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トルコにおける商標異議申立制度

【詳細】

 産業財産法第5条で商標登録の絶対的拒絶理由が、同第6条で商標登録の相対的拒絶理由が規定されている。

 

 商標登録の絶対的拒絶理由は下記のとおりである。

(1)産業財産法第4条により商標とならない標章

(2)識別性がない標章

(3)種類、特徴、品質、意図された目的、価値若しくは産地を示すために、または商品もしくは役務の生産時期その他の特徴を示すために取引で使用される要素または特徴のみにより、または専らかかる要素もしくは特徴により構成される商標

(4)同一または類似の商品および役務に関して、先に登録された商標または先に出願された商標と同一のまたは区別できない程度に類似する商標

(5)取引実務において全ての当事者が広く使用している表記もしくは名称のみにより、または専らかかる表記もしくは名称により構成されている商標、または、特定のグループの職人、商人または専門家を識別するために使用されている商標

(6)商品の形状、商品の性質に由来する実質的な価値をその商品に与える形状、または技術的結果を得るために必要な形状からなる標識

(7)商品および役務の質や産地について公衆を欺く可能性のある商標

(8)パリ条約第6条の3により拒絶される標章

(9)パリ条約第6条の3には該当しない場合でも、歴史的および文化的価値に基づいて一般に知られたバッジ、エンブレムまたは盾および標識が組み込まれた商標

(10)宗教的シンボルを含む標章

(11)公の秩序または道徳に反する標章

(12)登録された地理的表示から成り立つまたは登録された地理的表示を含む標章

 

 また、商標登録の相対的拒絶理由は下記のとおりである。

(1)同一または類似の商品または役務に関する同一または類似の先行商標が存在するために、先行商標と関連することを含め公衆に混同を生じさせる可能性が存在する場合

(2)商標所有者の代理人が、所有者の同意または正当な理由なく、自己の名義で登録出願をした場合

(3)未登録の商標その他の商標に関する権利が、出願日または優先日の前に取得されている場合

(4)商標が、同一または類似の商品および役務に関して、パリ条約の第6条(2)に該当する周知の商標と同一または類似である場合

(5)商品および役務が同一または類似していない場合でも、登録商標または先に出願された商標が公衆からの評判を有していて、かかる評判のため、出願された商標が、正当な理由なしに不当な利益を得るか、先行商標の評判を毀損しまたはその特徴を害する場合

(6)商標に名称、会社名、写真、著作物その他の知的財産が含まれている場合

(7)出願商標が、同一または類似の商品および役務につき登録された団体商標または保証商標であり、出願商標が、団体または保証商標の不更新に伴う存続期間満了から3年以内に出願された場合

(8)出願された商標が、同一または類似の商品および役務に関して、先行商標と同一または類似しており、出願された商標が、先行商標の不更新に伴う存続期間満了から2年以内に出願されている場合

(9)出願された商標が不正の目的で出願された場合

 

 異議申立期間は、商標出願の公告から2月の間である。

 

 異議申立は、書面で理由を記載し、TÜRKPATENTに提出する必要がある。異議申立が規定されている期間内に提出されない場合、異議申立はなかったものとみなされる。また、異議申立の審査のためには、異議申立期間内に料金が支払われ、その支払いに関する情報をTÜRKPATENTに提出する必要がある。

 

 TÜRKPATENTは、被異議申立人に、異議申立に関する意見を提出するための期間として1月期間を与える。TÜRKPATENTは必要に応じて、追加の情報、書類および理由に関する説明を行うために、当事者にさらに1月の期間を与えることもできる。この期間内に要求された追加の情報、書類、説明および見解を提出しない場合、異議申立は存在する情報および書類により審査される。

 

 TÜRKPATENTから不利な決定を受けた当事者は、決定が通知されてから2月以内に、書面で理由を付して、再審査部に不服申立てをすることができる。この再審査部がTÜRKPATENTの最終決定機関となる。再審査部から不利な決定を受けた当事者は、決定の通知日から2月以内に管轄裁判所に訴訟を起こすことができる。

 

 トルコを対象国として選択してなされた国際登録出願に基づく出願も、トルコに直接行われた国内出願と同じ異議申立理由が適用される。国際登録出願に異議申立がされた場合、その異議申立についての結果のみがWIPO国際事務局へ通知される。トルコの国内出願と大きく異なる点は、国際登録出願人に対して、異議申立の審査中に、異議申立がなされた場合の通知が行われず、異議申立が認められたか否かが通知されるにとどまることである。このため、異議申立に対して意見を提出する機会を失わないために、出願人が出願状況を追跡することが重要である。異議申立に対する意見を提出しない場合、決定に対する不服申立手続が使用できるのみとなる。

 

【留意事項】

 産業財産法では、第三者による意見提出も規定されている。商標出願の公告後、何人も、商標出願が同一、または類似の商品もしくは役務に関して登録されていること、またはその他所定の理由で登録できないことを理由とともに記載した書面を、商標が登録されるまでの間、TÜRKPATENTに提出することができる。

トルコ商標制度概要

トルコ特許商標庁(以下、「TÜRKPATENT」)に行われた商標出願は、TÜRKPATENTにより、形式的審査の後に絶対的拒絶理由の観点から審査され、絶対的拒絶理由の審査を通過した商標は、商標公報(以下、「公報」)で公告される。商標出願の公告から2月以内に、利害関係人により絶対的または相対的拒絶理由に基づいて異議申立が可能である。

商標登録の有効期間は、出願日から10年である。商標登録更新料を支払うことにより、10年ごとの更新が可能となっている。登録日から5年間使用されていない商標は、商標の不使用取消請求により取り消される。

 

1. 産業財産法

トルコの国内法において商標法は、2017年1月10日に施行された産業財産法第6769号および2017年4月24日に施行された産業財産法の適用に関する規則で規定されている。

トルコは、「先使用主義」を認めている。

 

2. 標章

ある商品または役務を、他の事業の商品または役務から区別し、商標として登録された場合に、その商標権者に保証される保護の対象を明確に理解できる形式で登録簿に表示できる場合には、下記の標章は商標として登録される。

・文字

・名称

・図形

・立体的形状

・色彩(審査は、色彩が具体化された一定の形の中で使用される場合、識別性を有するか否かの観点から行われる。)

・スローガン

・音

・匂い(出願に化学式を添付する必要がある。)

・トレードドレス

・動き(動きの標章を示す画像の連続は動きの出願時に提出する必要がある。さらに、明確で包括的な動きの説明、提出された画像の説明ならびに画像の数および順番を含む動きの明細書が提出される必要がある。出願対象の動きに関する電子ログを、コンピューター環境で見て保存することができる形で保存されたCDを出願時に提出する必要がある。)

TÜRKPATENTは、味の商標に関する出願を認めていない。

 

3. 分類

トルコにおいて、商品および役務は、「標章の登録のため商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」(以下、「ニース協定」)に従って分類される。

商標出願は、複数の分類についても行うことができる。

商標出願は、出願人の要求に基づいて、TÜRKPATENTにより出願が登録されるまで、複数の出願に分割することができる。分割のために、申請書および料金の支払いを示す書類をTÜRKPATENTに提出する必要がある。登録された商標は分割することができず、分割された出願は、再度まとめることができない。

 

4. 出願

商標出願は、TÜRKPATENTが有効と認める出願フォームを用いて作成し、TÜRKPATENTに提出する。出願フォームには、下記の情報を記載する必要がある。

  • 出願人の身分および連絡先情報
  • 出願が代理人により行われる場合、代理人の身分および連絡先情報
  • 優先権の主張があれば、その優先権に関する情報
  • 商標の見本
  • 商標の見本でローマ字以外の文字が使用されている場合、その文字に対応するローマ字
  • 商標出願に係る商品または役務のニース協定における区分番号およびこの番号に従って作成されたリスト
  • 権限者の署名
  • 出願料、出願範囲内に複数の商品または役務の分類がある場合、追加の分類の料金が支払われたことを示す書類
  • 同意書が提出される場合には、その同意書に関する情報
  • 共同出願人の代表者がいる場合には、その代表者に関する情報
  • 追加の文書や添付資料がある場合には、それらの資料に関する情報

 

優先権を主張する場合は、下記の情報もTÜRKPATENTに提出する必要がある。

  • 所轄官庁から取得した優先権を示す書類の原本および特定の要件(トルコ国籍、大学以上を卒業、十分な外国語能力があることの証書を有する等)を満たす翻訳者が承認したトルコ語翻訳(出願から3月以内にTÜRKPATENTに提出されない場合、優先権を利用することはできない)
  • 優先権の主張に関する料金が支払われたことを示す書類

 

パリ条約またはWTO設立協定の加盟国の国民またはこれらの国の国民ではないが居住所または商業施設がこれらの国にある自然人、法人、またはこれらの相続人は、これらの政府の所轄官庁に、商標登録のために適切に行った出願日から6月以内にパリ条約の条項の範囲内で同一の商標および商品および役務について、トルコでの出願について優先権を利用することができる。

 

商標出願は、電子署名(GSMの認証するモバイル証明を含む。以下同じ。)を使用して、または予約による出願により、行うことができる。

 

予約による出願:電子署名所有者でないものは、個人番号または税金番号により、オンライン文書システムにログインし、出願を開始することができる。この場合、予約システムにより作成された出願フォームを30日以内にTÜRKPATENTに持参または郵送により提出することにより出願業務は完了する。

 

オンライン出願:電子署名所有者は、出願業務を電子署名によりオンライン文書システムにログインすることで行うことができる。

 

5. 審査

TÜRKPATENTに行われた商標出願は、TÜRKPATENTにより、形式的審査の後に絶対的拒絶理由の観点から審査される。商標出願の公告から2月以内に、利害関係人は、絶対的および相対的拒絶理由に基づいて異議申立を行うことができる。

公告された商標について、異議申立がなされなかった場合、または行われた異議申立が最終的に理由なしとされ、登録料が支払われたことに関する情報を含む不足書類が、期間内にTÜRKPATENTに提出された場合、出願は登録簿に登録され、公報で公告される。

絶対的拒絶理由に基づいて、TÜRKPATENTにより商標出願が拒絶された出願人は、決定通知日から2月以内に、書面で理由を記載してTÜRKPATENTの決定に異議申立を行うことができる。

出願人の異議申立がTÜRKPATENTにより認められた場合、商標出願は公報で公告される。

TÜRKPATENTが、産業財産法の範囲内で行った決定により不利益を被る当事者は、この決定に対し、再審査評価委員会に異議申立を行うことができる。

異議申立は、決定通知から2月以内に書面で理由を記載してTÜRKPATENTに行われる。異議申立が審議されるためには、異議申立期間内に料金を支払い、同期間内に料金の支払いが行われたことに関する情報をTÜRKPATENTに提出しなければならない。

TÜRKPATENTは、異議申立に関する見解を通知するために、出願人に1月の期間を与える。

再審査評価委員会決定により不利益を被る当事者は、決定に対し、決定が自身に通知されてから2月以内に、アンカラの民事知財裁判所に訴訟を起こすことができる。

 

6. 登録証

産業財産法第22条によると、「出願が瑕疵なく行われ、または瑕疵が除かれ、審査、公告が行われ、異議申立が行われず、または行われた異議申立のすべてが最終的に拒絶され、登録料が支払われたことに関する情報も含む不足文書が期間内にTÜRKPATENTに提出され、すべての段階が完了した出願は登録簿に登録され、公報で公告される」。

登録証は、その要求があり、料金が支払われた場合に与えられる。

 

7. 更新

登録商標の保護期間は、出願日から10年である。この期間は10年ごとに更新できる。

更新請求は、商標権者により、保護期間の満了日の6月前までの期間に行い、同期間内に更新料が支払われたことに関する情報をTÜRKPATENTに提出する必要がある。期間内に請求が行われない、または更新料が支払われたことに関する情報がTÜRKPATENTに提出されない場合、更新請求は、保護期間満了日から6月以内に、追加料金を支払うことにより行うことも可能である。

 

8. 商標の使用

正当な理由なく、登録された商品または役務について、商標権者によるトルコにおける真正な使用が、登録日から5年以内に開始されていない、または使用が5年連続して中断されている商標は、商標権登録が取消の対象となる。

商標が、商標権者のライセンスに基づき、ライセンシーによって使用されることも商標者による使用として認められる。

 

下記の状況も商標の使用とみなされる。

  • 商標の識別性を変えることなく、異なる形態で登録商標を使用すること
  • 商標を輸出のためだけに商品またはその包装に使用すること

 

9. 無効

絶対的および相対的拒絶理由が存在する商標は、裁判所による商標権の無効に関する決定の対象となる。

利害関係人、検察官、または関係する公的機関は、商標権の無効を裁判所に請求することができる。

商標権者は、自らの商標登録より遅れる商標登録について、その商標の使用を知っていた、または知りえたにもかかわらず、連続して5年間の商標の使用を黙認した場合、その商標登録が悪意でなされたものでない限り、自らの商標登録を無効の理由として主張できない。

先行する商標との混同の可能性(Likelihood of confusionおよびLikelihood of association)があるとの主張により起こされた無効訴訟において、使用証拠の要求は抗弁として主張することができる。この場合、使用に関する5年の期間は、訴訟日を基準とする。無効が要求されている商標の出願日または優先日において、原告の商標が最低5年間登録されている場合、原告は出願日または優先日に、産業財産法第19条第2項で規定されている使用証拠要件を満たしていることを証明する必要がある。

 

10. 商標権の取消

下記の場合、請求に基づきTÜRKPATENTにより商標権の取消決定がなされる(産業財産法第192条によると、この権限は産業財産法の施行から7年後に、民事知財裁判所からTÜRKPATENTに移転する)。

  • 正当な理由なく、登録された商品または役務について、商標権者によるトルコにおける真正な使用が商標の登録日から5年以内に開始されていない、または使用が5年間連続して中断されている場合
  • 商標登録者が必要な措置等を取らなかった結果、商標が、登録されている商品または役務の普通名称として浸透した場合
  • 商標権者またはそのライセンシーによる使用の結果、商標が登録されている商品または役務の性質、品質または産地に関して、国民に誤解を生じさせる場合
  • 証明商標または団体商標が契約書に反する形で使用されている場合

 

商標権の取消は利害関係人が請求することができる。商標権の取消請求は、請求日に登録簿に所有者として登録されている者、またはその承継人を相手方として請求する。

 

 

トルコにおけるTMマークおよびRマーク「Ⓡ」の使用

 国際的にみれば、TMマークは商標が登録され、または登録なしに商標として使用されていること、SMマークは商標が登録され、または登録なしにサービスマークとして使用されていること、「Ⓡ」マークは商標が登録されていること等を示すために用いられている。実務上、トルコ企業以外の外国企業はトルコ企業と比べてこれらのマークを使用している割合が多い傾向にあるといえる。

 

 これらのマークが商標に使用されることがトルコにおいて商標権者に有益となることもあるといえる。例えば、産業財産法第26条第1項b)で、商標権者の必要な対策をとらない結果、商標が登録されている商品および役務の一般名称となった場合、取消事由として規定されている。トルコではTMマークおよび「Ⓡ」マークの使用義務はないため、これらのマークの不使用が、商標が一般名称になる原因になるとはいえないものの、これらのマークが使用される場合、商標が一般的な名称になったという主張に対する反論または最低でも商標権者がとった対策の一つであると主張することが可能となり得る。

 

 

トルコにおける商標の使用と使用証拠

【詳細】

1.商標の使用

 トルコでは、商標の登録後5年以内にまたはその後において5年連続して「使用」されない場合には、商標の取消請求が可能となる。ここにいう商標の「使用」は、以下を満たすものでなくてはならない。

 ・真正な使用、すなわち、トルコにおいて商標が付された商品または役務がマーケットシェアを生み出す水準であること

 ・トルコで使用されること

 ・商標が登録された商品および役務の観点から使用されること

 

 産業財産法第9条第2項では、次に掲げる事項を、商標の使用として認める。

(1)登録商標の識別性を改変しないで、要素において異なる様式での登録商標の使用

(2)専ら輸出目的の商品またはその包装上の商標の使用

 なお、産業財産法第9条第2項によると、商標所有者の承諾による使用も商標所有者による使用として認められている。

 産業財産法では、商標出願において実際の使用もしくは使用意図またはその証拠は要求されていない。また、トルコ特許商標庁(以下、「TÜRKPATENT」)における商標の更新の際も、商標の使用に関する証拠は要求されない。

 登録商標が5年以内に使用されない場合も、登録商標が自動的に登録簿から削除されるわけではなく、登録商標の不使用による取消は裁判で争われる。不使用を理由とする登録商標の取消訴訟を回避するためには、登録後5年以内にトルコにおいて使用されなければならない。

 

2.大統領令の取消し

 産業財産法において規定される前に不使用による取消を規定していた、商標の保護に関する大統領令第556号(以下、「大統領令」)第14条は、憲法裁判所判決2016年12月14日付第2016/148 E、2016/189 K号によって、財産権は大統領令により規定されないという理由から取り消された。この憲法裁判所の判決は、2017年1月6日付官報で公表・施行され、当該日時点で確定判決となっていない係争中の全ての訴訟において適用される。

 この大統領令を取り消す憲法裁判所の判決が第一審裁判所における紛争に適用されることは認められている。第二審および第三審の段階にある訴訟に関しても適用されるかについては未だ確立された判断は下されていないが、それらの訴訟は、憲法裁判所の取消判決に従う方向で審理しなおされるために第一審に差し戻されている。そのため、大統領令の時代に起こされた係争中の訴訟は、訴訟原因が消滅したとして訴訟が取り下げられている。

 憲法裁判所による大統領令第14条を取り消す判決が施行された2017年1月6日の4日後の2017年1月10日には、産業財産法が施行された。産業財産法においても、不使用による取消が規定されているため、取り下げられた従来の取消訴訟および新たな取消訴訟は当該条項に基づいた新たな訴訟として提起されている。

 

3.権限のトルコ特許商標庁への移行および施行の7年延長

 産業財産法第26条によると、取消訴訟における所轄官庁はトルコ特許商標庁である。しかし、当該条項の施行日は産業財産法第192条により7年延長されたため、現在の不使用による取消訴訟の所轄官庁は民事知財裁判所であるが、2024年1月10日から所轄官庁はトルコ特許商標庁となる。

 

4.不使用の主張‐使用証拠

 商標出願は、産業財産法第6条第1項*)に基づき混同の可能性を理由とする異議が申立てられた場合、出願人は、異議の基礎となっている商標(先願商標)が異議の対象となっている商標(後願商標)の出願日または優先日時点において登録から5年以上経過しているものである場合、先願商標が、異議の対象となっている商品または役務について、トルコにおいて、後願商標の出願日前の5年間において使用されていることの証拠、または使用されていない場合には当該不使用を正当化する理由を提出するよう要求することができる。

 この異議申立に対する不使用の主張は、トルコ産業財産法により導入された。

 商標が登録されている商品または役務に関し使用されていることの証拠として、請求書、目録、価格表、製品コード、製品、包装および看板の見本、広告、広報、市場調査、広告ビデオ、見本市への参加が挙げられる。

 

*)登録出願が行われる商標は、登録された、またはより前の日付で出願された商標と同一または類似の商標であって、同一または類似の商品または役務を指定するものであり、商標について国民に混同が生じる可能性がある場合、異議に基づき登録が拒絶される。

 

【留意事項】

 使用義務は商標登録された全ての商品または役務に関して発生する。したがって、一部の登録商品または役務が使用されない場合、その一部について取消決定がなされる。一部の商品または役務についてのみの使用証拠も認められる。

 また、不使用の主張は、無効および侵害訴訟において抗弁として主張することができる。

 

トルコにおける指定商品または役務に関わる留意事項

 トルコは、1996年1月1日に、ニース協定の加盟国となった。産業財産法第6769号の適用に関する規則(以下、「産業財産規則」)の第5条第2項eによると、トルコ特許商標庁にて行われる商標出願は、出願の対象となる商品および役務を、ニース協定による区分に従って指定しなければならない。

 

 ニース国際分類に従って作成された、最新の商標登録出願に関する商品および役務の分類に関する通達は、2016年12月30日に官報で公表され、2017年1月1日に施行された。この通達は、下記のリンクから入手可能である。

http://www.turkpatent.gov.tr/TURKPATENT/resources/temp/86D9FC05-00FC-445B-BAE9-38BBB38AD845.pdf

 

 トルコは、ニース国際分類を採用しているが、商品および役務の審査は、独自の副分類に基づいて行われている。ある区分に属する商品および役務の副分類には、分類番号が割り当てられる。トルコでは、複数の副分類を指定しても、追加の出願料は必要とならない。ある区分の下にある副分類の全部または一部を選択して出願申請することも可能である。出願された商標の商品または役務が先行する商標出願または登録と同じ区分に属するものであっても、副分類が異なる場合、先願および後願の商標の商品および役務は類似とならない可能性がある。

 

 産業財産法第6769号(以下、「産業財産法」)第5条(商標出願における絶対的拒絶理由)によれば、「同一または同様の種類の商品または役務に関して登録されたまたは先の出願日を有する商標と同一または区別できない程類似した標章」についての出願は、絶対的拒絶理由のあるものとみなされる。

 

 産業財産法第11条第3項によると、「出願の対象となる商品および役務は、・・・標章の登録のため商品およびサービスの国際分類に関するニース協定により分類される。トルコ特許商標庁は、出願で指定されるべき商品および役務に関する分類および分類番号について必要な訂正を行うことができる」。

 

 産業財産規則第9条第3号によると、「商品または役務の指定において、一般的な語句またはトルコ特許商標庁により明確にする必要があるとされた表現が使用された場合、その指定商品または役務を明確にするため、出願人に2か月の期間が与えられる。当該期間内に不備が訂正された場合、出願日は影響を受けず出願は係属する。期間内に不備の訂正がトルコ特許商標庁に提出されない場合、明確化が要求された一般的な語句または表現は指定から削除される」。例えば、「ファッションアクセサリー」は、一般的な語句または表現とみなされるが、「ファッションアクセサリー、即ち、帽子、腕時計、財布、ハンドバッグ、扇子、日傘および雨傘」であれば登録されうる。

 

 トルコにおいて、第35類の第6副分類にある卸売り、小売りならびに電子商取引による商品の仕入れおよび販売を出願において指定する場合、そのサービスがどの商品に関するものであるかを明確にする義務が導入された。すなわち、第35類で出願を行う出願人は、提供するサービスがどの商品グループまたはビジネス分野に関するものであるかを明確にする必要がある。

 

 産業財産規則の第9条第4項によると、トルコ特許商標庁は、商品および役務が属する区分および分類番号に関して必要な訂正を行うことができる。商品および役務がニース協定の本質に従って指定されていない場合、必要に応じて、トルコ特許商標庁は、訂正のために、出願人から区分を訂正する料金を2か月以内に支払うよう要求する。期間内に料金支払いに関する情報がトルコ特許商標庁に提供されない場合、出願は取り下げとみなされる。2か月の期間は延長されない。

 

 

トルコの特許・実用新案、意匠、商標関連の法律、規則等

 トルコの特許・実用新案、意匠、商標関連の法律、規則等(現地語・英語・日本語)は、以下のとおりである。

 

No.

法令名

施行日等

法律番号等

情報元

URL

言語

1

産業財産法*)

2017.1.10施行

SINAİ MÜLKİYET KANUNU
Kanun Numarası : 6769
(2016法)

トルコ特許商標庁

http://www.mevzuat.gov.tr/MevzuatMetin/1.5.6769.pdf

トルコ語

トルコ特許商標庁

https://www.turkpatent.gov.tr/TURKPATENT/resources/temp/9C806052-924A-4305-A4E9-2912B721A7B1.pdf

2

産業財産法施行規則

2017.4.24版

Sayı:30047

2017.4.24

 

トルコ特許商標庁

https://www.turkpatent.gov.tr/TURKPATENT/resources/temp/C633D924-0B9B-4A65-80BE-FA6C55E9BE0E.pdf

トルコ語

*) 旧特許法(法律No.551)、旧意匠法(法律No.554)、旧地理的表示法(法律No.555)、旧商標法(法律No.556)は本法191条によって廃止されるが、本法の暫定条項1-6に従って、一定の規定が継続される。

トルコにおける商標権に基づく権利行使の留意点【その2】

記事本文はこちらをご覧ください。

トルコにおける商標権に基づく権利行使の留意点【その1】

記事本文はこちらをご覧ください。

イスラム法(シャリーア)と知的財産法

「シャリーア及びファトワーと知的財産法」(2016 年6 月、日本貿易振興機構ドバイ事務所)

 

(目次)

第1章 シャリーア及びファトワーの紹介及び概説 p.4

第2章 MENA地域の諸国におけるシャリーア及びファトワーの実践及び運用 p.7

 アラブ首長国連邦p.7

 アルジェリアp.8

 イラクp.8

 イランp.9

 エジプトp.11

 オマーンp.12

 カタールp.12

 クウェーp.14

 サウジアラビアp.16

 シリアp.19

 チュニジアp.20

 トルコp.20

 バーレーンp.22

 パレスチナp.22

 モロッコp.23

 ヨルダンp.23

 リビアp.25

 レバノンp.25

第3章 シャリーアと知的財産法の関係 p.26

 第1節 シャリーアによる知的財産法の制限及び影響の態様 p.26

 第2節 一部の国の知的財産法に規定された制限に伴う知的財産の対象物の制限 p.29

 アラブ首長国連邦p.29

 アルジェリアp.30

 イランp.30

 エジプトp.30

 オマーンp.31

 カタールp.32

 クウェート p.32

 サウジアラビア p.33

 シリアp.34

 チュニジア p.34

 トルコp.35

 モロッコp.35

 ヨルダンp.36

 ヨルダン川西岸地区 p.36

 リビアp.37

 第3節 登録できない項目一覧 p.38

第4章 知的財産権に関するファトワーの事例 p.39

第5章イスラム諸国において外国出願人が知的財産保護を受ける上で直面しうる障害p.41

第6章 知的財産保護の取得に際して障害に直面した場合に日本企業がとりうる措置 p.44

第7章 知的財産保護が得られない場合に利用しうる代替的な保護手段 p.44

第8章 おわりに p.45

トルコにおける未登録周知商標の保護

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