シンガポールにおける特許新規性喪失の例外
1. 背景
シンガポールにおいて、発明が新規とみなされるのは、シンガポール特許法(以下、「特許法」という。)の第14条(2)項に定義される「技術水準」の一部を構成しない場合である。
シンガポール特許法 第14条 新規性 (1) 発明は、それが技術水準の一部を構成しない場合は、新規とみなされる。 (2) 発明の場合の技術水準とは、その発明の優先日前の何れかの時点で書面若しくは口述による説明、使用又は他の方法により(シンガポールにおいてか他所においてかを問わず)公衆の利用に供されているすべての事項(製品、方法、その何れかに関する情報又は他の何であるかを問わない)を包含するものと解する。 (3) 特許出願又は特許に係わる発明の場合の技術水準とは、次の条件が満たされるときは、その発明の優先日以後に公開された他の特許出願に含まれる事項をもまた包含するものと解する。 (a) 当該事項が当該他の特許出願に、出願時にも、公開時にも、含まれていたこと、及び (b) 当該事項の優先日が当該発明の優先日よりも早いこと ((4)以下省略) |
一方、特許法第14条(4)項は、シンガポールにおいて発明の新規性評価の際に無視される特定の種類の開示に関して、12か月の猶予期間を規定している。この12か月の猶予期間は、優先日(該当する場合)ではなく、シンガポールにおける特許出願日から起算することに注意すべきである。
2. 新規性評価から除外される開示
2-1. 不法な開示または秘密漏洩による開示
特許法第14条(4)項(a)および(b)は、あらゆる者によるあらゆる不法または不正な開示は新規性評価から除外されると規定している。日本の特許法に基づく要件と同様に、この例外規定に依拠するには、開示が不法または不正なものであった(即ち、不法な方法もしくは秘密漏洩により情報が入手された、または秘密漏洩により情報が開示された)という証拠を示す必要がある。シンガポールの法律は出願の提出後すぐにかかる証拠を提出することを義務づけていないが、IPOS(Intellectual Property Office of Singapore)は、先行開示が実際に不法または不正なものであったと納得できるように(宣誓供述書その他の証拠に基づく)証明を要求する場合がある。したがって、発明者または出願人は、発明に関する情報または文書に「秘密」の表示が確実に付されるように手段を講じることが望ましい。さらに重要な点として、かかる情報または文書(秘密情報)が限定された目的のためだけに提供されるものであって、他の目的への当該秘密情報の使用は不正使用となることを、当該秘密情報の受領者に確実に認識させるための手段を講じるべきである。
2-2. 国際博覧会での開示
特許法第14条(4)項(c)において、国際博覧会で発明者により行われたあらゆる開示は新規性評価の際に無視されると規定されている。「国際博覧会」の範囲は、特許法第2条(1)項において、下記のように狭義に定義されている。
シンガポール特許法 第2条 定義 (1) 本法では、文脈上他に要求されない限り、 (途中省略)「国際博覧会」とは、国際博覧会に関する条約の規定に該当するか又は同条約に代わるその後の条約の規定に該当する公式又は公認の国際博覧会をいう。 (以下省略) |
実際問題として、この例外規定に依拠するのは難しい。なぜなら、「国際博覧会」の狭義の定義に該当する博覧会は、極めて少ないためである。博覧会国際事務局のウェブサイト(https://www.bie-paris.org/site/en)において、「国際博覧会」として指定された博覧会には「万国博覧会」、「専門博覧会」、「園芸博覧会」、「ミラノ・トリエンナーレ装飾芸術・近代建築展」の4種類があり全博覧会が掲載されている。
この例外規定を利用するには、2017年10月の法改正以前は、シンガポール出願の提出時にIPOSに対し手続が必要であったが、現在は、事後の届出で足りることとなった(シンガポール特許出願審査ガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)第3章3.113)。出願人は、出願にかかる発明が国際博覧会において開示された旨を述べるとともに、国際博覧会の開会日、開会日が最初の開示を行った日と異なる場合には最初の開示を行った日の特定、そして発明が国際博覧会で展示されたことを示す1件以上の証拠を添付する必要がある(シンガポール特許規則(以下、「特許規則」)という。)8(1)(b))。
2-3. 学会発表における開示
特許法第14条(4)項(d)において、学会(learned society)において、書面による発明に関する解説が発明者により発表された場合、もしくは発明者の同意の下または発明者の代理として他人が発表した場合は、新規性評価の際に無視されると規定されている。特許法の解釈上、「学会」とは次のものを含む。
シンガポール特許出願審査ガイドライン 第3章 3.126 「学会」には、シンガポールまたは他のあらゆる場所で設立されたあらゆる会員制組織または団体であって、その主な目的がいずれかの学問または科学技術の振興であるものが含まれる。 (以下省略) |
さらに、具体的な規定がガイドライン第3章3.126-3.128項に設けられており、一部を抜粋すると「例として政府の部局、大学の部門、または企業の開催する会議は学会に該当しない。その一方、the Royal Society of Chemistry(英国王立化学会)やIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers、米国電気電子学会)の開催する会議は一般的に学会と判断される。」と規定されている。
2-4. 発明者により行われた開示、または発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行うあらゆる開示
2017年10月の法改正により、特許法第14条(4)項(e)において、発明者により行われた開示、または発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行うあらゆる開示について、特許法第14条(6)項および(7)項に該当する場合、新規性喪失の例外規定の適用とする旨、規定されている。
特許法第14条(6)項および(7)項においては、例外規定の適用を受けられる知的財産行政庁による公開類型を規定している。
例えば、
①発明者の同意を得ずに、発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行った出願が公開になった場合
②出願公開前に取下げ、拒絶、放棄になり、シンガポールまたはそれ以外の法律に基づき公開の必要がないにも拘らず、出願が誤って公開になった場合
③シンガポールまたはそれ以外の法律に基づき誤って所定の公開・公告時期よりも早く開示された場合。その場合、所定の公開・公告時期に開示されたものとして取り扱う。
上記②、③の場合であって海外の知的財産行政庁が関わる場合には、誤って公開になったことの確認、および上記③の場合には所定の公開・公告時期に関する情報を含む、海外の知的財産行政庁による確認書面を提出する必要がある(特許規則8(1)(c))。
特許法第14条(4)項(e)は、発明者自身による開示行為、および発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行う開示行為を包括的に例外規定の適用対象としつつ、特許法第14条(6)項および(7)項において、知的財産行政庁(各国の特許庁や国際機関を含む)による公開類型に制限をかけ、例えば、出願人が自ら行った出願が出願公開になった場合に新規性喪失の例外規定の適用とならないようにしている(ガイドライン第3章3.110項)。
3. 新規性喪失の例外規定の適用手続
3-1. 適用申請の時期
以下に示すいずれかの時期に適用申請を行うことができる(ガイドライン第3章3.113)。
①サーチ・審査請求時
②審査請求時
③サーチ・審査報告または審査報告に対する再審理(review)請求時
④審査官の指令に対する応答時
3-2. 適用申請の必要書類
宣誓書/宣誓供述書の形式で必要な証拠を添付して適用申請を行うものとする(特許規則8(1)(a))。
4. 新規性喪失の例外規定の適用対象となる開示行為
2017年10月の法改正点については、新規性喪失に至る開示行為が2017年10月30日以降に行われた場合に適用となる。開示行為が2017年10月30日よりも前に行われた場合には、シンガポールでの特許出願が2017年10月30日以降に行われた場合であっても、改正法に基づく新規性喪失の例外規定は適用されない(ガイドライン第3章3.120)。
【留意点】
シンガポールでは、2017年10月の改正により、発明者により行われた開示、または発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行うあらゆる開示を包括的に対象とすべく、発明の新規性喪失の例外規定の適用範囲が拡大された。IPOSは、発明の新規性喪失の例外規定の拡大は、発明が出願に先立って公知となった場合の限定的なセーフティネットを提供するものに過ぎないとし、公知とする前に出願することを推奨していることに留意されたい。
シンガポールにおける特許新規性喪失の例外
1. 背景
シンガポールにおいて発明が新規とみなされるのは、シンガポール特許法(第221章)(以下、「特許法」)の第14条(2)項に定義される「技術水準」の一部を構成しない場合である。
「書面もしくは口頭説明により、使用により、または他のあらゆる方法により(シンガポールまたは他のいずれかの場所で)、当該発明の優先日より前のあらゆる時点において、一般に利用可能となった……全ての事項を含む」
一方、特許法第14条(4)項は、シンガポールにおいて発明の新規性評価の際に無視される特定の種類の開示に関して、12か月の猶予期間を規定している。この12か月の猶予期間は、優先日(該当する場合)ではなく、シンガポールにおける特許出願日から起算することに注意すべきである。
2. 新規性評価から除外される開示
2-1. 不法な開示または秘密漏洩による開示
特許法第14条(4)項(a)および(b)は本質的に、あらゆる者によるあらゆる不法または不正な開示は新規性評価から除外されると規定している。日本の特許法に基づく要件と同様に、この例外規定に依拠するには、開示が不法または不正なものであった(即ち、不法な方法もしくは秘密漏洩により情報が入手された、または秘密漏洩により情報が開示された)という証拠を示す必要がある。シンガポールの法律は出願の提出後すぐにかかる証拠を提出することを義務づけていないが、シンガポール知的財産庁(Intellectual Property Office of Singapore : IPOS)は先行開示が実際に不法または不正なものであったと納得できるように(宣誓供述書その他の証拠に基づく)証明を要求する場合がある。したがって、発明者または出願人は、発明に関する情報または文書に「秘密」の表示が確実に付されるように手段を講じることが望ましい。さらに重要な点として、かかる情報または文書(「秘密情報」)が限定された目的のためだけに提供されるものであって、他の目的への当該秘密情報の使用は不正使用となることを、当該秘密情報の受領者に確実に認識させるための手段を講じるべきである。
2-2. 国際博覧会での開示
特許法第14条(4)項(c)において、国際博覧会で発明者により行われたあらゆる開示は新規性評価の際に無視されると規定されている。「国際博覧会」の範囲は、特許法第2条(1)項において、下記のように狭義に定義されている。
「国際博覧会条約の条件に該当する、または当該条約の後続条約もしくは代替条約の条件に該当する、公式または公認の国際博覧会」
実際問題として、この例外規定に依拠するのは難しい。なぜなら「国際博覧会」の狭義の定義に該当する博覧会は極めて少ないためである。博覧会国際事務局のウェブサイト(https://www.bie-paris.org/site/en)において、「国際博覧会」として指定された博覧会のリストが掲載されている。
この例外規定を利用するには、2017年10月の法改正以前は、シンガポール出願の提出時にIPOSに対し手続が必要であったが、現在は、事後の届出で足りることとなった(特許出願審査ガイドライン第3.96(5C)項)。出願人は、出願にかかる発明が国際博覧会において開示された旨を述べるとともに、国際博覧会の開会日、開会日が最初の開示を行った日と異なる場合には最初の開示を行った日の特定、そして発明が国際博覧会で展示されたことを示す1件以上の証拠を添付する必要がある(特許規則8(1)(b))。
2-3. 学会発表における開示
特許法第14条(4)項(d)において、学会(learned society)において、書面による発明に関する解説が発明者により発表された場合、若しくは発明者の同意の下または発明者の代理として他人が発表した場合は、新規性評価の際に無視されると規定されている。特許法の解釈上、「学会」とは次のものを含む:
「シンガポールまたは他のあらゆる場所で設立されたあらゆる会員制組織または団体であって、その主な目的がいずれかの学問または科学技術の振興であるもの」(特許出願審査ガイドライン第3.96(5)項)
更に具体的な規定が特許出願審査ガイドライン第3.111-3.113項に設けられており、一部を抜粋すると「例として政府の部局、大学の部門、または企業の開催する会議は学会に該当しない。その一方、the Royal Society of Chemistry(英国王立化学会)やIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers、米国電気電子学会)は一般的に学会と判断される。」と規定されている。
2-4. 発明者により行われた開示、または発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行うあらゆる開示
2017年10月の法改正により、特許法第14条(4)項(e)において、発明者により行われた開示、または発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行うあらゆる開示について、特許法第14条(5A)項および(5B)項に該当する場合、新規性喪失の例外規定の適用とする旨、規定されている。
特許法第14条(5A)項および(5B)項においては、例外規定の適用を受けられる知的財産行政庁による公開類型を限定している。
①発明者の同意を得ずに、発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行った出願が公開になった場合
②出願公開前に取下げ、拒絶、放棄になり、シンガポールまたはそれ以外の法律に基づき公開の必要がないにも拘らず、出願が誤って公開になった場合
③シンガポールまたはそれ以外の法律に基づき誤って所定の公開・公告時期よりも早く開示された場合。その場合、所定の公開・公告時期に開示されたものとして取り扱う。
上記②、③の場合であって海外の知的財産行政庁が関わる場合には、誤って公開になったことの確認、および、上記③の場合には所定の公開・公告時期に関する情報を含む、海外の知的財産行政庁による確認書面を提出する必要がある(特許規則8(1)(c))。
特許法第14条(4)項(e)は発明者自身による開示行為、発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行う開示行為を包括的に例外規定の適用対象としつつ、特許法第14条(5A)項および(5B)項において知的財産行政庁(各国の特許庁や国際機関を含む)による公開類型に制限をかけ、例えば出願人が自ら行った出願が出願公開になった場合に新規性喪失の例外規定の適用とならないようにしている(特許出願審査ガイドライン第3.105項)。
3. 新規性喪失の例外規定の適用手続
(1)適用申請の時期(特許出願審査ガイドライン第3.96(5C), 3.99項)
以下に示すいずれかの時期に適用申請を行うことができる。
①サーチ・審査請求時
②審査請求時
③サーチ・審査報告または審査報告に対する再審理(review)請求時
④審査官の指令に対する応答時
(2)適用申請の必要書類
宣誓書/宣誓供述書の形式で必要な証拠を添付して適用申請を行うものとする(特許規則8(1)(a))。
4. 新規性喪失の例外規定の適用対象となる開示行為
2017年10月の法改正点については、新規性喪失に至る開示行為が2017年10月30日以降に行われた場合に適用となる。開示行為が2017年10月30日よりも前に行われた場合には、シンガポールでの特許出願が2017年10月30日以降に行われた場合であっても、改正法に基づく新規性喪失の例外規定は適用にならない(特許方式審査マニュアル(2018年11月版)6.1.22)。
【留意点】
シンガポールでは、2017年10月の改正により、発明者により行われた開示、または発明者から直接的または間接的に発明の主題を知った者が行うあらゆる開示を包括的に対象とすべく、発明の新規性喪失の例外規定の適用範囲が拡大された。シンガポール知的財産庁(IPOS)は、発明の新規性喪失の例外規定の拡大は、発明が出願に先立って公知となった場合の限定的なセーフティネットを提供するものに過ぎないとし、公知とする前に出願することを推奨していることに留意されたい。
シンガポールにおける特許新規性喪失の例外
1. 背景
シンガポールにおいて発明が新規とみなされるのは、シンガポール特許法(第221章)(以下、「特許法」)の第14条(2)項に下記のように定義されている「技術水準」の一部を構成しない場合である。
「書面もしくは口頭説明により、使用により、または他のあらゆる方法により(シンガポールまたは他のいずれかの場所で)、当該発明の優先日より前のあらゆる時点において、一般に利用可能となった……全ての事項を含む」
一方、特許法第14条(4)項は、シンガポールにおいて発明の新規性評価の際に無視される特定の種類の開示に関して、12か月の猶予期間を規定している。この12か月の猶予期間は、優先日(該当する場合)ではなく、シンガポール特許出願の提出日から遡及することに注意すべきである。
2. 新規性評価から除外される開示
2-1. 不法な開示または秘密漏洩による開示
特許法第14条(4)項(a)および(b)は本質的に、あらゆる者によるあらゆる不法または不正な開示は新規性評価から除外されると規定している。日本の特許法に基づく要件と同様に、この例外規定に依拠するには、開示が不法または不正なものであった(即ち、不法な方法もしくは秘密漏洩により情報が入手された、または秘密漏洩により情報が開示された)という証拠を示す必要がある。シンガポールの法律は(日本の特許法の要件とは異なり)出願の提出後すぐにかかる証拠を提出することを義務づけていないが、シンガポール知的財産庁(Intellectual Property Office of Singapore : IPOS)は先行開示が実際に不法または不正なものであったと納得できるように(宣誓供述書その他の証拠に基づく)証明を要求する場合がある。したがって、発明者または出願人は、発明に関する情報または文書に「秘密」の表示が確実に付されるように手段を講じることが望ましい。さらに重要な点として、かかる情報または文書(「秘密情報」)が限定された目的のためだけに提供されるものであって、他の目的への当該秘密情報の使用は不正使用となることを、当該秘密情報の受領者に確実に認識させるための手段を講じるべきである。
2-2. 国際博覧会での開示
特許法第14条(4)項(c)において、国際博覧会で発明者または出願人により行われたあらゆる開示は新規性評価の際に無視されると規定されている。「国際博覧会」の範囲は、特許法第2条(1)項において、下記のように狭義に定義されている。
「国際博覧会条約の条件に該当する、または当該条約の後続条約もしくは代替条約の条件に該当する、公式または公認の国際博覧会」
この例外規定を利用するには、シンガポール出願の提出時にIPOSに対し、当該発明が国際博覧会において先行開示されたことを届け出る必要がある。その後、かかる先行開示の裏づけ証拠書類をIPOSに提出しなければならない。実際問題として、この例外規定に依拠するのは難しい。なぜなら「国際博覧会」の狭義の定義に該当する博覧会は極めて少ないためである。博覧会国際事務局のウェブサイト(http://www.bie-paris.org/site/en)において、「国際博覧会」として指定された博覧会のリストが掲載されている。
2-3. 学会で発明について説明する発明者による開示、またはその結果として行われた開示
特許法第14条(4)項(d)において、学会で発明者により行われたあらゆる開示、または発明者の同意を得て行われたあらゆる開示は、新規性評価の際に無視されると規定されている。特許法の解釈上、「学会」とは次のものを含む:
「シンガポールまたは他のあらゆる場所で設立されたあらゆる会員制組織または団体であって、その主な目的がいずれかの学問または科学技術の振興であるもの」
「学会」という用語は特許法において幅広く定義されているものの、IPOSの特許出願審査ガイドライン(2016年5月版)(第3章、第N節、i項の3.77)に従い、IPOSは「学会」とみなされるものを判断する際は慎重な態度を取るだろう。この例外規定に依拠するには、かかる開示が行われた会員制組織または団体が確かに「学会」であると、IPOSを納得させる必要がある。IPOSは、先行開示が確かに「学会」で行われたと納得できるように(宣誓供述書その他の証拠に基づく)証明を要求する場合がある。この例外規定を利用する際、IPOSから要求された場合に証明を提出すれば良い。シンガポール出願の提出時にIPOSに対し当該発明が学会において先行開示されたことを届け出る必要はない。
- 結論
シンガポールにおいて発明の新規性評価の際に無視される開示の特定の種類は、日本の特許法に規定されているものと比べて、かなり限定されている。それゆえ、シンガポールは12か月という長い猶予期間(日本の場合は6か月)を規定しているものの、シンガポールにおける例外要件を満たすことが困難な場合もある。しかし、今後はこれらの要件が緩和される見通しである。シンガポール政府は2017年2月現在、12か月の猶予期間内に行われた(直接的か間接的かを問わず)発明者自身によるあらゆる一般開示を新規性評価の際に無視できるようにするため、特許法の改正案を検討中である。