台湾における特許関連番号フォーマット
台湾における特許には出願番号、公開番号、登録番号等の各種番号が付与されるが、公開明細書・登録明細書(以下、合わせて「明細書」と略す。)および公報に記載される番号フォーマットと台湾経済部智慧財産局(台湾特許庁)が提供する専利(特許、実用新案、意匠)検索システムや欧州特許庁が提供するEspacenetの入力に用いられる番号フォーマットは異なっている。本稿では、台湾の特許番号体系および台湾経済部智慧財産局(台湾特許庁)が提供する専利(特許、意匠、実用新案)検索システムや欧州特許庁が提供する無料特許調査ツール「Espacenet」における番号フォーマットの入力例を紹介する。
1. 台湾における公報および明細書記載の特許関連番号
台湾における公報および明細書に記載される番号の一例を紹介する。
1-1. 出願番号フォーマット
台湾における出願番号フォーマットは、「年(台湾暦)2桁または3桁+出願種別数字1桁+連番数字5桁」となっている。台湾暦に1911を加えると西暦年となる。西暦2011年に台湾暦100年を迎えており、現在は「台湾暦3桁+出願種別数字1桁+連番数字5桁」となっている。
出願種別数字が示す出願区別は以下のとおりである。
1:特許
2:実用新案
3:意匠
1-2. 公開番号フォーマット
台湾における公開番号フォーマットも出願番号と同じく年を含むが、台湾暦ではなく西暦であり、「西暦4桁+連番数字5桁」となっている。
1-3. 公告番号フォーマット
台湾では2004年6月30日まで公告公報が発行されており、「連番数字6桁」(年は含まれていない)となっていた。
1-4. 登録番号フォーマット
登録番号フォーマットは、「出願種別コード1文字+連番数字6桁」となっている。
出願種別コードが示す出願区別は、以下のとおりである。
I:特許
M:実用新案
D:意匠
以下に、公報および明細書(公開特許公報および公開特許明細書:図1から図4、登録特許公報および登録特許明細書:図5から図8)における番号表記例を紹介する。
図1、図2の番号等の説明
[11]公開特許番号 200834010(緑線囲い)
[21]出願番号 096138312(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦96年(西暦2007年)10月12日(青線囲い)
図3、図4の番号等の説明
[11]公開特許番号 202222467(緑線囲い)
[21]出願番号 109143236(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦109年(西暦2020年)12月8日(青線囲い)
図5、図6の番号等の説明
[11]登録番号 I437190(オレンジ線囲い)
[45]公告日 台湾暦103年(西暦2014年)5月11日
[21]出願番号 096138312(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦96年(西暦2007年)10月12日(青線囲い)
[11]公開特許番号 200834010(緑線囲い)
[43]公開日 台湾暦97年(西暦2008年)8月16日
図7、図8の番号等の説明
[11]登録番号 I773003(オレンジ線囲い)
[45]公告日 台湾暦111年(西暦2022年)8月1日
[21]出願番号 109143236(赤線囲い)
[22]出願日 台湾暦109年(西暦2020年)12月8日(青線囲い)
[11]公開特許番号 202222467(緑線囲い)
[43]公開日 台湾暦111年(西暦2022年)6月16日
台湾暦100年以前の出願において、公開特許公報(中国語「發明公開公報」)および登録特許公報(中国語「専利公報」)では、出願番号は「台湾暦(0を加えた3桁固定)+出願種別数字1桁+連番数字5桁」で表示されるが(図1および図5)、公開特許明細書(中国語「發明専利説明書」)および登録特許明細書(發明専利説明書公告本)では、「台湾暦(桁合わせ無しの2桁)+出願種別数字1桁+連番数字5桁」で記載されている(図2および図6)。また、出願日の記載については、公開特許公報および登録特許公報では西暦が()で併記されるが(図1および図5)、公開特許明細書および登録特許明細書では台湾暦のみが表示されているので、注意が必要である(図2および図6)。
台湾暦100年以降の出願においては、公開特許公報と公開特許明細書、および登録特許公報と登録特許明細書において、出願番号および出願日の記載に相違はない(図3、図4および図7、図8)。
2. 台湾経済部智慧財産局(台湾特許庁)専利検索システム(英語版)での検索
台湾経済部智慧財産局が提供する専利検索システム(英語版)での検索手順を紹介する。
(1) 台湾経済部智慧財産局の英語版(https://www.tipo.gov.tw/en/mp-2.html)にアクセスし、画面を下にスクロールして、画面下部「Resources and Tools」の「Search」欄の「Patents」(赤線囲いの部分)を選択(図9)すると、「全球專利檢索系統(Global Patent Search System)」(https://gpss3.tipo.gov.tw/gpsskmc/gpssbekm?@@0.3689919477811945)に接続される(図10)。
(2) 本稿では、簡易検索方法を紹介する。その他の検索方法については、「台湾における専利(特許/実用新案/意匠)公報の調べ方―台湾特許庁(TIPO)ウェブサイト」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/26842/)を参照されたい。
検索する際、いずれかのタイミングで図11の利用者確認画面が表示される。「人間であることを確認します」(赤線囲いの部分)の欄の□をクリックすると検索を進めることができる。
簡易検索の例(図12)として、緑線で囲んである欄に登録番号「I437190」(番号の1文字目はアルファベットの「I(アイ)」)を入力し、「Search」(オレンジ線囲いの部分)をクリックすると、検索結果が表示される(図13)。なお、出願日が2010年(台湾暦99年)以前の出願番号を検索する際には台湾暦の前に“0”を補っても補わなくても検索可能である。
(3) 図13の検索結果の緑線で囲んである登録番号をクリックすると出願詳細情報が表示される(図14)。また、図13の右端(オレンジ囲いの部分)の「Gazette」をクリックすると登録特許公報(前掲図5)が、「Specifications」をクリックすると公告特許公報(前掲図6)がそれぞれ表示される。
(4) 公開特許の記録と登録特許の記録はリンクしており(各公報発行後)、図14の「Patent Number」の「Publication TW200834010A」(青線囲いの部分)をクリックすると図15が表示される。
図15の「Legal Status」(オレンジ線囲いの部分)をクリックすると図16が表示され、中国語の出願詳細情報を確認することができる。また、図16の「公開號」の「公告I437190」(赤枠囲いの部分)をクリックする中国語での登録特許の詳細情報を確認することができる。
(5) 図16の緑線で囲んである「E」をクリックすると、Espacenetのレコードに遷移し、出願詳細画面が表示される(図17)。台湾経済部智慧財産局の専利検索システムはEspacenetとリンクしているので、対応外国特許等を確認する際には便利である。
3. Espacenetでの検索
Espacenetの「Advanced Search(詳細検索)」(https://worldwide.espacenet.com/advancedSearch)で検索する際の入力例を紹介する。
(1) 出願番号の検索
図18のApplication number(出願番号)の項目に「国コード+西暦4桁(台湾暦+1911)+出願種別数字1桁+連番数字5桁」を入力する。先ほどの「I1437190」の出願番号は「096138312」(前掲図5)なので、国コード「TW」+上3桁(096)に1911を加算した「2007」+「138312」である「TW2007138312」を「Application number」欄に入力し「Search」をクリックすると検索結果が表示され、さらに検索結果(図19)の発明の名称「Light emitting diode lighting device」をクリックすると、図20が表示される。
なお、Espacenetでの出願番号および出願日は、「Application number」(緑線囲いの部分)の欄に示しているように西暦(台湾暦+1911)に変換されている(図20)。
(2) 公開特許番号および登録特許番号での検索
Publication number(公報番号)の項目に、公開特許番号の場合は「国コード+西暦(4桁)+連番数字5桁」番号(図21)を、登録特許番号の場合は「国コード+出願種別コード1文字+連番数字6桁」番号(図22)を入力すると、検索結果が表示される(図19)。
上記入力例における番号フォーマットの比較
種別 | 明細書 | 公報 | 台湾経済部智慧財産局DB | Espacenet |
---|---|---|---|---|
出願番号 | 96138312 | 096138312 | 096138312 | TW2007138312 または TW20070138312 |
公開番号 | 200834010 | 200834010 | 200834010 | TW200834010 |
登録番号 | I437190 | I437190 | I437190 | TWI437190 |
日本と台湾における特許分割出願に関する時期的要件の比較
1. 日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。
(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
(i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
(ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
(iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
(iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)
(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
(i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
(ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。
(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
(3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。
日本国特許法第44条(特許出願の分割) 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。 (第2項以下省略) |
2. 台湾における特許出願の分割出願の時期的要件
台湾では、原出願の再審査(*)の査定前、または原出願の登録査定書の送達日から3か月以内に分割出願することができる(台湾専利法第34条)。
(*):再審査とは、拒絶査定に不服がある場合に請求することができる制度である。再審査では、原審査に参与しなかった特許審査官が審査し査定書が作成される(台湾専利法第48条、第50条)。
台湾専利法 第34条 特許を出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、特許主務官庁の通知又は出願人の請求により、出願を分割することができる。 分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。 1. 原出願の再審査の査定前 2. 原出願の登録査定書、再審査の登録査定書の到達日から起算して3か月以内。 分割後の出願は、原出願の出願日を出願日とする。優先権がある場合は、優先権を主張することができる。 分割後の出願は、原出願の出願時の明細書、特許請求の範囲又は図面に開示された範囲を超えてはならない。 第2項第1号規定により分割を行った後の出願は、原出願で既に完了した手続から審査を続行しなければならない。 第2項第2号規定により行う分割は、原出願の明細書又は図面に開示された発明で、且つ登録査定となった請求項と同じ発明に属しないものから分割出願しなければならない。分割を行った後の出願は、原出願が査定される前の審査手続きを続行するものとする。 原出願の登録査定を経た明細書、特許請求の範囲又は図面は変動してはならず、登録査定時の特許請求の範囲及び図面をもってこれを公告するものとする。 |
日本と台湾における特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本 | 台湾 | |
---|---|---|
分割出願の時期的要件 | 1. 補正ができる時または期間 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く) (ii) 審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時 2. 特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く) (i) 前置審査における特許査定 (ii) 審決により、審査に付された場合における特許査定 3. 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内 | 1. 原出願の再審査の査定前 2. 原出願の登録査定書、再審査の登録査定書の到達日から起算して3か月以内 |
台湾における日本の地名等に関する商標出願・登録の調査
「台湾における日本の地名等に関する商標出願・登録の調査結果(2023年度)」(2023年5月、日本台湾交流協会 台北事務所)
(台湾における日本の都道府県および政令指定都市の名称、地域団体商標、地理的表示に係る登録産品名の商標出願もしくは登録状況を、検索方法とともに紹介している。)
目次
1. 調査期間 P.1
2. 調査方法 P.1
3. 調査結果 P.1
(1) 都道府県名 P.1
① 台湾企業・個人及び外国企業・個人により出願、登録されているもの
② 都道府県により出願、登録されているもの
③ 日本企業・個人等により出願、登録されているもの
(2) 政令指定都市名 P.2
① 台湾企業・個人及び外国企業・個人により出願、登録されているもの
② 政令指定都市により出願、登録されているもの
③ 日本企業・個人等により出願、登録されているもの
(3) 地域団体商標 P.2
① 台湾企業・個人及び外国企業・個人により出願されている商標数
② 日本企業・個人等により出願されている商標数
③ 権利者が関与している商標数
(4) 農林水産物等の地理的表示 P.3
① 台湾企業・個人及び外国企業・個人により出願されている商標数
② 日本企業・個人により出願されている商標数
③ 登録生産者団体が関与している商標数
(5) 酒類の地理的表示 P.3
① 台湾企業・個人及び外国企業・個人により出願されている商標数
② 日本企業・個人により出願されている商標数
③ 管理機関が関与している商標数
本調査における検索の方法及び調査報告の対象 P.4
1. 都道府県名・政令指定都市名について P.4
(1)検索方法
(2)調査対象
2. 地域団体商標及び農林水産物等の地理的表示、酒類の地理的表示について P.5
(1)検索方法
(2)調査対象
台湾においてOIモデル契約書ver2.0秘密保持契約書(新素材編、AI編)を活用するに際しての留意点
記事本文はこちらをご覧ください。
台湾における知的財産に関する特許庁の審判決定に対する行政不服審査手続の概要
出願に対する拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続の流れは、図1のとおりである。
図1:拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続の流れ
(1) 行政不服(中国語名「訴願」)の提起
(ⅰ) 訴願できる者
・出願手続で拒絶査定を受けた出願人
・無効審判で無効審決を受けた被請求人
・無効審判で棄却審決(権利維持審決)を受けた請求人
(ⅱ) 訴願の期間
・行政処分の送達後の翌日または公告期間満了の翌日から30日以内(訴願法第14条第1項)。
・拒絶査定や無効審決が送達された日の翌日から30日以内に、経済部経済法制司の訴願審議委員会*1に行政処分に不服がある旨を意思表示した場合も、30日以内に訴願書を補足することを条件に、法定期間内の訴願とみなされる(訴願法第57条)。
*1:2023年9月26日より、従来の台湾法規委員会および台湾経済部訴願審議委員会は、「台湾経済部経済法制司」に統合された(https://www.moea.gov.tw/Mns/populace/news/News.aspx?kind=1&menu_id=40&news_id=112374)。
(ⅲ) 訴願書
・訴願書には、訴願法第56条第1項に規定された事項(申立人・代理人に関する事項、原処分機関、請求の趣旨、事実及び理由、証拠等)を記載し、また原行政処分の写しおよび証拠(書類の場合は謄本または写し)を添付する。(訴願法第56条を参照)。
・訴願書不備の補正命令への応答期間は20日である(訴願法第62条)。
(ⅳ) 訴願への参加
訴願人と利害関係が一致する者は、訴願の受理機関の許可を得て、訴願人の利益のために当該訴願に参加できる。また、訴願決定が原処分の取消または変更により第三者の利益に影響を及ぼす場合は、訴願受理機関は訴願決定をする前に、当該第三者に対して、訴願手続に参加し、意見を述べるよう通知をしなければならない(訴願法第28条)。
(2) 訴願審議委員会による審議
各機関は、訴願を処理するために、訴願審議委員会を設置する。訴願審議委員会は法律家等の専門家で構成され、訴願を審議する(訴願法第52条第1項、第2項)。書面審査が原則である(訴願法第63条第1項)。
(3) 訴願決定
(ⅰ) 決定の手続
訴願決定には、訴願審議委員会の委員の過半数が出席し、出席した委員の過半数の同意が必要となる(訴願法第53条)。訴願決定は、原則として、訴願書の受領日の翌日から3か月以内に行われる(訴願法第85条)。
(ⅱ) 訴願決定の内容
訴願に理由がない場合は、棄却する決定、訴願に理由がある場合は、原処分を取り消して処分内容を変更する決定、または、処分を取り消して台湾特許庁に差し戻す決定(訴願法第81条第1項)がなされる。
(ⅲ) 訴願の取下げ
訴願の取下げは、訴願提出後決定書が送達されるまで可能。取り下げた場合、同一の不服申立ができないことに注意が必要である(訴願法第60条)。
(4) 留意事項
・拒絶査定や無効審判の審決に対して不服がある場合、まず訴願法に基づく不服申立手続を行わなければならず、訴願を経ずに、知的財産・商業裁判所に拒絶査定や無効審判の審決の取消を求めることはできない。
・条文上、訴願審議委員会の求めに応じ、意見陳述や口頭弁論(訴願第65条、第66条)、調査・現場検証・鑑定などを行うことができるとされているが(訴願法第67条-第74条)、運用としては書面審査のみであるため、それを想定して準備を行うことが望ましい。
・2023年に行政院で可決され、国会に提出された専利法改正案では、出願の拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続について、大幅な改正が含まれている。この改正案が成立し、施行された後は、本稿で紹介した訴願手続は、出願の拒絶査定または無効審判の審決への不服申立手続には、適用されなくなる見込みである。したがって、改正の動向に注意する必要がある。
台湾の知的財産関連機関・サイト
(1) 立法機関
(a)立法院 https://www.ly.gov.tw/Home/Index.aspx
立法院は、国家最高立法機関であり、国民が選出した立法委員で構成され、国民を代表して立法権を行使する。立法委員の任期は4年であり、連続就任することも可能である。立法院は、自主的に会期を設け、毎年2月から5月末および9月から12月末の法定集会期間以外に、必要に応じて法のもとで会期を延長することもできる。
(2) 行政機関
(a)経済部 https://www.moea.gov.tw/Mns/populace/home/Home.aspx
経済部は、行政院のもとで、国家経済の発展計画の設計、監督、指導等を担当する。現在、6司6処、その下に10の三級機関(経済部智慧財産局、産業発展署等の機関を含む)および1つの訓練機関、4つの事業機構および58の在外商務機関が設置されている。
(b)経済部智慧財産局(中国語(繁体字)「經濟部智慧財產局」) https://www.tipo.gov.tw/tw/mp-1.html
経済部智慧財産局は、新規の発明を奨励し、知的財産権の尊重、活用、保護を職責とし、専利(特許、意匠および実用新案を含む)審査、商標登録、営業秘密の保護、集積回路配置の登録、模倣の取締りを行っている。6組(専利審査一組、専利審査二組、専利紛争審査組、専利行政企画組、商標権組、著作権組)、6室(国際および法律事務室、秘書室、情報室、人事室、会計室、政府倫理室)と、経済部CD共同調査検査照合組で組織されている。また、新竹、台中、台南、高雄には、地方コンサルティングサービスセンターを設置している。
(c)経済部経済法制司 https://www.moea.gov.tw/Mns/colr/home/Home.aspx
2023年9月26日より、従来の法規委員会および経済部訴願審議委員会は、「経済部経済法制司」に統合された。経済部経済法制司は、経済法務の企画と調整等の事項等を担当するほか、経済部智慧財産局含め経済部所属機関の行政処分が違法あるいは不当であるとして提起された行政不服申立(中国語「訴願」)案件、各県(市)政府、直轄市政府、経済部所轄監督範囲に属する事項に関する行政処分が違法あるいは不当であるとして提起された行政不服申立案件等も処理する。ウェブサイト(https://pamsdmz.moea.gov.tw/pams-public/page/decision-doc-query)で、経済部智慧財産局の専利または商標に対する査定の行政不服の決定書を検索できる。
(d)経済部国際貿易署 https://www.trade.gov.tw/
経済部国際貿易署は、貿易政策、法規の研究、制定および執行、国際貿易組織活動への参加、貿易交渉、紛争処理および調整、自由貿易協定署名の推進等を行う。その他、貨物の輸出入、輸出入メーカーの管理と指導、対外貿易の促進、海外市場の開拓、在外商務機構との連絡と調整、貿易関連業務を行う法人、団体への指導等をその職務とする。
(e)経済部産業発展署 https://www.ida.gov.tw/ctlr?PRO=idx2015&lang=0
2023年9月26日より、経済部工業局から「経済部産業発展署」に組織名を変更した。経済部産業発展署は、全国の工業発展のための業務を担当し、産業の包括的なサービスを提供する。また、台湾工業の改良・転換や、企業の事業構造強化のための指導に努め、生産力および国際競争力の向上を目指す。
(上記URLはご利用のパソコンの設定状況により繋がりにくい場合があります。)
(f)関務署(中国語「財政部關務署」(財政部関務署)) https://web.customs.gov.tw/
関務署は、財政部に属する関税業務の執行機関であり、財政部大臣(中国語「部長」)の命令に従い、関税政策および法令の研究、制定を行う。また、関税の徴収、密輸取締り、保税、貿易統計、その他の機関から委託された税金の徴収、管理の代理執行等を行う。
(g)行政院 https://www.ey.gov.tw/
行政院は、国家最高行政機関であり、本院には院長、副院長が設置される(院長が事情により職務にあたることができない場合には、副院長が代理でその職務を務める)。内政部、外交部、国防部、財政部、経済部等の行政院直轄機関は、法案立法の改善や法制度の完備、健全な施策に努める。
(3) 司法機関
(a)知的財産・商業裁判所(中国語「智慧財產及商業法院」) https://ipc.judicial.gov.tw/tw/mp-091.html
刑事訴訟の遅滞を回避して紛争解決を促進し、また裁判官に知的財産案件の経験を積ませて専門家を育成すること等を目的として、2008年7月に知的財産裁判所が設立された。また、迅速で適切かつ専門的で重大な民事商業紛争の審理手続を確立するため、2021年7月に、商業法廷を設けることとし、「知的財産・商業裁判所」に名称変更された。それとともに、知的財産法廷が設置され、知的財産に関する民事訴訟、刑事訴訟および行政訴訟の審議実務について、その管轄において迅速かつ積極的に正確な審理を行い、統一的見解を出すことを目指している。
(b)最高裁判所(中国語「最高法院」) https://tps.judicial.gov.tw/tw/mp-011.html
最高裁判所は、民事・刑事訴訟の最終審機関であり、訴額が150万台湾元を超えない民事事件、および刑事訴訟法第376条に列記された刑事事件を除く民事・刑事事件を取扱い、知的財産・商業裁判所の第2審判決に不服がある場合の民事・刑事訴訟案件等も最高裁判所の管轄である。
(c)最高行政裁判所(中国語「最高行政法院」) https://tpa.judicial.gov.tw/tw/mp-021.html
最高行政裁判所は、行政訴訟の最終審機関であり、簡易訴訟事件を除いて、専利法(特許、実用新案、意匠)、商標法、著作権法、営業秘密法などの法令による知的財産に関わる行政事件を取扱い、知的財産・商業裁判所の第1審判決に不服がある場合の行政訴訟案件は最高行政裁判所の管轄である。
(d)司法院 https://www.judicial.gov.tw/tw/mp-1.html
司法院は、解釈権、審判権、懲罰権および司法行政権を司り、院長、副院長を含む15名の大法官から成る。憲法の解釈および法律命令の統一的解釈権、大統領(中国語「總統(総統)」)、副大統領の弾劾および政党違憲解散案件についての裁判権、民事・刑事・行政訴訟案件の裁判権等の権限を有する。司法院院長および副院長は司法行政権を行使し、所属する各機関を監督し、司法制度の健全化、司法業務の業績・裁判品質の向上等を目指す。
台湾の知的財産事件に関する判決書および決定書の検索は、司法院法学資料検索システムのウェブサイト(https://judgment.judicial.gov.tw/FJUD/default.aspx)からアクセス可能である(検索方法については、次のリンクの記事「台湾における判決の調べ方―台湾司法院ウェブサイト」を参照されたい。https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/19586/)。
(*注:上記記事は、本稿作成後、2023年11月2日付で更新されています。https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/37630/)
上記で紹介した司法機関および行政機関について、知的財産事件に関する訴訟もしくは行政救済のプロセスは、図1の通りである。
図1
(4) その他知的財産関係機関・サイト
(a) 台湾知的財産アカデミー(中国語「智慧財產培訓學院」) https://www.tipa.org.tw/tc/index.php
台湾知財アカデミーは、経済部智慧財産局指導のもとで2005年に「知的財産専門人員育成訓練計画」の執行を国立台湾大学に委託し設立された。台湾全国の育成訓練機関を通じて知的財産の専門人材を育成、訓練し、革新的な研究開発のために高水準の環境を整え、国家競争力の向上を目的とする。
(b) 台湾全国法規データベース(中国語「全國法規資料庫」) https://law.moj.gov.tw/index.aspx
台湾全国法規データベースは、法務部全国法規データベース作業グループにより運営されるサイトである。憲法、法律、命令、最高裁判所判決、その他関連情報を提供しており、利用者は、必要な条文資料を検索後、当該条文と関連する司法解釈、判決、関連法規、法規沿革など各項関連資料を参照することができる。また、すでに公布されているが、効力が発生していない法規に関する注釈も閲覧できる。
(c) 日本台湾交流協会 https://www.koryu.or.jp/
日本台湾交流協会は、台湾在留邦人旅行者の入域、滞在、子女教育等について各種の便宜をはかること、並びに、日台間において民間の貿易および経済、技術交流等が支障なく維持、遂行されるよう適切な措置を講ずることなどを目的として、日台間実務関係を維持するために設立された団体である。また、「台湾知財セミナー」(経済部智慧財産局委託事業)等のイベントを開催している。
(d) 台湾知的財産権情報サイト https://chizai.tw/
台湾知的財産権情報サイト(経済部智慧財産局委託事業)は、日本台湾交流協会台北事務所が事務局となって管理・運営するウェブサイトである。同ウェブサイトでは台湾の知的財産に関する最新情報を日本語で紹介しており、誰でも無料で利用することができる。月2回程度のメルマガも発行しており、こちらも無料で利用可能である。
台湾における公平交易法改正
「公平交易法」(日本の「不正競争防止法」および「独占禁止法」に相当。)改正案が、2015年1月22日に立法院の三読(最終審議)で可決され、2015年2月4日に総統によって総統華総一義字第10400014311号令として公布された。第10条および第11条の条文が、公布の30日後から施行されるのを除き、その他の条文は、公布日から施行された。
2015年の改正案は、「公平交易法」が1992年に施行されて以来、初めての全面的な法改正であり、その変更内容は大きく、法規構造を再度、構築・整備して、競争制限および不正競争関連規範を明確に区分する以外に、結合申請制度、連合行為に係る法の執行、不実な広告、著名商標保護、調査権、罰則などの規定をすべて調整、改正しており、事業者に大きな影響を及ぼすものである。以下に、今回法改正された法規構造の調整、不正競争、行政調査と処分、および罰則と行政救済などの関連規定の重要な変動を簡単に説明する。
さらに、2017年に第11条の条文が改正され、同年6月14日に公布された。
1.法規構造の調整
過去、「再販売価格の制限」(旧第18条、現行第19条)および「競争を制限するまたは公正な競争を阻害するおそれがある行為」(旧第19条、現行第20条)などの事項は、もともと「不正競争」の章に規範が置かれていたが、新法では、当該これらの事項が実際には市場競争秩序に影響を及ぼす競争制限行為の類型に属すことを明確にし、「競争制限」の章に移した。
しかし、旧法第19条第3号の不当な手段や景品贈呈によって販売促進を行う場合、本質的に不正競争に属するため、別途、「不正競争」の章に新たに第23条を追加して対応している。また、旧法第19条第5号の他人の生産や販売上の機密を不当に取得するなどに関する事由を削除し、営業秘密法の規範に戻した。
2.不正競争
不実な広告を認定する際に考慮すべき事項につき、包括的な一般的規定を新たに追加した。すなわち、「商品と関連し、かつ、取引決定に影響を及ぼすに足る事項」で、虚偽不実または人に錯誤を生じさせる表示または標章であり、既に取引相手人を勧誘する目的を達成している場合にのみ、本法の規範を受ける。旧法に列挙されていた商品の価格、数量、品質などの事項は、単なる例示であることを明確に規定した。
事業者は、不当な景品贈呈によって販売促進を行ってはならない、とする規定を新たに追加し、ならびに公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当。)に関連規則を規定する権限を授けた。この新たに追加された規定により、旧法第19条第3号に代わって、現行の「公平交易委員会の景品贈呈販売促進額に対する処理原則」(「公平交易委員会対於贈品贈獎促銷額度案件之処理原則」)が公平交易委員会の権限の法的根拠となる。
3.調査および行政処理
公平交易委員会は、証拠となる物品を押収できるとする規定を新たに追加し、調査を受ける者は正当な理由がある場合を除き、公平交易委員会が行う調査措置に協力する義務を有し、調査を回避、妨害または拒絶することはできない旨明確に規定した。
調査を受ける予定の事業者が、すでに具体的な措置を講じて違法と疑われる行為を排除している場合、公平交易委員会は、行政コストを省くため、案件の調査を中止することができる。
4.罰則および行政救済
公平交易委員会の調査に協力しない場合について、罰則額を引き上げた。
新法では、公平交易委員会の処分について訴願(日本における行政不服申立)手続を経る必要がなく、直接行政訴訟手続きが適用される旨明確に規定した。ただし、新法改正施行前にまだ終結していない訴願案件は、依然として訴願法(日本における行政不服審査法に相当)の規定によりこれを終結する。
5.2017年の第11条改正
「非友好的合併(いわゆる敵対的買収)」行為について、公平交易委員会による買収案件の審査期限を従来の30日から30営業日に延長した。これにより審査日数が連休やその他の要因で短縮されて審査の公正性に影響が及ぶことを回避する。
さらに、公平交易委員会は、企業結合の届出について外部の意見を諮問することができ、必要であれば産業、経済分析の意見を提供するよう学術研究機関に依頼することができるとした。ただし、結合事業者の一方が結合に同意していない場合、公平交易委員会は届出事業者の届出事由を該事業者に提供し、その意見を諮問しなければならない。
台湾における安全保障に係る発明の保全と保全に関する対価について
1.安全保障に係る発明の保全に関する制度
台湾における発明の保全に関する制度は、台湾専利法(以下、「専利法」という。)第51条に規定されている(専利法第120条で実用新案に準用する。)。また、本条について、中華民国経済部から、「専利案件が国防機密又はその他の国の安全に関わる機密を含む場合の作業要点」(以下、「作業要点」という。)が公表されている。
※「専利」には、特許、実用新案、意匠が含まれ、「専利法」は、これら全てを対象とする法律である。以下では、発明に係る専利として、「特許」、「特許出願」、「特許査定」等の用語を用いて解説する。また、「経済部」「国防部」の「部」は、日本における「省」に該当する政府機関である。
専利法第51条は、発明が、国防上の機密またはその他の国の安全に関わる秘密(以下、「国防上の機密等」という。)に関するものである場合、その発明を秘密にしなければならない、と定めている。専利法の趣旨からは、特許すべき発明は開示されるべきであるが、特許出願された発明が、国防上の機密等に関する場合は、国益を考慮し、その発明は秘密にされ公衆に開示されるべきではないからである。
保全対象となる秘密を保持しなければならない発明に係る特許出願は、国防部またはその他の国家安全関連機関(以下、「国防部等」という。)が、「国家機密」、「軍事機密」、「国防機密」、「国家機密と軍事機密のいずれでもあるもの」、「国家機密と国防機密のいずれでもあるもの」のいずれかに該当すると認定した発明に関する出願である(作業要点 第2条第3項)。
台湾専利法第51条 発明が、審査の結果、国防機密又はその他の国の安全に関わる秘密に関わる場合、国防部又は国家安全関連機関から意見を聴取しなければならない。秘密を保持する必要があると認められた場合、出願書類は封緘する。出願の実体審査を経たものは、査定書を作成し、出願人及び発明者に送達しなければならない。 出願人、代理人及び発明者は、前項の発明について秘密を保持しなければならない。これに違反した場合、当該特許出願権を放棄したものとみなされる。 当該秘密保持の期間は、査定書を出願人に送達した時から1年間とする。また、秘密保持期間を延長することができ、毎回1年とする。専利所轄官庁は期間満了の1ヵ月前に、国防部又は国家安全関連機関に照会し、秘密保持の必要がない場合は、直ちに公開しなければならない。 第1項の発明が特許査定された場合において、秘密保持の必要がなくなったときは、専利所轄官庁は出願人に3ヶ月以内に証書料及び1年目の特許料を納付するよう通知しなければならず、前記費用が納付された後はじめて公告される。期間が満了しても前記費用を納付しなかった場合、公告を行わない。 秘密保持期間に出願人が受けた損失について、政府は相当の補償を与えなければならない。 |
2.発明の保全に関する制度の内容
2-1.国防上の機密等を含む特許出願の審査
一般的に、秘密保持の必要性を伴う特許出願の処理には、国によって次の2つの方法のいずれかを採用している。一つは、秘密を保持したまま、秘密解除前に特許査定をせずに、国は出願人に一定の補償を与えるというものである。もう一つは、特許出願の審査が行われ、特許要件を充足すれば特許査定されるが、公開を行わず、機密解除後に公開されるというものである。台湾は、後者のアプローチを採用している(專利法逐條釋義 第51条【内容説明】一)。
台湾経済部智慧財産局(以下、「智慧財産局」という。)は、特許出願の審査において、出願書類に国防上の機密等を含む発明が開示されていると判断したときは、国防部等の意見を聴取する(専利法第51条第1項)。これは、秘密保持の必要性があるか否かは、国防業務を担当する国防部等が最も熟知しているからである。
そして、秘密保持の必要性がある場合は、特許出願の書類を封緘する(専利法第51条第1項)。出願人が実体審査の請求をした場合、査定書を作成し、出願人と発明者に送達するが、その際は公告を保留する理由も査定書に記載される(專利法逐條釋義 第51条【内容説明】一)。
2-2.出願人等の秘密保持義務と義務違反に対する法的措置
保全の対象となった発明に係る特許出願は公開されず(専利法第37条第3項第2号)、保全の対象となった発明について、出願人、発明者、および代理人(以下、「出願人等」という。)は守秘義務を負い、出願人等が秘密保持義務に違反した場合、その特許出願を放棄したものとみなされる(第51条第2項)。守秘義務は、出願人等だけでなく、智慧財産局の審査官にも課される(專利法逐條釋義 第51条【内容説明】柱書)。
国防上の機密等を含む特許が公告されるのは、機密が解除された後である。特許権の効力は特許が公告された後に発生する。したがって、公告前は、出願人は未だ特許権を取得しておらず、出願は審査完了の状態に過ぎない。出願人等が、守秘義務に違反して情報を公開した場合、特許出願の放棄とみなされ、秘密解除後、出願人は、専利法上の権利享有を主張できなくなる。また、国家機密を漏洩する行為については、刑法などに関連規定があり、罪に該当する場合は、刑事責任を問われることとなる(專利法逐條釋義 第51条【内容説明】二)。
台湾専利法第37条 専利所轄官庁が、発明特許出願書類を受理した後、審査の結果、手続に規定に合致しない箇所がなく、かつ公開すべきでない事情がないと認めた場合、出願日から18ヶ月後に当該出願を公開しなければならない。 専利所轄官庁は、出願人の請求により、その出願を早期公開することができる。 発明特許の出願が、次の各号のいずれかに該当する場合、公開しない。 1. 出願日から15ヶ月以内に取り下げられた場合。 2.国防上の機密又はその他の国家安全に関わる機密に及ぶ場合。 (以下省略) |
2-3.秘密保持の期間および機密解除の手続
秘密保持の期間は1年間であるが、秘密保持の必要性がある場合は、1回につき1年の延長をすることができる(専利法第51条第3項)。秘密保持期間が満了する1か月前に、智慧財産局は、国防部等に照会し、秘密保持の必要性があるかを確認し、秘密保持の必要性がない場合には、直ちに秘密解除し公開する。これは、国防上の機密等を含む特許出願と判断され、秘密にすべきであった発明でも,状況によっては秘密にする必要がなくなる場合がある。よって、出願人の権利利益を保護し、出願人ができるだけ早く特許権を取得できるように、秘密保持期間は1年ごとに見直すことにしている(專利法逐條釋義 第51条【内容説明】三)。
さらに、特許査定の後、国防部等が技術内容を秘密にする必要がなくなったと判断した場合、智慧財産局は、3か月以内に証書料および初年度の特許料を納付するよう出願人に通知する。期限までに納付された場合は公告し、期限までに納付されなかった場合は公告を行わない(専利法第51条第4項)。この規定は、2011年の専利法改正によって追加されたものである。
2-4.保全対象とされた場合の補償
公共の利益のために出願人の権益が損なわれた場合には、政府は補償金を支給して出願人の権益を公平に保護すべきとの観点から(專利法逐條釋義 第51条【内容説明】五第5項)、秘密保持期間に出願人が受けた損失について、政府は相当の補償を与えなければならないと規定されている(専利法第51条第5項)。請求主体は出願人と考えられ、補償対象は「秘密保持期間に出願人が受けた損失」である。補償請求額は、単に「相当の補償」と規定されているに留まり、具体的な基準は示されていない。
2-5.外国出願の禁止
専利法では、専利法第51条の秘密保持の対象となる発明について外国で特許出願をすることを明示的に禁止する規定は置かれていない。ただし、秘密保持義務を負う以上、外国での出願もできないという解釈がされる可能性は否定できないので、実際にこのような状況が生じた場合には、所轄官庁および専門家に相談することが推奨される。
2-6.保全措置に対する不服申立て
秘密保持について、訴願法に基づき、不服申立てを行うことができる。「訴願」は、日本の行政不服審査法に基づく審査請求に類似する制度であり、行政処分に不服がある場合には、処分を受けた者が、処分をした行政庁の上級行政庁等に対して不服申立てをするものである。処分の送達を受けた日から30日以内に提起する必要がある(訴願法第1条、第14条)。
3.智慧財産局における国防上の機密等を含む特許出願の処理
出願人が、特許出願に際して、国防上の機密発明等に該当することを申告する義務があるか否かについては、法令上、特にこれを義務付ける規定はおかれていない。また、いかなる場合に国防上の機密発明等に該当するかについて、明確な基準が公表されているわけでもないが、「作業要点」によれば、智慧財産局が、国防上の機密等を含む特許出願を処理する際の主なプロセスは、以下のとおりである。
(1) 出願人が、特許出願は国防上の機密等を含む旨申告した場合、智慧財産局は、要約、明細書、特許請求の範囲および図面を国防部等に送付の上、これらの意見を聴取する(作業要点 第5条第1項)。
特許出願時に申告がなかった場合、出願人は、遅くとも特許出願の公開準備作業の完了前までに、出願が国防上の機密等を含む旨の申告書を提出しなければならない。申告書は、要約、明細書、出願の範囲および図面に添付して、国防部等に送付され、これらの意見を聴取する(作業要点 第5条第2項)。
出願人が前記期間を過ぎても申告書を提出しない場合、出願は一般出願手続に基づいて審査され、審査の結果、国防上の機密等を含むと判断された場合、国防部等に必要な書類を送付し、これらの意見を聴取する(作業要点 第5条第3項)。
(2) 意見を聴取した結果、特許出願に係る発明を秘密保持にする必要性はないと判断された場合、特許出願は、一般出願手続に基づいて処理される(作業要点 第6条)。
(3) 秘密保持の必要性のある特許出願の各段階の審査プロセスは、以下のとおりである(作業要点 第7条)。
(a) 方式審査段階で、出願人に、出願が公開されない旨を通知する。
(b) 特許公開前の審査段階において、関連する作業を非公開とする。
(c) 以下の場合、関連する規定に従い、公開手続を行う。
・出願日から3年以内に実体審査の請求がなく、専利法第38条第4項の規定により出願が取り下げられたものとみなされ場合において、智慧財産局が、国防部等に照会した結果、秘密保持の必要性がないと判断した場合。
・国防部等が承認した秘密保持期間が満了し、または、秘密保持解除の条件を満たした場合。
(4) 当該出願が、秘密を保持する必要があると認められた場合、秘密保持期間は、査定書が出願人に送達された時から1年間とする。また、秘密保持期間は延長することができ、毎回1年とする。秘密保持期間が満了する1か月前に、智慧財産局は、国防部等に照会して、秘密を保持する必要性があるかを確認する。秘密保持する必要性がないと判断した場合には、直ちに秘密保持を解除し、要約書、明細書、特許請求の範囲および図面を電子スキャンした上で公開手続を行う(作業要点 第11条第1項)。
台湾における知的財産の基礎的情報(全体マップ)-実体編
1. 出願ルート
台湾では、専利権(特許権、実用新案権、意匠権)、商標権を取得するために、以下のルートにより出願することができる。しかし、WTO協定およびTRIPS協定以外の知的財産に関する国際協定に加盟しておらず、国際出願(PCT、マドリッド協定)、広域出願は不可である。ただし、台湾はパリ条約には加盟していないが、相互主義により日本・台湾間の出願にパリ条約に基づく優先権主張は可能であり、またTRIPS協定の適用により台湾以外のWTO加盟国におけるPCT出願等の優先権を主張することも可能である。
[台湾における出願ルート]
直接出願 | 国際出願 | 広域出願 | |
特許 | 可 | 不可 | 不可 |
実用新案 | 可 | 不可 | 不可 |
意匠 | 可 | 不可 | 不可 |
商標 | 可 | 不可 | 不可 |
<諸外国・地域・機関の制度概要および法令条約等>
URL:https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/mokuji.html
2. 法令・制度等
(1) 主な法律
法域 | 法律・規則(公用語)/(英語)
a: 法律・規則等の名称 b: 主な改正内容 URL: |
改正年
(YYYY) |
施行日
(DD/MM/YYYY) |
専利 | (公用語)
a: 専利法(特許、実用新案、意匠を管掌) b: 第60条の1「医薬品の許可証申請者が、新薬医薬品の許可証の所有者がすでに販売許可された新薬の記載済み特許権について、薬事法第48条の9第4号規定により声明した場合、特許権者は通知を受けた後、第96条第1項規定に基づき、侵害の排除又は防止を請求することができる。特許権者が薬事法第48条の13第1項で定めた期間内に前項の申請者に対し訴訟を提起していない場合、当該申請者はその申請した医薬品許可証の医薬品が当該特許権を侵害しているか否かについて確認の訴えを提起することができる」が追加された。 URL:https://law.moea.gov.tw/LawContent.aspx?id=FL011249 関連記事:「台湾における専利法の一部改正」(2020.8.11) URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19392/ |
(2022) |
(01/07/2022) |
(英語) a: Patent Act (as amended in 2022) URL:https://www.tipo.gov.tw/en/dl-282833-b7190234ce204c4da2a878128d163706.html (日本語) a: 專利法 URL:https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/07/専利法(2022年7月1日施行)-j-.pdf |
(2022) (2022) |
||
(公用語)
a: 專利法施行細則 b: 専利法改正に伴う改正。 URL:https://law.moea.gov.tw/LawContent.aspx?id=FL011250 |
(2023) |
(01/05/2023) |
|
(英語) a: Enforcement Rules of the Patent Act (2023) URL:https://www.tipo.gov.tw/en/dl-284613-8265faf0dae54efaa31a5ac58aa8b364.html (日本語) a: 專利法施行細則(旧細則) URL:https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/10/專利法施行細則(2022年10月20改正)-j.pdf |
(2023) (2022) |
||
商標 | (公用語)
a: 商標法 b: 没収に関する刑法条文の修正に応じて、第98条の用語が改正された。 修正前: 「商標権、証明標章権又は団体商標権を侵害する物品又は書類は、犯人の所有に属するか否かを問わず、これを没収する。」(第98条) 修正後: 「商標権、証明標章権又は団体商標権を侵害する物品又は書類は、犯罪行為者の所有に属するか否かを問わず、これを没収する。」(第98条) URL:https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawOldVer.aspx?pcode=J0070001 |
(2016) |
(15/12/2016) |
(英語) a: Trademark Act 2023 URL:https://law.moj.gov.tw/ENG/LawClass/LawAll.aspx?pcode=J0070001 注)現在施行されている商標法は2016年改正法であるが、同法の英語版は、未施行の最新の2023年改正法に上書きされてしまっているため、2023年法のURLを掲載する。 (日本語) a: 商標法 URL:https://chizai.tw/wp-content/uploads/2023/06/商標法(2016年12月15日施行)-.pdf |
(2023) (2016) |
||
(公用語) a: 商標法施行細則 URL:https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=J0070002 b: 商標法施行細則第19条第2項では、「商標の主務官庁は、WTOのニース協定に照らして、『商品及び役務の国際分類表』を作成したうえで、公告する」と改正された。 最新版の国際分類表は、下記智慧財産局のURL参照 URL:https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/cp-539-860501-9fc4a-201.html |
(2018) |
(07/06/2018) |
|
(英語) a: Enforcement Rules of the Trademark Act URL:https://law.moj.gov.tw/ENG/LawClass/LawAll.aspx?pcode=J0070002 (日本語) a: 商標法施行細則 URL:https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/05/商標法施行細則(2018年6月7日施行)-j-.pdf |
(2018) (2018) |
||
著作権 | (公用語) a: 著作權法 b: 学校および非営利の遠隔教育の場合、授業に必要な範囲内で、他人の著作物の合理的な利用ができるようになった(第46条、第46条の1)。 URL:https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=J0070017 |
(2022) | (15/06/2022) |
(英語) a: Copyright Act URL:https://www.tipo.gov.tw/en/lp-295-2-1-20.html (日本語) a:著作権法 URL:https://chizai.tw/test/wp-content/uploads/2021/11/20190501-著作権法(20190501施行).pdf |
(2022) (2019) | ||
不正競争 | (公用語) a: 公平交易法 b: 企業結合案件の審査期間が60日から60仕事日へと改正されるほか、「主務官庁は、企業結合案件について外部の意見を募集することができる。必要である場合、産業経済の分析意見について、学術研究機関に依頼することができる。」との条文が新設された(第11条第9項)。 URL:https://www.ftc.gov.tw/internet/main/doc/docDetail.aspx?uid=1396&docid=167 |
(2017) |
(14/06/2017) |
(英語) a: Fair Trade Act of 2017 URL:https://www.ftc.gov.tw/internet/english/doc/docDetail.aspx?uid=1295&docid=15182 (日本語) a:台湾公平交易法 URL:https://chizai.tw/test/wp-content/uploads/2022/01/20220119-台湾公平交易法(2017年6月14日発効)-j.pdf |
(2017) (2017) |
(2) 審査基準等
法域 | 審査基準、ガイドライン、マニュアル等 a:審査基準等の名称 URL: |
最終更新 b:(DD/MM/YYYY) |
専利 | (公用語) a: 專利審查基準彙編 URL:https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/lp-682-101.html |
(03/07/2023) |
(英語) a: Patent Examination Guidelines, Part II: Substantive Examination for Invention Patents, Chapter 1,3,11,12(下記URL「Patent Act」画面でNo.13~16) URL:https://www.tipo.gov.tw/en/lp-293-2.html (日本語) a:専利審査基準(台湾知的財産権情報サイトで「法令・審査基準等」タブから「審査基準(専利)」タブを選択 URL:https://chizai.tw/legal/ |
(07/08/2023) (14/07/2021) (「基準」の種類により異なる) |
|
商標 | (公用語) a: 商標審查基準彙編 (下記の審査基準をまとめたサイト) URL:https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/lp-517-201-1-20.html |
(07/06/2023) |
a: 商標識別性審查基準
URL:https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/cp-517-860259-f5cf9-201.html a: 混淆誤認之虞審查基準 URL:https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/dl-280016-cfbd6f2d0de04a86b65a061645abc68d.html (ファイルがダウンロードされる。) a: 商標法第30條第1項第11款著名商標保護審查基準 URL:https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/cp-517-860255-51632-201.html |
(01/09/2022) (27/10/2021) (19/03/2020) |
|
(英語) a: Examination Guidelines on Distinctiveness of Trademarks なし a: Examination Guidelines on Likelihood of Confusion なし a: Examination Guidelines for the Protection of Well-known Trademarks under Subparagraph 11 of Paragraph 1 of Article 30 of the Trademark Act URL:https://www.tipo.gov.tw/en/cp-294-175682-081b5-2.html |
(16/04/2014) |
|
(日本語) a:商標審査基準(台湾知的財産権情報サイトで「法令・審査基準等」タブから「審査基準(商標)」タブを選択 URL:https://chizai.tw/legal/ |
(01/08/2023) (「基準」の種類により異なる) |
(3) 主な条約・協定(加盟状況)
条約名 | 加盟 | 加盟予定 (YYYY) |
未加盟 |
(1) パリ条約 (工業所有権の保護に関するパリ条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(2) PCT (特許協力条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(3) TRIPs (知的所有権の貿易関連の側面に関する協定) |
☒ | ☐( ) | ☐ |
(4) PLT (特許法条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(5) IPC (国際特許分類に関するストラスブール協定) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(6) ハーグ協定 (意匠の国際登録に関するハーグ協定) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(7) ロカルノ協定 (意匠の国際分類を定めるロカルノ協定) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(8) マドリッド協定 (標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(9) TLT (商標法条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(10) STLT (商標法に関するシンガポール条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(11) ニース協定 (標章の登録のため商品及びサービスの国際分類に関するニース協定) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(12) ベルヌ条約 (文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(13) WCT (著作権に関する世界知的所有権機関条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
(14) WPPT (実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約) |
☐ | ☐( ) | ☒ |
3. 料金表
[情報1]
(公用語) Title: 專利規費清單 URL:https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/cp-707-870831-4d63a-101.html |
(英語) Title: Schedule of Patent Fees URL:https://www.tipo.gov.tw/en/cp-822-873215-9905e-2.html |
[情報2]
(公用語) Title: 商標規費清單(101年7月1日起生效) URL:https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/cp-537-860499-15903-201.html |
(英語) Title: Schedule of Trademark Fees 2012 URL:https://www.tipo.gov.tw/en/dl-262364-86b72387a0cb4e528f51e622ec0eec9c.html (ファイルがダウンロードされる。) 関連記事:「台湾における商標に関する政府料金」(2017.08.10) URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13976/ (注)本記事作成後、2023年10月12日付で上記記事は更新されています。 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/37464/ |