日本と台湾における特許審査請求期限の比較
1.日本における審査請求期限
日本においては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ(特許法第48条の3第1項)、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げたものとみなされた場合であっても、当該期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内で、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法第48条の3第5項)。
出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨)。
PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。この場合の審査請求期限は、国際出願日から3年である。
また、特許出願の分割に係る新たな特許出願、意匠登録出願または実用新案登録出願の変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願については、原出願から3年の期間経過後であっても、分割または変更による特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる(特許法第48条の3第2項)。
なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。
条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第184条の17
日本国特許法 第48条の2 特許出願の審査 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。 |
日本国特許法 第48条の3 出願審査の請求 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。 2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。 3 出願審査の請求は、取り下げることができない。 4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。 5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。 (第6から第8項省略) |
日本国特許法 第184条の17 出願審査の請求の時期の制限 国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあっては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあっては第百八十四条の四第一項または第四項および第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。 |
2.台湾における審査請求期限
台湾においては、特許出願の実体審査を受けるためには審査請求を行う必要がある。審査請求は台湾出願日から3年以内に行うことができ(専利法第38条第1項)、審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(専利法第38条第4項)。審査請求は出願人に限らず、誰でも行うことができる(専利法第38条第1項)。
なお、台湾はPCT未加入であるので、PCTルートは存在しない。
また、分割出願(専利法第34条)をした場合または実用新案から特許への出願変更(専利法第108条)をした場合、上記の期間が過ぎた後であっても、その分割出願をした日または出願変更をした日から30日以内に審査請求をすることができる(専利法第38条第2項)。
※専利法:日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。以下「専利法」。
条文等根拠:専利法第38条第1項
台湾専利法 第38条 何人も、発明特許出願日から3年以内に、特許主務官庁に対し、その発明特許出願について実体審査の請求をすることができる。 第34条第1項の規定による分割出願、又は第108条第1項の規定による発明特許への出願変更は、前項の期間を過ぎた場合、分割出願又は出願変更を行った日から30日以内に、特許主務官庁に実体審査の請求をすることができる。 前2項の規定により行った審査の請求は取り下げることができない。 第1項又は第2項に規定される期間内に実体審査を請求しなかった場合、当該発明特許出願は取り下げられたものとみなす。 |
日本の基礎出願に基づいて優先権を主張し台湾に出願した場合には、以下のようになる。
日本と台湾における特許審査請求期限の比較
日本 | 台湾 | |
審査請求期間 | 3年 | 3年 |
起算日 | 日本の出願日 | 台湾の出願日 |
日本と台湾の特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日。
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月。
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1.(2)ア,2.(2)ア
日本国特許法第50条 拒絶理由の通知 審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。 |
日本国特許法第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。 一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。 二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。 三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。 四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。 |
方式審査便覧04.10 法定期間及び指定期間の取扱い 1.手続をする者が在外者でない場合 (2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。 ア.意見書(特50条、商15条の2、15条の3第1項、商附則7条) 2.手続をする者が在外者である場合 (2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)及び(12)を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。 ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。) |
(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能。
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能。
(*特許庁「出願の手続」第二章 第十八節 IV指定期間の延長、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_18.pdf)
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(16)ア,2.(12)ア、イ
日本国特許法第5条 期間の延長等 特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。 2審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。 |
方式審査便覧04.10 1.(16)ア、2.(12) 1.手続をする者が在外者でない場合 (16)次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。 ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。 2.手続をする者が在外者である場合 (12)特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。 ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができる。 イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。 ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。 また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。 |
2.台湾の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は2か月
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:台湾専利法(日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。)第43条第3項、第4項、第46条
台湾専利法第43条 (3)特許主務官庁が第46条第2項の規定に従い通知した後、出願人は通知された期間内にのみ補正を行うことができる。 (4)特許主務官庁は、前項の規定により通知した後、必要があると認めたとき、最終の通知書を送付することができる。最終の通知書を送付された場合、特許請求の範囲の補正につき、出願人は通知された期間内にのみ、次の各号について補正を行うことができる。 1.請求項の削除 2.特許請求の範囲の減縮 3.誤記の訂正 4.明瞭でない事項の釈明 |
台湾専利法第46条 (1)特許出願が第21条から第24条、第26条、第31条、第32条第1項、第3項、第33条、第34条第4項、第6項前段、第43条第2項、第44条第2項、第3項、または第108条第3項の規定に違反する場合は、特許を付与しない旨の査定を下さなければならない。 (2)特許主務官庁が前項の査定を下す前には、期限を指定して、出願人に意見書を提出するよう通知しなければならない。当該期限が過ぎても意見書を提出しなかったものは、直接に特許を付与しない旨の査定を下すものとする。 |
(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月
条文等根拠:専利法施行細則(日本における施行規則に相当。)第6条
台湾専利法施行細則規則第6条 本法及び本細則に基づいて指定された期間について、出願人は、指定期間満了前に、専利主務官庁に対して理由を説明して延期を申請することができる。 |
日本と台湾における特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | 台湾 | |
応答期間 | 60日(在外者でない場合) 3か月(在外者の場合) |
2か月(在外者でない場合) 3か月(在外者の場合) |
応答期間の延長の可否 | 可 | 可 |
延長可能期間 | 最大2か月 (在外者でない場合) 最大3か月(在外者の場合) |
最大2か月 (在外者でない場合) 最大3か月(在外者の場合) |
日本と台湾における特許出願書類の比較
1.日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本国特許法 第36条(特許出願) 特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。 一 特許出願人の氏名又は名称および住所又は居所 二 発明者の氏名および住所又は居所 2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。 3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 一 発明の名称 二 図面の簡単な説明 三 発明の詳細な説明 4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。 二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。 5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。 6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。 二 特許を受けようとする発明が明確であること。 三 請求項ごとの記載が簡潔であること。 四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。 7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。 |
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語、その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日(優先権主張を伴う出願においては最先の優先日)から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本国特許法 第36条の2 特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。 2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第四十一条第一項、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第六十四条第一項において同じ。)から一年四月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。 3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。 4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。 5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。 6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。ただし、故意に、第四項に規定する期間内に前項に規定する翻訳文を提出しなかったと認められる場合は、この限りでない。 7 第四項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。 8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。 |
日本国特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語 特許法第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。 |
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類(優先権主張書)を所定の期間内に提出し、その基礎出願の謄本(優先権証明書)を最先の優先日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。優先権主張書の提出は、特許出願の願書に所定の事項を記載することで、省略することができる。
(*特許庁「出願の手続」 第二章第十一節「優先権主張に関する手続」、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_11-1.pdf)
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本国特許法 第43条(パリ条約による優先権主張の手続) パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。 2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日 二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日 三 その特許出願が前項、次条第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日 3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。 4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。 5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。 6 特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかったときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。 7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。 8 第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。 9 第七項又は前項の規定により第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面の提出があったときは、第四項の規定は、適用しない。 |
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
2.台湾における特許出願の出願書類
(1)出願書類
専利法および専利法施行細則にて規定された以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・要約
・必要な図面
・委任状(出願日から4か月以内(2か月延長可能))
条文等根拠:専利法第25条、専利法第11条、専利法施行細則規則第9条、専利審査基準第16章
台湾専利法 第25条 特許出願は、特許出願権者が願書、明細書、特許請求の範囲、要約および必要な図面を備えて、専利主務官庁にこれを提出する。 特許出願は、願書、明細書、特許請求の範囲および必要な図面が全て揃った日を出願日とする。 出願時に、明細書、特許請求の範囲および必要な図面の中国語による翻訳文を提出せず、外国語で提出し、かつ専利主務官庁が指定する期間内に中国語による翻訳文が補正された場合、当該外国語書面が提出された日を出願日とする。 前項に言う指定期間を過ぎて中国語による翻訳文を提出しなかった場合、出願を受理しないものとする。ただし、処分前に提出した場合、翻訳文を提出した日を出願日とし、当該外国語書面は提出されなかったと見なす。 |
(委任状)
台湾内に住所又は営業所がない者は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行わなければならない。
台湾専利法 第11条 出願人は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行うことができる。 台湾内に住所又は営業所がない者は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行わなければならない。 代理人は、法令に別段の規定がある場合を除き、弁理士でなければならない。 弁理士の資格および管理は別途法律で定める。 |
台湾専利法施行細則 第9条 出願人が代理人に委任する場合は、委任状を添付し、代理権限及び送達先を明記しなければならない。 専利の出願およびその他の手続きについて代理人に手続きを委任した場合、その代理人は3名を超えてはならない。 代理人が2名以上の場合は、いずれも単独で出願人の代理を行うことができる。 前項の規定に違反して委任を行った場合、その代理人は依然として単独で代理を行うことができる。 出願人が代理人の権限又は代理人を変更する場合、又は代理人を交代させる場合は、書面によって専利主務官庁への通知しなければ、専利主務官庁に対する効力は生じないものとする。 代理人の送達先を変更する場合は、専利主務官庁に対して変更の申請を行わなければならない。 |
台湾専利審査基準第16章 2.期間の延長 専利法は当事者がある種の特定行為をすべき一定期間を規定し、性質上は法定期間であり、例えば優先権証明書類の補正期間のように、当事者の申請により延長してはならない。ただし、専利法に別途規定がある場合は、その規定に従う。例えば、専利権者が無効審判請求書のコピーの送達後1か月以内に答弁できなかった場合、理由を説明して延長を申請することができる。専利出願において補正が必要な事項がある場合、その指定された補正期間および期間の延長は、以下の原則により処理し、全ての補正期間は6か月を超えないことを原則とする: (1)特許、意匠出願又は再審査請求は、4か月以内の期限を設けて補正することを先に出願人に通知しなければならず、出願人が指定期間内に補正できなかった場合、指定期間が満了する前に、理由を記載して延長を申請することができ、原則上2か月の延長期間を許可する。 |
(2)手続言語
中国語(繁体字)
条文等根拠:専利法25条(上記)、専利法施行細則第3条
台湾専利法施行細規 第3条 技術用語の中国語翻訳が国家教育研究院(National Academy for Educational Research)によって行われ、かつ、発表されている場合は、その公定訳を使用しなければならない。ただし、当該公定訳がないとき又は専利主務官庁が必要とみなすときは、専利主務官庁は申請人に対し、中国語で表示した用語に原語を付記するよう要求することができる。 申請書およびそれに関連する全ての書類は、中国語によるものでなければならない。証明書類が外国語で作成されている場合において、専利主務官庁が必要と考えるときは、専利主務官庁は申請人に対し、その全文又は抜粋の中国語翻訳文を提出するよう要求することができる。 |
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
可
ただし、出願から4か月以内(2か月延長可能)に中国語による翻訳文を補完。
条文等根拠:専利法第25条(上記)、専利審査基準第16章(上記)
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要がある。優先権証明書を最先優先日から16か月以内に提出しなければならない。優先権証明書の提出は、原本を提出するか、又は、日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換が利用可能である。
<参考URL>
(日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換)
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/pdx-tipo.html
条文等根拠:専利法第28条、第29条、専利法施行細則第26条
台湾専利法 第28条 出願人が、同一の発明について、台湾と相互に優先権を承認する外国又はWTO加盟国において最初に法律に則って特許出願し、かつ最初の特許出願日後の12か月以内に、台湾に特許出願をする場合、優先権を主張することができる。 出願人が1出願において2以上の優先権を主張する場合、前項期間の計算は最先の優先日を基準とする。 外国の出願人がWTO加盟国の国民ではなく、かつその所属する国と台湾とが相互に優先権を承認していない場合、WTO加盟国又は互恵関係にある国の領域内に住所又は営業所を有していれば、第1項の規定により優先権を主張することができる。 優先権を主張した場合、その特許要件の審査は優先日を基準とする。 |
台湾専利法 第29条 前条の規定により優先権を主張しようとする者は、特許出願と同時に、下記の内容を申し出なければならない。 1.最初の出願の出願日 2.該出願を受理した国又はWTO加盟国。 3.最初の出願の出願番号 出願人は、最先優先日から起算して16ヶ月以内に、前項の国又はWTO加盟国が受理を証明した特許出願書類を提出しなければならない。 第1項第1号、第2号又は前項の規定に違反する場合は、優先権を主張しなかったと見なす。 出願人が故意によらず特許出願と同時に優先権を主張しなかった場合、又は第1項第1号、第2号の規定に違反し主張しなかったと見なされた場合は、最先優先日から起算して16ヶ月以内に優先権主張の回復を請求することができ、かつ出願料の納付及び第1項に規定する行為を補足して行う。 |
台湾専利法施行細則 第26条 本法第29条第2項の規定に基づいて提出される優先権証明書類は、正本でなければならない。 出願人は本法第29条第2項が規定する期間内に提出した優先権証明書類が写しである場合、専利主務官庁は出願人へ期限を決めて当該写しと同一の書類の正本を追完するよう通知しなければならない。期限までに追完しない又は追完しても依然として完備していない場合、本法第29条第3項の規定により、優先権を主張しないと見なす。ただし、その正本がすでに専利主務官庁に提出された場合は、正本に明記された添付案件番号を記載した写しをもってこれの代わりとすることができる。第一項の優先権証明書類は、専利主務官庁及び当該国又は世界貿易機関の加盟国・地域の特許受理官庁によって電子交換が行われた場合には出願人が提出したものと見なされる。 |
日本と台湾における特許出願書類の比較
日本 | 台湾 | |
手続言語 | 日本語 | 中国語(繁体字) |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 | 可 出願日(優先権主張を伴う場合は最先の優先日)から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
可 出願から4か月以内(2か月延長可)に中国語による翻訳文を補完する。 |
優先権主張 手続 |
優先権主張を出願と同時に行う(又は優先権主張書を所定の期間内に提出する)。優先権証明書を最先の優先日から1年4か月以内に特許庁長官に提出する。 | 優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を最先優先日から16か月以内に提出。優先権証明書の提出は、原本の提出か、日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換を利用可能。 |
台湾における修理部品・消耗品に関する知財保護戦略
「台湾における修理部品・消耗品に関する知財保護戦略」(2020年3月、日本台湾交流協会)
【壱-弐三】【弐-四(一)】【弐-四(二)】【弐-四(三)-五(一)】【弐-五(二)-五(四)】【弐-五(五)】【弐-五(六)1_2(1)】【弐-五(六)2(2)-五(八)】【参】【肆-一-三】【肆-四-五】
注)圧縮版のため画像が粗くなっています。精細な画像を確認したい方は、下記【ソース】のリンクをご利用ください。
(目次)
壱、背景 p.3
弐、知的財産保護の具体的手段、判例、事件
(修理品・消耗品に関連する法令や日本法と台湾法の比較および半導体、自動車、民生品、医療機器業界の判例を紹介している。また、4つの業界において消耗品および修理部品の保護に関連する法的な手段やマーケティング戦略等を分析・検討し、その特徴および可能な保護手段を紹介している。)
一、台湾で関係する法律や規則 p.5
二、契約による保護 p.20
三、日本法と台湾法との相違 p.21
四、台湾の裁判例 p.26
五、実務上の対応策 p.101
参、権利侵害への救済手段
(権利者が実際に権利侵害を受けた際に採れる法的な手段および注意事項について説明している。)
一、提訴する前の準備 p.168
二、救済の手段 p.176
三、主張できる権利及び損害賠償の計算方法 p.178
肆、業界別の修理部品、消耗品に係る課題と対応
(4つの業界現状を分析し、関連する法律で修理部品・消耗品を保護する場合の課題および対応手段や戦略を紹介している。)
一、半導体業界 p.185
二、自動車業界 p.189
三、民生品業界 p.197
四、医療機器業界 p.203
伍、まとめ p.210
添付資料 日系企業関連訴訟リスト p.212
日本と台湾における特許出願書類の比較
日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項に特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語、その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)または第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第四十一条第一項、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)または第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第六十四条第一項において同じ。)から一年四月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第四項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
7 第四項または前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項、次条第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)または第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
6 特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類または前項に規定する書面の提出がなかったときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類または第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。
8 第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類または第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類または書面を特許庁長官に提出することができる。
9 第七項または前項の規定により第二項に規定する書類または第五項に規定する書面の提出があったときは、第四項の規定は、適用しない。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
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台湾における特許出願の出願書類
(1)出願書類
専利法および専利法施行細則にて規定された以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・要約
・必要な図面
・委任状(出願日から4か月以内(2か月延長可能))
条文等根拠:専利法第25条、専利法第11条、専利法施行細則規則第9条、専利審査基準第16章(https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/cp-682-870070-5036b-101.html)
日本語訳(https://chizai.tw/legal/)
台湾専利法 第25条
特許出願は、特許出願権者が願書、明細書、特許請求の範囲、要約および必要な図面を備えて、専利主務官庁にこれを提出する。
特許出願は、願書、明細書、特許請求の範囲および必要な図面が全て揃った日を出願日とする。
出願時に、明細書、特許請求の範囲および必要な図面の中国語による翻訳文を提出せず、外国語で提出し、かつ専利主務官庁が指定する期間内に中国語による翻訳文が補正された場合、当該外国語書面が提出された日を出願日とする。
前項に言う指定期間を過ぎて中国語による翻訳文を提出しなかった場合、出願を受理しないものとする。ただし、処分前に提出した場合、翻訳文を提出した日を出願日とし、当該外国語書面は提出されなかったと見なす。
(委任状)
台湾内に住所または営業所がない者は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行わなければならない。
台湾専利法 第11条
出願人は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行うことができる。
台湾内に住所または営業所がない者は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行わなければならない。
代理人は、法令に別段の規定がある場合を除き、弁理士でなければならない。
弁理士の資格および管理は別途法律で定める。
台湾専利法施行細則 第9条
出願人が代理人に委任する場合は、委任状を添付し、代理権限及び送達先を明記しなければならない。
専利の出願およびその他の手続きについて代理人に手続きを委任した場合、その代理人は3名を超えてはならない。
代理人が2名以上の場合は、いずれも単独で出願人の代理を行うことができる。
前項の規定に違反して委任を行った場合、その代理人は依然として単独で代理を行うことができる。
出願人が代理人の権限または代理人を変更する場合、または代理人を交代させる場合は、書面によって専利主務官庁への通知しなければ、専利主務官庁に対する効力は生じないものとする。
代理人の送達先を変更する場合は、専利主務官庁に対して変更の申請を行わなければならない。
台湾専利審査基準第16章 2.期間の延長
専利法は当事者がある種の特定行為をすべき一定期間を規定し、性質上は法定期間であり、例えば優先権証明書類の補正期間のように、当事者の申請により延長してはならない。ただし、専利法に別途規定がある場合は、その規定に従う。例えば、専利権者が無効審判請求書のコピーの送達後1か月以内に答弁できなかった場合、理由を説明して延長を申請することができる。専利出願において補正が必要な事項がある場合、その指定された補正期間および期間の延長は、以下の原則により処理し、全ての補正期間は6か月を超えないことを原則とする:
(1)特許、意匠出願又は再審査請求は、4か月以内の期限を設けて補正することを先に出願人に通知しなければならず、出願人が指定期間内に補正できなかった場合、指定期間が満了する前に、理由を記載して延長を申請することができ、原則上2か月の延長期間を許可する。
(2)手続言語
中国語(繁体字)
条文等根拠:専利法25条(上記)、専利法施行細則第3条
台湾専利法施行細規 第3条
科学用語の中国語翻訳が国家教育研究院(National Academy for Educational Research)によって行われ、かつ、発表されている場合は、その公定訳を使用しなければならない。ただし、当該公定訳がないときまたは専利主務官庁が必要とみなすときは、専利主務官庁は申請人に対し、中国語で表示した用語に原語を付記するよう要求することができる。
申請書およびそれに関連する全ての書類は、中国語によるものでなければならない。証拠書類が外国語で作成されている場合において、専利主務官庁が必要と考えるときは、専利主務官庁は申請人に対し、その全文または抜粋の中国語翻訳文を提出するよう要求することができる。
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
可
ただし、出願から4か月以内(2か月延長可能)に中国語による翻訳文を補完。
条文等根拠:専利法第25条(上記)、専利審査基準第16章(上記)
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要がある。優先権証明書を最先優先日から16か月以内に提出しなければならない。優先権証明書の提出は、原本を提出するか、または、日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換が利用可能である。
<参考URL>
(日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換)
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/pdx-tipo.html
条文等根拠:専利法第28条、第29条、専利法施行細則第26条
台湾専利法 第28条
出願人が、同一の発明について、中華民国と相互に優先権を承認する外国またはWTO加盟国において最初に法律に則って特許出願し、かつ最初の特許出願日後の12か月以内に、台湾に特許出願をする場合、優先権を主張することができる。
出願人が1出願において2以上の優先権を主張する場合、前項期間の計算は最先の優先日を基準とする。
外国の出願人がWTO加盟国の国民ではなく、かつその所属する国と台湾とが相互に優先権を承認していない場合、WTO加盟国または互恵関係にある国の領域内に住所または営業所を有していれば、第1項の規定により優先権を主張することができる。
優先権を主張した場合、その特許要件の審査は優先日を基準とする。
台湾専利法 第29条
前条の規定により優先権を主張しようとする者は、特許出願と同時に、下記の内容を申し出なければならない。
1.最初の出願の出願日
2.該出願を受理した国またはWTO加盟国。
3.最初の出願の出願番号
出願人は、最先優先日から起算して16か月以内に、前項の国またはWTO加盟国が受理を証明した特許出願書類を提出しなければならない。
第1項第1号、第2号または前項の規定に違反する場合は、優先権を主張しなかったと見なす。
出願人が故意によらず特許出願と同時に優先権を主張しなかった場合、または前項規定により主張しなかったと見なされた場合は、最先優先日から起算して16か月以内に優先権主張の回復を請求することができ、かつ出願料金の納付および第1項および第2項に規定する行為を補足して行う。
台湾専利法施行細則 第26条
本法第29条第2項の規定に基づいて提出される優先権証明書類は、正本でなければならない。
出願人は本法第29条第2項が規定する期間内に提出した優先権証明書類が写しである場合、専利主務官庁は出願人へ期限を決めて当該写しと同一の書類の正本を追完するよう通知しなければならない。期限までに追完しないまたは追完しても依然として完備していない場合、本法第29条第3項の規定により、優先権を主張しないと見なす。ただし、その正本がすでに専利主務官庁に提出された場合は、正本に明記された添付案件番号を記載した写しをもってこれの代わりとすることができる。第一項の優先権証明書類は、専利主務官庁および当該国または世界貿易機関の加盟国・地域の特許受理官庁によって電子交換が行われた場合には出願人が提出したものと見なされる。
https://chizai.tw/wp-content/themes/chizai/uploads/20130227_1674161956_%E5%B0%88%E5%88%A9%E6%B3%95%E6%96%BD%E8%A1%8C%E7%B4%B0%E5%89%87%E3%80%80%E4%BB%AE%E8%A8%B3.pdf
日本と台湾における特許出願書類の比較
日本 | 台湾 | |
手続言語 | 日本語 | 中国語(繁体字) |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 | 可その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 | 可出願から4か月以内(2か月延長可)に中国語による翻訳文を補完する。 |
優先権主張手続 | 優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を経済産業省令で定める期間内に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 | 優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を最先優先日から16か月以内に提出。優先権証明書の提出は、原本の提出か、日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換を利用可能。 |