タイにおける特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
出願に必要な書類およびその内容は、タイ特許法第17条および省令21号第2条~15条に規定されている。願書、明細書(クレームと発明の詳細な説明とを含む。)、要約書、(必要な場合は)図面、さらに(必要な場合は)委任状や譲渡証、(優先権主張する場合)優先権証明書等を提出する。
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2. 記載が認められるクレーム形式
(1)認められるクレーム形式
装置、方法、システム等の形式については認められる。
(2)認められないクレーム形式
プログラムは認められない(タイ特許法第9条)。
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3. 出願の言語
出願書類はいずれもタイ語で記載される必要がある(タイ特許規則省令21号第12条)。
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4. グレースピリオド
タイ特許法6条には、「特許出願日前の12月間に、非合法的に発明の主題が取得されて行われた開示、または発明者が国際博覧会若しくは公的機関の博覧会での展示により行った開示は、開示とはみなされない。」と規定されている。
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5. 審査
(1)実体審査
実体審査請求された発明について、審査官が実体審査を行う(タイ特許法第33条)。
2019年7月現在、他国で登録となった対応外国特許に合わせて補正をすることで新規性等の特許要件を満たしているものとして審査され登録を受けることができる、いわゆる修正実体審査が行なわれている。不特許事由についてはこれとは別に審査が行われる。
(2)早期審査(優先審査)
早期審査のための手段としては、日本での特許に基づくPPH(特許審査ハイウェイ)申請が挙げられる。なお、2019年7月現在PPHはいわゆるノーマルPPHのみに限られており、PCT-PPH等は利用できない。また、日本以外の国とはPPHを試行していない。
(3)出願を維持するための費用は規定がない。
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6. 出願から登録までのフローチャート
出願から登録までの特許出願のフローチャート
[権利設定前の争いに関する手続]
7. 拒絶査定不服
審査において拒絶されるべき(補正指令によっても治癒されない拒絶の事由がある等)と審査官が判断した場合、局長による拒絶命令(日本での拒絶査定に該当)が発出される(タイ特許法第28条)。拒絶命令に不服がある場合、特許委員会に不服申立(日本でいうところの審判)をすることができる(同第72条)。
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8. 権利設定前の異議申立
第三者は、出願公開日から90日以内に異議申立をすることができる(同第31条)。
9. 上記7の判断に対する不服申立
特許委員会への不服申立によっても問題が解消されなければ、通知の受領から60日以内にタイ国際取引および知的財産裁判所へ提訴することになる(同第74条)。裁判は三審制で、上級審として控訴審、最高裁がある。
[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
条文上規定はない。
11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度
タイ特許法第5条(特許要件)、第9条(不特許要件)、第10条(特許を出願する権利)、第11条(職務発明)または第14条(出願人適格)の規定に違反して付与された特許に対しては、何人も特許の無効をタイ国際取引および知的財産裁判所に提訴することが可能である(タイ特許法第54条)。
12. 権利設定後の権利範囲の修正
登録後の訂正については条文上規定がない。
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13. その他の制度
特になし。
タイにおける特許制度のまとめ-実体編
1. 特許制度の特徴
タイ特許法上規定されている制度のうち、日本特許法と異なる主な点は下記の通り。
(1)タイ特許法9条に挙げられている不特許事由は、下記のように日本で規定されている不
特許事由とは異なる。
i. 自然発生する微生物およびそれらの成分,動物,植物,または動物若しくは植物か
らの抽出物
ii. 科学的または数学的法則および理論
iii.コンピュータ・プログラム
iv. 人間および動物の疾病の診断,処置または治療の方法
v. 公の秩序,道徳,健康または福祉に反する発明
(2)出願人は、他国における対応外国特許出願の審査結果を、審査結果受領から90日以内に
提出するという対応外国特許提出義務(タイ特許法27条)がある。なお、当該期間を
過ぎて提出しても実務上罰則はない。
(3)実体審査請求は出願公開日から5年である(タイ特許法29条)。
(4)分割出願(タイ特許法26条)は、審査官が出願を分割するよう求める分割指令を発出し
た後120日以内の期間のみすることができる。出願人が自発的に出願の分割を希望する
場合には、審査官に対して分割指令を発出するように上申することが可能である。
(5)出願後、出願公開までの間に初期審査(方式審査)が行なわれるが、方式的要件以外に
不特許事由に該当するか否かも審査が行われる。
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2. 発明の保護対象
(1)発明の定義
タイ特許法3条には、「『発明』とは、新しい製品若しくは製法を生み出す技術革新若しくは発明,または既知の製品若しくは製法の改良をいう。」と規定されている。
(2)保護されない発明
タイ特許法上、上記の不特許事由(9条)に該当する発明は保護されない。日本より厳しく判断されることもあり、日本で登録を受けたものであってもタイでは登録を受けることができない場合がある。
(3)その他(医薬品の扱いなど)
医薬品についても、上記の不特許事由に該当しないものであれば登録を受けることができる。
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3. 特許を受けるための要件
(1)新規性、進歩性(創造性)、実用性(産業上利用可能性、自然法則利用性)等
発明の登録要件としては、タイ特許法5条に新規性、進歩性、産業上の利用可能性の3つを満たすことが規定されている。なお、詳細は本稿では省略するが、特に新規性の要件は日本の特許法に規定される新規性の要件とは異なり国内公知である点に注意されたい。
(2)記載要件
タイ特許法17条には、記載要件として、当該技術分野において当業者が当該発明を実施及び使用することができるような完全,簡潔,明瞭かつ正確な言葉で記されていること等が規定されている。また、省令21第4条には、クレームには,保護を求める発明の特徴を,発明の詳細な説明に沿って明確かつ正確に記載しなければならないこと等が規定されている。
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4. 職務発明の取り扱い
タイ特許法11条において、職務発明は、その契約に特に定めがない限り使用者又は業務委託者に帰属するものとされている。また、タイ特許法12条には、従業者の行った発明から使用者が利益を受ける場合は,かかる従業者は,通常の賃金の他に報酬を受ける権利を有することが規定されている。
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5. 特許権の存続期間
(1)存続期間は、タイにおける出願日から20年である。
(2)特許権の存続期間の延長制度はない。
(3)審査の遅延による存続期間の延長補償はない。タイにおける審査の遅延は、2017年からの審査官の増員により、2019年7月現在徐々にではあるが解消されつつある。