日本とタイの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1.(2)ア、2.(2)ア
日本国特許法 第50条 拒絶理由の通知 審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。 |
日本国特許法第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。 一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。 二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。 三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。 四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。 |
方式審査便覧04.10 法定期間及び指定期間の取扱い 1.手続をする者が在外者でない場合 (2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。 ア.意見書(特50条、商15条の2、15条の3第1項、商附則7条) 2.手続をする者が在外者である場合 (2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)及び(12)を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。 ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。) |
(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能
(*特許庁「出願の手続」第二章 第十八節 IV指定期間の延長、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_18.pdf)
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(16)ア、2.(12)ア、イ
日本国特許法第5条 期間の延長等 特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。 2審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。 |
日本特許庁 方式審査便覧 04.10 1.(16)ア、2.(12) 1 手続をする者が在外者でない場合 (16) 次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。 ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。 2 手続をする者が在外者である場合 (12) 特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。 ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができる。 イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。 また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。 |
2.タイの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・拒絶理由通知書への応答期間は90日
条文等根拠:特許法第27条、審査マニュアル第1章第3部4.4.4第5条に該当しない場合の実務指針、第27条関連記載
タイ特許法 第27条 出願審査において,担当官は,出願人を召喚して質問に答えさせ又は書類その他を提出させることができる。 外国で特許出願を行った出願人は,省令に定める規則及び手続に従い,出願審査報告書を提出しなければならない。 提出すべき書類が外国語である場合,出願人は,その書類をタイ語の翻訳文と共に提出しなければならない。 出願人が前段落に基づく担当官の指示に従わないとき,又は90日以内に本条第2段落に従って審査報告書を提出しないときは,出願人は,その出願を放棄したものとみなす。長官は,必要に応じて適当と考える期間を延長することができるものとする。 |
審査マニュアル第1章第3部4.4.4第5条に該当しない場合の実務指針 第27条関連記載 特許出願が検討された結果、新規の発明ではなく及び/又は進歩性及び産業上の利用可能性を有さないと判断された場合、担当官は第27条に基づき補正通知又は補正命令を発行しても良く、その場合、特許出願人は通知の受領日から90日以内に手続きしなければならない。特許出願人が所定の期限内に応答又は補正できない場合、出願人は期限の延長を2回請求でき、1回目の延長は90日、2回目は30日である。前述の期限内に手続きを行わない場合、仏暦2522年特許法第27条に基づき特許出願を放棄したものと見なされる。 但し、審査官が出願を検討した結果、第6条、第7条、及び第8条の規定を準用する第5条に基づき正確ではないと判断した場合、出願人に検討理由及び/又は補正指示を通知し、出願人が明瞭化又は通知又は補正を正確に理解できるよう検討結果及び先行技術を添付する(独立クレームに対する補正の場合あり)。 |
(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・拒絶理由通知書への応答期間を、最大120日延長することが可能
延長は2回申請することが可能であり、1回目の延長申請により90日の期間延長、2回目の延長申請により更に30日の期間延長が可能。
条文等根拠: Notification of DIP on Rule of Request for Extension of Time to Submit(2014.12.16)第4条~第6条
第4条 特許出願人または小特許出願人に対し、追加の書類の提出または出願の補正が指示された場合、特許出願人または小特許出願人は、担当官からの通知を受領してから90日以内に、追加の書類の提出または補正請求をしなければならない。 特許出願人または小特許出願人が、前項で指定された期間内に当該書類を提出することができないやむを得ない理由がある場合、特許または小特許の出願人は、上記の期間が経過する前までに長官または事務局長に救済を申請することができる。 第5条 特許出願人または小特許出願人が必要な理由を示し、第3条または第4条にしたがって救済を申請する場合、書類の提出または補正請求の提出期間は、書類提出または補正請求の期限の日からさらに90日間延長されるものとする。 第6条 特許出願人または小特許出願人が書類の提出または補正請求をすることができない場合、第5条にしたがって、延長が認められる期間内であれば、救済が認められた期間の満了前に、長官または事務局長によって任命された者に、正当な理由を示すことにより、さらなる救済を申請することができる。この場合、書類の提出または補正請求の期間は、再度延長され、その期間は提出期限から30日とする。 |
日本とタイの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | タイ | |
応答期間 | 60日(在外者でない場合) 3か月(在外者の場合) |
90日 |
応答期間の延長の可否 | 可 | 可 |
延長可能期間 | 最大2か月(在外者でない場合) 最大3か月(在外者の場合) |
最大120日 (1回目の延長申請により90日の期間延長が可能+2回目の延長申請により更に30日の期間延長が可能) |
タイにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査
「五大特許庁及びその他主要知財庁における特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査報告書」(平成29年3月、日本国際知的財産保護協会)第II部8
(目次)
第II部 国内外公開情報調査
8 タイ P.135
概括表