にかかる特許主題の削除。
(5) 方式要件を満たすため、同時に複数の独立請求項に関係する請求項を、複数の別々の請求項に分割。
(6) 審査料金を減額するために独立請求項の数を削減。
(7) 対応するベトナム特許出願の審査を迅速化するため、認められた外国特許庁で特許査定を受けた特許請求項に、係属中の請求項を一致させる補正。
(8) 要約を請求項の補正に一致するように補正。
4. 認められない補正または補充
明細書および請求項について、以下のような補正および補充は認められない。
4-1. 修正・追加による補正または補充
(1) 補正した出願の請求項に記載された主題が、補正前の出願(以下「原出願」という。)中に含まれていない。
(2) 補正した出願の請求項に記載された主題が、原出願の明細書により完全にはサポートされていない技術的特徴を含む。
(3) 補正した出願において示される主題の主旨が、原出願に含まれる主題と異なっている。
(4) 補正した出願において当業者が見出した情報が原出願の明細書に含まれた情報と異なっており、その情報は原出願中の情報から直ちにかつ直接的には決定できない。
(ベトナム特許出願審査基準33.4)
4-2. 追加による補充
(1) 原出願の明細書(図面を含む)、請求項から直ちにかつ直接的には決定できない技術的特徴を、請求項および/または明細書へ追加する。
(2) 発明を明確に開示するために、または請求項を十分に開示するために、原出願の明細書(図面を含む)、請求項から直ちにかつ直接的には決定できない情報を追加する。
(3) 追加される内容が、図面に示される寸法要素を使用することにより得られる寸法要素に関係する技術的特徴である。
(4) 出願の当初の書類に記載されていない追加された部分または要素が、原出願に含まれない特別の効果を奏する。
(5) 当業者が原出願からは決定できない効果を追加する。
(ベトナム特許出願審査基準33.4.1)
4-3. 変更による補正
(1) 請求項の技術的特徴を、原出願の明細書に開示されていないか、原出願の明細書から直ちにかつ直接的には決定できない技術的特徴に変更する。
(2) 確定できない内容を確定できる特定の内容に変更することによって、新規の事項を導入する。
(3) 原出願において互いの関係は示されていないにもかかわらず、原出願の個々の特徴を組み合わせて新たな特徴に変更する。
(4) 原出願の明細書に示された技術的特徴と異なるようにするために、明細書におけるある特徴を変更する。
(ベトナム特許出願審査基準33.4.2)
4-4. 削除による補正
(1) 意図された課題を達成するために必要な技術的特徴、および/または削除すると請求項における他の特徴に変更が生じる技術的特徴を、請求項から削除する(ベトナム特許出願審査基準33.4.3)。
5. 補正または補充の方法
補正または補充の申請は書面で行い、(i)請求項または発明の詳細な説明の最終版と、(ii)原出願の請求項および発明の詳細な説明とを比較した補正または補充の内容に関する詳細な説明、を添付しなければならない(政令第16条第2項đ)。
ベトナムにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要
1. 特許権
1-1. 存続期間
ベトナムにおける特許権は登録により発生し、権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(ベトナム知的財産法(以下「知的財産法」という。)第93条第2項)。権利期間の延長制度は存在しない。
1-2. 年金の納付期限
特許査定が下されると、特許を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に初年度※1の年金(権利の有効性を維持するための手数料)を登録料とともに納付することが求められる(科学技術省通達(以下「通達」という。)01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii))。
2年度以降の年金は、各年の前年度の満了前6か月以内に納付する(知的財産法第94条第1項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。
※1 ここでの「年度」とは、特許の登録日を起算日とした、年金納付の期限を定める年度をいう。
ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して特許手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。
1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限までに年金納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である(通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。
1-4. 権利回復制度
追納期間内に年金納付がされなかった場合、権利は失効する(知的財産法第95条第1項a))。ベトナムには、年金の未納が原因で失効した特許権の権利回復の制度はない。
上記の通り、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨をベトナム特許庁に宣言することにより、自主的に放棄を行うことも可能である(知的財産法第95条第1項b))。
1-5. 年金の誤納
所定の納付金額を超えて年金を納付した場合、返還の請求を行うことができる(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))
2. 実用新案権
2-1. 存続期間
実用新案権※2は登録により発生し、権利期間は、出願日から10年である(知的財産法第93条第3項)。権利期間の延長制度は存在しない。
※2 ここでの実用新案とは、知的財産法第58条第2項で規定される「実用新案特許」をいう。したがって、実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
2-2. 年金の納付期限
登録査定がなされると、実用新案を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に初年度の年金を登録料とともに納付することが求められる(通達01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii))。
2年度以降の年金は、納付期限日から6か月以内に納付する(知的財産法第94条第1項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。
ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して実用新案手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。
2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納制度は、特許と同じである(通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。
2-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(知的財産法第95条第1項a)、b))。
2-5. 年金の誤納
年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))。
3. 意匠権
3-1. 存続期間
意匠権は登録により発生し、権利期間は、出願日から5年で満了する。ただし、5年を単位として更新を2回行うことができるので、最長で出願日から15年の権利となる(知的財産法第93条第4項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 a))。
3-2. 年金の納付期限
登録査定がなされると、意匠を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に登録料(最初の5年分の年金を含む)を納付することが求められる(通達01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii)、15.7 c))。
5年度または10年度に更新手続を行う場合、その手続は、権利の有効期間の満了前6か月以内に行わなければならない(通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 b))。更新手続と同時に更新料(次の5年分の年金を含む)を納付する(知的財産法第94条第2項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 c)(iv))。
ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して意匠手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。
3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限までに更新料の納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば追納手続が可能である。その場合、所定の更新料に加えて追徴金を同時に納付しなければならない(通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 b))。
3-4. 権利回復制度
追納期間内に更新料の納付がされなかった場合、権利は失効する(知的財産法第95条第1項a))。ベトナムには更新料の未納が原因で失効した意匠権の権利回復の制度はない。
3-5. 年金の誤納
所定の納付金額を超えて年金を納付した場合、返還の請求を行うことができる(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))。
ベトナムの知的財産関連機関・サイト
*本稿で紹介するサイトについて、ベトナムでは、URLへのアクセス不調、急なURL変更などが起こることも多い。接続がブロックされる場合もあるので、ブロックされた場合は時間をおいて再度接続すること、接続不能な場合には、省庁名などでサーチし直すことをお勧めする。
1. 立法機関
(1) ベトナム社会主義共和国国会(Quốc hội nước Cộng hòa xã hội chủ nghĩa Việt Nam)
http://quochoi.vn/Pages/default.aspx
ベトナム社会主義共和国憲法第69条により、国会は人民の最高の代表機関であり、ベトナム社会主義共和国の最高の国家権力機関であると規定されている。国会は、憲法制定、立法の行使、国土の重要な各問題について決定し、国の活動に対する最高の監察を行う。
2. 行政機関
(1) ベトナム社会主義共和国政府(Chính phủ nước Cộng hòa xã hội chủ nghĩa Việt Nam)
http://www.chinhphu.vn/portal/page/portal/chinhphu/trangchu
ベトナム政府の政策に関するニュース等の発信がメインのサイトである。
(2)国家公共サービスポータルサイト(Cổng Dịch vụ công Quốc gia)
https://dichvucong.gov.vn/p/home/dvc-trang-chu.html
行政手続に関する情報について、項目ごとにコンパクトにまとめられた内容を検索することができる。以下、本サイトの検索例を説明する。
国家公共サービスポータルサイトのトップページを図1に示す。

図1の「行政手続(Thủ tục hành chính)」のプルダウンメニューから「Tra cứu TTHC(行政手続検索)」をクリックすると、図2の検索画面が表示される。

例えば、図2の赤枠の検索ボックスに「Thủ tục đăng ký sáng chế (特許出願の手続)」を入力して虫眼鏡マークの検索ボタンをクリックすると、図3の検索結果画面が表示される。

図3の「Mã số(コード)」の下の番号をクリックすると、図4に示す特許出願の手続に関する詳細画面が表示され、特許出願に関する基本的な流れや、期間、費用、根拠となる法律等を閲覧することができる。

図4 「Thủ tục đăng ký sáng chế (特許出願の手続)」の詳細表示画面

さらに、詳細検索について補足する。先に示した図2の検索画面において、「Tìm kiếm nâng cao(詳細検索)」を選択すると、図5の詳細検索画面が表示さる。
知的財産関連の行政手続を表示させるには、図5の画面において、「Cơ quan thực hiện(管轄官庁)」で「Bộ Khoa học và Công nghệ (科学技術省)」、「Lĩnh vực(分野)」で「Sở hữu trí tuệ(知的財産)」を選択して虫眼鏡マークの検索ボタンをクリックすると、図6に示すように本稿作成時点では、検索条件に合致する行政手続が57件一覧表示される。

一覧表示された行政手続の中には、出願手続以外の情報、例えば図7に示す「特許の強制実施権の許諾決定の手続(Thủ tục ra quyết định bắt buộc chuyển giao quyền sử dụng sáng chế.)」なども参照することができる。

bắt buộc chuyển giao quyền sử dụng sáng chế.)」の詳細画面
(3) 法律図書館(Thư viện Pháp luật)
https://thuvienphapluat.vn/
法律関連の各種データベースのポータルサイトで、①法規範文書、②法規範文書の草案、③公文書、④ベトナム品質規格(TCVN)、⑤行政処分の内容と基礎となる法規範文書、⑥法律用語集などのデータベースを利用することが可能である。有料メンバー用メニューと無料メンバー用メニューがあり、有料メンバーは、英訳版の法規範文書も参照できる。
(4) 科学技術省(Bộ Khoa học và công nghệ、英語表記は、Ministry of Science and Technology :MOST)
https://www.most.gov.vn/vn/Pages/Trangchu.aspx
科学技術省は、科学技術一般を所掌する省庁であり、政府全体の科学技術関連の計画策定や調整も行う。知的財産の他、原子力、標準・度量衡なども所掌範囲に含む。知的財産庁の上部組織として、知的財産庁長官が下した産業財産権に関する決定について、不服申立は科学技術大臣への提出が可能である(政府決議122/2010/NĐ-CPにより一部改正された政府決議103/2006/NĐ-CP第14条)。また、下記に述べる科学技術省監査局は、産業財産権の侵害や模倣品に関する行政措置の実施に関する権限を有する。
(5) 科学技術省監査局(Thanh tra Bộ Khoa học và công nghệ)
https://thanhtra.most.gov.vn/thanhtra/Pages/trangchu.aspx
科学技術省監査局は、科学技術省に属する知的財産権を監査する部局であり、ベトナムの産業財産権侵害行政罰に関する政府決議99/2013/NĐ-CPに基づき、産業財産権侵害(特許権、実用新案権、商標権、意匠権、地理的表示など)に対する行政措置の実施に関する広範な権限を付与されている。
(6) 国家知的財産庁(Cục Sở hữu trí tuệ、National Office of Intellectual Property of Vietnam:NOIP、英語名はIP Viet Nam)
https://ipvietnam.gov.vn/
※ 接続がブロックされる場合があるので、ブロックされた場合は時間をおいて再度接続することをお勧めする。
ベトナムにおいて、日本国特許庁に相当する、科学技術省(MOST)傘下の政府機関である。主として産業財産権の出願の受理、審査、登録を行う官庁である。
(7) アセアンIPレジスター(ASEAN IP Register)
https://asean-ipregister.wipo.net/wopublish-search/public/home?1
産業財産権(発明特許、実用新案特許、意匠、商標)に関する出願・登録のうち、既に公開された情報を検索できるデータベースである。
(8) 文化・スポーツ・観光省(Bộ Văn hoá, Thể thao và Du Lịch)
https://bvhttdl.gov.vn/
名称の通り、文化行政、スポーツ行政、観光行政を所掌する行政機関である。文化行政の一環として著作権関連を所掌範囲とする。著作権、著作隣接権の侵害行為に対する行政措置に関しては政府決議131/2013/NĐ-CP(28/2017/NĐ-CPにて一部改正)により、罰金額等に応じて文化・スポーツ・観光省の監査部の他、各地の人民委員会等に分散・重畳的に所掌範囲が定められている。
(9) 著作権庁(Cục Bản quyền tác giả)
http://cov.gov.vn/
文化・スポーツ・観光省傘下の、著作権・著作隣接権の登録に関する手続を行う行政機関である。
(10) 商工省(Bộ Công Thương, MOIT)
https://moit.gov.vn/
下記の市場管理総局が属する省庁である。工業および商業に関する管理について、電力、エネルギー関連、科学技術、国内商標、輸出入、海外市場開拓、市場管理、消費者保護など多岐にわたる分野を所掌する。電力やエネルギー関連は商工省の所掌とされている一方、原子力は科学技術省で所掌するなど、科学技術省の所掌範囲と重複・相互関連する場合がある。
(11) 市場管理総局(Tổng cục Quản lý thị trường)
https://dms.gov.vn/
2018年8月10日付の首相決定第34⁄2018⁄QĐ-TTgにおいて、新たに商工省直属の市場管理総局の設立とその任務や権限、組織などが定められ、2018年10月12日から施行された。市場管理総局の下、県・中央直轄市レベルの市場管理局、群・市レベルの市場管理部が、その傘下に再編された。前記の首相決定は、旧市場管理局の任務・権限等を定めた首相決定第19/2009/QĐ-TTgに代わるものと規定されている。より具体的に行政措置に関する各省庁の所掌範囲を規定する政府決議99/2013/NĐ-CPは、政府決議126/2021/NĐ-CPの第1条に基づき改正・追加された。
(12) 公安省(Bộ Công an)
http://bocongan.gov.vn/
商標権・著作権等の一部の知的財産権侵害行為については、公安省により刑事事件として捜査の対象となる場合がある。
(13) 財務省(Bộ Tài chính)
https://www.mof.gov.vn/webcenter/portal/btcvn
国家財政の管理、税務、各種印紙代等の国家収入管理、税関、独立会計監査、証券、保険、その他財務関連の活動やサービスに関する管理等を所掌する行政機関である。税務管理の一環として税関総局を直属の組織とする。
(14) 税関総局(Tổng cục Hải quan)
https://www.customs.gov.vn/
※税関総局ウェブサイトへの接続状況は、利用する通信環境によって左右される可能性があり、アクセスエラーとなる場合は、時間帯や利用端末を変えて接続を試みると接続できる場合がある。
知的財産権の保護の対象となる輸出入品に対する検査・監査・通関停止に関する財務省通達13/2015/TT-BTCにおいて、税関における水際対策の詳細が規定されている。
(15) 情報通信省ポータルサイト(Bộ Thông tin và Truyền thông)
https://mic.gov.vn/Pages/trangchu.aspx
雑誌、出版、放送(ラジオ、テレビ等)、情報通信等を所掌する省庁である。
(16) 情報通信省監査局(Thanh tra Bộ Thông tin và Truyền thông)
https://mic.gov.vn/pages/thongtin/115361/ThanhTraBo.html
ドメインの不正登録等に関する行政措置(政府決議99/2013/NĐ-CP、14条16項a)を所掌する情報通信省の部局である。
3. 司法機関
(1) 最高人民裁判所(Toà án nhân dân tối cao)
http://www.toaan.gov.vn/
※最高人民裁判所ウェブサイトへの接続状況は、利用する通信環境によって左右される可能性があり、アクセスエラーとなる場合は、時間帯や利用端末を変えて接続を試みると接続できる場合がある。
ベトナムの裁判制度は、二審制が基本であり、県級裁判所または省級裁判所が第一審となり、管轄は法令に定められている(民事訴訟法92/2015/QH13第36条・第37条など、行政訴訟法93/2015/QH13第31条・第32条など)。省級裁判所が第一審の場合には、最高人民裁判所への控訴が可能であり、最終審となる(後述の監督審制度にも留意すること)。
(2) 人民最高裁判所 判決データベース(Toà án nhân dân tối cao, Trang thông tin điện tử công bố bản án, quyết định toà án)
http://congbobanan.toaan.gov.vn/
※人民最高裁判所判決データベースのリンクをクリックすると、「Để giúp chúng tôi phục vụ tốt hơn, mong bạn cho chúng tôi biết bạn làm nghề gì?(サービス品質の向上のため、職業をお教えください。)」と記載されたサブメニューが表示される場合があるので、該当する項目を選択すれば、トップページが表示される。
県・省級裁判所、高等裁判所、最高裁判所の判決を検索できるが、網羅的なデータベースではない。本稿作成時点では、「知的財産(Sở hữu trí tuệ)」のキーワードで31件、「商標(nhãn hiệu)」のキーワードで6件のヒットがあった
区級(cấp huyện)、省級(cấp tỉnh)、上級(cấp cao)、最高(tối cao)の4つのレベルの人民裁判所の判決・決定を検索可能なデータベースであるが、すべての事案を網羅してはいない。ベトナムの裁判制度は、二審制が基本であるが、例えば第一審が省レベルの裁判所であれば、第二審はハノイ・ダナン・ホーチミンの3直轄市にある上級裁判所となる。この場合、上級裁判所の判決が確定判決となる。ただし、確定判決に深刻な法令違反があると判断された場合に当該判決を破棄し得る監督審制度が設けられている(民事訴訟法92/2015/QH13第17条、行政訴訟法93/2015/QH13第11条)。
(3) ベトナム知的財産研究所(Viện Khoa học sở hữu trí tuệ、英語表記は、Vietnam Intellectual Property Research Institute:VIPRI)
http://vipri.gov.vn/
ベトナム知的財産研究所は、ベトナム科学技術省傘下の、ベトナム唯一の国家による知的財産関連鑑定機関である。侵害の成否、損害額の算定等の鑑定を有償で行う行政機関であり、行政措置の実施等にあたり他の省庁に提出する、あるいは民事措置の実施にあたり裁判所に提出する、といった目的で行われる鑑定を行う。その他、知財人材育成、知財研究なども所掌する。
【留意点】
ベトナムでは、URLへのアクセス不調、急なURL変更などが起こることも多い。上記URLで接続不能な場合には、省庁名などでサーチし直すことをお勧めする。またサイトによっては英語や中国語による表記が用意されているが、英語表記のアイコンをクリックしても英文のコンテンツが表示されないこともある。