日本とシンガポールにおける特許審査請求期限の比較
1.日本における審査請求期限
日本においては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ、この期限内に出願審査請求がされない場合は、正当な理由があるものを除き、その特許出願は取り下げられたものとみなされる。
出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は実際に特許出願がされた日である。
PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。
なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。
条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第4項、特許法施行規則第31条の2第4項、特許法第184条の17
日本特許法 第48条の2 特許出願の審査
特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。
日本特許法 第48条の3 出願審査の請求
特許出願があったときは、何人も、その日から3年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2 第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第46条第1項もしくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願または第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
3 出願審査の請求は、取り下げることができない。
4 第1項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかったときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第1項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をすることができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる。
6 前項の規定によりされた出願審査の請求は、第1項に規定する期間が満了する時に特許庁長官にされたものとみなす。
7 前3項の規定は、第2項に規定する期間内に出願審査の請求がなかつた場合に準用する。
8 第5項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第4項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第5項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者またはその事業の準備をしている者は、その実施または準備をしている発明および事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
日本特許法施行規則 第31条の2第4項
4 特許法第48条の3第5項(同条第7項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の経済産業省令で定める期間は、同条第5項に規定する正当な理由がなくなった日から2月とする。ただし、当該期間の末日が同条第1項に規定する期間(同条第7項において準用する場合にあっては、第2項に規定する期間。以下この項において同じ。)の経過後1年を超えるときは、同項に規定する期間の経過後1年とする。
日本特許法 第184条の17 出願審査の請求の時期の制限
国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあっては第184条の5第1項、外国語特許出願にあっては第184条の4第1項または第4項および第184条の5第1項の規定による手続をし、かつ、第195条第2項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第184条の4第1項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。
2.シンガポールにおける審査請求期限
改正特許法が施行された2014年2月14日以降になされた、シンガポール出願、シンガポール国内移行および分割出願を前提として以下に説明する。
シンガポールにおいては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。シンガポールでは調査および審査請求の内容およびタイミングにより、以下の(i)~(ⅳ)の4つの審査請求オプションがあり、それぞれについての審査請求期間を以下に示す(特許法第29条(1)(b)~(d)、(3)、特許規則38(1)、43(1)~(3))。
<シンガポールにおける審査請求オプションと審査請求期限>
(i)シンガポールで調査請求を行い、その後審査請求→優先日から36か月(特許法第29条(3)、特許規則43(1))(調査請求は優先日から13か月、特許法第29条(1)(a)、特許規則38(1))
ただし、審査請求期限前1月以内に登録官が出願人に調査報告を送付した場合には、同調査報告を伴った登録官の通知の日から1月を特許法第29条(3)に基づく審査請求期間とする(特許規則43(2))
(ⅱ)シンガポールで調査と審査を同時に請求→優先日から36か月(特許法第29条(1)(b)、特許規則43(1))
(ⅲ)他国の調査結果に基づきシンガポールで審査→優先日から36か月(特許法第29条(1)(c)、特許規則43(1))
(ⅳ)対応国の審査結果に基づく補充審査*1→優先日から54か月(特許法第29条(1)(d)、特許規則43(3))[本条項による「補充審査」は2020年1月1日以降の出願には適用されない]
ここで、審査請求期間の起算日は、優先権主張を伴う場合には優先日、優先権主張を伴わない場合にはシンガポール出願日である(特許規則38(1)、43(1)および(3))。また、分割出願の場合には、優先権主張を伴う場合には優先日、優先権主張を伴わない場合にはその分割出願の出願日である(特許規則43(3)(b))。上記前提の下、日本の読者の便宜のため、ここでは「優先日」を起算日として記載した。優先権主張を伴わない場合には、「出願日」と読み替える。
また、延長費用の支払いにより(i)~(ⅳ)全てについて審査請求期限の延長が可能である(特許規則108(4)(a)、同(7))。
期間内に審査の請求がなかったときは、特許出願は放棄されたものとみなす(特許法第29条(12)、(13))。
また、実体審査請求を行うことができるのは、出願人のみである(特許法第29条(1)、(3))。
条文等根拠:特許法第29条(1)(a)~(d)、(3)、(12)、(13)、特許規則38(1)、43(1)~(3)、108(4)、(7)
シンガポール特許法 第29条 調査および審査
(1)特許出願(本項において「当該出願」という)に係る出願人は、所定の期間内に、以下の項のうちの1つに従うこと。
(a)調査報告書を求める所定の様式の請求書を提出する。
(b)調査および審査報告を求める所定の様式の請求書を提出する。
(c)出願人が下記に示す最終的な結果を依拠する場合、所定の様式で審査報告を求める所定の書類と請求書を提出する。
(i)対応出願、対応する国際出願または関連する国内段階出願における調査、若しくは
(ii)国際段階の当該出願の調査
(当該出願が第86条(3)に基づいてシンガポールで国内段階に移行した国際出願である場合)
(d)(11A)に従うことを条件として、所定の様式で補充審査報告を求める所定の文書と請求書を提出する。ただし
(i)出願人が以下の最終的な報告に依拠する場合、特許出願がすべての方式要件を満たしている場合は、登録官は、出願人に通知する。
(A)対応する出願、対応する国際出願または関連国内段階出願の実体の調査および審査、もしくは
(B)国際段階における当該出願の実体の調査および審査(当該出願が第86条(3)に基づいて国内段階に移行した国際特許出願(シンガポール)である場合)
(ii)当該出願における各クレームが、少なくとも対応する出願、対応する国際出願または関連する国内段階出願若しくは国際段階における当該出願におけるクレームの1つに関連する。
および
(iii)これらの結果により、当該出願における各クレームが新規性、進歩性(または非自明性)、産業上の利用可能性(または有用性)の要件を満足する。
(2)出願人が(1)(a)に従う場合、登録官は-
(a)当該出願を審査官に調査させ、かつ、
(b)審査官が作成した調査報告書を受領したときは,当該調査報告書の写しを出願人に送付する。
(3)登録官は(2)(b)に基づき調査報告を受領したとき、審査報告を求める所定の様式の請求書を提出する。
(略)
(11A)(1)(d)および(10)(b)は,次の場合を除いて適用されない。
(a)当該出願が第20条(3)、第26条(11)または第47条(4)にいう新規出願である場合-当該出願の実際の出願日が所定の日より前である、または
(b)その他の場合-当該出願の出願日が所定の日より前である。
(12)以下の場合、出願は放棄されたものとして扱われる。
(a)(13)に従うことを条件として、出願人が次の1つを行わなかった場合、
(i)(1)の(b)、(c)もしくは(d)における所定の期間内に従うこと。
(ii)(3)が適用される場合、その項に従うこと。
(b)(10)が適用される場合において、出願人が(10)(b)に規定する所定の期間内に、(1)(d)に基づく補充審査の請求を行わなかった場合、または
(c)(11)が適用される場合において、出願人が(1)(b)に基づく調査および審査報告の請求、または(11)(b)に規定する所定の期間内に(1)(c)に基づく審査報告の請求を行わなかった場合。
(13)(a)登録官から(2)(b)に基づき調査報告を受け取った後、出願人が(3)に従いその項に規定する期間内に審査報告を求める請求を行わなかった後、および
(b)改正特許法2017の第3(f)条の開始日前、若しくは開始後3か月以内に、(3)に規定する期間延長の請求を提出する期間が満了する時、
出願人が、その日から6月以内に(3)に基づく審査報告の請求を行わなかった場合、出願は、放棄されたものとして扱われる。
シンガポール特許規則38 調査報告請求書の提出に係る期間
(1)第29条(1)(a)に基づく請求提出の所定の期間は、次のとおりとする。
(a)当該出願に宣言された優先日が記載されていない場合は、出願日から13月、または
(b)当該出願に宣言された優先日が記載されている場合は、当該宣言された優先日から13月
シンガポール特許規則43 調査および審査報告の請求、審査報告の請求または補充審査報告の請求*1の提出期間
(1)(2)に従うことを条件として、第29条(1)(b)に基づく調査および審査報告の請求または第29条(1)(c)若しくは(3)に基づく審査報告の請求の提出についての所定の期間は、
(a)(b)に従うことを条件として、
(i)出願の宣言された優先日、若しくは
(ii)宣言された優先日が存在しない場合は当該出願の出願日、
から36月、または
(b)第20条(3)、第26条(11)または第47条(4)に基づいて新規出願が行われる場合は、当該新規出願が実際に出願された日から36月とする。
(2)(1)(a)または場合により(b)にいう所定の期間の満了前1月以後に、登録官により第29条(2)(b)に基づいて調査報告の写しが出願人に送付される場合は、第29条(3)に基づく審査報告の請求の提出についての所定の期間は、第29条(2)(b)に基づく調査報告の写しを送付する登録官書簡の日付から1月とする。
(3)第2条(1)(d)に基づく補充審査報告の請求の提出についての所定の期間は、次のとおりとする。
(a)(b)に従うことを条件として、
(i)当該出願の宣言された優先日、もしくは
(ii)宣言された優先日が存在しない場合は当該出願の出願日、
から54月、または
(b)第20条(3)、第26条(11)または第47条(4)に基づいて新規出願が行われた場合は、新規出願が実際に出願された日から54月
(4)第29条(11A)(a)および(b)の所定の日は2020年1月1日
シンガポール特許規則108 期限の延長一般
(1)-(3) (略)
(4)次の何れかの規則に定める期日または期間については、延長の求められる期日または期間の最初の満了後18月以内に特許様式45の提出があった場合は、延長の求められる期日または期間の最初の満了直後に始まる計18月を超えない期間で延長される。
(a)規則18(1)、規則19(11)、規則26(2)、規則28(f)、規則34(1A)、規則38、規則42(3)、規則43、規則47(1)、規則86(1)、(6)、(8)若しくは(8A)、または
(b)規則26(3)(規則26(4)(a)および(b)に定める書類の提出に関する場合に限る)
(5)、(6) (略)
(7)(a)登録官から第29条(2)(b)に基づく調査報告を受け取った後、審査請求するための規則43(1)もしくは(2)(どちらか適用可能な方)に規定する期間内に、第29条(3)に基づく審査報告の請求を出願人が行わなかった後、および
(b)2017年10月30日より前もしくは3月以内に満了する期間延長の様式45の提出に対する(4)に規定する期間、
その日から6月、様式提出に関する(4)の期間は延長される。
◆日本の基礎出願に基づく優先権を主張しシンガポールに出願した場合には、以下のようになる。
日本とシンガポールにおける特許審査請求期限の比較
|
日本 |
シンガポール |
提出期限 |
3年 |
シンガポールで審査 (36か月)
|
基準日 |
日本の出願日 |
優先権を伴う場合には、 シンガポール出願日では なく、日本の基礎出願日 |
審査請求できる者 |
出願人または第三者 |
出願人のみ |
*1:2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願から補充審査は利用できなくなった。(シンガポール特許法第29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第17条の2第1項第1号または第3号に掲げる場合(同項第1号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第50条(第159条第2項(第174条第2項において準用する場合を含む。)及び第163条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、上記1.(2)コ.の国際意匠登録出願において拒絶の通報に応答する場合の意見書の提出及び意匠法第9条第4項に基づく応答書面の提出についての指定期間、及びサ.の国際商標登録出願における命令による手続補正書の提出についての指定期間を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1.(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能である。出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能である。
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.上記(2)ア.a.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
ウ.上記2.(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2.シンガポールの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・シンガポール知的財産庁に審査を請求した場合、応答期間は5か月
・シンガポール知的財産庁に補充審査*1を請求した場合、応答期間は3か月
条文等根拠:特許規則46(4)、(4A)、(5)
シンガポール特許規則46 審査官の意見書等
(4)(a)第29条(4)に基づく審査報告、または
(b)第29条(5)に基づく調査および審査報告、
に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(4A)第29条(6)に基づく補充審査に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から3月以内に提出しなければならない。
(5)出願人が(3)に基づいて第29条(4)に基づく審査報告又は第29条(5)に基づく調査および審査報告に関する意見書を提出した場合は、
(a)審査官は、その裁量により、自己の意見の理由を詳細に記載した追加の意見書を登録官に対し発出することができ、
(b)(2)および(3)がこれに従って適用され、また
(c)(3)に基づく追加の意見書に対する応答は、追加の意見書を伴った登録官からの通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
いかなる場合も延長することができない。
条文等根拠:特許規則108(2)(b)
シンガポール特許規則108 期限の変更
(1)登録官は、当事者からの書面による請求により、(2),(3)及び(4)並びに規則108Aに従うことを条件として,登録官は,期日又は期間の満了後6月以内になされる当事者からの書面による請求により,自己が適切と認める場合は,ある行為を実行するための又はある手続を取るための本規則による所定期間及び本規則に基づいて登録官が指定した期日又は期間について,自己の指示する当事者への通知により,かつ,自己の指示する条件に基づいて,延長することができる。
(2)次の規則に定められる期日または期間は、いかなる場合も延長することができない。
(中略)
(b)規則9(1)、(2)および(3)、規則9A(1)および(2)(a)、規則19(2)、規則26(5)、規則26A(1)および(5)(a)、規則28(a)、(b)、(c)および(d)、規則29(4)、規則34(2)、規則46(4)、(4A)および(5)(c)、規則49、規則51(1)、(2)および(2A)、規則51A(1)および(2)、規則52(2)、規則53(1)、規則73(1)、規則74(1)、規則75、規則85(1)、規則86(3A)、規則88(8)(a)、規則88A(11)、規則91(3)および(5)ならびに附則4の第4項(2)
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
|
日本 |
シンガポール |
応答期間 |
60日 (ただし在外者は3か月) |
・IPOSに審査を請求した 場合:5か月 ・IPOSに補充審査*1を請求 した場合:3か月 |
応答期間の延長の可否 |
可 |
不可 |
延長可能期間 |
最大2か月 (在外者は最大3か月) |
– |
*1: 2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願から補充審査は利用できなくなる。(シンガポール特許法第29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
日本とシンガポールにおける特許審査請求期限の比較
1.日本における審査請求期限
日本においては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ、この期限内に出願審査請求がされない場合は、正当な理由があるものを除き、その特許出願は取り下げられたものとみなされる。
出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は実際に特許出願がされた日である。
PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。
なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。
条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第4項、特許法施行規則第31条の2第6項、第184条の17
日本特許法 第48条の2 特許出願の審査
特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。
日本特許法 第48条の3 出願審査の請求
特許出願があったときは、何人も、その日から3年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2 第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第46条第1項もしくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願または第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
3 出願審査の請求は、取り下げることができない。
4 第1項または第2項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかったときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第1項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をすることができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる。
日本特許法施行規則 第31条の2第6項
6 特許法第48条の3第5項(同条第7項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の経済産業省令で定める期間は、同条第5項に規定する正当な理由がなくなった日から2月とする。ただし、当該期間の末日が同条第1項に規定する期間(同条第7項において準用する場合にあっては、第2項に規定する期間)の経過後1年を超えるときは、同項に規定する期間の経過後1年とする。
日本特許法 第184条の17 出願審査の請求の時期の制限
国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあっては第184条の5第1項、外国語特許出願にあっては第184条の4第1項または第4項および第184条の5第1項の規定による手続をし、かつ、第195条第2項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第184条の4第1項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。
2.シンガポールにおける審査請求期限
改正特許法が施行された2014年2月14日以降になされた、シンガポール出願、シンガポール国内移行および分割出願を前提として以下に説明する。
シンガポールにおいては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。シンガポールでは調査および審査請求の内容およびタイミングにより、以下の(i)~(ⅳ)の4つの審査請求オプションがあり、それぞれについての審査請求期間を以下に示す(特許法第29条(1)(b)~(d)、(3)、特許規則38(1)、43(1)~(3))。
<シンガポールにおける審査請求オプションと審査請求期限>
(i)シンガポールで調査請求を行い、その後審査請求→優先日から36か月(特許法第29条(3)、特許規則43(1))(調査請求は優先日から13か月、特許法第29条(1)(a)、特許規則38(1))
ただし、審査請求期限前1月以内に登録官が出願人に調査報告を送付した場合には、同調査報告を伴った登録官の通知の日から1月を特許法第29条(3)に基づく審査請求期間とする(特許規則43(2))。
(ⅱ)シンガポールで調査と審査を同時に請求→優先日から36か月(特許法第29条(1)(b)、特許規則43(1))
(ⅲ)他国の調査結果に基づきシンガポールで審査→優先日から36か月(特許法第29条(1)(c)、特許規則43(1))
(ⅳ)対応国の審査結果に基づく補充審査*1→優先日から54か月(特許法第29条(1)(d)、特許規則43(3))
ここで、審査請求期間の起算日は、優先権主張を伴う場合には優先日、優先権主張を伴わない場合にはシンガポール出願日である(特許規則38(1)、43(1)および(3))。また、分割出願の場合には、優先権主張を伴う場合には優先日、優先権主張を伴わない場合にはその分割出願の出願日である(特許規則43(3)(b))。上記前提の下、日本の読者の便宜のため、ここでは「優先日」を起算日として記載した。優先権主張を伴わない場合には、「出願日」と読み替えてください。
また、延長費用の支払いにより(i)~(ⅳ)全てについて審査請求期限の延長が可能である(特許規則108(4)(a)、同(7))。
期間内に審査の請求がなかったときは、特許出願は放棄されたものとみなす(特許法第29条(12)、(13))。
また、実体審査請求を行うことができるのは、出願人のみである(特許法第29条(1)、(3))。
条文等根拠:特許法第29条(1)(a)~(d)、(3)、(12)、(13)、特許規則38(1)、43(1)~(3)、108(4)、(7)
シンガポール特許法 第29条 調査および審査
(1)特許出願(本項において「当該出願」という)に係る出願人は、所定の期間内に、以下の項のうちの1つに従うこと。
(a)調査報告書を求める所定の様式の請求書を提出する。
(b)調査および審査報告を求める所定の様式の請求書を提出する。
(c)出願人が下記に示す最終的な結果を依拠する場合、所定の様式で審査報告を求める所定の書類と請求書を提出する。
(i)対応出願、対応する国際出願または関連する国内段階出願における調査、若しくは
(ii)国際段階の当該出願の調査
(当該出願が第86条(3)に基づいてシンガポールで国内段階に移行した国際出願である場合)
(d)(11A)に従うことを条件として、所定の様式で補充審査報告を求める所定の文書と請求書を提出する。ただし
(i)出願人が以下の最終的な報告に依拠する場合、特許出願がすべての方式要件を満たしている場合は、登録官は、出願人に通知する。
(A)対応する出願、対応する国際出願または関連国内段階出願の実体の調査および審査、若しくは
(B)国際段階における当該出願の実体の調査および審査(当該出願が第86条(3)に基づいて国内段階に移行した国際特許出願(シンガポール)である場合)
(ii)当該出願における各クレームが、少なくとも対応する出願、対応する国際出願または関連する国内段階出願若しくは国際段階における当該出願におけるクレームの1つに関連する。
および
(iii)これらの結果により、当該出願における各クレームが新規性、進歩性(または非自明性)、産業上の利用可能性(または有用性)の要件を満足する。
(3)登録官は(2)(b)に基づき調査報告を受領したとき、審査報告を求める所定の様式の請求書を提出する。
(略)
(12)以下の場合、出願は放棄されたものとして扱われる。
(a)(13)に従うことを条件として、出願人が次の1つを行わなかった場合、
(i)(1)の(b)、(c)もしくは(d)における所定の期間内に従うこと。
(ii)(3)が適用される場合、その項に従うこと。
(b)(10)が適用される場合において、出願人が(10)(b)に規定する所定の期間内に、(1)(d)に基づく補充審査の請求を行わなかった場合、または
(c)(11)が適用される場合において、出願人が(1)(b)に基づく調査および審査報告の請求、または(11)(b)に規定する所定の期間内に(1)(c)に基づく審査報告の請求を行わなかった場合。
(13)(a)登録官から(2)(b)に基づき調査報告を受け取った後、出願人が(3)に従いその項に規定する期間内に審査報告を求める請求を行わなかった後、および
(b)改正特許法2017の第3(f)条の開始日前、若しくは開始後3か月以内に、(3)に規定する期間延長の請求を提出する期間が満了する時、
出願人が、その日から6月以内に(3)に基づく審査報告の請求を行わなかった場合、出願は、放棄されたものとして扱われる。
シンガポール特許規則38 調査報告請求書の提出に係る期間
(1)第2条(1)(a)に基づく請求提出の所定の期間は、次のとおりとする。
(a)当該出願に宣言された優先日が記載されていない場合は、出願日から13月、または
(b)当該出願に宣言された優先日が記載されている場合は、当該宣言された優先日から13月
シンガポール特許規則43 調査および審査報告の請求、審査報告の請求または補充審査報告の請求*1の提出期間
(1)(2)に従うことを条件として、第29条(1)(b)に基づく調査および審査報告の請求または第29条(1)(c)若しくは(3)に基づく審査報告の請求の提出についての所定の期間は、
(a)(b)に従うことを条件として、
(i)出願の宣言された優先日、若しくは
(ii)宣言された優先日が存在しない場合は当該出願の出願日、
から36月、または
(b)第20条(3)、第26条(11)または第47条(4)に基づいて新規出願が行われる場合は、当該新規出願が実際に出願された日から36月とする。
(2)(1)(a)または場合により(b)にいう所定の期間の満了前1月以後に、登録官により第29条(2)(b)に基づいて調査報告の写しが出願人に送付される場合は、第29条(3)に基づく審査報告の請求の提出についての所定の期間は、第29条(2)(b)に基づく調査報告の写しを送付する登録官書簡の日付から1月とする。
(3)第2条(1)(d)に基づく補充審査報告の請求の提出についての所定の期間は、次のとおりとする。
(a)(b)に従うことを条件として、
(i)当該出願の宣言された優先日、若しくは
(ii)宣言された優先日が存在しない場合は当該出願の出願日、
から54月、または
(b)第20条(3)、第26条(11)または第47条(4)に基づいて新規出願が行われた場合は、新規出願が実際に出願された日から54月
シンガポール特許規則108 期限の延長一般
(4)次の何れかの規則に定める期日または期間については、延長の求められる期日または期間の最初の満了後18月以内に特許様式45の提出があった場合は、延長の求められる期日または期間の最初の満了直後に始まる計18月を超えない期間で延長される。
(a)規則18(1)、規則19(11)、規則26(2)、規則28(f)、規則34(1A)、規則38、規則42(3)、規則43、規則47(1)、規則86(1)、(6)、(8)若しくは(8A)、または
(b)規則26(3)(規則26(4)(a)および(b)に定める書類の提出に関する場合に限る)
(7)(a)登録官から第29(2)条(b)に基づく調査報告を受け取った後、審査請求するための規則43(1)もしくは(2)(どちらか適用可能な方)に規定する期間内に、第29条(3)に基づく審査報告の請求を出願人が行わなかった後、および
(b)2017年10月30日より前もしくは3月以内に満了する期間延長の様式45の提出に対する(4)に規定する期間、
その日から6月、様式提出に関する(4)の期間は延長される。
◆日本の基礎出願に基づく優先権を主張しシンガポールに出願した場合には、以下のようになる。
日本とシンガポールにおける特許審査請求期限の比較
日本 | シンガポール | |
提出期限 | 3年 | ・シンガポールで審査
(36か月) ・補充審査(54か月)*1 |
基準日 | 日本の出願日 | 優先権を伴う場合には、
シンガポール出願日では なく、日本の基礎出願日 |
審査請求できる者 | 出願人または第三者 | 出願人のみ |
*1: 2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願から補充審査は利用できなくなる。(シンガポール特許法第29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
日本とシンガポールにおける特許審査請求期限の比較
1. 日本における審査請求期限
日本においては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ、この期限内に出願審査請求がされない場合は、正当な理由があるものを除き、その特許出願は取り下げられたものとみなされる。
出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は実際に特許出願がされた日である。
PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。
なお、審査請求は出願人だけでなく、第3者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。
条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第4項、特許法施行規則第31条の2第6項、第184条の17
日本特許法 第48条の2 特許出願の審査
特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。
日本特許法 第48条の3 出願審査の請求
特許出願があったときは、何人も、その日から3年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2 第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第46条第1項もしくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願または第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
3 出願審査の請求は、取り下げることができない。
4 第1項または第2項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかったときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第1項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をすることができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる。
日本特許法施行規則 第31条の2第6項
6 特許法第48条の3第5項(同条第7項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の経済産業省令で定める期間は、同条第5項に規定する正当な理由がなくなった日から2月とする。ただし、当該期間の末日が同条第1項に規定する期間(同条第7項において準用する場合にあっては、第2項に規定する期間)の経過後1年を超えるときは、同項に規定する期間の経過後1年とする。
日本特許法 第184条の17 出願審査の請求の時期の制限
国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあっては第184条の5第1項、外国語特許出願にあっては第184条の4第1項または第4項および第184条の5第1項の規定による手続をし、かつ、第195条第2項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第184条の4第1項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。
2. シンガポールにおける審査請求期限
改正特許法が施行された2014年2月14日以降になされた、シンガポール出願、シンガポール国内移行および分割出願を前提として以下に説明する。
シンガポールにおいては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。シンガポールでは調査および審査請求の内容およびタイミングにより、以下の(i)~(ⅳ)の4つの審査請求オプションがあり、それぞれについての審査請求期間を以下に示す(特許法第29条(1)(b)~(d)、(3)、特許規則38条(1)、43条(1)~(3))。
<シンガポールにおける審査請求オプションと審査請求期限>
(i)シンガポールで調査請求を行い、その後審査請求→優先日から36か月(特許法第29条(3)、特許規則43条(1))(調査請求は優先日から13か月、特許法29条(1)(a)、特許規則38条(1))
ただし、審査請求期限前1月以内に登録官が出願人に調査報告を送付した場合には、同調査報告を伴った登録官の通知の日から1月を特許法29条(3)に基づく審査請求期間とする。(特許規則43条(2))
(ⅱ)シンガポールで調査と審査を同時に請求→優先日から36か月(特許法第29条(1)(b)、特許規則43条(1))
(ⅲ)他国の調査結果に基づきシンガポールで審査→優先日から36か月(特許法第29条(1)(c)、特許規則43条(1))
(ⅳ)対応国の審査結果に基づく補充審査→優先日から54か月(特許法第29条(1)(d)、特許規則43条(3))
ここで、審査請求期間の起算日は、優先権主張を伴う場合には優先日、優先権主張を伴わない場合にはシンガポール出願日である(特許規則38条(1)、43条(1)及び(3))。また、分割出願の場合には、優先権主張を伴う場合には優先日、優先権主張を伴わない場合にはその分割出願の出願日である(特許規則43条(3)(b))。上記前提の下、日本の読者の便宜のため、ここでは「優先日」を起算日として記載した。優先権主張を伴わない場合には、「出願日」と読み替えいただきたい。
また、延長費用の支払いにより(i)~(ⅳ)全てについて審査請求期限の延長が可能である(特許規則108条(4)(a)、同条(7))。
期間内に審査の請求がなかったときは、特許出願は放棄されたものとみなす(第29条(12)、(13))。
また、実体審査請求を行うことができるのは、出願人のみである(特許法第29条(1)、(3))。
条文等根拠:特許法第29条(1)(a)~(d)、(3)、(12)、(13)、特許規則38条(1)、43条(1)~(3)、108条(4)、(7)
シンガポール特許法 第29条 調査及び審査
(1)特許出願(本項において「当該出願」という)に係る出願人は,所定の期間内に,以下の項のうちの1つに従うこと。
(a)調査報告書を求める所定の様式の請求書を提出する。
(b)調査及び審査報告を求める所定の様式の請求書を提出する。
(c)出願人が下記に示す最終的な結果を依拠する場合,所定の様式で審査報告を求める所定の書類と請求書を提出する。
(i)対応出願,対応する国際出願又は関連する国内段階出願における調査,若しくは
(ii)国際段階の当該出願の調査
(当該出願が第86条(3)に基づいてシンガポールで国内段階に移行した国際出願である場合)
(d)(11A)に従うことを条件として、所定の様式で補充審査報告を求める所定の文書と請求書を提出する。ただし
(i)出願人が以下の最終的な報告に依拠する場合,特許出願がすべての方式要件を満たしている場合は,登録官は,出願人に通知する。
(A)対応する出願,対応する国際出願又は関連国内段階出願の実体の調査及び審査,若しくは
(B)国際段階における当該出願の実体の調査及び審査(当該出願が第86条(3)に基づいて国内段階に移行した国際特許出願(シンガポール)である場合)
(ii)当該出願における各クレームが,少なくとも対応する出願,対応する国際出願又は関連
する国内段階出願若しくは国際段階における当該出願におけるクレームの1つに関連する。
及び
(iii)これらの結果により,当該出願における各クレームが新規性,進歩性(又は非自明性),産業上の利用可能性(又は有用性)の要件を満足する。
(3)登録官は(2)(b)に基づき調査報告を受領したとき,審査報告を求める所定の様式の請求書を提出する。
(12)以下の場合,出願は放棄されたものとして扱われる。
(a)(13)に従うことを条件として、出願人が次の1つを行わなかった場合,
(i)(1)の(b)、(c)もしくは(d)における所定の期間内に従うこと。
(ii)(3)が適用される場合、その項に従うこと。
(b)(10)が適用される場合において,出願人が(10)(b)に規定する所定の期間内に,(1)(d)に基づく補充審査の請求を行わなかった場合,又は
(c)(11)が適用される場合において,出願人が(1)(b)に基づく調査及び審査報告の請求,又は(11)(b)に規定する所定の期間内に(1)(c)に基づく審査報告の請求を行わなかった場合。
(13)(a)登録官から(2)(b)に基づき調査報告を受け取った後、出願人が(3)に従いその項に規定する期間内に審査報告を求める請求を行わなかった後,及び
(b)改正特許法2017の第3(f)条の開始日前、若しくは開始後3か月以内に、(3)に規定する期間延長の請求を提出する期間が満了する時,
出願人が、その日から6月以内に(3)に基づく審査報告の請求を行わなかった場合、出願は、放棄されたものとして扱われる。
シンガポール特許規則38 調査報告請求書の提出に係る期間
(1)第2条(1)(a)に基づく請求提出の所定の期間は,次のとおりとする。
(a)当該出願に宣言された優先日が記載されていない場合は,出願日から13月,又は
(b)当該出願に宣言された優先日が記載されている場合は,当該宣言された優先日から13月
シンガポール特許規則43 調査及び審査報告の請求,審査報告の請求又は補充審査報告の請求の提出期間
(1)(2)に従うことを条件として,第29条(1)(b)に基づく調査及び審査報告の請求又は第29条(1)(c)若しくは(3)に基づく審査報告の請求の提出についての所定の期間は,
(a)(b)に従うことを条件として,
(i)出願の宣言された優先日,若しくは
(ii)宣言された優先日が存在しない場合は当該出願の出願日,
から36月,又は
(b)第20条(3),第26条(11)又は第47条(4)に基づいて新規出願が行われる場合は,当該新規出願が実際に出願された日から36月とする。
(2)(1)(a)又は場合により(b)にいう所定の期間の満了前1月以後に,登録官により第29条
(2)(b)に基づいて調査報告の写しが出願人に送付される場合は,第29条(3)に基づく審査報告の請求の提出についての所定の期間は,第29条(2)(b)に基づく調査報告の写しを送付する登録官書簡の日付から1月とする。
(3)第2条(1)(d)に基づく補充審査報告の請求の提出についての所定の期間は,次のとおりとする。
(a)(b)に従うことを条件として,
(i)当該出願の宣言された優先日,若しくは
(ii)宣言された優先日が存在しない場合は当該出願の出願日,
から54月,又は
(b)第20条(3),第26条(11)又は第47条(4)に基づいて新規出願が行われた場合は,新規出願が実際に出願された日から54月
シンガポール特許規則108 期限の延長一般
(4)次の何れかの規則に定める期日又は期間については,延長の求められる期日又は期間の最初の満了後18月以内に特許様式45の提出があった場合は,延長の求められる期日又は期間の最初の満了直後に始まる計18月を超えない期間で延長される。
(a)規則18(1),規則19(11),規則26(2),規則28(f),規則34(1A),規則38,規則42(3),規則43,規則47(1),規則86(1),(6),(8)若しくは(8A),又は
(b)規則26(3)(規則26(4)(a)及び(b)に定める書類の提出に関する場合に限る)
(7)(a)登録官から第29(2)条(b)に基づく調査報告を受け取った後、審査請求するための規則43(1)もしくは(2)(どちらか適用可能な方)に規定する期間内に、第29条(3)に基づく審査報告の請求を出願人が行わなかった後、及び
(b)2017年10月30日より前もしくは3か月以内に満了する期間延長の様式45の提出に対する(4)に規定する期間,
その日から6か月、様式提出に関する(4)の期間は延長される。
◆日本の基礎出願について優先権を主張しシンガポールに出願した場合には、以下のようになる。
日本とシンガポールにおける特許審査請求期限の比較
日本 | シンガポール | |
提出期限 | 3年 | ・シンガポールで審査(36か月)
・補充審査(54か月) |
基準日 | 日本の出願日 | 優先権を伴う場合には、シンガポール出願日ではなく、日本の基礎出願日 |
審査請求できる者 | 出願人または第三者 | 出願人のみ |
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
1. 日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第17条の2第1項第1号または第3号に掲げる場合(同項第1号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第50条(第159条第2項(第174条第2項において準用する場合を含む。)及び第163条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、上記1.(2)コ.の国際意匠登録出願において拒絶の通報に応答する場合の意見書の提出及び意匠法第9条第4項に基づく応答書面の提出についての指定期間、及びサ.の国際商標登録出願における命令による手続補正書の提出についての指定期間を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1.(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能である。出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能である。
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.上記(2)ア.a.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
ウ.上記2.(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2. シンガポールの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・シンガポール知的財産庁に審査を請求した場合、応答期間は5か月
・シンガポール知的財産庁に補充審査を請求した場合、応答期間は3か月
条文等根拠:特許規則46(4)、(4A)、(5)
シンガポール特許規則46 審査官の意見書等
(4)(a)第29条(4)に基づく審査報告、または
(b)第29条(5)に基づく調査および審査報告、
に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(4A)第29条(6)に基づく補充審査に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から3月以内に提出しなければならない。
(5)出願人が(3)に基づいて第29条(4)に基づく審査報告又は第29条(5)に基づく調査および審査報告に関する意見書を提出した場合は、
(a)審査官は、その裁量により、自己の意見の理由を詳細に記載した追加の意見書を登録官に対し発出することができ、
(b)(2)および(3)がこれに従って適用され、また
(c)(3)に基づく追加の意見書に対する応答は、追加の意見書を伴った登録官からの通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
いかなる場合も延長することができない。
条文等根拠:特許規則108(2)(b)
シンガポール特許規則108 期限の変更
(1)登録官は、当事者からの書面による請求により、(2),(3)及び(4)並びに規則108Aに従うことを条件として,登録官は,期日又は期間の満了後6月以内になされる当事者からの書面による請求により,自己が適切と認める場合は,ある行為を実行するための又はある手続を取るための本規則による所定期間及び本規則に基づいて登録官が指定した期日又は期間について,自己の指示する当事者への通知により,かつ,自己の指示する条件に基づいて,延長することができる。
(2)次の規則に定められる期日または期間は、いかなる場合も延長することができない。
(中略)
(b) 規則9(1)、(2)および(3)、規則9A(1)および(2)(a)、規則19(2)、規則26(5)、規則26A(1)および(5)(a)、規則28(a)、(b)、(c)および(d)、規則29(4)、規則34(2)、規則46(4)、(4A)および(5)(c)、規則49、規則51(1)、(2)および(2A)、規則51A(1)および(2)、規則52(2)、規則53(1)、規則73(1)、規則74(1)、規則75、規則85(1)、規則86(3A)、規則88(8)(a)、規則88A(11)、規則91(3)および(5)ならびに附則4の第4項(2)
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | シンガポール | |
応答期間 | 60日
(ただし在外者は3か月) |
・IPOSに審査を請求した場合:5か月
・IPOSに補充審査を請求した場合:3か月 |
応答期間の延長の可否 | 可 | 不可 |
延長可能期間 | 最大2か月
(在外者は最大3か月) |
– |
日本とシンガポールにおける特許出願書類・手続の比較
1.日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。特許出願日の認定を受けるためには、特許法第38条の2第1項に規定する3つの要件を満たす必要がある。3つの要件を満たしていない場合、出願人に対してその旨の通知がされ、出願人は補完手続を行うことが可能であるが、手続補完書を提出した日が特許出願の日として認定されることに留意が必要である。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条、第38条の2
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第29条第1項第3号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第2項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第2項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第2項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
日本特許法 第38条の2 特許出願の日の認定
特許庁長官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特許出願に係る願書を提出した日を特許出願の日として認定しなければならない。
一 特許を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 特許出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が特許出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 明細書(外国語書面出願にあっては、明細書に記載すべきものとされる事項を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面。以下この条において同じ。)が添付されていないとき(次条第1項に規定する方法により特許出願をするときを除く。)。
2 特許庁長官は、特許出願が前項各号のいずれかに該当するときは、特許を受けようとする者に対し、特許出願について補完をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、その補完をすることができる。
4 前項の規定により補完をするには、経済産業省令で定めるところにより、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。ただし、同項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に明細書を提出しなければならない。
5 第3項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に第36条第2項の必要な図面(外国語書面出願にあっては、必要な図面でこれに含まれる説明を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載したもの。以下この条において同じ。)を提出することができる。
6 第2項の規定による通知を受けた者が第3項に規定する期間内にその補完をしたときは、その特許出願は、手続補完書を提出した時にしたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、手続補完書を提出した日を特許出願の日として認定するものとする。
7 第4項ただし書の規定により提出された明細書は願書に添付して提出したものと、第5項の規定により提出された図面は願書に添付して提出したものとみなす。
8 特許庁長官は、第2項の規定による通知を受けた者が第3項に規定する期間内にその補完をしないときは、その特許出願を却下することができる。
9 特許を受けようとする者が第2項の規定による通知を受ける前に、その通知を受けた場合に執るべき手続を執つたときは、経済産業省令で定める場合を除き、当該手続は、その通知を受けたことにより執った手続とみなす。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。
条文等根拠:特許法第36条の2、第25条の7、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第2項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第3項から第6項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第7項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第43条第1項、第43条の2第一項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(1900年12月14日にブラッセルで、1911年6月2日にワシントンで、1925年11月6日にヘーグで、1934年6月2日にロンドンで、1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約をいう。以下同じ。)第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第41条第1項、第43条第1項、第43条の2第1項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による2以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第64条第1項において同じ。)から1年4月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から2月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかったときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第2項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第4項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
7 第4項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第2項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
8 第2項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第2項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第2項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第2項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の7 翻訳文の様式等
4 特許法第36条の2第4項の経済産業省令で定める期間は、同条第3項の規定による通知の日から2月とする。
5 特許法第36条の2第6項の経済産業省令で定める期間は、同項に規定する正当な理由がなくなった日から2月とする。ただし、当該期間の末日が同条第4項に規定する期間の経過後1年を超えるときは、同項に規定する期間の経過後1年とする。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第4条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、若しくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から1年4月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項、次条第1項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第1項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知つたときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第1項の規定による優先権の主張をした者が第2項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第2項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第1項の規定による優先権の主張をした者が、第2項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前2項の規定の適用については、第2項に規定する書類を提出したものとみなす。
6 特許庁長官は、第2項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかったときは、第1項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。
8 第6項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。
9 第7項又は前項の規定により第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面の提出があったときは、第4項の規定は、適用しない。
特許法43条1項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
優先日(優先権主張書面を提出することにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日又は変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から1年4月の期間が満了する日又はこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から4月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があった後の期間を除く。)(特許法施行規則27条の4の2第3項1号の一部抜粋)。
特許法第43条7項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
特許法第43条第6項(同法第43条の2第2項(同法第43条の3第3項において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項において準用する場合を含む。)の規定による通知の日から2月とする。(特許法施行規則27条の3の3第5項の一部抜粋)。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
2.シンガポールにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約
・特許を受ける権利についての陳述書(様式8)を所定の期間内に提出
条文等根拠:特許法第25条(3)、第26条(1)、第24条(2)、特許規則第18条(1)、(1A)
シンガポール特許法第25条 出願手続
(3)各特許出願書類には、次のものを含めなければならないが、本項は、第26条(1)に従った書類による出願を妨げるものではない。
(a)特許付与を求める願書
(b)明細書、これに含まれる発明の説明、クレームおよび当該説明またはクレームにおいて言及される図面、ならびに
(c)要約
シンガポール特許法第26条 出願日
(1)本法の規定に従うことを条件として、特許出願の出願日は、出願を開始するために登録局に提出される書類が次の条件を満たす最初の日と解する。
(a)特許を求めていることが当該書類で示されていること
(b)当該書類で特許出願人が特定されること、ならびに
(c)当該書類に次のものが含まれていること
(i)当該特許出願を求める発明の説明となるか若しくは説明となると認められる事項、または
(ii)当該出願において若しくはそれに関連して第17条(2)に基づく宣言が行われている場合は、
(A)当該宣言で指定する先の関係出願の言及
(B)先の関係出願に関する所定の情報、および
(C)当該特許出願を求める発明の説明が、当該先の関係出願の引用により当該特許出願に組み入れられており、かつ、出願時での当該先の関係出願に完全に含まれている旨の陳述
「特許を受ける権利についての陳述書」は出願人と発明者が一致しない場合に提出する書類であって、出願人が、いかにして特許を受ける権利を有したかを示す陳述書であり、様式8により優先日から16か月以内に提出する必要がある。
シンガポール特許法第24条 発明者の明記
(2)特許出願人は,本項にいう情報を登録局に与えていない限り,所定の期間内に,
(a)発明者であると出願人が信じる者を特定し,かつ
(b)出願人が単独の発明者でなく又は複数出願人が共同発明者でない場合は,特許を付与されるべき権原を示す陳述書を登録局に提出しなければならず,
出願人がそれを怠るときは,当該出願は放棄されたものとして取り扱う。
シンガポール特許規則 第18条
(1)規則28並びに規則86(8)及び(8A)に従うことを条件として,第24条(2)適用上の所定の期間は,
(a)宣言された優先日が存在しない場合は,特許出願の出願日から16月,又は
(b)宣言された優先日が存在する場合は,当該宣言された優先日から16月,とする。
(1A)第24条(2)に基づいて提出する陳述書は,特許様式8によるものとする。
(2)手続言語
英語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
特許規則上は認められる。
翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。
条文等根拠:特許規則第19条(10)~(12)
シンガポール特許規則第19条 特許付与を求める出願
(10)(a)特許出願を開始するために登録局に提出された書類に、
(i)特許を求めている発明の説明である、もしくは説明であると認められる事項であって、
(ii)英語以外の言語によるものが含まれており、かつ
(b)出願人により当該事項の英語翻訳文が提出されていない場合は、
登録官は、当該事項の英語翻訳文が必要である旨を出願人に通知する。
(11)出願人は、(10)に基づいて通知を受けた場合は、当該通知の日付から2月以内に、当該事項の英語翻訳文を提出しなければならない。
(12)出願人が(11)に従わない場合は、登録官は、その特許出願を拒絶する。
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要があるが、所定の場合には出願後に行うことができる(優先日から16か月以内)。優先権証明書は、特許庁より提出の要請があった場合には、要請の通知の日から2か月以内に提出する必要がある。
条文等根拠:特許法第17条、特許規則第9条、第9B条
シンガポール特許法第17条 優先日
(1)本法の適用上、特許出願に係わる発明の優先日および当該出願に含まれる何らかの事項(当該発明と同一であるか否かを問わない)の優先日は、本法の規定に定める場合を除き、当該出願の出願日とする。
(2)特許出願(本条において問題の出願という)においてまたはそれに関連して、出願人またはその前権利者が、規則の関連要件に従ってかつ当該出願人またはその前権利者により行われた1または2以上の先の関係出願を本条の適用上指定して宣言を行い、かつ、問題の出願が(2A)(a)または(b)にいう期間内に出願日を有する場合において、
(a)問題の出願の対象である発明が先の関係出願において開示された事項により裏付けられるときは、その発明の優先日は、問題の出願を行った日ではなく、当該事項が開示されていた関係出願の出願日とするか、または当該事項が2以上の関係出願で開示されていたときは、それらのうち最先の出願の出願日とし、
(b)問題の出願に含まれていて先の関係出願にも開示されていた事項の優先日は、当該事項が開示された先の関係出願の出願日とするか、または当該事項が2以上の関係出願で開示されていたときは、それらのうち最先の出願の出願日とする。
(2A)(2)の適用上、期間とは、
(a)指定された先の関係出願、もしくは関係出願が2以上あるときは、それらのうち最先のものの出願日直後12月の期間、または
(b)登録官が(2B)に基づく請求を認めた場合は、(a)にいう期間の直後に開始し、かつ、所定の期間の終了時に終了する期間、
をいう。
(2B)出願人は、登録官に対し、(2)にいう宣言を(2A)(a)にいう期間の経過後に行うことを請求することができる。
(2C)出願人が(2B)に基づく請求を行う場合において、問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったときは、問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったことが次の何れに該当するかを請求書中に示さなければならない。
(a)事情に応じて必要とされる当然の注意を払ったにも拘らず生じた。
(b)故意によるものではなかった。
(2D)登録官は、次の場合に、(2B)に基づく請求を認める。
(a)当該請求が所定の期間内に所定の方法で行われて、所定の要件を満たしており、かつ
(b)出願人が問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったときに、登録官が、出願人が問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったことが次の何れかに該当することを認めた場合
(i)事情に応じて必要とされる当然の注意を払ったにも拘らず生じた。
(ii)故意によるものではなかった。
シンガポール特許規則第9条 第17条(2)適用上の優先権の宣言
(1)(2)に従うことを条件として、特許出願(本条規則ならびに規則9Aおよび規則9Bにおいて「問題の出願」という)においてまたはこれと関連して行われる第17条(2)適用上の宣言は、問題の出願を行う時に行わなければならない。
(2)第17条(2)適用上の宣言は、次の場合は、出願日後に行うことができる。
(a)当該宣言を行うことにより、
(i)宣言された優先日を有さない問題の出願が優先日を有することになる場合、または
(ii)問題の出願の宣言された優先日がそれより前の日に繰り上げられることになる場合
(b)当該宣言を、
(i)(a)(i)が該当するときに、宣言された優先日から16月以内に行う場合、または
(ii)(a)(ii)が該当するときに、当該それより前の日から16月以内に行う場合
(c)当該宣言を特許様式57により行う場合
(d)所定の手数料を納付している場合、および
(e)(4)にいう条件を満たしている場合
シンガポール特許規則第9B条 第17条(2)に基づく宣言を裏付ける出願番号及び優先権書類の提出
(1)(3)に従うことを条件として,出願人は,宣言された優先日から16月の期間の終了前に,各優先出願の出願番号を登録局に提出しなければならない。
(2)(3)に従うことを条件として,出願人が優先出願に関して(1)に従わない場合は,第17条(2)適用上の宣言は,当該優先出願に関する限り無視される。
(3)当該出願が国際特許出願(シンガポール)である場合は,(1)及び(2)は,出願番号が特許協力条約に基づく規則の第4規則10(a)に従って表示されている優先出願に関しては適用されない。
(4)登録官が,出願人又は場合により所有者に送付する通知により,同人に対し,優先出願に関して,
(a)提出先の機関が認証している,又は
(b)それ以外で登録官が受理可能な,
優先出願の写しを登録局に提出するよう要求する場合は,出願人又は場合により所有者は,当該通知の日から2月以内に,
(i)登録官の要求に従うものとし,又は
(ii)当該優先出願の写しが登録局に保管されている場合は,登録官の要求に従う代わりに,(A)当該優先出願の写しが作成されるべき旨の請求書,及び
(B)作成された写しを認証するよう登録官に請求する様式CM12,
を提出しなければならない。
(5)出願人又は場合により所有者が優先出願に関して(4)に従わなかった場合は,第17条(2)適用上の宣言は,当該優先出願に関する限り,無視される。
日本とシンガポールにおける特許出願書類・手続の比較
|
日本 |
シンガポール |
出願書類 |
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約書 |
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約 ・特許を受ける権利についての陳述書(様式8)を所定の期間内に提出 |
手続言語 |
日本語 |
英語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 |
・可(英語その他の外国語)。 ・その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 ・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。 |
・規則上は可能。 ・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。 |
優先権主張手続 |
・優先権主張の基礎となる出願国名と出願の年月日を記載した書面及び優先権証明書は、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 ・優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。 ・日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている |
・優先権主張は、原則、出願と同時に行う。所定の場合には出願後に行うことができる(優先日から16か月以内)。 ・優先権証明書は、特許庁より要請があった場合は、通知から2か月以内に提出しなければならない。 |
その他 |
(シンガポールにおける「特許を受ける権利についての陳述書」に相当する書類の提出は不要。) |
「特許を受ける権利についての陳述書」は出願人と発明者が一致しない場合に提出する書類であって、出願人が、いかにして特許を受ける権利を有したかを示す陳述書であり、様式8により優先日から16か月以内に提出する必要がある。 |