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タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアの商標制度比較

国名パリ
条約
WTO
協定
TLTマドリッド
協定議定書
ニース
協定
商標法
(存続期間)
審査
制度
タイ××*2
(出願日から10年)
ベトナム××*2*3
(出願日から10年)
インドネシア*2
(出願日から10年)
シンガポール×*1*2
(出願日から10年)
マレーシア×*2
(出願日から10年)
*1:商標法に関するシンガポール条約(STLT)に加盟
*2:ニース国際分類を採用。
*3:知的財産法に商標に関する規定がある。

1. パリ条約
 タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアは、すべてパリ条約に加盟している。

関連情報
「パリ条約」(2023.05.12)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/paris/patent/index.html
「パリ条約加盟国」(英語、随時更新)
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/ShowResults?search_what=C&treaty_id=2

2. WTO協定
 タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアは、すべてWTO協定に加盟している。

関連情報:
「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定」(2018.09.04)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/it/page25_000396.html
「世界貿易機関加盟国」(英語、随時更新)
https://www.wto.org/english/thewto_e/whatis_e/tif_e/org6_e.htm
「世界貿易機関(WTO)」
https://www.soumu.go.jp/g-ict/international_organization/wto/pdf/wto.pdf

3. 商標法条約(TLT)および商標法に関するシンガポール条約(STLT)
 商標法条約は、商標出願手続きの国際的な制度調和と簡素化を図るための条約である。
 インドネシアは加盟しているが、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアは未加盟である。なお、シンガポールは、商標法条約を包含する「商標法に関するシンガポール条約(STLT)」に加盟している。タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアは、未加盟である。

関連情報:
「商標法条約」(1994.10)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/tlt-shouhyou94.pdf
「商標法条約締約国」(英語、随時更新)
https://wipolex.wipo.int/en/treaties/ShowResults?search_what=C&treaty_id=5
「商標法条約に基づく規則」
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/tlt/rutlt/chap1.html
「商標法に関するシンガポール条約」(2016.03.14)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page22_001869.html
「商標法に関するシンガポール条約(STLT)の概要」(2017.04.06)
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/wipo/stlt_20160210.html
「商標法に関するシンガポール条約(STLT)締約国」(英語、随時更新)
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/ShowResults?search_what=C&treaty_id=30

4. マドリッド協定議定書
 マドリッド協定議定書は、商標についてWIPO国際事務局が管理する国際登録簿に国際登録を受けることにより、指定締約国においてその保護を確保できる条約である。
 タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアのすべてが加盟している。

関連情報:
「標章の国際登録に関するマドリッド協定の1989年6月27日にマドリッドで採択された議定書(マドリッド協定議定書)」(2009.01.14)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/madrid/mp/index.html
「マドリッド協定議定書の概要」(2010.07.05)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/madrid/seido/mado.html
「【商標の国際出願】締約国一覧」(2024.06.04)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/madrid/madopro_kamei.html

5. ニース協定
 ニース協定は、商標登録のための商品およびサービスの分類として各国共通の国際分類を採用することを目的としている。
 シンガポール、マレーシアおよびインドネシアは加盟し、タイおよびベトナムは未加盟であるが、タイは商標審査基準第3部の商標法第13条解説の末尾で、ベトナムは知的財産法第105条第3項で、いずれも商標出願にニース国際分類を記載することが規定されている。

関連情報:
「標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」(1990.02.20)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-H2-0005.pdf
「ニース協定と国際分類の概要」(2019年11月現在の加盟国一覧のため、2023年10月に加盟したインドネシアについて記載なし)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kokusai_bunrui/document/kokusai_bunrui_11-2020/10.pdf
「ニース協定ジュネーブ改正協定加盟国一覧」(英語、随時更新)
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/ShowResults?search_what=A&act_id=22
「タイ商標審査基準」(2016年版、日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-shouhyou_kijun.pdf

6. 商標法
 タイでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(商標法第42条および第53条)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第9条)。
 ベトナムでは、商標は知的財産法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(知的財産法第93条第6項)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(知的財産法第105条1(a))。
 インドネシアでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第35条第1項、第6条第1項)。
 シンガポールでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(第15条第2項および第18条第1項)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第5条第2項(d)および商標規則第19条第3項)。
 マレーシアでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(商標法第36条第1項および第39条第1項)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第18条)。

7. 審査制度
 タイでは、商標の実体審査が行われる。早期審査制度は採用されていないが、実務上は適切な理由を添えた上申書を提出することで、早期審査を請求することができる。異議申立は、実体審査を経て出願が公告された後60日以内に何人も申し立てることができる(商標法第35条)。
 ベトナムでは、商標の実体審査が行われる(知的財産法第119条第2項)。早期審査は、2022年6月16日付の知的財産法に基づく通達(23/2023/TT-BKHCN)から規定されなくなった。異議申立は、方式審査を経て出願が公開された日から5か月以内に何人も申し立てることができる(知的財産法第112a条第1項c)。
 インドネシアでは、商標の実体審査が行われる(商標法第23条)。早期審査制度は採用されていない。異議申立は、方式審査を経て出願が公開された日から2月以内に何人も申し立てることができる(商標法第14条第2項および第16条第1項)。
 シンガポールでは、商標の実体審査が行われる(商標法第12条)。異議申立は、実体審査を経て出願が公告された日から2月以内に何人も申し立てることができる(商標法第13条および商標規則第29条第1項)。
 マレーシアでは、商標の実体審査が行われる。早期審査を請求することができる。異議申立は、実体審査を経て出願が公告された日から2月以内に何人も申し立てることができる(商標法第17条第5項、第29条、第34条第2項、商標規則第23条第1項)。
 詳細は以下の関連記事を参照されたい。

関連記事:
「タイにおける商標出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17463/
「タイにおける商標制度のまとめ-手続編」(2020.09.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19444/
「タイにおける商標制度のまとめ-実体編」(2020.06.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18619/
「ベトナムにおける商標出願制度概要」(2019.06.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17473/
「ベトナムにおける商標制度のまとめ-手続編」(2020.07.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19290/
(注:本稿作成後、上記記事は更新されています(2025.05.01)。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40950/
「ベトナムにおける商標制度のまとめ-実体編」(2020.05.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18601/
(注:本稿作成後、上記記事は更新されています(2025.05.01)。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40963/
「インドネシアにおける商標出願制度概要」(2019.07.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17530/
「インドネシアにおける商標制度のまとめ-手続編」(2022.04.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22921/
「インドネシアにおける商標制度のまとめ-実体編」(2022.04.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22923/
「シンガポールにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17581/
「シンガポールにおける商標制度のまとめ-手続編」(2020.09.03公開、2022.05.20一部訂正)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19446/
「シンガポールにおける商標制度のまとめ-実体編」(2020.06.09公開、2024.07.05一部訂正)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18623/
「マレーシアにおける商標出願制度概要」(2025.01.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40510/
「マレーシアにおける商標制度・運用に係る実態調査」(2021.10.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/21034/

8. コンセント制度
 コンセント制度とは、先行登録商標に類似すると判断される場合であっても、当該先行登録商標の商標権者が同意をすれば出願商標の登録を認める制度である。
 タイにおいては、登録官が審査の上、コンセントを認めることがある旨が商標法第27条および第51-1条に規定されている。
 ベトナムにおいては、法令で明文化された規定はないが、同意書は受理される。
 インドネシアでは、有名人および他の法人の名称ならびに国などの機関の名称および紋章などが、当事者の同意がある場合に出願が認められることがある旨が改正商標法第21条第2項に規定されている。
 シンガポールにおいては、先の権利所有者が同意すれば登録官の裁量で登録できる旨が商標法第8条第9項に規定されている。
 マレーシアでは、商標法第24条第7項に先の権利所有者が同意し、登録官が公共の利益および公衆における混同の虞を考慮の上、審査することが規定されている。
 詳細は、以下の関連記事を参照されたい。

関連記事
「タイにおける商標コンセント制度に関する留意点(前編)」(2023.05.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/34437/
「タイにおける商標コンセント制度に関する留意点(後編)」(2023.05.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/34439/
「ベトナムにおける商標のコンセント制度」(2017.03.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13215/
「インドネシアにおける商標のコンセント制度について」(2022.12.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27347/
「シンガポールにおける商標のコンセント制度について」(2023.01.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27455/
「マレーシアにおける商標のコンセント制度」(2017.03.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13213/

タイにおける商標制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類(1992年省令第3項~第12項の2)

 

① 願書

 以下の情報を記載する。

 ・出願人情報

 ・商標見本(外国語からなる場合はその称呼と意味)

 ・指定商品・指定役務

 ・その他必須な内容

② 委任状

 ・タイ国外で署名する場合はその国の公証役場で署名認証手続が必要

③(タイ国籍以外の自然人の場合のみ)本人署名入りのパスポート写し

④(タイ企業の場合のみ)発行から6か月以内の会社登記簿謄本

 

 優先権を主張を伴う場合は以下の書類も必要となる。

⑤ 優先権主張証明書

⑥ 優先権主張申請書(タイ出願時に基礎出願が無効になっていない旨出願人が陳述する書面)

 

関連記事:「タイにおける商標出願制度概要」(2019.6.25)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17463/

 

関連記事:「タイにおける商標制度の概要」(2014.11.7)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/7018/

 

 

2. 登録できる商標/登録できない商標

 

(1)登録できる商標の種類(タイ商標法第4条)

 写真、絵画、創作された図、ロゴ、名称、語句、文、文字、数字、署名、色の集合、物体の外形(shape)もしくは形状、音、またはそれらの一つもしくは複数が結合したもの。

 

(2)登録できない商標の種類(タイ商標法第8条)

① 国の紋章または盾形紋章,王室の印章,公印,チャクリ王朝の紋章,王室の勲章からなる紋章および記章,官庁印,省,事務局,局または州の印章

② タイの国旗,王旗または公式な旗

③ 王室の名称,王室のモノグラム(組合せ図案文字)または王室の名称若しくは王室のモノグラムの省略形

④ 王,王妃および王位継承者の肖像

⑤ 王,王妃若しくは王位継承者または王族を表す名称,語,言葉または紋章

⑥ 他の国の紋章および国旗,国際組織の紋章および旗,他の国の首長の紋章,他の国または国際組織の公式の紋章および品質管理証,他の国または国際組織の名称およびモノグラム。ただし,当該他の国または国際組織の担当官の許可がある場合はこの限りでない。

⑦ 赤十字の公式記章および紋章または「Red Cross」若しくは「Geneva Cross」の名称

⑧ タイ政府,タイの政府機関,公共企業体若しくはタイのその他の政府組織または外国政府若しくは国際機関が主催した博覧会またはコンテストで授与されたメダル,免状または証明書の外観と同一または類似の標章またはその他の標章。ただし,このメダル,免状,証明書または標章がその描写を付した商品に関して出願人に実際に授与され,係る商標の一部として使用される場合を除く。

⑨ 公序良俗に反する標章

⑩ 登録商標であるか否かを問わず,大臣の告示で定める著名商標と同一の標章または商品の所有者若しくは出所に関して公衆を混同させる虞のある商標に類似する標章

⑪ ①,②,③,⑤,⑥または⑦に類似する商標

⑫ 地理的表示に関する法律に基づいて保護されている地理的表示

⑬ 大臣の告示で定めるその他の商標

 

 2016年商標審査マニュアル(タイ語のみ、タイ知的財産局のウェブサイトから参照可。)には登録できない商標の例が挙げられている。

 

(3)通常の商標以外の制度

 証明標章、団体標章も登録することが可能である。

 

関連記事:「タイにおける公序良俗に反する商標」(2015.6.23)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/9170/

 

関連記事:「タイにおける周知商標」(2015.5.19)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8586/

 

 

3. 出願の言語

 

 出願手続にはタイ語を使用しなければならない(1992年省令第2項)。

 商標が外国文字を含む場合はその意味を願書に記載しなければならない。(1992年省令第12項)。

 

関連記事:「タイにおける外国語表記を含む商標出願の識別性判断」(2015.2.16)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/7936/

 

 

4. 商標登録出願時の特例(タイ商標法第28条の2)

 

 タイまたはタイが加盟している商標保護に関する条約または国際協定の加盟国でタイまたは当該加盟国の政府機関、公共企業体またはその他の政府組織の企画により開催された博覧会で展示された場合で、商標所有者がその商品を当該博覧会に持ち込んだ日かまたは最初の外国出願日のうち何れか早い方の日から6か月以内に当該博覧会に展示した商品について商標登録出願を行ったとき、当該商標の出願人は第28条第1段落に基づく権利(優先権)を主張することができる。

 

 

5. 審査

 

(1)実体審査

 登録官は、その出願商標が登録要件を満たさない、または保護を受けようとする商品が明確に記載されていない等と判断した場合、拒絶理由通知または拒絶査定を発して出願人に通知する。(タイ商標法第15条、第16条)

 登録官は、その出願商標が登録要件を満たすと判断した場合、公告命令をおこない、公告する。(タイ商標法第29条)

 

(2)早期審査

 制度を定める条文は無いが、適切な理由を添えた上申書を登録官に提出することで、実務上早期審査を請求することができる。ただし、早期審査の可否は登録官の裁量による。

 

(3)商標の類否判断の概要

 商標の外観と称呼が類似し、区分に関わらず同じ種類の商品または役務に使用するとき、公衆に対して商品または役務の所有者または出所に関して誤認混同を生じさせる恐れのある程に類似すると判断される。(タイ商標法第13条、2016年商標審査マニュアル)

 

関連記事:「タイの商標関連の法律、審査基準等」(2019.4.4)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16812/

 

関連記事:「タイにおける商標審査基準関連資料」(2016.2.26)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10286/

 

 

6. 出願から登録までのフローチャート

 

(1)出願から登録までの商標出願のフローチャート

01TH10_1

(2)フローチャートに関する簡単な説明

① 商標出願

 所定の書式を整えてタイ商務省知的財産局(Department of Intellectual Property, DIP)へ提出する。

 タイに居所を有していない日本企業や自然人が出願するためには、タイ国内に居所を有する者(特許代理人資格は必要ではなく、国籍も問わない)が出願行為を代理する必要があり、委任状が必要となる。

 

② 審査

 提出書類の書式が正しいか、必要書類が揃っているかといった方式的な要件の他、指定商品または指定役務記述の登録可否判断、識別性の判断、先行商標との類否判断が行われる。

 国際分類表を参考に作成された独自の商品役務リストを採用しており、全体的に細かい記述が求められる。

 日本より厳しく識別性を判断する傾向にあるため、出願前に現地代理人にコメントを求めることをお勧めする。

 

③ 拒絶理由通知

 審査の結果、指定商品または指定役務記述等に対する補正命令、権利不要求(ディスクレーマー)命令等が発出された場合、出願人は命令受領から60日以内に登録官へ応答することができる(期限の延長不可)。期日内に応答しない場合、放棄とみなされる。

 

④ 拒絶命令

 審査の結果、識別性の不備、または先行商標と同一もしくは類似するとして拒絶命令が発出された場合、出願人は拒絶命令受領から60日以内に商標委員会へ審判請求することができる(期限の延長は不可)。期日内に応答しない場合は放棄とみなされる。

 

⑤ 商標委員会への審判請求

 拒絶命令に不服があれば、商標委員会に審判請求をすることができる。拒絶命令の内容が解消された場合は審査に係属する。

 

⑥ 裁判所への提訴

 商標委員会への審判請求によっても問題が解消されなければ、知的財産・国際取引中央裁判所(CIPITC)へ提訴することができる。裁判は三審制で、上級審として控訴審(Court of Appeals)、最高裁(Supreme Court)がある。

 

⑦ 公告

 審査の結果、登録するべきと判断された場合は公告される。第三者は、公告から60日以内に異議申立をすることができる。

 

⑧ 登録料支払命令

 異議申立期間中に第三者による異議申立がなければ登録料支払命令が発出される。出願人は命令受領から60日以内に登録料を支払う必要がある。支払わなかった場合、放棄とみなされる。

 

⑨ 商標登録証の発行

 登録料の支払いにより登録番号が付与され、商標登録証が発行される。

 

 

[権利設定前の争いに関する手続]

 

7. 拒絶命令に対する不服(タイ商標法第18条)

 

 審査の結果、識別性の不備、または先行商標と同一もしくは類似するとして拒絶命令が発出された場合、出願人は拒絶命令受領から60日以内に商標委員会へ審判請求することができる。

 

関連記事:「タイにおける商標権の取得」(2014.12.19)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/7426/

 

 

8. 権利設定前の異議申立(タイ商標法第35条)

 

 第三者は、公告から60日以内に異議申立をすることができる。

 

 

9. 上記7の判断に対する不服申立(タイ商標法第38条)

 

 商標委員会の審決に不服とする商標出願人または異議申立人は、審決の受領日から90日以内に知的財産・国際取引中央裁判所(CIPITC)に提訴することができる。

 

関連記事:「タイにおける商標権関連判例・審決例」(2017.3.22)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/precedent/13268/

 

 

[権利設定後の争いに関する手続]

 

10. 権利設定後の異議申立

 

 条文上規定はない。

 

 

11. 設定された商標権に対して、「不使用以外」で権利の取消しを申し立てる制度

 

 その登録商標が登録要件(第7条、第8条、第13条)を満たしていないことを証明できる場合、商標委員会へ取消請求することができる。(タイ商標法第61条)

 その登録商標が公序良俗に反する場合、商標委員会へ取消請求することができる。(タイ商標法第62条)

 その登録商標が通商上慣用となり、業界または公衆にとって商標としての性格を失ったことを証明できる場合、知的財産・国際取引中央裁判所(CIPITC)に取消請求することができる。(タイ商標法第66条)

 請求人自らがその商標権者よりも優先する権利を有することを証明できる場合、その商標権の登録命令日から5年以内に知的財産・国際取引中央裁判所(CIPITC)へ取消請求することができる。(タイ商標法第67条)

 

関連記事:「タイにおける知的財産権登録に拠らない発明、意匠、商標の保護」(2014.12.15)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/7291/

 

 

12. 商標の不使用取消制度(タイ商標法第63条)

 

 登録された指定商品または指定役務について取消請求を行う前の3年間に商標が使用されていないことを証明できる場合、商標委員会に対して取消請求を行うことができる。

 

 

13. その他の制度

 

 特になし。