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トルコにおける商標異議申立制度

1. 異議申立に至るまでの国内商標手続
 トルコにおいて、商標制度は、2020年7月28日に改正された知的財産法(法律第6769号、以下「法」という。)および2017年4月24日に施行された法の適用に関する規則(以下「規則」という。)に規定されている。

 トルコ特許庁(以下「庁」という。)に出願された商標は、形式的審査の後に絶対的拒絶理由の観点から審査され、絶対的拒絶理由の審査を通過した商標は、商標公報で公告される(法第5条、第16条)。
 なお、トルコにおける国内商標出願手続の詳細については、関連記事「トルコ商標制度概要」を参照されたい。

2. 国内出願の異議申立手続について
 公告された出願に対し、利害関係人は、公告された日から2か月以内に異議を申し立てることができ(法第18条(1))、その期間の延長は認められない。

 異議申立書は、異議申立の理由として、絶対的拒絶理由または相対的拒絶理由を挙げて、庁に提出することができる(法第18条(1))。

 法第5条に記載されている絶対的拒絶理由としては、商標とすることができない標識(法第4条に規定あり)、識別性を欠く標識、性質や品質あるいは原産地について公衆をあざむく標識、公序良俗に反する標識などが挙げられる。

 法第6条に記載されている相対的拒絶理由としては、出願商標が、先の商標と同一または類似し、かつ、対象商品・役務が同一または類似する場合、先の商標と同一または類似し対象商品・役務の類否にかかわらず先の商標の評判を不当に利用または害する場合、対象商品・役務と同一または類似しかつパリ条約第6条(2)に該当する周知商標と同一または類似する場合、他人の人名や商号あるいは著作物などの他の知的所有権から構成される商標である場合、先行出願の不更新に伴う存続期間満了日から2年以内に出願されている場合、悪意でなされた商標である場合などが挙げられる。

 異議申立が上記期間内に提出されない場合、異議申立はなかったものとみなされる。また、異議申立の審査のためには、異議申立期間内に異議申立手数料を納付し、その納付に関する情報を庁に提出する必要がある(法第18条(2))。

 庁は、被異議申立人(出願人)に、異議申立に関する意見を提出するための期間として、1か月の期間を与える。出願人は、相対的拒絶理由の対象である登録商標が出願日(優先日)から少なくとも5年間、登録されている場合、当該登録商標を真正に使用していること、または不使用に正当な理由があることを証明する証拠の提出を異議申立人(利害関係人)に求めることができる。
庁は、必要に応じて、追加の情報、書類および理由に関する説明を提出させるために、当事者にさらに1か月の期間を与えることができる。
この期間内に要求された追加の情報、書類、説明および見解が提出されない場合、異議申立は、存在する情報および書類により審査される(法第19条(1)、規則第28条(4))。

 庁から不利な決定を受けた当事者は、決定が通知されてから2か月以内に、書面で理由を付して、審判請求することができる。審判請求を審理する再審査評価委員会(以下「委員会」という。)が、庁の最終決定機関となる(法第20条、第21条)。委員会から不利な決定を受けた当事者は、決定の通知日から2か月以内に、アンカラの民事知的財産裁判所に訴訟を起こすことができる(法律第5000号 第15/c条)。

3. 国際登録出願に係わる異議申立について
 トルコを指定国として選択した国際登録出願は、トルコに直接行われた国内出願と同一の効果を有するものとされ、同じ異議申立理由が適用される(法第14条(2))。国際登録出願に異議申立がなされた場合、従前は異議申立の結果のみが通知されていたが、マドリッド議定書に基づく規則第18規則の2の改正により、2022年3月から、庁はWIPO国際事務局に対し、異議申立に対する意見を提出する機会とその期限を通知することとなった。当該期限は、WIPOが庁の通知を代理人または商標出願人に転送した日の翌日から1か月以内である(規則第28条(4))。異議申立に対する意見は、出願人が委任状を与えたトルコの有資格者によって庁に提出されなければならない(法第160条(3))。

【留意事項】
 異議申立人は利害関係人に限られるが、法第17条(1)では、第三者による意見書の提出も規定されている。商標出願の公告後、何人も、商標出願が、同一または類似の商品もしくは役務に関して登録されていること、またはその他所定の理由で登録できないことを理由とともに記載した書面を、商標が登録されるまでの間、庁に提出することができる。ただし、利害関係のない第三者は当事者になれず、庁の登録決定に異論がある場合でも不服を申し立てることはできない。

トルコにおける異議申立および使用証明

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トルコにおける商標異議申立制度

【詳細】

 産業財産法第5条で商標登録の絶対的拒絶理由が、同第6条で商標登録の相対的拒絶理由が規定されている。

 

 商標登録の絶対的拒絶理由は下記のとおりである。

(1)産業財産法第4条により商標とならない標章

(2)識別性がない標章

(3)種類、特徴、品質、意図された目的、価値若しくは産地を示すために、または商品もしくは役務の生産時期その他の特徴を示すために取引で使用される要素または特徴のみにより、または専らかかる要素もしくは特徴により構成される商標

(4)同一または類似の商品および役務に関して、先に登録された商標または先に出願された商標と同一のまたは区別できない程度に類似する商標

(5)取引実務において全ての当事者が広く使用している表記もしくは名称のみにより、または専らかかる表記もしくは名称により構成されている商標、または、特定のグループの職人、商人または専門家を識別するために使用されている商標

(6)商品の形状、商品の性質に由来する実質的な価値をその商品に与える形状、または技術的結果を得るために必要な形状からなる標識

(7)商品および役務の質や産地について公衆を欺く可能性のある商標

(8)パリ条約第6条の3により拒絶される標章

(9)パリ条約第6条の3には該当しない場合でも、歴史的および文化的価値に基づいて一般に知られたバッジ、エンブレムまたは盾および標識が組み込まれた商標

(10)宗教的シンボルを含む標章

(11)公の秩序または道徳に反する標章

(12)登録された地理的表示から成り立つまたは登録された地理的表示を含む標章

 

 また、商標登録の相対的拒絶理由は下記のとおりである。

(1)同一または類似の商品または役務に関する同一または類似の先行商標が存在するために、先行商標と関連することを含め公衆に混同を生じさせる可能性が存在する場合

(2)商標所有者の代理人が、所有者の同意または正当な理由なく、自己の名義で登録出願をした場合

(3)未登録の商標その他の商標に関する権利が、出願日または優先日の前に取得されている場合

(4)商標が、同一または類似の商品および役務に関して、パリ条約の第6条(2)に該当する周知の商標と同一または類似である場合

(5)商品および役務が同一または類似していない場合でも、登録商標または先に出願された商標が公衆からの評判を有していて、かかる評判のため、出願された商標が、正当な理由なしに不当な利益を得るか、先行商標の評判を毀損しまたはその特徴を害する場合

(6)商標に名称、会社名、写真、著作物その他の知的財産が含まれている場合

(7)出願商標が、同一または類似の商品および役務につき登録された団体商標または保証商標であり、出願商標が、団体または保証商標の不更新に伴う存続期間満了から3年以内に出願された場合

(8)出願された商標が、同一または類似の商品および役務に関して、先行商標と同一または類似しており、出願された商標が、先行商標の不更新に伴う存続期間満了から2年以内に出願されている場合

(9)出願された商標が不正の目的で出願された場合

 

 異議申立期間は、商標出願の公告から2月の間である。

 

 異議申立は、書面で理由を記載し、TÜRKPATENTに提出する必要がある。異議申立が規定されている期間内に提出されない場合、異議申立はなかったものとみなされる。また、異議申立の審査のためには、異議申立期間内に料金が支払われ、その支払いに関する情報をTÜRKPATENTに提出する必要がある。

 

 TÜRKPATENTは、被異議申立人に、異議申立に関する意見を提出するための期間として1月期間を与える。TÜRKPATENTは必要に応じて、追加の情報、書類および理由に関する説明を行うために、当事者にさらに1月の期間を与えることもできる。この期間内に要求された追加の情報、書類、説明および見解を提出しない場合、異議申立は存在する情報および書類により審査される。

 

 TÜRKPATENTから不利な決定を受けた当事者は、決定が通知されてから2月以内に、書面で理由を付して、再審査部に不服申立てをすることができる。この再審査部がTÜRKPATENTの最終決定機関となる。再審査部から不利な決定を受けた当事者は、決定の通知日から2月以内に管轄裁判所に訴訟を起こすことができる。

 

 トルコを対象国として選択してなされた国際登録出願に基づく出願も、トルコに直接行われた国内出願と同じ異議申立理由が適用される。国際登録出願に異議申立がされた場合、その異議申立についての結果のみがWIPO国際事務局へ通知される。トルコの国内出願と大きく異なる点は、国際登録出願人に対して、異議申立の審査中に、異議申立がなされた場合の通知が行われず、異議申立が認められたか否かが通知されるにとどまることである。このため、異議申立に対して意見を提出する機会を失わないために、出願人が出願状況を追跡することが重要である。異議申立に対する意見を提出しない場合、決定に対する不服申立手続が使用できるのみとなる。

 

【留意事項】

 産業財産法では、第三者による意見提出も規定されている。商標出願の公告後、何人も、商標出願が同一、または類似の商品もしくは役務に関して登録されていること、またはその他所定の理由で登録できないことを理由とともに記載した書面を、商標が登録されるまでの間、TÜRKPATENTに提出することができる。

トルコ商標制度概要

トルコ特許商標庁(以下、「TÜRKPATENT」)に行われた商標出願は、TÜRKPATENTにより、形式的審査の後に絶対的拒絶理由の観点から審査され、絶対的拒絶理由の審査を通過した商標は、商標公報(以下、「公報」)で公告される。商標出願の公告から2月以内に、利害関係人により絶対的または相対的拒絶理由に基づいて異議申立が可能である。

商標登録の有効期間は、出願日から10年である。商標登録更新料を支払うことにより、10年ごとの更新が可能となっている。登録日から5年間使用されていない商標は、商標の不使用取消請求により取り消される。

 

1. 産業財産法

トルコの国内法において商標法は、2017年1月10日に施行された産業財産法第6769号および2017年4月24日に施行された産業財産法の適用に関する規則で規定されている。

トルコは、「先使用主義」を認めている。

 

2. 標章

ある商品または役務を、他の事業の商品または役務から区別し、商標として登録された場合に、その商標権者に保証される保護の対象を明確に理解できる形式で登録簿に表示できる場合には、下記の標章は商標として登録される。

・文字

・名称

・図形

・立体的形状

・色彩(審査は、色彩が具体化された一定の形の中で使用される場合、識別性を有するか否かの観点から行われる。)

・スローガン

・音

・匂い(出願に化学式を添付する必要がある。)

・トレードドレス

・動き(動きの標章を示す画像の連続は動きの出願時に提出する必要がある。さらに、明確で包括的な動きの説明、提出された画像の説明ならびに画像の数および順番を含む動きの明細書が提出される必要がある。出願対象の動きに関する電子ログを、コンピューター環境で見て保存することができる形で保存されたCDを出願時に提出する必要がある。)

TÜRKPATENTは、味の商標に関する出願を認めていない。

 

3. 分類

トルコにおいて、商品および役務は、「標章の登録のため商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」(以下、「ニース協定」)に従って分類される。

商標出願は、複数の分類についても行うことができる。

商標出願は、出願人の要求に基づいて、TÜRKPATENTにより出願が登録されるまで、複数の出願に分割することができる。分割のために、申請書および料金の支払いを示す書類をTÜRKPATENTに提出する必要がある。登録された商標は分割することができず、分割された出願は、再度まとめることができない。

 

4. 出願

商標出願は、TÜRKPATENTが有効と認める出願フォームを用いて作成し、TÜRKPATENTに提出する。出願フォームには、下記の情報を記載する必要がある。

  • 出願人の身分および連絡先情報
  • 出願が代理人により行われる場合、代理人の身分および連絡先情報
  • 優先権の主張があれば、その優先権に関する情報
  • 商標の見本
  • 商標の見本でローマ字以外の文字が使用されている場合、その文字に対応するローマ字
  • 商標出願に係る商品または役務のニース協定における区分番号およびこの番号に従って作成されたリスト
  • 権限者の署名
  • 出願料、出願範囲内に複数の商品または役務の分類がある場合、追加の分類の料金が支払われたことを示す書類
  • 同意書が提出される場合には、その同意書に関する情報
  • 共同出願人の代表者がいる場合には、その代表者に関する情報
  • 追加の文書や添付資料がある場合には、それらの資料に関する情報

 

優先権を主張する場合は、下記の情報もTÜRKPATENTに提出する必要がある。

  • 所轄官庁から取得した優先権を示す書類の原本および特定の要件(トルコ国籍、大学以上を卒業、十分な外国語能力があることの証書を有する等)を満たす翻訳者が承認したトルコ語翻訳(出願から3月以内にTÜRKPATENTに提出されない場合、優先権を利用することはできない)
  • 優先権の主張に関する料金が支払われたことを示す書類

 

パリ条約またはWTO設立協定の加盟国の国民またはこれらの国の国民ではないが居住所または商業施設がこれらの国にある自然人、法人、またはこれらの相続人は、これらの政府の所轄官庁に、商標登録のために適切に行った出願日から6月以内にパリ条約の条項の範囲内で同一の商標および商品および役務について、トルコでの出願について優先権を利用することができる。

 

商標出願は、電子署名(GSMの認証するモバイル証明を含む。以下同じ。)を使用して、または予約による出願により、行うことができる。

 

予約による出願:電子署名所有者でないものは、個人番号または税金番号により、オンライン文書システムにログインし、出願を開始することができる。この場合、予約システムにより作成された出願フォームを30日以内にTÜRKPATENTに持参または郵送により提出することにより出願業務は完了する。

 

オンライン出願:電子署名所有者は、出願業務を電子署名によりオンライン文書システムにログインすることで行うことができる。

 

5. 審査

TÜRKPATENTに行われた商標出願は、TÜRKPATENTにより、形式的審査の後に絶対的拒絶理由の観点から審査される。商標出願の公告から2月以内に、利害関係人は、絶対的および相対的拒絶理由に基づいて異議申立を行うことができる。

公告された商標について、異議申立がなされなかった場合、または行われた異議申立が最終的に理由なしとされ、登録料が支払われたことに関する情報を含む不足書類が、期間内にTÜRKPATENTに提出された場合、出願は登録簿に登録され、公報で公告される。

絶対的拒絶理由に基づいて、TÜRKPATENTにより商標出願が拒絶された出願人は、決定通知日から2月以内に、書面で理由を記載してTÜRKPATENTの決定に異議申立を行うことができる。

出願人の異議申立がTÜRKPATENTにより認められた場合、商標出願は公報で公告される。

TÜRKPATENTが、産業財産法の範囲内で行った決定により不利益を被る当事者は、この決定に対し、再審査評価委員会に異議申立を行うことができる。

異議申立は、決定通知から2月以内に書面で理由を記載してTÜRKPATENTに行われる。異議申立が審議されるためには、異議申立期間内に料金を支払い、同期間内に料金の支払いが行われたことに関する情報をTÜRKPATENTに提出しなければならない。

TÜRKPATENTは、異議申立に関する見解を通知するために、出願人に1月の期間を与える。

再審査評価委員会決定により不利益を被る当事者は、決定に対し、決定が自身に通知されてから2月以内に、アンカラの民事知財裁判所に訴訟を起こすことができる。

 

6. 登録証

産業財産法第22条によると、「出願が瑕疵なく行われ、または瑕疵が除かれ、審査、公告が行われ、異議申立が行われず、または行われた異議申立のすべてが最終的に拒絶され、登録料が支払われたことに関する情報も含む不足文書が期間内にTÜRKPATENTに提出され、すべての段階が完了した出願は登録簿に登録され、公報で公告される」。

登録証は、その要求があり、料金が支払われた場合に与えられる。

 

7. 更新

登録商標の保護期間は、出願日から10年である。この期間は10年ごとに更新できる。

更新請求は、商標権者により、保護期間の満了日の6月前までの期間に行い、同期間内に更新料が支払われたことに関する情報をTÜRKPATENTに提出する必要がある。期間内に請求が行われない、または更新料が支払われたことに関する情報がTÜRKPATENTに提出されない場合、更新請求は、保護期間満了日から6月以内に、追加料金を支払うことにより行うことも可能である。

 

8. 商標の使用

正当な理由なく、登録された商品または役務について、商標権者によるトルコにおける真正な使用が、登録日から5年以内に開始されていない、または使用が5年連続して中断されている商標は、商標権登録が取消の対象となる。

商標が、商標権者のライセンスに基づき、ライセンシーによって使用されることも商標者による使用として認められる。

 

下記の状況も商標の使用とみなされる。

  • 商標の識別性を変えることなく、異なる形態で登録商標を使用すること
  • 商標を輸出のためだけに商品またはその包装に使用すること

 

9. 無効

絶対的および相対的拒絶理由が存在する商標は、裁判所による商標権の無効に関する決定の対象となる。

利害関係人、検察官、または関係する公的機関は、商標権の無効を裁判所に請求することができる。

商標権者は、自らの商標登録より遅れる商標登録について、その商標の使用を知っていた、または知りえたにもかかわらず、連続して5年間の商標の使用を黙認した場合、その商標登録が悪意でなされたものでない限り、自らの商標登録を無効の理由として主張できない。

先行する商標との混同の可能性(Likelihood of confusionおよびLikelihood of association)があるとの主張により起こされた無効訴訟において、使用証拠の要求は抗弁として主張することができる。この場合、使用に関する5年の期間は、訴訟日を基準とする。無効が要求されている商標の出願日または優先日において、原告の商標が最低5年間登録されている場合、原告は出願日または優先日に、産業財産法第19条第2項で規定されている使用証拠要件を満たしていることを証明する必要がある。

 

10. 商標権の取消

下記の場合、請求に基づきTÜRKPATENTにより商標権の取消決定がなされる(産業財産法第192条によると、この権限は産業財産法の施行から7年後に、民事知財裁判所からTÜRKPATENTに移転する)。

  • 正当な理由なく、登録された商品または役務について、商標権者によるトルコにおける真正な使用が商標の登録日から5年以内に開始されていない、または使用が5年間連続して中断されている場合
  • 商標登録者が必要な措置等を取らなかった結果、商標が、登録されている商品または役務の普通名称として浸透した場合
  • 商標権者またはそのライセンシーによる使用の結果、商標が登録されている商品または役務の性質、品質または産地に関して、国民に誤解を生じさせる場合
  • 証明商標または団体商標が契約書に反する形で使用されている場合

 

商標権の取消は利害関係人が請求することができる。商標権の取消請求は、請求日に登録簿に所有者として登録されている者、またはその承継人を相手方として請求する。

 

 

トルコにおける四法の審査運用の実態および審査基準・審査マニュアル

 「中東諸国における特許・実用新案・意匠・商標の審査運用の実態および審査基準・審査マニュアルに関する調査研究 報告書」(平成29年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部B

 

(目次)

第2部 調査研究結果

 B トルコ P.33

  1 概要及び基礎情報 P.33

  2 特許 P.43

  3 実用新案 P.60

  4 意匠 P.68

  5 商標 P.77

 

 N 総括表 P.509

トルコにおける未登録周知商標の保護

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トルコ商標制度概要

【詳細】

1.商標法

トルコでは、1995年6月27日に施行され、その後たびたび改正が行われてきた商標の保護に関する法律第556号(以下、商標法)に、商標の保護が規定されている。商標法施行規則は、1995年11月5日に発効した後、1999年4月20日、2002年10月2日、2005年4月9日、2013年3月30日および2015年1月18日に改正が行われている。トルコは、「先使用主義」を採用している国である。

 

2.保護される標章の種類

視覚的に表示可能で、印刷により刊行および複製可能な字句などで、特定の者または事業体の商品または役務と他者のものとを識別できる下記の標識は、商標として登録することができる。

  • 文字
  • 名称
  • 図案
  • 特定の立体的形状
  • 色彩(商標が複数の色彩の組合せから成り、識別性を有する場合に限られる)
  • スローガン
  • 匂い(香の商標)(出願する場合、当該商標の視覚的複製を示すために、その匂いの化学式も提出しなければならない)
  • トレードドレス
  • ホログラム
  • 動き(動的商標)(出願する場合、提示したい瞬間の動きを視覚的に描写する商標見本を提出すべきであり、さらに当該商標における連続する動きが収録されたCDも提出しなければならない)

 

味および触感の商標に関する出願は、認められていない。

 

3.分類

トルコ特許庁では、商品および役務について、ニース協定に基づくニース国際分類を採用している。ニース国際分類は、実務における一般的指針として用いられる。

同一商標に関して、複数の分類をカバーする出願を申請することが可能である(一出願多区分制)。

登録前であればいつでも、出願人またはその代理人の請求に基づき、料金の納付をもって、一つの出願を複数の出願に分割することが可能である。ただし、登録後の分割は許されていない。

 

4.出願

商標出願する際、下記の情報および書類を提出しなければならない。

  • 出願人の名前および住所
  • 出願人の国籍
  • 商品または役務の一覧
  • 商標見本(5×5 cmまたは7×7 cmのサイズ;300 Dpi;RGBカラー)
  • 法定出願料
  • 委任状(認証不要)

 

優先権を主張する場合は、下記の情報および書類がさらに必要となる。

  • 優先権の基礎となる出願の番号と出願日(出願時に必要)
  • 優先権証明書の原本(出願後3ヵ月以内に提出されない場合、優先権主張は無効とみなされる)

 

優先権主張とは、出願人の母国がパリ条約の加盟国である場合、その母国出願の出願日がその後に出願されるトルコ出願の出願日とみなされることをいう。ただし、優先権を主張する場合、その母国出願後、6ヵ月以内にトルコ出願をしなければならない。

商標出願は、電子的にオンラインで申請することができる。2015年7月1日以降は、商標出願を書面ではできなくなっている。

 

5.登録証

商標法第39条では、「本法律および施行規則に基づいて申請された商標出願は、瑕疵がないと認定され、または瑕疵が是正され、または所定の期間内に異議申立を受けず、または異議申立が否認された場合には、登録簿に記載される。当該出願人は、登録証を受領する」と規定されている。

登録証の発行には、登録料の納付が必要となる。2015年1月12日以降、登録証はA4サイズ、中厚口(80g)の紙面に印刷され、出願人に送付される。

 

6.審査

トルコ特許庁の商標局は、審査制度を実施しており、絶対的拒絶理由の審査に加え、先行権利に対する相対的拒絶理由の審査も行っている。最初の審査で拒絶理由が見つからない場合、当該出願は毎月発行される商標公報において公告される。第三者は、当該公報の発行日から3ヵ月以内に異議申立をすることができる。

上記の期間内に異議申立がされなかった場合、当該出願は商標登録簿に記載され、商標官報に掲載される。異議申立がない場合、出願から登録までの所要期間は、約1年である。

最初の審査において出願が全体的または部分的に拒絶された場合、出願人は2ヵ月以内に特許庁商標局の審判部に審判請求することができる。この場合、審判部で審理され、審判請求が認められた場合には、異議申立の為に公報において公告される。

トルコ特許庁の商標局には、異議申立および上記の審判請求の審理を取り扱う別々の部門(異議・審判部)がある。この部門による決定を不服とする当事者は、トルコ特許庁の「再審査評価委員会」に対して不服申立できる。再審査評価委員会は、特許庁の最終決定機関であり、当委員会の決定に不服の場合、2ヵ月以内に裁判所に提訴することができる。

トルコ特許庁より異議通知を受領した出願人は、異議通知から1か月以内に答弁書を提出することができる。

異議申立が全部または一部認められ、当該出願が全部または一部拒絶された場合、出願人は異議決定通知から2ヵ月以内に、異議決定に対する不服申立を再審査評価委員会にすることができる。同様に、異議申立人も2ヵ月以内に、異議申立の否認または一部承認に対する不服申立をすることができる。不服申立において答弁書を提出できるが、異議申立または不服申立のいずれの段階においても答弁書の提出は強制ではない。

 

7.更新

商標登録は、出願日から10年間有効に存続する。登録はその後、10年ごとに更新できる。商標登録は、商標権者または商標権者の代理人による更新出願および更新登録料の納付をもって更新される。

有効期間が満了する月の末日前の6ヵ月以内に、更新出願し、更新登録料を納付しなければならない。満了日を過ぎた場合は、追加料金の納付をもって、当該満了日後の6ヵ月以内に、更新出願することができる。更新出願は、電子的にオンラインですることもできる。

 

8.商標の使用

登録から5年以内に正当な理由なく商標が使用されなかった場合、または継続して5年間にわたり使用が中断されていた場合、当該商標登録は不使用取消対象となる。

ただし、次の行為は、登録商標の使用とみなされる。

  • 商標の識別性を変えることなく、異なる形態で登録商標を使用すること
  • 輸出のためだけに商品またはその包装に商標を使用すること
  • 商標権者の同意を得て商標を使用すること
  • 商標を付した商品を輸入すること。

 

9.無効

管轄裁判所において、商標登録の無効が認定される。一般的な無効理由は、絶対的拒絶理由および相対的拒絶理由ならびに有効な使用の欠如である。

絶対的拒絶理由および相対的拒絶理由に基づく無効訴訟は、登録日から5年以内に提起しなければならない。ただし、悪意が存在する場合には、期限は適用されない。

無効訴訟を提起できるのは、あらゆる利害関係者、先行権利の所有者、ライセンシー、検察官または関係する政府機関である。

トルコにおける商標異議申立制度

【詳細】

商標法第35条により、異議申立書は商標登録の絶対的拒絶理由、相対的拒絶理由または悪意を根拠として提出することができる。絶対的拒絶理由とは、商標が記述的であること、顕著性を欠くこと、公的な標章に抵触すること等である。最も重要かつ通常の異議申立の根拠は、下記のような相対的拒絶理由である。

 

(1)同一性(同一商標かつ同一指定商品または役務である場合。)

(2)出所混同のおそれ(同一商標かつ類似指定商品または役務であること、もしくは類似商標かつ同一または類似指定商品または役務である場合。)

(3)代理人等の不当出願(商標権者の代理人または代表者の名義で、当該商標権者の同意なく出願されている場合。)

(4)未登録商標または取引上使用されている標識の先使用(未登録商標が、被異議申立商標出願の出願日前に使用されている場合。)

(5)知名度を有する商標(指定商品または役務が非類似であっても、登録商標またはより早い出願日を有する商標が知名度を有する場合であって、被異議申立出願の同一または類似の商標が、登録商標もしくはより早い出願日を有する商標を不当に利用し、害することになる場合。)

(6)他の知的財産権(被異議申立出願の商標が、第三者の人名、写真、著作権、その他の知的財産権を侵害する場合。)

(7)団体標章または証明標章(団体標章または証明標章と同一または類似の商標で、当該団体標章または証明標章の権利期間満了後3年以内の場合。)

(8)未更新の登録商標(未更新の登録商標と同一または類似の商標で、かつ同一または類似の指定商品または役務であり、当該未更新の登録商標の権利期間満了後2年以内の場合。)

 

異議申立は、書面で提出しなければならず、全ての異議理由の陳述が含まれていなければならない。特許庁は、施行規則に定められた期間内に、追加の事実、証拠および書類の提出を要求することができる。要求された追加の事実、証拠および書類が、施行規則に定められた期間内に提出されなかった場合、異議申立はなされなかったものとみなされる。

 

特許庁より被異議申立人に対して異議通知が送達され、被異議申立人は、当該異議通知から1ヵ月以内に答弁書を提出することができる。

 

異議決定は、特許庁内部の業務量に拠るが、通常4ヵ月から8ヵ月で送達されている。異議決定により、異議申立が全部または一部成立し、被異議申立出願が全部または一部拒絶された場合、被異議申立人は、異議決定より2ヵ月以内に再審査評価委員会に不服申立書を提出することができる。同様に、異議申立が全部または一部拒絶された場合、異議申立人は、異議決定より2ヵ月以内に再審査評価委員会に不服申立書を提出することができる。不服申立に対しては、他の当事者は答弁書を提出することができる。

 

不服申立に関する再審査評価委員会の決定に対しては、当該決定より2ヵ月以内に管轄裁判所に対して提訴することができる。

 

トルコを指定国とする国際登録出願についても、上記の直接出願と同様の理由により異議申立を提起することが可能である。国際登録出願の拒絶理由が異議申立である場合は、当該拒絶がWIPO国際事務局へ通知される。直接出願と大きく異なる点は、国際登録出願人に対して、異議申立の審査中に公的な異議通知が送達されないことである。

 

2013年5月24日より、オンラインによる異議申立が可能となっている。ただし、トルコ語が唯一認められている使用言語であり、直接外国からのオンラインファイリングは認められていない。

 

2015年1月より、オンラインによる異議申立とペーパーによる異議申立の公費に差額が設けられている。オンラインによる異議申立の公費が低く設定されているため、最近ではオンラインによる異議申立の割合が増加傾向にある。

 

【留意事項】

商標法は、異議申立制度とは別に、「第三者による所見」制度を規定している。「第三者による所見」制度に基づき、第三者は誰でも、商標登録の絶対的拒絶理由により登録要件を満たしていない旨の所見を特許庁に提出することができる。この所見は、公費の支払いが不要となっており、商標出願の公告後登録までの間ならばいつでも提出可能である。ただし、この制度は、商標登録の相対的拒絶理由には適用されない。