台湾意匠における立体図
1. 立体図(中国語「立體圖」)の役割
意匠登録を受けようとする物品が立体物である場合、立体図は、図面において必要な内容となる。
(1) 意匠は、物品の全部または一部についての形状、模様、色彩またはその結合で、視覚を通じて訴える創作物と定義される(台湾専利法(以下「専利法」という。)第121条第1項)。意匠登録を出願する際、出願人は、願書、明細書、および図面を備えなければならない(専利法第125条第1項)。
(2) 意匠登録出願の図面を作成する場合、工業製図の方法を参照し、黒線図、コンピューター・グラフィックス、または写真で表さなければならない。そして、各図面をその三分の二に縮小した場合でも図面の各細部をはっきりと識別できるようにするほか、各図面の名称を表記し、立体図、またはその意匠を最も代表する図面を代表図として指定しなければならない。
(3) 意匠登録を受けようとする物品が立体物である場合、図面がはっきりとその物品の立体感を表現できるようにするために、少なくとも立体図一点を含まなければならない。そして、その立体物の意匠の特徴をはっきりと表すために、原則的には、最もその意匠の重点を表せる視面を選ぶべきである。例えば、下図で示したように、立体図と全六面図(図1-1)、または立体図と六面図の一部(図1-2)で意匠の全体的外観を表すことができる。一方、図2のとおり、二点以上の立体図だけでも立体物の意匠を表現することができる(専利審査基準第3篇第1章3.1.1)。


(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)

(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)
(4) 意匠登録を受けようとする物品が立体物である場合、通常、立体図と他図面(例えば、もう一点の立体図、または正面図・背面図・左側面図・右側面図・平面図・底面図等の図面)で登録を受けようとする意匠の全ての内容を充分に表さなければならない。図面に開示されていない部分は、原則的に「登録を受けようとしない部分」とみなされるべきであるが、それらの図が同一または対称であることや、その他の事由のために省略されている場合、省略された内容が「登録を受けようとしない部分」に属するわけではないため、省略した理由を意匠の説明欄に明記しなければならない(専利審査基準第3篇第1章2.3.3)。
(5) 色彩の登録を求める場合、図面にて、その色彩を表さなければならない(専利法施行細則第53条第4項)。なお、色彩の登録を求めない場合、図面は線図、グレースケールのコンピューター・グラフィックス、またはモノクロ写真の方法で表すべきで、図面にその色彩を施し、「図面に開示された色彩は、本案の意匠を主張しない部分である」と意匠の説明欄に記載しなければならない(専利審査基準第3篇第1章3.2.5)。
(6) 部分意匠の場合は、意匠登録を受けようとする部分と、意匠登録を受けようとしない部分をはっきりと区別できる方式で図面に表さなければならない。部分意匠における「意匠を主張しない部分」を表示する場合は、破線またはその他の断線(例えば一点鎖線、二点鎖線等)または半透明色付けで表示することができる(専利審査基準第3篇第1章3.2.1)。部分意匠出願の際、その意匠の色彩を主張しない場合は、「登録を受けようとする部分」と「登録を受けようとしない部分」を、点線、破線その他の方法で明確に分けることができない場合、単色で遮る方式で「登録を受けようとしない部分」を表すことができ、そして意匠の説明欄に記載しなければならない(専利審査基準第3篇第1章3.2.5)。
(7) 意匠登録を受けようとする物品が平面的なもの(例えばハンカチ)である場合、その特徴はその物品の平面的意匠にあるため、意匠登録出願をする際に、正面図と背面図のみで表すことができる(図3-1)。意匠の特徴が一面のみに存在する場合、正面図または平面図のみで表すことができる。意匠が連続する平面(例えば生地)である場合、その平面的な意匠のユニット図(図3-2)を含まなければならない(専利法施行細則第53条第1項後段、専利審査基準第3篇第1章3.1.1)。

(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)

(専利審査基準第3篇「設計専利実体審査」第1章「明細書及び図面」から抜粋)
2. 立体図の製図方法
(1) 立体図は、三次元の立体的な物品を平面上に表す図面であり、意匠登録を受けようとする物品を表現するための基本的な図面の一つである。よく見られる立体図の製図方法には、軸測投影図法、斜投影図法、および透視投影図法がある(設計専利の明細書および図面の作成の手引3.1.2)。
(2) 軸測投影図法の製図原理につき、図4-1(a)のように、物体を前投影面と平行な元の位置から、図4-1(b)のように平面投影面と直交する軸に沿って角度αで回転させてから、図4-1(c)のように側投影面と直交する軸に沿って角度βで回転させると、前投影の方向から物体の三つの主要な平面が見える図4-1(d)の軸測投影図となる。

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、8頁から抜粋)
(3) 異なる回転角により、例えば図4-2の等角投影、二等角投影、不等角投影などの異なる軸測投影図法の製図方法を利用することができる。出願人は、その出願しようとする意匠の特徴に応じて、最適な投影法を選ぶことができる(図4-3)。

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、8頁から抜粋)

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、9頁から抜粋)
(4) 斜投影図法で図面を作成する場合は、主要な平面を選択してそれを投影面と平行にし、平行投影軸と投影面が90度にならないようにすれば、斜視図を得られる。一般的に、斜視図は、図5のように等斜図と半斜図に分けられる。斜投影図法で立体図を作成する際、ゆがみが生じやすくなるため、正方形柱または円柱等、斜投影法に適するシンプルな幾何形体でない場合は、軸測投影法か透視投影法を採用するのが好ましい。

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、9頁から抜粋)
(5) 図6のように、透視投影を採用する場合、観察者と物体の間に投影面を設け、観察者の物体の各点に対する視線と投影面が交わって構成された図形が透視図と呼ばれる。

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、10頁から抜粋)
(6) 透視投影で得た図面は、比較的、視覚でとらえる真実のイメージに近いものの(例えば、図7のバス)、物品の外観について図面を見る者に誤解を生じさせないために(例えば、図8のミニ折り畳み自転車)、図面を作成する際には、実際のサイズに適う透視投影の方法を選択する必要がある。

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、10頁から抜粋)

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、10頁から抜粋)
3. 留意事項
(1) 写真またはコンピューター・グラフィックスに関する注意事項
意匠登録出願の図面を作成する場合、図9のコンピューター・グラフィックス(CG)や、図10の写真で表すこともできる。コンピューター・グラフィックスで表す場合、図面がぼやけたり解像度が悪くて縁に鋸歯状のギザギザが発生したりすることを避け、画像の背景を単色にするべきである。写真で表す場合は、正投影のような撮影の角度を維持すべきであり、写真の背景を単色にして、撮影時の照度を意匠の各細部が明らかに識別できるように調整すべきである。カラー写真またはコンピューター・グラフィックスで「登録を受けようとしない部分」を表す場合、半透明の色で表現すべきである(図9の右図)。

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、24頁から抜粋)

(設計専利の明細書及び図面の作成の手引、24頁から抜粋)
(2) 図面の重要性
登録意匠の侵害鑑定を行う場合において、意匠の権利範囲を解釈するときには、図面を基準とし、明細書の内容を斟酌することができるとされている。このため、意匠の図面は、権利範囲を解釈する際の主要な基礎であり、各図面(立体図、六面図、平面図、ユニット図、その他の補助図を含む)により表されている具体的な意匠に、明細書の記載を斟酌してその範囲を定義することができる。
(3) 立体図の重要性
意匠登録を受けようとする物品の図面につき、各図の名称を表記し、立体図または最も意匠を表すことができる図面を代表図として指定すべきであるとする専利法施行細則第54条第1項の規定から、立体図の重要性がわかる。
台湾における商標制度のまとめ-実体編
1. 商標制度の特徴
(1) 先取り出願の登録不可事由
先取り商標に該当することを理由とする拒絶として、他人の商標であることを知りながら意図して模倣し登録出願する場合は登録不可となる(2011年改正)。
(2) 国際条約
パリ条約、マドリッド協定には加盟していないので、台湾に直接商標出願する必要がある。WTOには加盟しているので、日本出願を基礎とした優先権主張は可能。
(3) 使用証拠
2002年のWTO加盟に伴い、商標の更新手続きの際の使用状況に関する審査が廃止され、使用証拠の提出は不要となった。
関連記事:「台湾における商標法の保護客体―非伝統的商標」(2019.04.18)
URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/16907/
関連記事:「台湾における商標法の紹介」(2014.03.28)
URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/5763/
2. 登録できる商標
商標とは、何らかの識別性を有する標識であり、文字、図形、記号、色彩、立体、形状、動態、ホログラム、音声等、またはその組合せにより構成されるものである。前項でいう識別性とは、商品または役務の関連消費者に、指示する商品または役務の供給元を認識させ、他人の商品または役務と区別できるものである(商標法第18条)。
関連記事:「台湾における商標法の保護客体―非伝統的商標」(2019.04.18)
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関連記事:「台湾における商標出願制度の概要」(2012.07.31)
URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/315/
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3. 商標を登録するための要件
(積極的登録要件)
・識別性を有するものであること(商標法第29条)
(消極的登録要件)
・先願登録商標、他人の周知商標との同一・類似、品質誤認の有無、公序良俗違反の有無、著名となっている他人の氏名・名称等を含む商標など、登録を受けることができない商標に該当しないこと(商標法第30条)。
関連記事:「台湾における商標出願制度の概要」(2012.07.31)
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4. 商標権の存続期間
存続期間は10年間である(商標法第33条)。毎回さらに10年間の更新登録ができ、更新回数に制限はない。
関連記事:「台湾における商標出願制度の概要」(2012.07.31)
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台湾における商標法の保護客体-非伝統的商標
【詳細】
台湾の商標法第18条第1項では、識別性を有するすべての標識を保護客体とし、文字、図形、記号、色彩、立体形状、動き、ホログラム、音等からなる商標を保護対象として例示している。本稿では、非伝統的商標の出願書類の構成や非伝統的商標のタイプ別の出願記載事項の例を中心に説明する。
(1) 出願書類の構成
(i) 願書(中国語「申請書」)
願書に、出願人、商標の図、指定使用商品又は役務を明記する点は伝統的商標と同じである(商標法第19条第1項)。出願商標の特定について、伝統的商標は商標の図のみで足りることが多いが、非伝統的商標は商標の図に加え、商標の説明及び商標の見本を用意する場合が増えるだろう(商標法施行細則第13条第2項-第4項、非伝統商標審査基準2.1、2.1.2、8、9、10)。
(ii) 商標の図(中国語「商標圖樣」)
商標の特定は商標の図で行うのが基本であり、平面的な静止画像によって表現する。音の商標であれば、五線譜により商標を構成する音を商標の図に示す。商標の図の例を以下に示す。商標を構成しない商品の部分は点線で示されている。図1は位置商標、図2は色彩商標の例である。なお、商標の図の補正は、実質的な変更に当たらない場合を除き、することができない(商標法第23条)。
位置商標、色彩商標の例
(iii) 商標の説明(中国語「商標描述」)
出願商標を特定するために、図で表した商標を文章で説明する。上記図1は、「本件は位置商標であり、靴のかかとの中央部分から靴底まで伸びる赤色のテープ状の構成によって標示されている。点線部分は靴の形状を示しているもので、商標の一部ではない。」と説明できる。上記図2であれば、「本件は色彩商標であり、赤、黄色、赤がそれぞれ面積の三分の一を占める色の組み合わせを以って、商品容器の表面の上部から下部に分布しているものである。点線部分の容器形状は商標の一部ではない。」と説明できる。
(iv) 商標の見本(中国語「商標樣本」)
商標の見本としては、商標の実物又は商標を記録した電子メディアがある。商標の説明と同様に、審査官による出願商標の理解を容易にするためのものである。どのタイプの非伝統的商標を出願する際に、商標の見本が必要になるかは、現地代理人に確認する必要がある。
(2) 非伝統的商標のタイプ別記載例
(i) 色彩商標(中国語「顏色商標」)
色彩商標を商標の図で表す場合、下記図3が示すように、商標の色彩を施す部分を着色し、それ以外の部分を点線で表現する。加えて、商標の説明も用意する。図3の商標であれば、「本件は色彩商標であり、商標の図に紫で示されている部分は、ナットの非金属のOリングに使用される部分である。点線部分は商標の形状を示しているもので、商標の一部ではない。」と説明できる(商標法施行細則第14条、非伝統商標審査基準4.2.2)。
色彩商標、立体商標の例
(ii) 立体商標(中国語「立體商標」)
立体商標を図で表す場合、上記図4が示すように、商標の正面、背面、左側面右側面、左側面、底面、平面の六面が特定できるように表示する。当該図面は6図以内に限られる。商標出願後、審査官が必要と考える場合、他の角度の図面を提出するよう通知することができ、出願人も自ら図面の補充提出をすることができる(商標法施行規則第15条、非伝統商標審査基準3.2.1)。
上記図4の商標は、「本件の立体商標は、願書に添付した立体図によって示すとおり、立っている形態で、暖色の台湾レッド(PANTONE-RUBINE RED)を基調とし、頭部に白字で英語「mit」と書かれたスウエットを被り、胸部に“台湾”の図が入った銀灰色の服装をした笑顔のキャラクターによって構成されるものである。」と説明できる(商標法施行細則第15条、登録第1443198号商標資料検索データベース)。上記図4の立体商標は色彩や文字も商標の構成要素であるため、商標の説明では、立体形状に加え、その他の構成要素についても説明しなければならない。
(iii) 動きの商標(中国語「動態商標」)
動きの商標を商標の図で表す場合、下記図5のように、動きが変化する過程を静止画像で表示する。静止画像は6つ以内に限られる。商標の説明を用意して動く映像の連続する変化の過程を順番に説明すると共に、録画した電子メディアを添付する。下記図5の商標は、「本件は動きの商標であり、商標の図のとおり、2つの画像を含む、人差し指と中指でつくったチョキの形状が連続して開合する動きのものである」と説明できる(商標法施行細則第16条、非伝統商標審査基準6.2)。
動きの商標、ホログラム商標の例
(iv) ホログラム商標(中国語「全像圖商標」)
ホログラム商標の場合、商標の図はホログラムを表現する画像となり、画像数は4つ以内に限られる。視角の変化により画像が異なる場合は、商標の説明を用意し、その変化の状況を説明する。上記図6の商標の場合、「本件はホログラム商標であり、背景は黒地に青字で英語VIDEO FUTUREと記載されている。その上に白字でアルファベットのVFと標示された3つの球体が浮かんでおり、球体間には青色の波状の線によって相互に繋がっている」と説明できる(商標法施行細則第17条、非伝統商標審査基準7.2)。
(v) 音の商標(中国語「聲音商標」)
音の商標の場合、商標の図では当該音を表現する五線譜・数字譜で表示する。五線譜・数字譜で音を表現することができない場合、商標の図は当該音声の文字説明とする。所定の電子メディアを添付すると共に、商標の説明を用意する。下記図7については、「これは願書に添付されたディスク中の音による音の商標である。本件商標は、音符のミ、ラ、ソ、ファ、ミ、ド、レ、シ、ド等のリズムの組み合わせによって構成されており、歌詞は「新一点霊B12」である」と説明できる(商標法施行細則第18条、非伝統商標審査基準5.2、登録第1150436号商標資料検索データベース)。下記7図では、ド・レ・ミの音階を数字で表している。
音の商標、位置を示す商標の例
(vi)位 置を示す商標(中国語「位置商標」)
位置商標は、位置が識別するための重要な特徴となっている。その図、色又は立体形状が特定位置に使用されなければ、出所標示機能が喪失する可能性がある場合、位置商標の性質を有するといえる。上記図8は、靴のかかとの中央部分から靴底まで伸びる赤色のテープ状の標示であり、当該赤色のテープ状の標示が同特定位置から離れると、その識別性を喪失する。
位置商標を出願する場合、商標の図は、商標の商品又は役務に使用する位置を点線で示す。商標の説明では、商標本体及び使用方法、位置等について詳細に説明する。上記図8の場合、「本件商標は位置を示す商標であり、靴のかかとの中央部分から靴底まで伸びる赤色のテープ状の構成によって標示されている。なお、点線部分は靴の形状を示しているもので、商標の一部ではない。」という説明が考えられる(非伝統商標審査基準10)。
(vii) 地模様商標(中国語「連續圖案商標」)
地模様商標は、商品又はその包装用容器、役務の提供に係る物品、若しくは役務の提供が行われる場所に使用される、連続して反復する模様のことを指す。その模様は、単一の図形、又は図形、数字、アルファベット、文字など要素の組み合わせにより構成することができる。
下記図9について、「本件は地模様商標(連續圖案商標)であり、願書における図案のように、一連のひしがたにより構成され、その真ん中の部分は緑、赤、緑の細い縞に隔てられる。この商標は商品の全部又は一部に延伸して使用され、一定の方位や位置に限られない」と説明できる(非伝統商標審査基準8.2.1)。
地模様商標の例
出願時に地模様商標を表現する場合、その模様を構成する図案、又は当該図案の連続して反復した状態で表現することができるほか、地模様商標が使用される商品等の箇所を実線で表現することができる。例えば、靴に使用される地模様商標の場合、点線で靴の形を表現した上で、地模様が使用される箇所を表現することが可能である。しかし、その点線は商標の一部ではない(非伝統商標審査基準8)。
(viii) 匂いの商標(中国語「氣味商標」)
匂いの商標は、消費者に商品又は役務の出所を認識させる機能を持つ特定の匂いを商標とするものである。匂い商標には視覚で感知できる図がないので、当該の匂いの説明を匂い商標の図としなければならない。上記説明は、明瞭、明確、且つ客観的な方式で表現されていなければならず、普通の知識、経験を持つ消費者が容易に理解できるようにしなければならない。なお、商標を描写する際に、「この商標は匂いの商標である」と明示するほか、その描写の内容が、関連消費者に直接その記憶にある匂いを連想させ、その匂いが人に与える感じがどのようなものか、明確に認識・理解させるようにしなければならない(非伝統商標審査基準9.2.1)。
また、下記の二つの方法で匂いの商標を説明することができる(非伝統商標審査基準9.2.1)。
1.自然界に存在する匂いで描写する(例えば、みかんの香り、ラベンダーの香り、ミントの香り等)。
2.市場で使用される特定の名称又は呼び方で描写する。
上記の1.で匂いの商標を描写できない場合、もし既に市場に存在しており、且つ消費者がよく知っている特定の名称又は呼び方がその匂いと結びつくことができ、多数の消費者が共通した印象、経験を持っていれば、出願人は、当該特定の名称又は呼び方で匂いの商標を描写することができる。しかし、出願人は、その特定の名称又は呼び方が既にその匂いに密接に結びついていることを証拠で証明しなければならない。
(ix)連合式非伝統的商標(中国語「聯合式非傳統商標」)
連合式非伝統的商標は、文字、図、色、立体形状、動き、ホログラム又は音等の各構成要素の組合せからなるものである。例えば、下記の図10の商標に対する描写は、「当商標は音と動きの連合式商標である。その音は、約2秒続く鋭い爆発声であり、音に伴う動画は星一つである。商標の図案は4つのイメージを含み、第1から第4のイメージが表示されるにつれて、その星はしだいに大きくなったあと、しだいに小さくなる」というものである(非伝統商標審査基準11)。
動きと音からなる商標の例
(3) 機能性(中国語「功能性」)
非伝統的商標の拒絶理由の特徴として、機能性がある。商品の形状、包装、音、色又は匂い等からなる特徴が、同業の競合者の使用上又は技術上不可欠なもの、商品又は役務のコスト又は品質に影響を及ぼすものである場合、独占権の設定は社会的に好ましくないため、機能性を有しているとして登録されない。建築物の断熱板商品に銀色の色指定をする場合、一般的に危険又は警告を表す赤色又はオレンジからなる色彩商標を、交通警示器具商品等を指定商品とする場合が考えられる(非伝統商標審査基準4.2.4)。
(4) 識別性
非伝統的商標にも識別性が要求されるが、その構成要素となる色彩、音、動き及びホログラムなどは、商品の装飾、包装、機能、偽造防止のラベル又は販売促進手段として利用されることが多く、識別標識と認識されないため、識別性が否定されやすい。識別性が弱いと思う場合は、使用による識別性獲得を主張することを想定し、使用期間の長短、商品又は役務への使用量、販売状況、広告による支出額、消費者調査報告書等の資料を用意する(商標法第18条第2項、第29条第2項、商標法施行細則第29条)。
【留意事項】
⾮伝統的商標を出願する場合は、審査官の理解を助ける目的から、商標の図に加え、商標の説明や商標を記録した記録メディア等を出願時に提出するかどうかを現地代理⼈と事前に検討を⾏うべきである。
台湾における商標制度のまとめ-実体編
1. 商標制度の特徴
(1) 先取り出願の登録不可事由
先取り商標に該当することを理由とする拒絶として、他人の商標であることを知りながら意図して模倣し登録出願する場合は登録不可となる(2011年改正)。
(2) 国際条約
パリ条約、マドリッド協定には加盟していないので、台湾に直接商標出願する必要がある。WTOには加盟しているので、日本出願を基礎とした優先権主張は可能。
(3) 使用証拠
2002年のWTO加盟に伴い、商標の更新手続きの際の使用状況に関する審査が廃止され、使用証拠の提出は不要となった。
関連記事:「台湾における商標法の保護客体―非伝統的商標」(2012.12.25)
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URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/5763/
2. 登録できる商標
商標とは、何らかの識別性を有する標識であり、文字、図形、記号、色彩、立体、形状、動態、ホログラム、音声等、またはその組合せにより構成されるものである。前項でいう識別性とは、商品または役務の関連消費者に、指示する商品または役務の供給元を認識させ、他人の商品または役務と区別できるものである(商標法第18条)。
関連記事:「台湾における商標法の保護客体―非伝統的商標」(2012.12.25)
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3. 商標を登録するための要件
(積極的登録要件)
・識別性を有するものであること(商標法第29条)
(消極的登録要件)
・先願登録商標、他人の周知商標との同一・類似、品質誤認の有無、公序良俗違反の有無、著名となっている他人の氏名・名称等を含む商標など、登録を受けることができない商標に該当しないこと(商標法第30条)。
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4. 商標権の存続期間
存続期間は10年間である(商標法第33条)。
毎回さらに10年間の更新登録ができる。更新回数に制限はない。
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台湾において登録出願できる商標と登録要件
「台湾模倣対策マニュアル(台湾における商標保護の戦略)」(2018年3月、日本台湾交流協会)第三章
(目次)
第三章 台湾における商標の登録要件 P.18
第一節 どのような商標が登録出願できるか P.18
第二節 登録出願するための要件や条件 P.28