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日本とタイにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
 日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

日本国特許法第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。
4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

2.タイにおける特許出願(発明特許出願および小特許出願)の分割出願の時期的要件
 タイでは、分割指令を受領した日から所定期間内*)に分割出願することができる(タイ特許法第26条)が、出願人が自発的に分割出願を行うことはできない。

タイ特許法 第26条
出願審査において,その出願が単一の発明概念を構成する関連性ある発明に該当しない複数の異なる発明に関するものであると判断される場合,担当官は,出願人に通知して,かかる出願をそれぞれが単一の発明を対象とする複数の出願に分割するよう求めるものとする。
出願人が前段落の通知の受領後180日以内に分割出願した場合,その分割出願は,最初の出願の出願日に行われたとみなすものとする。
出願は,省令に定める規則及び手続に従って分割されるものとする。
出願人が出願を分割する要求に応じられないときは,120日以内に長官に対して審判請求することができる。長官の決定を最終とする。

タイ特許法 第65条の10
第II章の発明特許に関する第6条,第8条,第9条,第10条,第11条,第12条,第13条,第14条,第15条,第16条,第17条,第18条,第19条,第19条の2,第20条,第21条,第22条,第23条,第25条,第26条,第27条,第28条,第35条の2,第36条,第36条の2,第38条,第39条,第40条,第41条,第42条,第43条,第44条,第45条,第46条,第47条,第47条の2,第48条,第49条,第50条,第50条の2,第51条,第52条,第53条及び第55条の規定は,第III章の2の小特許について準用するものとする。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第1部 13.1
13.1複数の発明を有することによる分割出願
 出願の審査において、出願が単一の発明概念とみなすことができないほど互いに関連がない複数の発明を含んでいると認めたとき、担当官は特許出願人に発明ごとに出願を分割するよう通知する。
 特許出願人が担当官から通知を受けた日から120日以内に、第1項に基づき分割した発明の出願を行ったとき、最初に出願した日を出願日とみなす。
 出願の分割は省令の定める規則及び手続きに従わなければならない。特許出願人が担当官の命令に同意しないとき、120日以内に局長に対して審判請求できる。局長が決定及び命令を行なったとき、局長の命令を最終とする。
 この場合、審査官は、審査官からの出願分割命令があり、元の出願から分割された特許出願が当該命令の受領日から120日以内に提出されているか審査する。出願人が当該期間内に出願を提出した場合、元の出願からの分割出願は最初の出願の出願日に提出したものと見なされる。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第1部 14.1
14.1 複数の発明がある(小特許)出願の分割

 特許出願の審査において、担当官が単一の発明とみなすことができないほどお互いに関連がない複数の発明を含んでいる出願と認めたとき、担当官は特許出願人に発明ごとに出願を分割するよう通知する。
 特許出願人が担当官から通知を受けた日から120日以内に、第1項に基づき分割した発明の出願を行ったとき、最初に特許出願した日を出願日とみなす。
 出願の分割は省令の定める規則及び手続きに従わなければならない。
 特許出願人が担当官の命令に同意しないとき、120日以内に局長に対して審判請求できる。局長が決定及び命令を行なったとき、局長の命令を最終とする。
 この場合、審査官は、審査官からの出願分割命令があり、元の出願から分割された小特許出願が当該命令の受領日から120日以内に提出されているか審査する。出願人が当該期間内に出願を提出した場合、元の出願からの分割出願は最初の出願の出願日に提出したものと見なされる。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第3部 4.4.3
4.4.3 発明が単一性を欠く(Lack of Unity)場合の実務指針

 第18条に基づき、各特許出願においては発明一件のみ出願できる。複数の発明が同一の発明概念を構成する程度に関連している場合のみ、単一の特許出願として出願できる。
 第26条に基づき、出願の審査において、出願が単一の発明概念を構成する程には関連しない複数の異なる発明に対するものであることが認められた場合、担当官は単一性のある各発明に対する数の出願に分割するよう出願人に通知する。
 ●出願人が前段に基づく当該通知の受領から120日以内に分割出願を提出した場合、当該出願は最初の出願日に提出されたものと見なす。出願の分割は省令に定める規則及び手順に基づき行う。
 ●特許出願人が担当官から特許出願人に対しての分割出願の命令に同意しない場合、120日以内に局長に審判を請求しなければならない。局長が決定し命令した場合、局長の命令が最終となる。

*) 所定期間が、特許法と審査マニュアルで異なっているが、審査マニュアルの「実務指針」にあるように実務上は120日で運用されている。

    日本とタイにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 タイ
分割出願の時期的要件**) 補正ができる期間 分割指令の受領日から120日以内

**) 査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

日本とタイの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長

(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月

条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1.(2)ア、2.(2)ア

日本国特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

日本国特許法第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

方式審査便覧04.10 法定期間及び指定期間の取扱い
1.手続をする者が在外者でない場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
ア.意見書(特50条、商15条の2、15条の3第1項、商附則7条)
2.手続をする者が在外者である場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)及び(12)を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。
ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。)

(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能
 (*特許庁「出願の手続」第二章 第十八節 IV指定期間の延長、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_18.pdf

条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(16)ア、2.(12)ア、イ

日本国特許法第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。

日本特許庁 方式審査便覧 04.10 1.(16)ア、2.(12)
1 手続をする者が在外者でない場合
(16) 次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2 手続をする者が在外者である場合
(12) 特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができる。
イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。

2.タイの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長

(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・拒絶理由通知書への応答期間は90日

条文等根拠:特許法第27条、審査マニュアル第1章第3部4.4.4第5条に該当しない場合の実務指針、第27条関連記載

タイ特許法 第27条
出願審査において,担当官は,出願人を召喚して質問に答えさせ又は書類その他を提出させることができる。
外国で特許出願を行った出願人は,省令に定める規則及び手続に従い,出願審査報告書を提出しなければならない。
提出すべき書類が外国語である場合,出願人は,その書類をタイ語の翻訳文と共に提出しなければならない。
出願人が前段落に基づく担当官の指示に従わないとき,又は90日以内に本条第2段落に従って審査報告書を提出しないときは,出願人は,その出願を放棄したものとみなす。長官は,必要に応じて適当と考える期間を延長することができるものとする。

審査マニュアル第1章第3部4.4.4第5条に該当しない場合の実務指針
第27条関連記載
特許出願が検討された結果、新規の発明ではなく及び/又は進歩性及び産業上の利用可能性を有さないと判断された場合、担当官は第27条に基づき補正通知又は補正命令を発行しても良く、その場合、特許出願人は通知の受領日から90日以内に手続きしなければならない。特許出願人が所定の期限内に応答又は補正できない場合、出願人は期限の延長を2回請求でき、1回目の延長は90日、2回目は30日である。前述の期限内に手続きを行わない場合、仏暦2522年特許法第27条に基づき特許出願を放棄したものと見なされる。
但し、審査官が出願を検討した結果、第6条、第7条、及び第8条の規定を準用する第5条に基づき正確ではないと判断した場合、出願人に検討理由及び/又は補正指示を通知し、出願人が明瞭化又は通知又は補正を正確に理解できるよう検討結果及び先行技術を添付する(独立クレームに対する補正の場合あり)。


(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・拒絶理由通知書への応答期間を、最大120日延長することが可能
 延長は2回申請することが可能であり、1回目の延長申請により90日の期間延長、2回目の延長申請により更に30日の期間延長が可能。

条文等根拠: Notification of DIP on Rule of Request for Extension of Time to Submit(2014.12.16)第4条~第6条

第4条
特許出願人または小特許出願人に対し、追加の書類の提出または出願の補正が指示された場合、特許出願人または小特許出願人は、担当官からの通知を受領してから90日以内に、追加の書類の提出または補正請求をしなければならない。
特許出願人または小特許出願人が、前項で指定された期間内に当該書類を提出することができないやむを得ない理由がある場合、特許または小特許の出願人は、上記の期間が経過する前までに長官または事務局長に救済を申請することができる。

第5条
特許出願人または小特許出願人が必要な理由を示し、第3条または第4条にしたがって救済を申請する場合、書類の提出または補正請求の提出期間は、書類提出または補正請求の期限の日からさらに90日間延長されるものとする。

第6条
特許出願人または小特許出願人が書類の提出または補正請求をすることができない場合、第5条にしたがって、延長が認められる期間内であれば、救済が認められた期間の満了前に、長官または事務局長によって任命された者に、正当な理由を示すことにより、さらなる救済を申請することができる。この場合、書類の提出または補正請求の期間は、再度延長され、その期間は提出期限から30日とする。




日本とタイの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

日本 タイ
応答期間 60日(在外者でない場合)
3か月(在外者の場合)
90日
応答期間の延長の可否
延長可能期間 最大2か月(在外者でない場合)
最大3か月(在外者の場合)
最大120日
(1回目の延長申請により90日の期間延長が可能+2回目の延長申請により更に30日の期間延長が可能)

日本とタイにおける特許出願書類の比較

1.日本における特許出願の出願書類
(1) 出願書類
 所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
 ・願書
 ・明細書
 ・特許請求の範囲
 ・必要な図面
 ・要約書
(条文等根拠:特許法第36条)

・日本特許法 第36条(特許出願)

特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
 一 特許出願人の氏名又は名称および住所又は居所
 二 発明者の氏名および住所又は居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
 一 発明の名称
 二 図面の簡単な説明
 三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
 一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
 二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
 一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
 二 特許を受けようとする発明が明確であること。
 三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
 四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

(2) 手続言語
 日本語

(3) 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
 英語、その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日(優先権主張を伴う出願においては最先の優先日)から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
(条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4)

・日本特許法 第36条の2

特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第四十一条第一項、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第六十四条第一項において同じ。)から一年四月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。ただし、故意に、第四項に規定する期間内に前項に規定する翻訳文を提出しなかったと認められる場合は、この限りでない。
7 第四項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。

・日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語

特許法第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。

(4) 優先権主張手続
 優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類(優先権主張書)を所定の期間内に提出し、その基礎出願の謄本(優先権証明書)を最先の優先日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。優先権主張書の提出は、特許出願の願書に所定の事項を記載することで、省略することができる。
(*特許庁「出願の手続」第二章第十一節「優先権主張に関する手続」、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_11-1.pdf
 ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
(条文等根拠:特許法第43条)

・日本特許法 第43条(パリ条約による優先権主張の手続)

パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
 一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
 二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
 三 その特許出願が前項、次条第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
6 特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかったときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。
8 第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。
9 第七項又は前項の規定により第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面の提出があったときは、第四項の規定は、適用しない。

<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html

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2.タイにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1) 出願書類
 タイ特許法および省令にて規定された以下の書面を提出する。ただし、出願時に出願書類(願書または証拠書類)に不備がある場合は90日以内に補完提出が可能。
 ・願書
 ・発明の説明(明細書)
 ・特許請求の範囲
 ・要約
 ・必要な図面
 ・優先権書類
 ・委任状(公証人認証済みのもの)
 ・該当する場合は譲渡証
(条文等根拠:特許法第10条、第17条、特許法に基づく省令第22号(B.E.2542)第2条、特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)第13条、発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019(第1章第1部添付書類1、備考1))

・タイ特許法 第10条

発明者は,特許を出願すると共に発明者として特許に名称を記載される権利を有する。
特許を出願する権利は,譲渡又は承継により移転することができる。
特許を出願する権利の譲渡は,書面で行わなければならず,また,譲渡人及び譲受人の署名を必要とする。

・タイ特許法 第17条

特許出願は,省令に定める規則及び手続に従わなければならない。
特許出願書類には,次の事項が含まれていなければならない。
(1) 発明の名称
(2) 発明の特徴及び目的に関する簡単な説明
(3) 当該発明が帰属するか又は最も密接に関連する技術分野において通常の知識を有する者が当該発明を実施及び使用することができるような完全,簡潔,明瞭かつ正確な言葉で記され,かつ発明者が自らの発明を実施する上で企図する最良の態様が示された,発明の詳細な説明
(4) 明確かつ正確な 1 又は複数のクレーム
(5) 省令に定めるその他の事項
タイが特許に関する国際協定又は国際協力に加盟した場合,かかる国際協定又は国際協力の要件を満たす特許出願は,本法に基づく特許出願とみなされる。

・タイ特許法に基づく省令第22号(B.E.2542) 第2条

特許法第28条又は第65条の5(場合に応じ)の規定に基づいて長官に審査報告書を提出するため発明特許出願又は発明小特許出願を処理するにあたり,担当官は,次の事項についてかかる特許出願又は小特許出願の審査を行うものとする。
(1) 願書,発明の説明,クレーム,図面(もしあれば)及び要約が,特許法第17条又は第17条を準用する第65条の10(場合に応じ)に基づいて公布される省令に準拠していること
(2) 当該発明が,特許法第9条又は第9条を準用する第65条の10(場合に応じ)に基づく特許性のない発明でないこと
(3) 出願人が,特許法第10条,第11条,第14条又は第15条第1段落若しくは第2段落に基づいて特許を出願する権利,又は,第10条,第11条,第14条又は第15条第1段落若しくは第2段落を準用する第65条の10に基づいて小特許を出願する権利(場合に応じ)を有していること
(4) 出願人が,特許法第16条又は第16条を準用する第65条の10(場合に応じ)に基づいて特許又は小特許の付与を受ける権利を有していること
(5) 特許出願又は小特許出願の対象たる発明が,その出願日より前に特許法第65条の3に基づいて国内で特許出願又は小特許出願がなされた発明と同一のものでないこと
(6) 小特許出願の対象たる発明が単一の発明概念を構成すべく連結していること

・タイ特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第13条

タイの居住者でない出願人,異議申立人,答弁人又は審判請求人は,その者の代理人としてタイ国内で行為する者として長官に登録された代理人を任命しなければならない。委任状は長官に提出するものとする。
前段落の委任状は,タイの外交代表者,商務参事官,通商局長官,商務官若しくはその国の領事,又は委任者の国の法律により署名認証権を与えられた官吏による証明を得なければならない。

・発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019(第1章第1部添付書類1、備考1)

出願又は証拠書類が不正確・不完全な場合は、担当官が追加提出すべき書類又は証拠書類の項目の不備を記録する。その場合、出願人は特許又は小特許の出願日から90日以内に、補正及び追加書類の提出を行うこと。出願人が上記の期限までに追加書類を揃えて送らなかった場合は、出願人は出願を放棄したものと見なし、担当官は出願人に出願返却すると共に、願書の返却理由及び審判請求の権利について通知する。

(2) 手続言語
 タイ語
(条文等根拠:特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第12条)

・タイ特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第12条

すべての願書及び出願時に提出される書類は,次に従うものとする。
(1) 正確,明確及び完全な情報を様式の定めるとおりに記載すること
(2) 発明の説明,クレーム及び要約も含め,タイ語で印刷又はタイプすること
出願人が既に外国で特許又は小特許の出願を行っている場合,出願人は,発明の説明,クレーム及び要約を原出願における外国語で提出することを要求することができる。この場合出願人は,正確かつ原出願に対応したタイ語による発明の説明,クレーム及び要約を出願から90日以内に提出しなければならない。
出願人が所定の期間内にタイ語による出願書類を提出しない場合,出願人は,かかるタイ語の書類を提出する日をもって出願を行ったものとみなされる。
(3) 場合に応じ,出願人,異議申立人,答弁人若しくは審判請求人,又は第11条又は第12条の規定に基づき委任が行われた場合は登録代理人が署名すること

(3) 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
 明細書、特許請求の範囲および要約は、他国での出願言語にて提出した後にタイ語訳の補完提出が可能。補完提出期限は出願から90日以内。
(条文等根拠:上記、タイ特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第12条)

(4) 優先権主張手続
 優先権主張を出願と同時に行う必要がある。優先権証明書を優先日から16か月以内かつ出願公開前に提出する必要がある。
(条文等根拠:特許法第19条の2、特許法に基づく省令第21号(B.E.2542)第10条)

・タイ特許法第19条の2

第14条に基づき外国で発明特許出願を行った者は,外国での最初の出願日から12月以内に国内で出願を行ったときは,かかる最初の外国出願日を国内での出願日として主張することができる。

・タイ特許法に基づく省令第21号(B.E.2542)第10条

外国で特許又は小特許の出願がなされた発明につき,かかる外国での最初の出願日から12月以内に特許出願を行う場合において,出願人が特許法第19条の2に基づきかかる外国での最初の出願日をタイでの出願日とすることを希望する場合,出願人は,出願時又は出願公告前でかかる外国での最初の出願日から16月以内に,長官の定める様式による別の願書を提出しなければならない。この場合,出願人はさらに,出願日及び出願の詳細を示す外国で提出した特許又は小特許の出願書類の謄本で,出願を行った国の特許庁が認証したものを提出することを要する。

(5) 委任状および譲渡証について
(公証人認証済み委任状)
 タイの居住者でない出願人は、タイ国内での代理人を任命しなければならず、委任状を出願とともに提出しなければならない。委任状は、公証人認証が必要となる。

(譲渡証)
 発明者は、特許を出願すると共に発明者として特許に名称を記載される権利を有する。出願人が発明者本人でない場合(所属する法人等が出願人となる場合)、特許を出願する権利の譲渡が書面にて行われる必要がある。この譲渡証には、譲渡人および譲受人の署名を必要とする。

 委任状、譲渡証も含め、出願書類(願書または証拠書類)に不備があった場合、出願日から90日以内に補完提出が可能であるが、期限に間に合わなかった場合は特許法第27条に従って出願を放棄したものとみなされる。

(条文等根拠:特許法第10条、特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)第13条(いずれも上記)、特許法第27条)

・タイ特許法第27条

出願審査において,担当官は,出願人を召喚して質問に答えさせ又は書類その他を提出させることができる。
外国で特許出願を行った出願人は,省令に定める規則及び手続に従い,出願審査報告書を提出しなければならない。
提出すべき書類が外国語である場合,出願人は,その書類をタイ語の翻訳文と共に提出しなければならない。
出願人が前段落に基づく担当官の指示に従わないとき,又は90日以内に本条第2段落に従って審査報告書を提出しないときは,出願人は,その出願を放棄したものとみなす。長官は,必要に応じて適当と考える期間を延長することができるものとする。

日本とタイにおける特許出願書類の比較日本

日本 タイ
手続言語 日本語 タイ語
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否
出願日(優先権主張を伴う場合は最先の優先日)から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。

出願日から90日以内に発明の説明(明細書)、特許請求の範囲および要約のタイ語による翻訳文を提出しなければならない。
優先権主張
手続
優先権主張を出願と同時に行う(又は優先権主張書を所定の期間内に提出する)。優先権証明書を最先の優先日から1年4か月以内に特許庁長官に提出する。 優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を優先日から16か月以内かつ出願公開前に提出しなければならない。

日本とタイにおける特許審査請求期限の比較

1.日本における審査請求期限
 日本においては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ(特許法第48条の3第1項)、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げたものとみなされた場合であっても、当該期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内で、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法第48条の3第5項)。

 出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨)。

 PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。この場合の審査請求期限は、国際出願日から3年である。

 また、特許出願の分割に係る新たな特許出願、意匠登録出願または実用新案登録出願の変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願については、原出願から3年の期間経過後であっても、分割または変更による特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
 なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。

条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第184条の17

日本国特許法 第48条の2(特許出願の審査)
 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。

日本国特許法 第48条の3(出願審査の請求)
 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。

2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

3 出願審査の請求は、取り下げることができない。

4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。

5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。

(第6から第8項省略)

日本国特許法 第184条の17(出願審査の請求の時期の制限)
 国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあつては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあつては第百八十四条の四第一項又は第四項及び第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。

2.タイにおける審査請求
 タイにおいては、実体審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は、特許法第9条および第17条に規定された方式要件等を満たすと認定された出願について行われる出願公開(特許法第28条第2項)の日から5年以内に行うことができ、出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第29条)。
 なお、出願から公開までの期間は、2022年度の実績では平均39.8か月(タイ出願人:27.2か月、タイ以外出願人:41.0か月)である。
 *JETRO「ASEANにおける産業財産権の検索データベースの調査2022」198頁https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/asean/ip/pdf/report_202303_asean.pdf
 審査請求は出願人のみが行うことができる(特許法第29条)。なお、出願人がタイ国内に居住していない場合には、出願人を代理するタイ弁理士を通じて審査請求されなければならない(特許規則第13条)。

条文等根拠:特許法第5条、第9条、第17条、第28条、第29条、特許規則第13条

タイ特許法 第5条
 第9条に従うことを条件として、特許は、次の条件が満たされた発明に対して付与されるものとする。
(1) その発明が新規であること
(2) 進歩性を有すること、及び
(3) 産業上利用できること

タイ特許法 第9条
 次の発明は、本法に基づく保護を受けないものとする。
(1) 自然発生する微生物及びそれらの成分、動物、植物、又は動物若しくは植物からの抽出物
(2) 科学的又は数学的法則及び理論
(3) コンピュータ・プログラム
(4) 人間及び動物の疾病の診断、処置又は治療の方法
(5) 公の秩序、道徳、健康又は福祉に反する発明

タイ特許法 第17条
 特許出願は、省令に定める規則及び手続に従わなければならない。特許出願書類には、次の事項が含まれていなければならない。
(1) 発明の名称
(2) 発明の特徴及び目的に関する簡単な説明
(3) 当該発明が帰属するか又は最も密接に関連する技術分野において通常の知識を有する者が当該発明を実施及び使用することができるような完全、簡潔、明瞭かつ正確な言葉で記され、かつ発明者が自らの発明を実施する上で企図する最良の態様が示された、発明の詳細な説明
(4) 明確かつ正確な 1 又は複数のクレーム
(5) 省令に定めるその他の事項
タイが特許に関する国際協定又は国際協力に加盟した場合、かかる国際協定又は国際協力の要件を満たす特許出願は、本法に基づく特許出願とみなされる。

タイ特許法 第28条
担当官が長官に審査報告書を提出した場合において、
(1) 長官は、本出願が第17条の規定に合致していない、又はその発明が第9条の規定に基づいて特許できないと認めるときは、その出願を拒絶するものとし、担当官は、かかる拒絶があった日から15日以内に配達証明付書留郵便又は長官の定めるその他の方法で出願人に拒絶の通知をしなければならない。又は
(2) 長官は、本出願が第17条の規定を具備し、かつその発明が第9条に基づく不特許事由に該当しないものであると認めるときは、省令に定める規則及び手続に従ってその出願の公開を命じるものとする。かかる公開に先立って担当官は、長官の定める方法又は配達証明付書留郵便により出願人に公開手数料を納付するよう通知する。出願人が通知を受領した日から60日以内に公開手数料を納付しない場合、担当官は、再度配達証明付書留郵便をもって出願人に通知を行う。かかる再度の通知を受領した日から60日が経過しても公開手数料を支払わない場合、出願人は、その出願を放棄したものとみなされる。

タイ特許法 第29条
第28条に基づく出願の公開後、出願人は、その出願の公開後5年以内か、又は異議申立及び審判請求が提出されているときはその最終決定後1年以内の何れか遅くに満了する期限内に、担当官にその発明が第5条に合致するか否かの審査の開始を請求しなければならない。出願人がその期間内に請求を提出しないときは、その出願を放棄したものとみなす。
(以下、略)

タイ特許規則 第13条
タイの居住者でない出願人、異議申立人、答弁人または審判請求人は、その者の代理人としてタイ国内で行為する者として長官に登録された代理人を任命しなければならない。委任状は長官に提出するものとする。
(以下、略)

 日本の基礎出願について優先権を主張し、タイに特許出願した場合には、以下のようになる。

日本とタイにおける特許審査請求期限の比較

日本 タイ
審査請求期間 3年 5年
起算日 日本の出願日 タイの出願公開日