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タイにおける商品・役務の類否判断について(前編)

1. はじめに 
 日本では先行商標と出願商標は非類似とされているケースで、タイでは、同じ商標の出願について、同じ先行商標と類似と判断され、拒絶査定を受けることがある。この相違は、両国の指定商品・役務に関する審査実務の違いによって生じる場合がある。例えば、日本は「類似群」と呼ばれるグループ分けを採用しており、商品・役務が同じグループに属さない限り、原則として非類似とみなされる。しかし、タイの審査基準では、商品・役務を事前にグループ分けしていないため、判断が異なる可能性がある。そこで本稿では、タイの審査基準に基づく商品・役務の類似・非類似の判断について紹介し、日本の審査基準との相違点を明らかにし、日本の実務家が、タイの商品・役務の類否判断について理解を深めることを目的とする。
 具体的には、①商品・役務の類似・非類似を判断する基本原則、②商品間の類似・非類似、③役務間の類似・非類似、④商品・役務間の類似・非類似、の4点について比較・検討する。

2. 基本原則 
2-1. タイにおける商標登録要件 
 タイ商標法B.E.2534(以下「法」という)第6条によると、商品商標/役務商標は、以下の3つの要件をすべて満たさなければ登録とならない: 
 (1)識別力を有すること 
 (2)法に基づいて登録が禁止されていないこと 
 (3) 他人の登録済み商品商標/役務商標と類似・同一でないこと。 

 タイ知的財産局(以下「DIP」という)は、上記3つの拒絶理由を同時に審査し、すべての拒絶理由を1通の通知に記載する慣行を有する。 

2-2. 各商標登録要件についての説明 

1) 識別力を有すること 
 法第7条第1項により、一般公衆が、その商標が使用されている商品・役務が他の商品・役務とは異なることを識別できる場合、当該商標は固有の識別力を有するとみなされる。また、その商標が法第7条第2項に規定する基準を満たす場合、固有の識別力を有するとみなされる。例えば、語句は、適用される商品・役務の性質または品質を直接描写するものであってはならず(法第7条第2項第2号)、文字または数字は、様式化されたものでなければならない(法第7条第2項第4号)等である。 
 法第7条第2項の基準を満たさず、識別力がないとされる商標であっても、商標が識別力を獲得する程度にタイで広く使用されていることを出願人が証明できれば、登録可能である(法第7条第3項)。使用による識別力の証明要件に関する通知(https://www.ipthailand.go.th/images/781/criteria_for_accreditation.pdf)によると、出願人は、一般公衆または関連公衆が出願人の商標であると認識できることを証明するために、合理的な期間、出願商標と全く同じ形態で商標が使用されていることを示す証拠を提出する必要がある。証拠には、請求書や販促資料のコピーが含まれるが、これらに限定されない。 
 また、複数の要素から構成される商標の場合、識別力を有さない要素が特徴的(顕著)でないと審査官が判断した場合は、法第17条に基づき、当該要素の識別力を否認した上で登録を認める。一方、識別力を有さない要素が商標の特徴的な部分を構成していると審査官が判断した場合、その商標は識別力を有さないとして完全に拒絶される。 
 DIPは、全審査官間の効率的で調和のとれた審査を確立するため、商標審査部および裁判所の関連事例とともに、審査手続および審査の流れを詳述した商標審査基準を発行している。本稿作成時の最新の審査基準は2022年1月に導入されている(https://www.ipthailand.go.th/images/3534/2565/TM/TM_2565.pdf)。

2)法に基づいて登録が禁止されていないこと 
 商標は、法第8条に規定された特徴を含んでいる場合、例えば、国または国際組織の紋章等を含む場合(ただし、外国の管轄官庁または国際機関が許可する場合を除く。)(法第8条第1項第6号)、公序良俗に反する標章(法第8条第1項第9号)、法律により保護されている地理的表示からなる標章(法第8条第1項第12号)等を含む場合は、その商標全体が禁止され、登録することはできない。

3) 他人の登録済み商品商標/役務商標と類似・同一でないこと 
 旧法下では、同法第13条(https://www.ipthailand.go.th/images/633/ActTrademark-2-edit.pdf)に基づき、出願商標が他人の先行商標と同一または類似し、かつ、指定商品・役務が同一区分であるか、または(区分が異なる場合)同じ性質である場合、拒絶されていた。 
 つまり、商標が同一または類似する場合、同一区分であれば、指定商品・役務の種類に拘らず、拒絶され、区分が異なる場合のみ指定商品・役務の性質が考慮された。 
 2016年に改正された法第13条では、出願商標が他人の先行商標と同一または類似し、かつ、指定商品・役務について他人の先行商標と同一の性質である場合、区分に関係なく、拒絶されると規定された。つまり、指定商品・役務については、区分が同じである場合も異なる場合も、その性質が常に考慮されることとなった。 
 新審査基準では、需要者が商品・役務の由来または商標所有者に関して混同する可能性を審査官が判断する際に、関連する商標の(A)全体的な外観、(B)称呼、および(C)指定商品・役務を考慮しなければならないと規定されている。(新審査基準84頁参照)。 
 実務上、審査官は、まず、(A)全体的な外観および(B)称呼を考慮する。同一または類似する先行商標が(A)および(B)に基づいて特定された場合、審査官はそれと出願商標の(C)指定商品・役務を検討する。

(A) 全体的な外観 
 商標の類似性は、特定の要素を個別に評価するのではなく、商標全体の外観から評価する必要がある。ただし、出願商標の特徴的部分は、先行商標と同一または類似であってはならない(新審査基準84頁参照)。つまり、異なる要素が十分に特徴的でない場合、出願商標は先行商標と類似または同一であると見なされる。 
 新審査基準から以下を例示する。

外観類似 例1 
は、と類似。
理由:商標の特徴的部分は楕円形の中の「MDS」の文字であり、類似。よって商標全体の外観は類似。

 外観類似 例2 

は、と類似。
理由:馬は反対方向に向いているものの、基本的には翼を生やした馬が同じ姿勢で足を挙げている構成の商標であり、外観は類似。よって商標全体の外観は類似。

外観非類似 例1
は、と非類似。 
(商標審決番号82/2551(2008)) 
理由:どちらも鷲の図を含むが、図は異なる様式で表示されている。さらに、「INC」と「KINGJO」の異なる要素から構成されている。よって商標全体の外観は異なる。

(B) 称呼 
 商標の全体的な外観とは別に、称呼も同様に重要である。新審査基準では、外観に関係なく、称呼が先行商標と同一または類似していることのみを理由に拒絶することができることが記載された(新審査基準84頁(2)参照)。類似性の判断は、例えば、音節の数、最初の音節の音、最後の音節の音などを比較することにより行う。 
 新審査基準から以下を例示する(称呼は英文字で示す)。

称呼類似 例1 
“STRIDE”は(称呼:“strive”)と類似。(商標審決番号169/2551(2008)) 
理由:両商標は異なる言語で表記されているが、称呼は同じ頭子音と母音で類似している。従って、両商標は紛らわしいほど類似している。

称呼非類似 例1 
”(称呼:“BOFTEX”)は“”と非類似 
(商標審決番号840/2559(2016)) 
理由:主な理由に、両商標の最初の音節、すなわち「BOFT」と「BON」の発音が異なることを挙げ、両商標は非類似とされた。

(C) 商品・役務の関連性・非関連性の検討  
 最後に、(A)および(B)により商標が同一または類似すると判断された場合、審査官は当該商標の商品・役務の関連性を評価する。一般的には、特定の商品および役務に関連する分類およびその他の関連要素が考慮される。 
 区分の適用上、商品および役務は、同一区分の他、異なる区分に属する商品および役務と類似または関連していると見なされる場合がある。DIPは、区分間のクロスチェックの目的で、事前に関連性があるとみなされる区分のリストを提供している(https://search.ipthailand.go.th/)が、これによれば、区分25(被服等)は区分9、24、35、40、45と関連する可能性があるとされている(中編の第3-1項、後編の第5項参照)。 
 しかし、同サイトで指定されている以外の区分とクロスチェックを行う例も見られる。 
 上記のリストとは別に、新審査基準は、その他の関連する要素を考慮するためのアプローチを以下のように示している(新審査基準89~90頁参照)。

ⅰ) 商品または役務が同一の需要者グループを対象としているかどうか。 
 審査官は、出願商標と先行商標の商品または役務の需要者を特定し、それらが同一のグループに属するかどうかを検討する。例えば、出願商標の商品が航空車両であるのに対し、先行商標の商品が陸上車両である場合、商品が同じ区分12に分類される車両であっても、想定される需要者グループは全く異なる。このことから、関連する公衆の間で混同が生じる可能性はない。(商標審決番号1136/2565(2022)) 

ⅱ) 意図する需要者が専門家または知識のある者かどうか。 
 商品または役務が、専門家または知識を有する者が使用する場合またはその監督下で使用することを意図している場合には、混同のおそれは生じない。例えば、両商標の商品が処方箋を必要とする医薬品である場合、意図される需要者は、医薬品または医療用品に関する特定の知識を有する者、または医師若しくは薬剤師によって処方される患者であろう。したがって、混同のおそれはない。(商標審決番号713/2553(2010)) 

ⅲ) 商品または役務の目的が同じかどうか。 
 このアプローチでは、商品または役務が同じ性質のものであっても、意図する目的が異なれば、関連性がないものとすることができる。例えば、出願商標の商品は色やカラーコーティングの製造に使用する化学品であるのに対し、引用商標の商品はプラスチック接着剤の製造に使用する化学品である場合、同じ区分1に分類される化学品であっても、その使用目的は全く異なる。このことから、関係公衆の間に混同のおそれは生じないというべきである。(商標審決番号43/2560(2017)) 

ⅳ) 商品または役務が同一の流通経路を通じて販売または提供されているかどうか。 
 審査官は、両商標の商品または役務が同一の場所または同一の流通経路で販売または提供されているか否かを検討しなければならない。例えば、出願商標の商品が機械およびその部品または産業用機械であるのに対し、引用商標の商品が電気ドリルである場合、同じ区分7であっても、流通経路は異なる。具体的には、出願人の商品は販売業者からのみ購入できるのに対し、先行商標権者の商品は一般の工具店で購入できる。このことから、関係公衆の混同の可能性は生じないはずである。(商標審決番号41/2560号(2017)) 

ⅴ) 商品または役務が高価格であるかどうか。 
 商品または役務の価格の相違は、需要者が商品または役務を選択する際に払う注意の程度に対応する。具体的には、需要者が高額な商品・役務を衝動的に購入することは考えにくい。商品や役務の価格が高ければ高いほど、消費者はより高度な注意を払うことになる。このような行動を考えれば、価格が大きく異なる場合、混同を生じない、とされる。 

ⅵ) その他の考慮事項 
 上記(A)、(B)、(C)のアプローチとは別に、特徴的要素と非特徴的要素の両方から構成される商標の場合、識別力を考慮しなければならない。現行の実務では、DIPは非特徴的要素を商標の非主要部分とみなし、ある商標を他の商標と区別することができないものとする。その結果、これらの要素は無視され、残りの識別力を有する特徴的要素のみが比較の対象となる。新審査基準では、このような実務に沿い、前述の第17条により権利不要求とされる要素は、非特徴的部分とみなされ、無視されることが規定されている(新審査基準88頁参照)。 
 以下を例示する。

称呼類似 例1 
“BILLY EIGHT”(“EIGHT”は権利不要求)は、“”と類似。 
(商標審決番号803/2559(2016)) 
理由:出願商標の“EIGHT”は権利不要求であるため、特徴的要素は“BILLY”とみなされる。両商標の特徴的部分は共通しているので、混同を生じるほど類似している。

称呼非類似 例1 
”は、“”と非類似。 
(商標審決番号 368/2564(2021)) 
理由:両商標の共通する“BANGKOK DRINKING WATER”は非特徴的部分とみなされ、残りの図形が特徴的部分とみなされる。これらの図形は外観が異なるので、一般公衆および関連公衆の混同の可能性は生じない。 

(中編に続く) 

タイにおける商品・役務の類否判断について(中編)

(前編から続く)

3. 商品の類似性または非類似性
3-1. 商品の類似・非類似の判断方法
 審査官は、出願商標と同一区分および商品・役務が関連すると予備的に考えられる他の区分において、先行商標を調査する。前記「前編2-2.3)(C)商品・役務の関連性・非関連性の検討」で述べたとおり、DIPは、各区分においてクロスチェックの対象となる関連区分のリストをウェブサイトで提供している*1。下表は、商品の各区分に関連する商品区分をDIPのウェブサイトから抜粋したものである。例えば、区分1は区分5をクロスチェックする可能性が高いことを示している。出願前調査の指定区分以外の区分とのクロスチェックに活用されたい。なお、このリストで指定されている以外の区分についてもクロスチェックが行われる例もあることに留意されたい。

区分1234567
関連区分511, 51188,11,12
区分891011121314
関連区分6117,97
区分15161718192021
関連区分9
区分22232425262728
関連区分22259,2424,2524
区分293031323334
関連区分30,3229,3229,30,3332

*1 DIPのウェブサイトを閲覧する方法を後編【クロスチェックリストの閲覧方法】に示した。

審査官は、区分とは別に、新審査基準の「前編2-2.3)(C)商品・役務の関連性・非関連性の検討」に沿って、特定の商品間の関連性を検討する。具体的には、以下の点を評価する:

 (i) 商品または役務が同一の需要者グループを対象としているかどうか。
 (ii) 意図する需要者が専門家か知識ある者かどうか。
 (iii) 商品または役務の目的が同じかどうか。
 (iv) 商品または役務が同一の流通経路を通じて販売または提供されているかどうか。
 (v) 商品または役務が高価格であるかどうか。

 しかし、審決・判決例によれば、上記以外の観点も存在すると思われる。例えば、商品が生産段階で関連するかどうか、商品が完成品と部品の関係にあるかどうか等が挙げられる。
 商品間の関連性の判断に関する審判部の審決例および裁判所の判決例は、以下のとおり。

(A) 商品が関連しているとみなされた例
① 商標審決番号479/2564(2021)
出願商標:
区分33:ぶどう酒

引用商標:
区分32:果実ジュース、野菜ジュース、果実風味水

理由:引用商標の指定商品は、出願人のぶどう酒製造に使用できることから、両商標の商品は同じ性質を有している。

注目点:商品は生産段階において関連する、と判断された。

② 商標審決番号746/2565(2022)
出願商標:
区分7:ゴルフコース用土圧縮ローラー、ゴルフコースなどで使用する芝生用土壌改良用機械

引用商標:
区分7:道路ローラー用シート、道路ローラー用シート懸架装置、道路ローラー用コンソールボックス、クレーンシート、クレーンシート用懸架装置等

理由:両商標の商品は、同一区分であるだけでなく、同じ性質のものであると判断する。具体的には、機械である出願商標の商品と機械の部品である引用商標の商品は、一緒に使用できるとした。さらに、対象となる需要者グループも同一である。

注目点:区分とは別に、商品の関連要素、すなわち、完成品と部品の関係、需要者の対象グループも考慮して判断された。

(B) 商品が関連していないとみなされた例
① 商標審決番号1136/2565(2022)
出願商標:ELIMINATOR
区分12:航空機

引用商標:ELIMINATOR
区分12:オートバイ、オートバイの泥除け、オートバイのフレーム等

理由:両商標の商品は、同一区分にもかかわらず、使用目的、対象とする需要者グループ、流通経路が異なる。出願商標の商品は航空機であるのに対し、引用商標の商品は陸上車両である。また、需要者は、使用目的に応じて、商品を購入する前にある程度の調査を行うと考えられる。したがって、両商標の商品は、同じ性質のものではない。

注目点:本審決は、審判部が商品に関する様々な要素を考慮していることを示している。具体的な使用目的を考慮し、その結果、異なるタイプである車両に関連性はないと判断している。さらに、車両の特別な特性を考慮し、需要者は通常、注意して購入すると判断している。以上の理由により、混同が生じる可能性は低いとされた。

② 商標審決番号964/2564(2021)
出願商標:
区分25:スポーツに関連する全ての被服

引用商標:
区分25:上着(下着およびスポーツ用衣料は除く。)

理由:同一区分ではあるが同一商品ではなく、また、引用商標は「スポーツ用衣料」を明確に除外している。したがって、両者の商品は、同じ性質のものではない。

注目点:審判部は、商品の特定の使用目的を検討する。本審決例では、具体的な使用目的が重複していないことから、両者の商品は関連性がないとされた。

③ 商標審決番号87/2564(2021)
出願商標:
区分7:卵ベースの食品を精製するために使用される機械、卵食品加工機械、卵食品の包装に使用される機械
引用商標:
区分7:ホイールローダー(訳注:ブルドーザーの足回りがタイヤで受器が比較的大きい運搬車両)、ロードホールダンプ機械(訳注:坑内採掘に使用され比較的大きいホイールローダーの1種)、コンクリート舗装機、採掘機など

理由:出願商標の商品は、卵から食品を加工するための特別なものであるのに対し、引用商標の商品は、様々な使用目的を意図した機械であり、広範な産業に関連するものであると説明している。これらの事実を踏まえると、両商標の商品は、同じ性質のものではない。さらに、これらの商品は、高価格であり、仕様も様々である。対象となる需要者は、知識が豊富で、混乱することなく、目的に従って商品を正しく選択できる人である。

注目点:審判部は商品の種類(本審決例は、どちらも機械)とその使用目的を考慮する。特定目的の商品は、一般目的の同じ商品とは関連が生じない。また、商品が高価格で仕様が多様である場合は、対象需要者は通常、かかる商品についての知識を有しており、混同の可能性はない。

④ 商標審決番号246/2563(2020)
出願商標:VELSAN
区分1:化粧産業用化学品

引用商標:VALSAN
区分1:無菌包装用途等に使用される過酸化水素溶液

理由:両商標の商品は同一区分であっても、商品の性質は、需要者が商品の出所や所有者について混同したり誤認したりしない程度に異なっている。

注目点:本審決においては、商品間の関連性/非関連性を判断するために何を考慮したかについて明示していない。しかし、「化粧品産業用」と「無菌包装用」という使用目的は異なると考えていると思われる。

⑤ 商標審決番号 41/2560(2017)
出願商標:SANDEX
区分7:機械用精密減速機、機械用割出駆動装置、ピックアンドプレース装置(訳注:機械部品の搬送装置の1種)、シート材を他の機械に順次供給する供給装置など

引用商標:SUNDEX
区分7:電気ドリル

理由:両商標の商品が同一区分であっても、両者の商品に関連性がない。出願商標の商品が工場で使用する機械であるのに対し、引用商標の商品は電気ドリルである。両者は使用目的も形状も明らかに異なる。さらに、出願商標の機械は、特定の販売代理店を通じて販売されるのに対し、引用商標のドリルは、通常の商店で販売される。このように、想定される需要者層と流通経路が異なる。最後に、出願商標の商品は高価格であるため、購入者は使用目的に応じて慎重に商品を選択する。その結果、商品の出所や所有者に関して社会的混乱は生じない。

注目点:審判部は、対象とする需要者の相違および流通経路の相違がもたらす使用目的を検討する。本審決では、商品の外観の相違も考慮し、さらに、商品を選択する際の注意の程度に影響する商品の価格も考慮した。

⑥ 商標審決番号43/2560(2017)
出願商標:NATOROSOL PERFORMAX
区分1:塗料製造用セルロースエーテル、ワニス製造用セルロースエーテル、ステイン製造用セルロースエーテルなど

引用商標:
区分1:工業用膠(にかわ)

理由:両商標の商品は、同一区分であっても、両者の商品は関連性がない。出願商標の商品が、塗料やコーティング剤の製造に使用されるのに対し、引用商標の商品は、工業用接着剤である。使用目的も産業グループも明らかに異なる。また、出願商標の商品は一般店ではなく、特定の販売店を通じて販売されているのに対し、引用商標の商品は一般的な接着剤や貼付器具の販売店で販売されるものである。また、工業用接着剤は高価格帯の商品であるため、需要者は用途に応じて慎重に購入を検討する必要がある。

注目点:審判部では、区分だけでなく、使用目的、業界、流通経路および商品価格も考慮する。

⑦ 商標審決番号4325/2561(2018)
出願商標:
区分9:ICカード(スマートカード);暗号化されたIDカード;スマートカード読取装置
引用商標:
区分9:ワイヤレスアダプター、コンピュータデータ・信号変換装置

 審査官も審判部も、出願商標と引用商標とは、商品が同一区分であり同じ性質であるため、関連性があると判断したが、出願人はこの案件を中央知的財産権国際貿易裁判所に提訴した。同裁判所は、「当事者の両商品が第9類という同一の類に属するとしても、この類には広範な商品が分類されている。その上で、当事者の特定商品間の関連性を検討し、引用商標権者の商品が人と人との間の通信に使用されるモバイル機器であるのに対し、出願人の商品は電子カードとセキュリティ目的のカードリーダーまたはレコーダーとの間の非接触データ通信に使用されると認定する。このように、両当事者の具体的な商品は異なり、異なる消費者グループを対象としている。その結果、商品が同じ区分であるにもかかわらず、公衆が商品の出所や所有者について混乱したり誤解したりすることはないと考えられる。」との判決を下した。
 本件は最高裁判所(終審裁判所)に上告され、最高裁判所は次のような判決を下した。「出願人の商品はセキュリティ目的で使用されるため、需要者は商品の品質を検査し、需要者の使用目的を満たすかどうかを判断しなければならない。つまり、需要者はセキュリティシステムに関する知識を持ち、両当事者の商標を区別できるはずである。さらに、両当事者の商品の使用方法は異なる。結論として、公衆が商品の出所や所有者について混乱したり誤解したりすることはないと思われる。」

注目点:審判部は、単に商品の区分と性質のみを考慮した。一方、中央知的財産権国際貿易裁判所および最高裁判所は、その他の関連要素、すなわち、対象需要者、使用目的および使用方法を検討した。
 上記の判決例によれば、商品の類似性が判断される際には、様々な要素が考慮される。例えば、生産段階における商品の関連性、販売段階における商品の流通方法(取引経路)、使用目的が同一か重複するか、商品が同一需要者グループを対象としているか、商品が完成品と部品の関係で関連しているかなど、日本やタイでも同様の要素が考慮される。

3-2. ニース分類の活用
 法第9条は、欧州連合理事会規則第33条(2)および(6)と同様に、指定商品・役務の分類および明確化に関する要件を規定している。商品および役務の分類に関する告示により、商品および役務はニース分類に沿った45の区分に分類される。一方、指定商品および指定役務が十分に明確化されているかどうかを判断するため、DIPは認容する商品・役務を以下の一覧に公開している。(「タイで商標登録出願された商品・役務一覧」https://tmsearch.ipthailand.go.th/

3-3. 参照のための商品名一覧(類見出しのみの名称を含む)
 前項に示した一覧は、単なる例であり、出願時に、この一覧から商品・役務の名称を選択することは必須ではない。これは、電子システムを通じて出願する場合にも、DIPに紙で提出する場合にも適用される。
 ただし、「商標使用を緊急とする必要性についての商標審査結果の第一次通知に関する告示」および「緊急の場合における商標審査結果の第一次通知に関する告示」により導入された「早期審査」の対象となる出願については、その他の要件のうち、商品および役務は前記一覧から選択しなければならない。
 類見出しについては、一般的に広すぎて受け入れられないと考えられている。この問題については、「3-4. 商品を指定する際の留意点」で詳述する。

3-4. 商品を指定する際の留意点
 タイで商品・役務を指定する場合、出願人は以下の点に留意する必要がある。
 DIPは、指定商品・役務の記載について、かなり厳格である。一般に、出願人は、意図する商品・役務を項目ごとに明確に指定する必要がある。例えば、区分 5の「医薬品用薬剤“pharmaceutical preparations”」という記載は広すぎると考えられる。例えば、アレルギー用錠剤、循環器疾患治療用製剤のように、具体的な医薬品の種類や治療目的を特定する必要がある。
 また、通常、類見出しは広すぎるとみなされる。例えば、「被服、履物、帽子 “Clothing, footwear, headwear”」は区分25の類見出しであるが、認容されない。また、「すなわち」、「本区分に含まれるものすべて」、「前述のものすべて」のような広い範囲を示す表現も認められない。
 タイ語で記載された商品・役務の名称と英訳の一覧がDIPウェブサイトに掲載されている。(前記、「タイで商標登録出願された商品・役務一覧」)。ただし、適切な保護を確保するため、タイ語の名称と英訳の整合性を確認することが推奨される。
 なお、上記の一覧は、事前の通知なしに頻繁に更新される。審査官は、出願時ではなく、審査時に入手可能なリストに依拠する。したがって、出願時に許容された商品・役務記載が後に拒絶される可能性がある。

(後編に続く)

タイにおける商品・役務の類否判断について(後編)

(中編から続く)

4. 役務の類似性または非類似性
4-1. 役務の類似・非類似の判断方法
 前編および中編で述べたとおり、DIPは、各区分においてクロスチェックの対象となる関連区分のリストをウェブサイトで提供している*1。下表は、役務の各区分に関連する役務区分をDIPのウェブサイトから抜粋したものである。出願前調査の指定区分以外の区分とのクロスチェックに活用されたい。なお、このリストで指定されている以外の区分についてもクロスチェックが行われる例もあることに留意されたい。

区分3536373839
関連区分36354041,42
区分404142434445
関連区分373838

*1 DIPのウェブサイトを閲覧する方法を稿末【クロスチェックリストの閲覧方法】に示した。

 役務の類似・非類似の判断については、前記「前編2-2.3)(C) 商品・役務の関連性・非関連性の検討」における5つの評価点に加え、その他の関連する要素も考慮する。主な考慮点としては、役務の性質並びに特質、事業分野および需要者グループが挙げられる。

(A) 役務が関連しているとみなされた例
① 商標審決番号366/2561(2018)
出願商標:
区分36:土地・建物の鑑定評価・管理

引用商標:, COURTARD, および
区分43:ホテル・レストランにおけるサービスの提供

 出願商標の指定役務は、ホテル、リゾート、キャンプを含む広範な不動産の開発および管理であると説明している。従って、両当事者の役務は区分が異なるにも拘わらず、同じ種類の不動産に関連する同じ性質のものである。従って混同の可能性がある。

注目点:役務が提供される事業分野の関連性を考慮する。

② 商標審決番号634/2559(2016)
出願商標:
区分35:メディアに関する包括的な広告制作

引用商標:
区分38:有線テレビ放送、区分41:ラジオ・テレビ番組の企画、娯楽目的のファッションショーの企画、コンサートの企画
引用商標:
区分41:テレビおよびラジオの番組制作

 出願商標の役務が「総合的な広報媒体の制作」であるのに対し、引用商標の役務は「有線テレビ放送、ラジオおよびテレビ番組の制作、企画、娯楽目的のファッションショーの企画、コンサートの企画」であり、両商標の役務は異なる区分ではあるが関連性がある、とされた。

注目点:本審決において、役務間の関連性/非関連性を判断するために、どのような考慮事項を用いるかについて明示していない。しかし、著者は、両商標の役務が、同じ事業分野、すなわちエンターテインメント産業とメディア産業で提供されていることから、両商標の役務は、関連性があると判断されたと理解している。

③ 商標審決番号628/2563(2022)
出願商標:
区分41:不動産・不動産に関連する時事・トレンド・経済分野のオンライン・ニュースレターの提供、不動産・不動産に関連する時事・トレンド・経済分野の電子メールによるオンライン電子ニュースレターの配信等

引用商標:
区分35:インターネット上の動画再生前後の広告、モバイルメッセンジャーを通じた広告、インターネットを通じた広告、オンライン上の広告スペースのレンタル、広告資料の作成および更新、商業情報代理店、経営管理に関する助言サービス、経営管理コンサルタントなど

 両商標の役務は、異なる区分ではあるが、同じ性質、すなわち、すべて情報の提供および配布であり、両商標間には混同の可能性がある、とされた。

注目点:上記②の審決(634/2559(2016))とは異なり、本件では、両商標の役務が全く異なる分野(出願商標が不動産分野であるのに対し、引用商標は広告および経営管理分野)であるにも拘わらず、両商標の役務の性質に注目し、両商標が本質的に情報の提供と配布である点で関連している、と判断した。

(B) 役務が関連していないとみなされた例
① 商標審決番号148/2559(2016)
出願商標:
区分35:ビタミン剤等の栄養補助食品に関する小売・卸売業経営、ミネラルエキス等の小売・卸売業経営

引用商標:
区分44:医療研究センターサービス

 両商標の役務は異なる区分であり、同じ性質のものではないと説明している。

注目点:両商標の役務の関連性/非関連性の判断に考慮点は明示されていない。著者は、異なる事業分野、異なる需要者グループに対して提供される役務であることが考慮されたと理解している。特に、出願商標は一般消費者を対象とした商業分野であり、引用商標は医療関係者を対象とした医療研究産業分野であると解される。

② 商標審決番号1341/2559(2016)
出願商標:
区分43:食品・飲料の小売サービス、カクテルラウンジ、コーヒーショップ、食品・飲料のケータリング等

引用商標:
区分35:ホテルの経営管理、ホテルに関する宣伝・販売促進サービス等
区分36:不動産管理、不動産の賃貸等

 両商標の役務は異なる区分であり、同じ性質のものではないと説明している。

注目点:両商標の役務の関連性/非関連性の判断に考慮点は明示されていない。著者は、両商標の役務は異なる事業分野で提供される役務であることが考慮されたと理解している。特に、出願商標は飲食業において提供され、引用商標は不動産業および一時宿泊業において提供されている点が考慮されたと考えられる。

③ 商標審決番号805/2563(2020)
出願商標:
区分42:補聴器に関する科学研究サービス、補聴器に関する技術研究サービス等

引用商標:
区分42:農業科学研究サービス、農業に関するコンピュータプログラム作成サービス、農業に関する科学研究サービス等

 両商標の役務は異なる区分であり、同じ性質のものではないと説明している。

注目点:両商標の役務の関連性/非関連性の判断に、考慮点は明示されていない。著者は、両商標の役務は異なる事業分野および異なる需要者グループに提供される役務であることが考慮された、と理解している。特に、出願商標は、聴覚障碍者を対象とする補聴器に特定された科学分野であり、引用商標は、農業従事者を対象とする農業に特定された科学分野である点が考慮された、と考えられる。

 上記の審決例に基づけば、タイでは、例えば、対象としている需要者の範囲や需要者グループが一致しているか、事業分野のカテゴリーが一致しているかなど、日本と同様の要素が考慮されている。ただし、対象役務や対象事業分野が同一の法律で規制されている点を考慮する日本とは異なり、これらのアプローチは、タイでは採用されていない。
 また、上記の審決例から、EUIPOの商標審査基準(https://guidelines.euipo.europa.eu/1803468/1786759/trade-mark-guidelines/3-1-1-similarity-factors)における役務の非類似性・類似性を検討する際の基準(役務の性質、役務の目的、関連する公衆や需要者)をEUと共有していると思われる。

4-2. 小売役務
 前記「(中編)3-2 ニース分類の活用」で述べたように、指定役務は明確に記載しなければならず、広範であってはならない。現行の実務に基づけば、「小売」という役務表記は広範すぎて受け入れられないと考えられる。例えば、「バッグの小売店サービス」、「宝飾品の小売サービス」のように、出願人はどの商品を提供するのかを明確に特定しなければならない。
 とはいえ、DIPは現在、「小売役務」よりもさらに広範な役務記載、すなわち、役務の名称「他人の利益のために、輸送を除く様々な商品を集め、消費者がそれらの商品を便利に見て購入できるようにすること」を認めている。このことは、商標審決番号2484/2562(2019)においても採用されている。
 小売役務と商品との関連性を評価する際のアプローチを説明するため、商標審決番号2484/2562(2019)および商標審決番号1013/2564(2021)を示す。

① 商標審決番号 2484/2562(2019)
出願商標:
区分35:他人のために、様々な商品を集めること、消費者が便利に商品を見たり購入したりできるようにすること、食品の販売管理、商品の輸出入管理、他の事業者のための購買サービスなど
[重要:本出願は「小売」というサービス自体を対象とするものではない。]

引用商標:
区分30:チューインガム

引用商標:
区分30:ゼリー

理由:出願商標の役務は、商品と同じ性質を有さないビジネスの一種であるとした。したがって、混同の可能性は生じないとした。
 本審決は、出願商標の役務から保護される事業の範囲が引用商標に使用する商品と重複するか否かを検討することなく、単に事業が商品と同一性質のものではないと判断しているように思われる。
 しかし、その2年後、審判部は、対象商標の具体的な商品と役務との関連性をより詳細に検討した審決を下したので以下に紹介する。

② 商標審決番号1013/2564(2021)
出願商標:
区分35:顧客が便利に商品を見たり購入したりできるように、他人の利益のために様々な商品を集めること、化粧品の小売・卸売、トイレタリー製品の小売・卸売、歯科用品の小売・卸売、飲料などのオンライン小売

引用商標:
区分29:牛肉缶詰、魚缶詰、果物缶詰、野菜缶詰、魚介類缶詰など

理由:両商標の商品と役務とは異なる区分である。さらに、出願商標の役務は、他人の利益のために、顧客が便利にそれらの商品を見たり購入したりできるように、様々な商品をまとめることであり、引用商標の商品と同じ性質のものではない特定の商品の小売や卸売を行うことである。その結果、混同のおそれはない、とした。

注目点:上記2つの審決例から得られるポイントは以下の通りである:
・「小売」という役務よりも、「他人の利益のために、消費者が便利に商品を見たり購入したりできるようにするために、様々な商品を集めること」という役務の方が広範であるため、これらの審決から、提供される商品が表示されていない「小売役務」や「卸売役務」、「販売役務」などは(DIPによって認められる場合)、商品と同じ性質のものではないと結論づけることができると思われる。換言すれば、「小売」という広範な役務を指定する先行登録商標は、区分 1から区分 34までのいずれかに属する商品を指定する後行商標出願の登録を妨げるものであってはならない。このことは、区分35の「消費者の便宜のために種々の商品を一緒にすること」、「販売管理」および「商品のオンライン販売サービス」は、区分25の「シャツ」および「ズボン」と同一性質のものではないとする新審査基準でも確認されている(新審査基準90頁参照)。詳細は「5.商品・役務間の類似性または非類似性」で後述する。
・「小売役務“retail services”」、「卸売役務“wholesale services”」、「販売役務“sale services”」に使用する提供商品が具体的に表示されている場合は、当該商標の商品とは性質が異なる商品を提供する他の商標とは無関係とみなされる。
 例えば、「バッグの小売店舗サービス」と「化粧品の小売店舗サービス」のように、提供する商品が異なる小売サービス間の関連性を検討した前例はない。しかし、「3.商品の類似性・非類似性」に記載したようなアプローチにより、販売する特定の商品間の関連性を検討すべきであると考える。特に、商品が同じ性質のものでない場合、または同じ需要者グループを対象としていない場合は、関連性がなく、混同の可能性は生じない。同様に、関連性のない商品を提供する小売サービスも、需要者に混同を生じさせるものではないと考えられる。例えば、「化粧品産業で使用する化学薬剤の小売サービス」と「無菌包装で使用する過酸化水素水溶液の小売サービス」は、商標審決番号246/2563(2020)に基づくと、特定商品の使用目的により関連性が認められない、と考えられる。

4-3. 不使用取消
 法第63条によれば、3年間使用されていない商標登録は、不使用を理由に取消される可能性がある。しかし、実際には、不使用取消は、不使用の立証責任を申立人が負うため、非常に困難である。審判部は、商標権者が使用を証明する証拠を全く提出せず、反駁しない場合であっても、不使用の証明が不十分であるという理由で申立を却下するケースもある。不使用の場合であっても、商標権者は、不使用が特別な事情によるものであり、商標を放棄する意図によるものではないことを証明することにより、防御することができる。例えば、商標権者が特定の商品または役務に関して商標を使用している場合、商標権者に商標を放棄する意思がないと解釈することができる。法律は、特定の商品および役務に対する部分的取消の可能性も明示していない。

4-4. 役務を指定する際の考慮事項
 審査官は、指定役務記載の可否を判断する際に、中編「3-4. 商品を指定する際の留意点」で説明した基準を同様に適用する。また、出願人は、意図する役務を項目ごとに明確に指定しなければならない。しかし、区分1~34では認められない広範な商品が、役務の説明では含まれることがある。例えば、「区分5:食品サプリメント」および「区分25:衣料品」という商品は認められないが、「食品サプリメントに関する小売サービス」および「衣料品の小売サービス」というサービスの指定は、区分35で認められる。したがって、出願人は、サービスの範囲を不必要に限定しないよう、前記「タイで商標登録出願された商品・サービス一覧」に掲載されている最新の商品・役務許容リストを常に入手する必要がある。

5. 商品・役務間の類似性または非類似性
 DIPは、各区分においてクロスチェックの対象となる関連区分のリストをウェブサイトで提供している。下表は、区分1から34までの商品に対する区分35から45までの役務との関連区分と、役務に対する商品との関連区分とのリストをDIPのウェブサイトから抜粋したものである。なお、このリストで指定されている以外の区分についてもクロスチェックが行われる例もあることに留意されたい。

区分12345
関連区分353535,42,443535,42,44
区分678910
関連区分3535,373535,37,38,41,4235,44
区分1112131415
関連区分35,3735,37,393535,3735
区分1617181920
関連区分35,37,41353535,37,4235,37,43
区分2122232425
関連区分3535353535,40,45
区分2627282930
関連区分35,403535,4135,42,4335,42,43
区分3132333435
関連区分35,42,4335,42,4335,42,4335
区分3637383940
関連区分912
区分4142434445
関連区分99

 クロスチェックとは別に、審査官は、「前編2-2.3)(C)商品・役務の関連性・非関連性の検討」に記載されたアプローチに沿って、特定の商品・役務の関連性を検討する。
 上記のアプローチに加え、新審査基準では、広範な役務の記載は、狭義の商品の記載と同じ性質を有するとはみなされないことが具体的に規定されている(新審査基準90頁参照)。その例は以下の通り:
・区分35の「消費者の便宜のために各種の商品を集めること」、「販売管理」、「商品のオンライン販売サービス」は、区分25の「ワイシャツ」、「ズボン」と性質が異なる。
・区分43の「飲食店サービス」は、区分30の「茶、コーヒー、ココア」、区分32の「飲料、水(飲料)」、区分33の「酒類、蒸留アルコール飲料」と性質が異なる。
・区分44の「美容サービス」は、区分3の「皮膚栄養クリーム」と性質が異なる。

 商品と役務の関連性を判断する際のアプローチを示す商標審決例を以下に示す。

(A) 商品と役務とが関連しているとみなされた例
① 商標審決番号1617/2560(2017)
出願商標:
区分19:非金属建材、建築用硬質非金属パイプ、建築用非金属材料シート、建築用非金属板、建築用非金属ポータブル構造部品

引用商標:
区分43:倉庫の建設、工場の建設、店舗の建設、家屋の建設、倉庫の建設、工場の建設、店舗の建設、家屋の建設、建設に関するコンサルタント業など

理由:引用商標の役務は建設サービスに関するものであるため、両者の商品/役務は同じ性質のものであるとした。

注目点:建築材料である出願商標の商品が引用商標の建築サービスの提供に使用できることから、両商標の商品と役務とは同じ性質であると考えることができる。

② 商標審決番号106/2559(2016)
出願商標:
区分42:個人用電子機器に関するオンライン問題の処理、個人用電子機器の技術サポート

引用商標:
区分9:オーディオテープレコーダー、スピーカ、コンピュータ等

理由:両商標は異なる区分に属するが、両商標の商品とサービスは同じ性質であり、混同の可能性がある、とした。

注目点:両商標の商品および役務が、電子機器という同じ分野に関するものであることから、両商標の商品および役務が同じ性質のものであると考えることができる。

(B) 商品と役務が無関係とみなされた例
① 商標審決番号921/2564(2021)
出願商標:
区分11:空気濾過媒体、空気濾過装置、空気濾過装置用フィルター、音響媒体

引用商標:
区分37:車両注油、車両保守、車両整備、車両修理、車両洗浄

理由:両商標の商品と役務は異なる区分であり、それぞれの使用目的は特定されている。その結果、両商標の商品と役務は同じ性質のものではなく、混同の可能性は生じない。

注目点:両商標の商品・役務の具体的な使用目的または提供目的が重複しているかどうかを検討する。

② 商標審決番号371/2562(2019)
出願商標:
区分44:美容施術に関する助言サービス、美容コンサルタント、美容施術等

引用商標:
区分3:皮膚栄養クリーム

理由:両商標は化粧品に関連するが、異なる需要者グループを対象としており、異なる取引経路を通じて提供されている。その結果、出願商標の商品と引用商標の役務は同じ性質のものではない、とした。

注目点:区分とは別に、商品の関連要素、すなわち、需要者の対象グループと取引経路も考慮した結論となっている。本審決例と新審査基準に基づき、商品と役務の類似性・非類似性を判断する際、例えば、商品と役務の意図された目的が合致しているか、商品と役務が対象とする需要者が一致しているかなど、タイと日本は、その判断方法を共有している。
 さらに、タイは、欧州の商標審査基準に規定されている要因の一部、すなわち、商品・役務の性質や意図する目的を考慮している。

6. まとめ
 DIPおよび裁判所は、商品および役務の類似性を判断するために、商標の国際分類(区分)のみならず、例えば、商品および役務の性質、商品の使用または役務の提供の目的、生産段階における関連性、対象需要者、取引経路、商品または役務の価格等の様々な要素を考慮している。

【クロスチェックリストの閲覧方法】
(1) DIPのウェブサイト https://search.ipthailand.go.th/ に接続する。

(2) クリック

(3) クリック

(4) 何も入力せず、ここをクリック

(5) 区分    ニース分類 Class Heading       関連区分(商品・役務)
46はDIP独自分類で証明商標を、47は団体商標を示し、全区分に関連する。

タイにおける知的財産関連機関・サイト

(1) 立法機関
・タイ国民議会(National Assembly)
 https://web.parliament.go.th/view/7/nationalassembly/TH-TH

 タイ王国の立法府であって、上院の元老院(250議席)と、下院の人民代表院(500議席)とから構成される二院制を採用している。人民代表院は、元老院よりも優越的権限が付与されており、人民代表院の議長が国会議長を務める。具体的には、法案および予算の先議権を有すること、タイ国王によって任命されたタイ首相を承認すること、首相および閣僚の不信任決議を可決すること等の優越的権限が付与されている。

(2) 行政機関
・タイ知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)
 https://www.ipthailand.go.th/th/home.html

 商務省管轄の組織であって、知的財産権の保護および侵害の抑制のための措置の実行、知的財産権の管理システムの構築、ならびに知的財産権の啓発活動等を目的として設立された。具体的な業務としては、特許法(発明特許、発明小特許、意匠)、商標法、著作権法、地理的表示(GI)およびその他の関連法律に基づいた知的財産権の保護・活用、知的財産の保護のためのシステム開発、知的財産に関する他国組織との連携および協力関係の構築が挙げられる。近年、知的財産局は、システム開発に注力しており、2020年2月よりオンラインによる著作権登録システムの運用を開始、2022年12月より商標の画像検索システムの運用を開始している。

※1:著作権登録システムhttps://copyright.ipthailand.go.th/
※2:商標の画像検索システムhttps://search.ipthailand.go.th/

・タイ経済警察(Economic Crime Suppression Division:ECD)
 http://www.royalthaipolice.go.th/

 タイ警察(Thai Royal Police)の中央捜査局下に設立された、知的財産を含む経済犯罪に対応するための特別組織であり、経済犯罪制圧部とも称される。タイ国内において、損害金額が比較的小規模である知的財産権侵害について、権利者からの情報、要請または職権に基づき摘発(レイド、差押え)を行う(タイ国内全体における事件を取り扱う)。著作権については、権利者の訴えがない限り逮捕は行わない。特許権については、権利者からの訴えとそれを証明する材料の提出に基づき、裁判所の令状を取得の上で摘発を行う。

・タイ特別捜査局(Department of Special Investigation:DSI)
 https://www.dsi.go.th/

 法務省の下に設立された、特別技能を持つ専門家から構成される特別な捜査機関である。捜査対象となる事案としては、複雑で、緻密かつ入念な捜査や情報収集が必要とされる刑事事件、公序良俗や道徳、国家の治安、国際関係等に深刻に抵触する刑事事件、そのほか同捜査機関自らが捜査を請け負うべきと判断する事件などが挙げられている。

・タイ税関(Customs)
 https://www.customs.go.th/

 財務省の下に設立され、知的財産に関する業務として知的財産権の執行および国境における模倣品の取り締まりを行う政府組織である。タイ税関は、タイ関税法、タイ輸出入法、商標法および著作権法等に基づいて、裁判所の命令によることなく職権または権利者からの要請に基づき、商標と著作権に係る知的財産侵害物品を差し止め、没収、処分することができる。

・タイデジタル経済社会省(Ministry of Digital Economy and Society:MDES)
 https://www.mdes.go.th/

 経済および社会に対するデジタル開発に関する国家戦略、計画、統計および法令を提案、監視、規制、評価することが主要な任務とされる。デジタル経済社会省の大臣は、コンピュータ犯罪法に基づき、知的財産法により刑事犯罪を構成するコンピュータ・データの拡散中止の要求、または、コンピュータ・システムからの削除の要求を裁判所に申請するための承諾を与える任務を担っている。デジタル経済社会省は、知的財産局と連携して、オンライン上で販売される知的財産権の侵害品を監視する。

(3) 司法機関
・タイ知的財産・国際取引中央裁判所(The Central Intellectual Property and International Trade Court)
 https://ipitc.coj.go.th/th/page/item/index/id/500

 知的財産専門の裁判所として設置された第一審裁判所であって、知的財産および国際取引に関する民事・刑事事件を担当する。知財保護と国際取引の公正を保つことを設立目的とし、発明創出や国際取引、技術導入の機能を果たしている。裁判は、2名の専門判事(Career Judge)と1名の賛助判事(Assist judge)によって行われ、賛助判事は、知的財産や国際取引のエキスパートであって、大学教授や医師、エンジニアなどの有識者が担う。

・タイ専門事案控訴裁判所(Court of Appeal for Specialized Cases:CASC)
 https://appealsc.coj.go.th/th/page/item/index/id/1

 2016年10月に設立された、タイ知的財産・国際取引中央裁判所(CIPITC)の控訴審を専門に取り扱うための裁判所であって、専門事案を判断可能な裁判官のみで構成されている。当裁判所が設置される以前は、CIPITCの判決に不服がある場合に最高裁判所へ控訴していたが、2016年10月より、当裁判所へ控訴することとなり、民事・刑事ともに3審制度を採用することとなった。

(4)その他知的財産関係機関
・国立知的財産権行使センター(National Intellectual Property Rights Centre of Enforcement:NICE)
 ウェブサイトなし

 全政府の省庁間において協力体制を図り、高度な協力を要する事件の取り扱いまたは重大な犯罪、組織犯罪の防止を強化することを目的として2014年5月に設立された。インターネット詐欺、模倣品のオンライン販売および直接販売など、最近多発している犯罪に注力している。

・著作権保護センター(New Copyright Protection Centre)
 ウェブサイトなし

 インターネット上の著作権侵害等オンラインによる知的財産権侵害行為への対応強化を目的として、タイ政府によって2018年12月に設立された。国家放送通信委員会に本部を設置し、国家警察庁との連携を通じて、オンラインによる著作権侵害等への迅速な対応を行う。同センターが、権利者より申立てを受けた場合には、警察当局の調査員と国家放送通信委員会が連携して申立ての妥当性を確認しあい、デジタル経済社会省による協力の下、違法サイトのブロック等の対抗措置を速やかに行う。

・IP IDE Center(IP Innovation Driven Enterprise Center)
 https://www.sciencepark.or.th/index.php/th/innovation-update/open-ip-ide-center-2017/

 タイ知的財産局によって開設された、オンサイトのアドバイザリーサービスセンターである。具体的には、情報サービスと技術動向の分析、ベンチャー企業を革新主導型企業に導くためのアドバイス、知的財産の管理に関するガイダンス、企業への国際的な知財産保護のための誘致サービスを提供しているほか、知的財産に関する学習ツールを提供している。そのほか、知的財産に関する取引を扱っているオンラインプラットフォーム「IP Mart」も提供している(https://ipmart.ipthailand.go.th/)。

・日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所 知的財産部
 https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/ip.html

 アセアン10か国、特にメコン地域(タイ、ベトナム、カンボジア、ラオスおよびミャンマー)を対象国として、日系企業等の知的財産に関する業務をサポートする業務を行っている。具体的な業務としては、アセアンにおける「知的財産制度・模倣品対策に関する情報の調査およびその広報」、「知的財産に関する法律的な助言」、「知的財産に関する研修・セミナー」、「東南アジア知財ネットワーク(SEAIPJ)の事務局」および「現地政府当局へのロビーイング活動」を行っている。

・タイ知的財産振興協会(Intellectual Property Promotion Association of Thailand:IPPAT)
 http://www.ippat.org/

 知的財産に関する代理人のサポート、知的財産権の保護や保護手段の研究、ならびに知的財産に関する知識の普及を目的として設立された団体である。会員は、主に弁護士で構成されており、タイの知的財産法を対象として活動し、また会員を対象として知的財産法および条約の改正や審査マニュアル等に関するセミナーを開催している。

タイにおける産業財産権の検索データベースの調査2022

「ASEANにおける産業財産権の検索データベースの調査2022」(2023年3月、日本貿易振興機構 バンコク事務所(知的財産部))

 「ASEANにおける産業財産権の検索データベースの調査2022」(2023年3月、日本貿易振興機構 バンコク事務所(知的財産部))第6章 タイ

(目次)
第6章 タイ P.192
(タイ知的財産局(DIP)で2022年7月から運用された新システム上の案件データに基づき、種別(特許および実用新案(小特許))ごとに、2022年に公開された出願を対象とし算出した「出願から公開までに要した期間」、および2022年に登録された案件を対象とし算出した「出願から登録までに要した期間」について紹介している。また、2004年から2022年に①公開された案件、および②登録された案件について、それぞれ、①出願から公開まで、および②出願から登録までの経過期間の分布を、全案件、出願人国籍別、出願ルート別、技術分野別にグラフで紹介している。加えて、特許の案件についての2017年から2021年までの各年の出願、および実用新案(小特許)の案件については2019年から2021年までの各年の出願を対象とし算出した、全出願人を対象とした出願件数上位ランキング、日本国籍出願人を対象とした出願件数上位ランキング、技術分野別の出願件数上位ランキング外国出願人のタイ第一国出願の出願件数上位ランキングを紹介している。さらに、2003年から2022年までの各年の出願についての2023年1月時点での登録率を紹介している。)

1.特許 P.192
1.1 産業財産権の権利化期間 P.192
1.2 産業財産権の出願件数上位リスト P.214
1.3 登録率 P.223

2.実用新案 P.224
2.1 産業財産権の権利化期間  P.224
2.2 産業財産権の出願件数上位リスト P.241
2.3 登録率 P.249

タイにおける商標出願に際しての指定商品および役務の書き方

タイは、ニース協定に加盟していないものの、タイの商標審査基準第3部の商標法第13条解説の末尾では、商品・役務を国際分類(ニース分類)にしたがって記載する旨が示されており、2023年3月1日から国際分類第12版を採用している。第12版には、34の商品分類(第1類から第34類)と11の役務(サービス)分類(第35類から第45類)が定められている。商標登録を求める出願人は、一般的にこの分類にしたがい指定商品・指定役務を記載するが、タイにおいては、日本に比べてより明確かつ具体的な記述を求められる場合がある。タイでの商標出願において、商標登録官に認められる可能性を高めるための指定商品・指定役務(サービス)の書き方について解説する。

指定商品・指定役務(サービス)の記載
 タイ商標法第9条に基づき、商標登録出願は、特定の商品を指定して行うことができる。なお、2016年7月28日施行の改正法により、「An application may not cover goods of different classes.」の条項が削除されたため、複数区分の指定商品または役務をまとめて1件の出願にするか(一出願多区分)、または、区分ごとに複数出願するかを選択できるようになった。

 ただし、2023年現在の実務においては、出願後に区分毎に出願を分割することは認められておらず、複数区分を含む出願が一部の区分に対し拒絶を受けた場合、拒絶を受けなかった区分の登録手続を先に進めることができない。このため、出願を選択する際には、注意が必要である。

 タイ商標法第9条では、「商標登録出願は、1分類または異なる分類の何れかにおいて特定の商品に関してできるが、保護を求める各々の商品を明確に特定しなければならない。商品分類は、大臣の告示により、これを定める。」と定められている。

 多くの出願人は、商標出願に際して、広範な表現を用いてその指定商品・指定役務(サービス)を特定することにより、可能な限り広範な保護を受けることを望んでおり、事業および商品の将来的な拡大や展開に備えようとする。しかしながら、タイの商標登録官は、商標分類見出し(クラス・ヘッディング)やサブクラス見出し(サブクラス・ヘッディング)などの広範な記述を認めないため、指定商品・指定役務(サービス)を細かく指定しなければならない。

 一方、過度に詳細な記述は、指定した商品が他の分類に属することがあり、指定商品を削除しなければならなくなる要因ともなり得る。さらに、出願人は、下記のような記載を避ける必要がある。

 例:「を含む(including)」、「特に(especially)」、「それの(thereof)」、「例えば(for example)」、「などの(such as)」

 手数料は、指定商品・役務5区分までの場合は1区分あたり1,000バーツ、6区分以上の場合は1区分あたり9,000バーツを納付する必要があり、実務上、願書に通し番号を付して指定商品・指定役務を記載することが一般的である。

指定商品・役務の数に関する補正
 近年、タイの商標登録官は、補正する指定商品が出願時に記載した広範な記述の範囲内であっても、出願時の指定商品・指定役務の数が増える補正を拒絶している。このことを念頭に置き、出願人は、商標出願を行う際に、指定商品・指定役務を詳細に記載しておく必要がある。

不適切な記載と適切な記載例

 以下に、指定商品・指定役務の記載に関する不適切な例と適切な例を紹介する。

・第1類:「化学品」および「工業用化学品」という記述は不適切であるため、出願人は、例えば、「化粧品産業用化学物質」、「化学産業用化学物質」のように、より詳細に商品を記載しなければならない。この分類には、医療用化学品が含まれないため、「医療用または獣医科用以外の」という記述は使用することができる(例えば、「医療用または獣医科用以外の実験室における分析用の化学薬剤」)。

・第3類:「化粧品」、「メークアップ」、「香水類」という記述は不適切であり、より具体的に記載する必要がある。従来は、「目、唇、頬および頭髪に使用する化粧品」という記述は適切であると見なされていたが、現在では認められない。ただし、「フェイシャルメークアップキット」、「フェイシャルスキンケア用化粧品キット」および「ボディスキンケア用化粧品キット」という記述は認められる。「香水類」に代えて、出願人は、「香水」、「オーデコロン」、「オードトワレ」を使用することができる。

・第5類:出願人は、指定商品の記述が不明確であり、他の分類に属する可能性がある商品を本類にて特定するために「医療用」という記述を使用することができる。例えば、「医療用栄養添加物」、「医療用栄養補助食品」、「医療用食餌療法飲料」等の記載が認められる。

・第7類:出願人は、不明確な指定商品を特定するために「機械」または「機械の部品」という記述を使用することができる。例えば、「ボール盤(機械)」、「電動カッター(機械)」、「コーキングガン(機械の部品)」、「エアスプレーガン(機械の部品)」、「バルブ(機械の部品)」、「クランクケース(機械の部品)」等の記載が認められる。

・第10類:他の分類に属する可能性がある商品を本類にて特定するために、出願人は、「医療用」という記述を加えることができる。例えば、「医療用X線装置」、「医療用X線写真」、「医療用X線チューブ」、「医療用X線保護装置」等の記載が認められる。

・第25類:「ズボン(pants)」および「靴」という語は不適切な記載となる。「ズボン」という語は、「ズボン(スポーツ用ズボンおよびズボン下は除く)」、「スポーツ用ズボン」、「ズボン下」等と明記しなければならない。同様に、「靴」は、「靴(スポーツ靴を除く)」または「スポーツ靴」等に分けなければならない。
・第28類:「玩具」という語は不適切な記載となるが、「プラスチック製玩具」、「ゴム製玩具」、「金属製玩具」および「紙製玩具」という語は認められる。

・第35類:「小売業」という記述は不適切となる。このサービスについて広範な保護を求める出願人に対しては、「小売業向け事業管理支援」等の記述が推奨される。

商標登録官へのアプローチ

 国際分類表に記載されている指定商品・指定役務は、認められる場合が多いが、国際分類表に記載されている指定商品・指定役務でもタイの商標登録官に認められない場合もしばしば見られる。例示されていない指定商品・指定役務については、認められる可能性が低い。
 現地代理人を経由して、タイの商標登録官に出願前に面談するアプローチは有用である。事前面談での商標登録官とのやり取りの経験は、登録官が認める記載要件を理解する上で重要である。しかしながら、明確な運用指針で定められている訳では無く、事前面談に法的拘束力もないことから、事前面談の結果に基づく商品が認められない可能性も理解しておかなければならない。また、過去に登録した商品が後に認められない場合もある。したがって、商標登録官とのやり取りについては、予想できない展開もあるが、現行のプラクティスを十分に理解して、方策を講じることが重要である。

日本とタイにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
 日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

日本国特許法第44条(特許出願の分割)
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。
4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

2.タイにおける特許出願(発明特許出願および小特許出願)の分割出願の時期的要件
 タイでは、分割指令を受領した日から所定期間内*)に分割出願することができる(タイ特許法第26条)が、出願人が自発的に分割出願を行うことはできない。

タイ特許法 第26条
出願審査において,その出願が単一の発明概念を構成する関連性ある発明に該当しない複数の異なる発明に関するものであると判断される場合,担当官は,出願人に通知して,かかる出願をそれぞれが単一の発明を対象とする複数の出願に分割するよう求めるものとする。
出願人が前段落の通知の受領後180日以内に分割出願した場合,その分割出願は,最初の出願の出願日に行われたとみなすものとする。
出願は,省令に定める規則及び手続に従って分割されるものとする。
出願人が出願を分割する要求に応じられないときは,120日以内に長官に対して審判請求することができる。長官の決定を最終とする。

タイ特許法 第65条の10
第II章の発明特許に関する第6条,第8条,第9条,第10条,第11条,第12条,第13条,第14条,第15条,第16条,第17条,第18条,第19条,第19条の2,第20条,第21条,第22条,第23条,第25条,第26条,第27条,第28条,第35条の2,第36条,第36条の2,第38条,第39条,第40条,第41条,第42条,第43条,第44条,第45条,第46条,第47条,第47条の2,第48条,第49条,第50条,第50条の2,第51条,第52条,第53条及び第55条の規定は,第III章の2の小特許について準用するものとする。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第1部 13.1
13.1複数の発明を有することによる分割出願
 出願の審査において、出願が単一の発明概念とみなすことができないほど互いに関連がない複数の発明を含んでいると認めたとき、担当官は特許出願人に発明ごとに出願を分割するよう通知する。
 特許出願人が担当官から通知を受けた日から120日以内に、第1項に基づき分割した発明の出願を行ったとき、最初に出願した日を出願日とみなす。
 出願の分割は省令の定める規則及び手続きに従わなければならない。特許出願人が担当官の命令に同意しないとき、120日以内に局長に対して審判請求できる。局長が決定及び命令を行なったとき、局長の命令を最終とする。
 この場合、審査官は、審査官からの出願分割命令があり、元の出願から分割された特許出願が当該命令の受領日から120日以内に提出されているか審査する。出願人が当該期間内に出願を提出した場合、元の出願からの分割出願は最初の出願の出願日に提出したものと見なされる。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第1部 14.1
14.1 複数の発明がある(小特許)出願の分割

 特許出願の審査において、担当官が単一の発明とみなすことができないほどお互いに関連がない複数の発明を含んでいる出願と認めたとき、担当官は特許出願人に発明ごとに出願を分割するよう通知する。
 特許出願人が担当官から通知を受けた日から120日以内に、第1項に基づき分割した発明の出願を行ったとき、最初に特許出願した日を出願日とみなす。
 出願の分割は省令の定める規則及び手続きに従わなければならない。
 特許出願人が担当官の命令に同意しないとき、120日以内に局長に対して審判請求できる。局長が決定及び命令を行なったとき、局長の命令を最終とする。
 この場合、審査官は、審査官からの出願分割命令があり、元の出願から分割された小特許出願が当該命令の受領日から120日以内に提出されているか審査する。出願人が当該期間内に出願を提出した場合、元の出願からの分割出願は最初の出願の出願日に提出したものと見なされる。

発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019年改訂版 第1章 第3部 4.4.3
4.4.3 発明が単一性を欠く(Lack of Unity)場合の実務指針

 第18条に基づき、各特許出願においては発明一件のみ出願できる。複数の発明が同一の発明概念を構成する程度に関連している場合のみ、単一の特許出願として出願できる。
 第26条に基づき、出願の審査において、出願が単一の発明概念を構成する程には関連しない複数の異なる発明に対するものであることが認められた場合、担当官は単一性のある各発明に対する数の出願に分割するよう出願人に通知する。
 ●出願人が前段に基づく当該通知の受領から120日以内に分割出願を提出した場合、当該出願は最初の出願日に提出されたものと見なす。出願の分割は省令に定める規則及び手順に基づき行う。
 ●特許出願人が担当官から特許出願人に対しての分割出願の命令に同意しない場合、120日以内に局長に審判を請求しなければならない。局長が決定し命令した場合、局長の命令が最終となる。

*) 所定期間が、特許法と審査マニュアルで異なっているが、審査マニュアルの「実務指針」にあるように実務上は120日で運用されている。

    日本とタイにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 タイ
分割出願の時期的要件**) 補正ができる期間 分割指令の受領日から120日以内

**) 査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

タイにおける顧客に好まれない商標および顧客に好まれる商標

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日本とタイの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長

(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月

条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1.(2)ア、2.(2)ア

日本国特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

日本国特許法第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

方式審査便覧04.10 法定期間及び指定期間の取扱い
1.手続をする者が在外者でない場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
ア.意見書(特50条、商15条の2、15条の3第1項、商附則7条)
2.手続をする者が在外者である場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)及び(12)を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。
ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。)

(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能
 (*特許庁「出願の手続」第二章 第十八節 IV指定期間の延長、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_18.pdf

条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(16)ア、2.(12)ア、イ

日本国特許法第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。

日本特許庁 方式審査便覧 04.10 1.(16)ア、2.(12)
1 手続をする者が在外者でない場合
(16) 次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2 手続をする者が在外者である場合
(12) 特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができる。
イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。

2.タイの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長

(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・拒絶理由通知書への応答期間は90日

条文等根拠:特許法第27条、審査マニュアル第1章第3部4.4.4第5条に該当しない場合の実務指針、第27条関連記載

タイ特許法 第27条
出願審査において,担当官は,出願人を召喚して質問に答えさせ又は書類その他を提出させることができる。
外国で特許出願を行った出願人は,省令に定める規則及び手続に従い,出願審査報告書を提出しなければならない。
提出すべき書類が外国語である場合,出願人は,その書類をタイ語の翻訳文と共に提出しなければならない。
出願人が前段落に基づく担当官の指示に従わないとき,又は90日以内に本条第2段落に従って審査報告書を提出しないときは,出願人は,その出願を放棄したものとみなす。長官は,必要に応じて適当と考える期間を延長することができるものとする。

審査マニュアル第1章第3部4.4.4第5条に該当しない場合の実務指針
第27条関連記載
特許出願が検討された結果、新規の発明ではなく及び/又は進歩性及び産業上の利用可能性を有さないと判断された場合、担当官は第27条に基づき補正通知又は補正命令を発行しても良く、その場合、特許出願人は通知の受領日から90日以内に手続きしなければならない。特許出願人が所定の期限内に応答又は補正できない場合、出願人は期限の延長を2回請求でき、1回目の延長は90日、2回目は30日である。前述の期限内に手続きを行わない場合、仏暦2522年特許法第27条に基づき特許出願を放棄したものと見なされる。
但し、審査官が出願を検討した結果、第6条、第7条、及び第8条の規定を準用する第5条に基づき正確ではないと判断した場合、出願人に検討理由及び/又は補正指示を通知し、出願人が明瞭化又は通知又は補正を正確に理解できるよう検討結果及び先行技術を添付する(独立クレームに対する補正の場合あり)。


(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・拒絶理由通知書への応答期間を、最大120日延長することが可能
 延長は2回申請することが可能であり、1回目の延長申請により90日の期間延長、2回目の延長申請により更に30日の期間延長が可能。

条文等根拠: Notification of DIP on Rule of Request for Extension of Time to Submit(2014.12.16)第4条~第6条

第4条
特許出願人または小特許出願人に対し、追加の書類の提出または出願の補正が指示された場合、特許出願人または小特許出願人は、担当官からの通知を受領してから90日以内に、追加の書類の提出または補正請求をしなければならない。
特許出願人または小特許出願人が、前項で指定された期間内に当該書類を提出することができないやむを得ない理由がある場合、特許または小特許の出願人は、上記の期間が経過する前までに長官または事務局長に救済を申請することができる。

第5条
特許出願人または小特許出願人が必要な理由を示し、第3条または第4条にしたがって救済を申請する場合、書類の提出または補正請求の提出期間は、書類提出または補正請求の期限の日からさらに90日間延長されるものとする。

第6条
特許出願人または小特許出願人が書類の提出または補正請求をすることができない場合、第5条にしたがって、延長が認められる期間内であれば、救済が認められた期間の満了前に、長官または事務局長によって任命された者に、正当な理由を示すことにより、さらなる救済を申請することができる。この場合、書類の提出または補正請求の期間は、再度延長され、その期間は提出期限から30日とする。




日本とタイの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

日本 タイ
応答期間 60日(在外者でない場合)
3か月(在外者の場合)
90日
応答期間の延長の可否
延長可能期間 最大2か月(在外者でない場合)
最大3か月(在外者の場合)
最大120日
(1回目の延長申請により90日の期間延長が可能+2回目の延長申請により更に30日の期間延長が可能)

日本とタイにおける特許出願書類の比較

1.日本における特許出願の出願書類
(1) 出願書類
 所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
 ・願書
 ・明細書
 ・特許請求の範囲
 ・必要な図面
 ・要約書
(条文等根拠:特許法第36条)

・日本特許法 第36条(特許出願)

特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
 一 特許出願人の氏名又は名称および住所又は居所
 二 発明者の氏名および住所又は居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
 一 発明の名称
 二 図面の簡単な説明
 三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
 一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
 二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
 一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
 二 特許を受けようとする発明が明確であること。
 三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
 四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

(2) 手続言語
 日本語

(3) 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
 英語、その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日(優先権主張を伴う出願においては最先の優先日)から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
(条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4)

・日本特許法 第36条の2

特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第四十一条第一項、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第六十四条第一項において同じ。)から一年四月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。ただし、故意に、第四項に規定する期間内に前項に規定する翻訳文を提出しなかったと認められる場合は、この限りでない。
7 第四項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。

・日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語

特許法第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。

(4) 優先権主張手続
 優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類(優先権主張書)を所定の期間内に提出し、その基礎出願の謄本(優先権証明書)を最先の優先日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。優先権主張書の提出は、特許出願の願書に所定の事項を記載することで、省略することができる。
(*特許庁「出願の手続」第二章第十一節「優先権主張に関する手続」、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_11-1.pdf
 ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
(条文等根拠:特許法第43条)

・日本特許法 第43条(パリ条約による優先権主張の手続)

パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
 一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
 二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
 三 その特許出願が前項、次条第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
6 特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかったときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。
8 第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。
9 第七項又は前項の規定により第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面の提出があったときは、第四項の規定は、適用しない。

<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html

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2.タイにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1) 出願書類
 タイ特許法および省令にて規定された以下の書面を提出する。ただし、出願時に出願書類(願書または証拠書類)に不備がある場合は90日以内に補完提出が可能。
 ・願書
 ・発明の説明(明細書)
 ・特許請求の範囲
 ・要約
 ・必要な図面
 ・優先権書類
 ・委任状(公証人認証済みのもの)
 ・該当する場合は譲渡証
(条文等根拠:特許法第10条、第17条、特許法に基づく省令第22号(B.E.2542)第2条、特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)第13条、発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019(第1章第1部添付書類1、備考1))

・タイ特許法 第10条

発明者は,特許を出願すると共に発明者として特許に名称を記載される権利を有する。
特許を出願する権利は,譲渡又は承継により移転することができる。
特許を出願する権利の譲渡は,書面で行わなければならず,また,譲渡人及び譲受人の署名を必要とする。

・タイ特許法 第17条

特許出願は,省令に定める規則及び手続に従わなければならない。
特許出願書類には,次の事項が含まれていなければならない。
(1) 発明の名称
(2) 発明の特徴及び目的に関する簡単な説明
(3) 当該発明が帰属するか又は最も密接に関連する技術分野において通常の知識を有する者が当該発明を実施及び使用することができるような完全,簡潔,明瞭かつ正確な言葉で記され,かつ発明者が自らの発明を実施する上で企図する最良の態様が示された,発明の詳細な説明
(4) 明確かつ正確な 1 又は複数のクレーム
(5) 省令に定めるその他の事項
タイが特許に関する国際協定又は国際協力に加盟した場合,かかる国際協定又は国際協力の要件を満たす特許出願は,本法に基づく特許出願とみなされる。

・タイ特許法に基づく省令第22号(B.E.2542) 第2条

特許法第28条又は第65条の5(場合に応じ)の規定に基づいて長官に審査報告書を提出するため発明特許出願又は発明小特許出願を処理するにあたり,担当官は,次の事項についてかかる特許出願又は小特許出願の審査を行うものとする。
(1) 願書,発明の説明,クレーム,図面(もしあれば)及び要約が,特許法第17条又は第17条を準用する第65条の10(場合に応じ)に基づいて公布される省令に準拠していること
(2) 当該発明が,特許法第9条又は第9条を準用する第65条の10(場合に応じ)に基づく特許性のない発明でないこと
(3) 出願人が,特許法第10条,第11条,第14条又は第15条第1段落若しくは第2段落に基づいて特許を出願する権利,又は,第10条,第11条,第14条又は第15条第1段落若しくは第2段落を準用する第65条の10に基づいて小特許を出願する権利(場合に応じ)を有していること
(4) 出願人が,特許法第16条又は第16条を準用する第65条の10(場合に応じ)に基づいて特許又は小特許の付与を受ける権利を有していること
(5) 特許出願又は小特許出願の対象たる発明が,その出願日より前に特許法第65条の3に基づいて国内で特許出願又は小特許出願がなされた発明と同一のものでないこと
(6) 小特許出願の対象たる発明が単一の発明概念を構成すべく連結していること

・タイ特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第13条

タイの居住者でない出願人,異議申立人,答弁人又は審判請求人は,その者の代理人としてタイ国内で行為する者として長官に登録された代理人を任命しなければならない。委任状は長官に提出するものとする。
前段落の委任状は,タイの外交代表者,商務参事官,通商局長官,商務官若しくはその国の領事,又は委任者の国の法律により署名認証権を与えられた官吏による証明を得なければならない。

・発明特許及び小特許出願審査マニュアル2019(第1章第1部添付書類1、備考1)

出願又は証拠書類が不正確・不完全な場合は、担当官が追加提出すべき書類又は証拠書類の項目の不備を記録する。その場合、出願人は特許又は小特許の出願日から90日以内に、補正及び追加書類の提出を行うこと。出願人が上記の期限までに追加書類を揃えて送らなかった場合は、出願人は出願を放棄したものと見なし、担当官は出願人に出願返却すると共に、願書の返却理由及び審判請求の権利について通知する。

(2) 手続言語
 タイ語
(条文等根拠:特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第12条)

・タイ特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第12条

すべての願書及び出願時に提出される書類は,次に従うものとする。
(1) 正確,明確及び完全な情報を様式の定めるとおりに記載すること
(2) 発明の説明,クレーム及び要約も含め,タイ語で印刷又はタイプすること
出願人が既に外国で特許又は小特許の出願を行っている場合,出願人は,発明の説明,クレーム及び要約を原出願における外国語で提出することを要求することができる。この場合出願人は,正確かつ原出願に対応したタイ語による発明の説明,クレーム及び要約を出願から90日以内に提出しなければならない。
出願人が所定の期間内にタイ語による出願書類を提出しない場合,出願人は,かかるタイ語の書類を提出する日をもって出願を行ったものとみなされる。
(3) 場合に応じ,出願人,異議申立人,答弁人若しくは審判請求人,又は第11条又は第12条の規定に基づき委任が行われた場合は登録代理人が署名すること

(3) 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
 明細書、特許請求の範囲および要約は、他国での出願言語にて提出した後にタイ語訳の補完提出が可能。補完提出期限は出願から90日以内。
(条文等根拠:上記、タイ特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542) 第12条)

(4) 優先権主張手続
 優先権主張を出願と同時に行う必要がある。優先権証明書を優先日から16か月以内かつ出願公開前に提出する必要がある。
(条文等根拠:特許法第19条の2、特許法に基づく省令第21号(B.E.2542)第10条)

・タイ特許法第19条の2

第14条に基づき外国で発明特許出願を行った者は,外国での最初の出願日から12月以内に国内で出願を行ったときは,かかる最初の外国出願日を国内での出願日として主張することができる。

・タイ特許法に基づく省令第21号(B.E.2542)第10条

外国で特許又は小特許の出願がなされた発明につき,かかる外国での最初の出願日から12月以内に特許出願を行う場合において,出願人が特許法第19条の2に基づきかかる外国での最初の出願日をタイでの出願日とすることを希望する場合,出願人は,出願時又は出願公告前でかかる外国での最初の出願日から16月以内に,長官の定める様式による別の願書を提出しなければならない。この場合,出願人はさらに,出願日及び出願の詳細を示す外国で提出した特許又は小特許の出願書類の謄本で,出願を行った国の特許庁が認証したものを提出することを要する。

(5) 委任状および譲渡証について
(公証人認証済み委任状)
 タイの居住者でない出願人は、タイ国内での代理人を任命しなければならず、委任状を出願とともに提出しなければならない。委任状は、公証人認証が必要となる。

(譲渡証)
 発明者は、特許を出願すると共に発明者として特許に名称を記載される権利を有する。出願人が発明者本人でない場合(所属する法人等が出願人となる場合)、特許を出願する権利の譲渡が書面にて行われる必要がある。この譲渡証には、譲渡人および譲受人の署名を必要とする。

 委任状、譲渡証も含め、出願書類(願書または証拠書類)に不備があった場合、出願日から90日以内に補完提出が可能であるが、期限に間に合わなかった場合は特許法第27条に従って出願を放棄したものとみなされる。

(条文等根拠:特許法第10条、特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)第13条(いずれも上記)、特許法第27条)

・タイ特許法第27条

出願審査において,担当官は,出願人を召喚して質問に答えさせ又は書類その他を提出させることができる。
外国で特許出願を行った出願人は,省令に定める規則及び手続に従い,出願審査報告書を提出しなければならない。
提出すべき書類が外国語である場合,出願人は,その書類をタイ語の翻訳文と共に提出しなければならない。
出願人が前段落に基づく担当官の指示に従わないとき,又は90日以内に本条第2段落に従って審査報告書を提出しないときは,出願人は,その出願を放棄したものとみなす。長官は,必要に応じて適当と考える期間を延長することができるものとする。

日本とタイにおける特許出願書類の比較日本

日本 タイ
手続言語 日本語 タイ語
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否
出願日(優先権主張を伴う場合は最先の優先日)から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。

出願日から90日以内に発明の説明(明細書)、特許請求の範囲および要約のタイ語による翻訳文を提出しなければならない。
優先権主張
手続
優先権主張を出願と同時に行う(又は優先権主張書を所定の期間内に提出する)。優先権証明書を最先の優先日から1年4か月以内に特許庁長官に提出する。 優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を優先日から16か月以内かつ出願公開前に提出しなければならない。