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シンガポールにおける英語以外の言語を含む商標の出願

【詳細】
(1)願書への記載事項
 シンガポールでは、出願商標がローマ字以外の文字または英語以外の言語より構成される、またはこれらを含む場合、登録官が別段の指示をしない限り、出願時の願書において、以下について記載することが求められている(シンガポール商標規則20(1))。

・登録官が納得するような、各語および全体としてひとまとめに解釈される複数の語についての英語翻訳および必要な場合は音訳

・各語が属する言語

 そのため、シンガポールの商標出願の願書(TM4)には、「PART 4G Non-English Words and Non-Roman Characters」に、出願商標が英語以外の言語、ローマ字以外の文字から構成される、またはこれらを含む場合に対応するため、その語源を記載する欄が設けられている。(i)では、当該出願商標の言語が造語であり、貿易・産業上意味を有さない場合には、その旨を記載する必要がある。また、登録官は、出願人に対し、証明または立証された翻訳あるいは、翻字の謄本の提出を随時求めることができるため(同規則20条第2項)、願書の「PART 4G Non-English Words and Non-Roman Characters」(ii)は、翻訳者の翻訳文または辞書の翻訳文の添付を求めている。
 さらに、ローマ字化した文字を含む商標の場合(For marks incorporating Romanised words)、ローマ字化した文字の英訳、または文字に「意味はない」のいずれかを選択する欄が設けられている。例として、フランス語の「Cheval」、英訳「horse」が記載されている。また、ローマ字ではない文字を含む商標の場合(For marks incorporating non-Romanised characters)、さらに音訳も記載する欄が設けられている。例として、中国語の「好」、音訳「Hao」、英訳「Good」が記載されている。

(2)日本語が含まれるまたは日本語から構成される商標の登録例
 例えば、日本語表記で構成されるまたは日本語表記を含む商標の登録例としては以下のようなものがある。

Trade Mark Number: T0619542H

※公報の「Mark Clauses」欄において、以下のような記載がある。

01 The transliteration of the Kanji characters of which the mark consists is “Nihon Keizai Shimbun” meaning “Japan Economic News Paper”.

Trade Mark Number:T1304797H

※公報の「Mark Clauses」欄において、以下のような記載がある。

01 The transliteration of the Japanese characters of which the mark consists is “Salonsip” which has no meaning.

(3)留意事項
・商標が日本語表記で構成された、または含む商標をシンガポールに出願する場合には、上記の例示のように、英語の翻訳文等を願書に記載する必要がある。ただし、当該出願商標が識別力のない商標にあたる場合、登録出願日前になされた使用の結果、識別性のある特徴を実際に取得した場合を除いては、登録を拒絶される点につき留意が必要である(シンガポール商標法第7条第1項、同条第2項)。
・英語以外の言語で構成されたまたは含む出願商標が慣用商標にあたる場合、慣用されている旨は裏書きで言及しないため、登録され得ると考えられる。各業界団体は、この点を突いた出願について警戒する必要がある。
・シンガポールでは、出願商標が日本語等の英語以外の文字より構成されるまたは含む場合も、英語の商標の場合と同じ基準で識別性の評価が行われ、日本語の意味自体が考慮されることもあるようである。
・シンガポールにおいて日本語が読める消費者は少ないため、日本文字のみから構成される商標を出願する際には、併せて英語(アルファベット)表記の商標も出願しておくことが、ブランド戦略、侵害対策として重要と言える。