フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等
フィリピンの商標関連等の法律、規則、審査基準等(英語・日本語)は、以下のとおりである。
法律、規則等の英語版は、フィリピン知的財産庁ウェブサイトのトップページ(https://www.ipophil.gov.ph/)画面上部の「REFERENCES」から「LAWS & RULES」を選択すれば、個別の法令文等にアクセスすることができる。ただし、フィリピン知的財産庁ウェブサイトへの接続状況は、利用する通信環境によって左右される可能性があり、アクセスエラーとなる場合は、時間帯や利用端末を変えて接続を試みると接続できる場合がある。
フィリピンにおける商標の審判等手続に関する調査
「フィリピンにおける知的財産の審判等手続に関する調査」(2021年3月、日本貿易振興機構(JETRO) シンガポール事務所 知的財産部)
目次
A.はじめに P.1
I.目的 P.1
II.調査範囲 P.1
III.調査方法 P.2
IV.調査結果 P.3
B.審理機関と紛争解決手段 P.4
I.審理機関 P.4
(フィリピンの知的財産権に関する審理を行う3つの主要機関(IPOPHL(フィリピン知的財産庁)、裁判所、WIPO仲裁調停センター)の概要および管轄権限ついて紹介している(フィリピン裁判所の審級の構成についてフローチャートあり)。)
II.紛争解決手段 P.10
(知的財産権の紛争は、知的財産権の性質、手続の種類および請求の価値に応じて、IPOPHLまたはフィリピンの裁判所で審理される。各知的財産権訴訟の管轄の概要ならびに管轄機関の2011年から2020年までの申立件数および調停で解決した事件数等の統計情報を紹介している。)
E.商標 P.32
I.商標出願手続の概要 P.32
(出願手続の概要をフローチャートで紹介している。)
II.商標出願の審査手続 P.33
(審査手続について解説している(不服申立および再審のフローチャートあり)。
III.異議申立手続 P.35
(異議申立手続について解説している(当事者間事例のステップとタイムラインの概要についてフローチャートと各ステップの説明あり)。
IV.取消手続 P.42
(取消手続について、関連する規則に基づき解説している。)
V.商標登録の効力を争うその他の手続 P.42
(商標登録の侵害手続について解説している。)
VI.統計 P.43
(2011年から2020年までの統計情報(異議、取消および侵害について法務局によって処理/解決された商標事件数、長官室により処分/解決された商標事件数)について紹介している。)
VII.ケーススタディ P.44
(判例(Mang Inasal Philippines, Inc. v. IFP Manufacturing Corporation, G.R. No.221717, 2017年6月19日)を解説している。)
フィリピンにおける商標制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
知的財産法第124条、商標規則第400、第402、第405に規定されるように、商標登録出願は、フィリピン語または英語で記載しなければならず、かつ、商標の複製、ニ-ス分類の類に従って群に纏められた登録を求める商品またはサ-ビスの名称およびその商品またはサ-ビスの各群が属するニ-ス分類の類の番号などを含まなければならない。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/
2. 登録できる商標/登録できない商標
2-1. 登録できる商標
知的財産法第121条第1項に規定されるように、標章とは、企業の商品(商標)またはサ-ビス(サ-ビス・マ-ク)を識別することができる可視標識をいう。例えば、文字商標、図形商標、図形に文字が付された商標、3D商標、刻印または押印された商品の容器が商標登録され得る。
2-2. 登録できない商標
知的財産法第123条第1項において、登録を受けることができない標章が列挙されている。本項によれば、反道徳的、欺瞞的もしくは中傷的な事柄または個人(存命中であるか故人となっているかを問わない)、団体、宗教もしくは国の象徴を傷付け、それらとの関連を誤認させるように示唆しもしくはそれらに侮辱もしくは汚名を与えるおそれがある事柄からなる標章、フィリピン、フィリピンの政治上の分権地もしくは外国の国旗、紋章その他の記章またはそれらに類似したものからなる標章などが登録を受けることができない標章とされている。
2-3. 通常の商標以外の制度
知的財産法第167条に規定されるように、フィリピンにおいては、団体標章も登録され得る。知的財産法第121条第2項に規定されるように、団体標章とは、登録出願においてそのように特定され、かつ、出所その他の共通の特性を識別することができる可視標識をいい、共通の特性には、登録された団体標章の権利者の管理のもとにその標識を使用する個々の企業の商品またはサ-ビスの質を含む。
関連記事:
「フィリピンにおける商標の識別性に関する調査」(2021.09.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20806/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける物品デザインの商標的保護とトレードドレス」(2018.08.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15644/
3. 出願の言語
知的財産法第124条に規定されるように、商標登録出願は、フィリピン語または英語で記載しなければならない。
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
4. グレースピリオド
フィリピンの商標制度にグレースピリオドは存在しない。
5. 審査
5-1. 実体審査
知的財産法第132条第2項に規定されるように、知的財産法第127条の要件を満たすことによって出願日が付与された出願は、知的財産法第133条1項に規定されるように、商標の登録性について審査される。
5-2. 早期審査(優先審査)
商標規則第601に規定されるように、以前登録されていた商標の登録人または譲受人による再出願であって更新可能期間が満了した商標についての出願、何れかの国、政府間機関または国際機関の標章、名称もしくは略称またはロゴに係る登録出願などの商標出願は、宣誓に基づく請求があり、手数料を納付し、かつ、審査官の承認がある場合は、優先審査を受けることが認められる。
5-3. 商標の類否判断の概要
知的財産法第第155条第1項に規定されるように、何人も、登録標章の権利者の承諾を得ないで、使用することによって混同を生じさせ、錯誤を生じさせもしくはあざむくおそれがある商品またはサ-ビスの販売等に関連して、登録標章の複製、模造などを行った場合、侵害についての権利者による民事訴訟において責任を負わなければならない。
ここで上記の「使用することによって混同を生じさせる」という類否判断の手法として、全体観察と要部観察の2種類の手法が存在する。要部観察は、競合する商標の主要な特徴を考慮し、それらが紛らわしいほど類似しているかどうかを判断する。全体観察は、ラベルやパッケージングなどの標章の全体を考慮する。主な単語だけでなく、ラベルに表示される他の特徴にも注意を向ける。
最高裁判所は、Kolin Electronics Co. Inc. vs Kolin Philippines International Inc.事件(G.R. 228165、2021年2月9日)において、「使用することによって混同を生じさせる」という類否判断の手法として、全体観察ではなく、要部観察を使用した。具体的には、最高裁判所は、要部観察を使用して、わずかな違いを無視して、登録商標の主要な特徴の採用から生じる製品の外観の類似性をより重視する。このため、最高裁判所は、価格、品質、販売店、市場セグメントなどの要素に殆ど重みを与えずに、商標によって公衆の人々に印象付けられた聴覚的および視覚的な印象をより考慮すると考えられる。
なお、知的財産法第144条第2項に規定されるように、商品またはサ-ビスは、それらが登録または庁による公示においてニ-ス分類の異なる類に属するという理由によっては相互に類似であるとも非類似であるともみなされない。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンにおける商標の重要判例」(2018.08.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15656/
関連情報:
「Kolin Electronics Co. Inc. vs Kolin Philippines International Inc」(2021.06.15)
https://elibrary.judiciary.gov.ph/thebookshelf/showdocs/1/67171
6. 出願から登録までのフローチャート
6-1. 出願から登録までの商標出願のフローチャート
6-2. フローチャートに関する簡単な説明
商標登録出願後、まず方式審査が行われて、知的財産法第124条に規定される出願の要件が審査される。出願の要件を満たす場合、出願人によって所定の手数料が納付されると、出願日が付与される。出願の要件を満たさない場合、その旨が出願人に通知され、出願人は出願の要件を満たすための補正を行う。
次に、登録性を判断するための実体審査が行われる。拒絶理由がある場合、審査官はオフィスアクションを発行し、出願人はそれに対応する。拒絶理由がない場合、または拒絶理由に対する出願人の応答を審査官が受け入れた場合、出願は許可され、フィリピン知的財産庁のIPO公報において異議申立のための公告が行われる。異議申立が認められる期間は、公告後30日以内である(知的財産法第133条、第134条)。
異議申立期間が満了した場合、または法律局長が異議申立を却下すべきものとした場合、商標は異議申立期間の満了に後続する次の暦日に登録されたものとみなされる。異議申立が提出された場合、商標は、出願に対して追って付与する決定または最終的な命令が確定的で、かつ、執行力のあるものとなる日に登録されたものとみなされる(商標規則第703)。
その後、登録証が発行される。登録証の発行は、フィリピン知的財産庁のIPO公報において公告され、フィリピン知的財産庁に記録される(知的財産法第136条)。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンにおける商標異議申立制度」(2021.06.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20350/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/
7. 拒絶査定不服
商標規則第1302、第1304、第1305に規定されるように、商標または所有権に係るその他の商標の何れの登録出願人も審査官の登録付与の最終拒絶について、局長に不服申立をすることができる。不服申立は、不服申立の対象である処分の郵送日から2月以内に不服申立書を提出することによって行う。不服申立人は、不服申立の日から2月以内に、その不服申立を維持するための論拠および主張の準備書面を提出しなければならない。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
8. 権利設定前の異議申立
知的財産法第134条に規定されるように、ある標章の登録により害されるおそれがあると考える者は、出願の公告の後30日以内に、庁に対し、当該出願に対する異議申立をすることができる。当事者系手続に関する規則7第4条に規定されるように、異議申立期間は延長され得るものの、如何なる場合も、異議申立の対象として標章を公告するIPO公報の発行日から4月を超えないものとされる。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標異議申立制度」(2021.06.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20350/
9. 上記7の判断に対する不服申立
知的財産法第133条第5項、商標規則第1308に規定されるように、不服申立人は、商標局長による拒絶の最終決定に対して、その写しを受領した後30日の期間内に再審理申立、または長官への不服申立を行うことができる。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
フィリピンにおいては、権利設定後の異議申立制度はない。
11. 設定された商標権に対して、権利の無効を申し立てる制度
知的財産法第151条第1項に規定されるように、標章の登録により損害を受けているまたは損害を受けるであろうと考える者は、法律局に対して当該標章登録の取消の請求をすることができる。ただし、以下の条件に従う。
(a)取消の請求は、本法に基づく当該標章の登録日から5年以内にしなければならない。
(b)取消の請求は、当該登録標章が登録に係る商品もしくはサ-ビスもしくはその一部について一般名称になっているかもしくは放棄されている場合、当該登録が不正に得られたかもしくは本法の規定に反してなされた場合または権利者によりもしくは権利者の承認のもとに当該登録標章が商品もしくはサ-ビスの出所を偽って表示するように使用されている場合は、いつでもすることができる。登録標章が登録に係る商品またはサ-ビスの一部について一般名称になっている場合は、当該一部の商品またはサ-ビスについてのみ取消の請求をすることができる。登録標章は、当該標章がある独特の商品もしくはサ-ビスの名称としてもまたはある独特の商品もしくはサ-ビスを特定するためにも使用されているということのみを理由としては、商品またはサ-ビスの一般名称であるとはみなさない。登録標章が当該標章を使用している商品またはサ-ビスの一般名称になっているか否かを決定するに当たっては、購入者の購入の動機ではなく、関連する公衆にとっての当該標章の主要な意味が基準になる。
(c)取消の請求は、権利者が正当な理由なくして3年以上継続してフィリピンにおいて当該標章を使用しなかったかまたはライセンスによりフィリピンにおいて使用させることをしなかった場合は、いつでもすることができる。
また、知的財産法第154条に規定されるように、法律局は、取消の請求が立証されたと認める場合は、登録の取消を命じる。命令または判決が確定した場合は、記録されている権利者または利害関係人に当該登録により与えられていた権利は消滅する。
関連記事:
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標とサービスマーク」(2014.12.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/7414/
12. 商標の不使用取消制度
知的財産法第151条第1項(c)に規定されるように、取消の請求は、権利者が正当な理由なくして3年以上継続してフィリピンにおいて当該標章を使用しなかったかまたはライセンスによりフィリピンにおいて使用させることをしなかった場合は、いつでもすることができる。
また、知的財産法第152条では、許される標章の不使用について規定されている。本条によれば、標章の不使用は、その不使用が商標権者の意思にかかわりなく生じる状況によるものである場合は、取消を免れることができる。また、登録された形状とは異なるがその識別性のある特徴を変更しない形状での標章の使用は、標章の取消または登録簿からの除去の理由とはならず、かつ、当該標章に与えられる保護を減じない。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標とサービスマーク」(2014.12.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/7414/
13. その他の制度
登録商標の取消は、商標権侵害の申し立てに対する抗弁として、被告によって請求されることがある。
フィリピンにおける商標異議申立制度
フィリピンでは、知的財産法第134条の規定により、商標出願に対して異議申立を提起することができる。商標登録により損害を受ける者は何人も、フィリピン知的財産庁(Intellectual Property Office of the Philippines:以下「IPOPHL」)の法務局に対して、異議申立を行うことができる。フィリピンを指定するマドリッド・プロトコル制度を通じて行われる国際商標出願も、異議申立手続の対象となる。IPOPHLの法務局は、異議申立事件において第一審管轄権を有する。
1.異議申立理由
異議申立の法的根拠は、知的財産法第123条により、以下のように定められている。
次の標章については、登録を受けることができない。
(a)反道徳的、欺瞞的もしく中傷的な事柄または個人(存命中であるか故人であるかを問わない)、団体、宗教もしくは国の象徴を傷付け、それらとの関連を誤認させるように示唆し、もしくはそれらに侮辱もしくは汚名を与えるおそれがある事柄からなる標章。
(b)フィリピン、フィリピンの政治上の分権地もしくは外国の国旗、紋章その他の記章、またはそれらに類似したものから成る標章。
(c)存命中の特定の個人の名称、肖像もしくは署名から成る標章(ただし,その者の承諾を得ている場合を除く)またはフィリピンの故大統領の名称、署名もしくは肖像から成る標章(ただし、未亡人がいる場合は、その存命中に限る。また、未亡人の書面による承諾を得ている場合を除く)。
(d)他の権利者に帰属する登録された標章または先の出願日もしくは優先日を有する標章に同一であって,かつ,次のいずれかに係る標章。
(i)同一の商品またはサ-ビス
(ii)密接に関連する商品またはサ-ビス
(iii)欺瞞するかもしくは混同を生じさせるおそれがある程に類似している場合
(e)フィリピンにおいて登録されているか否かを問わず,フィリピンの権限のある当局により出願人以外の者の標章として国際的におよびフィリピンにおいて広く認識されていると認められた標章に同一であるかもしくは混同を生じさせる程に類似しているかまたはそのような標章の翻訳であり,かつ,同一または類似の商品またはサ-ビスに使用する標章。ただし,標章が広く認識されているか否かを決定するに当たっては,一般公衆の有する知識ではなく,関連する公衆の有する知識(当該標章の普及の結果として獲得されたフィリピンにおける知識を含む)を考慮する。
(f) (e)の規定に従って広く認識されていると認められ,かつ,登録が求められている商品またはサ-ビスと類似していない商品またはサ-ビスについてフィリピンにおいて登録されている標章に同一であるかもしくは混同を生じさせる程に類似しているかまたはそのような標章の翻訳である標章。ただし,当該類似していない商品またはサ-ビスについての当該標章の使用が,当該類似していない商品またはサ-ビスと当該登録された標章の権利者との間の関連性を示唆し,かつ,当該権利者の権利が当該使用により害されるおそれがある場合に限る。
(g)商品またはサ-ビスの特に性質、品質、特性または原産地について公衆を誤認させるおそれがある標章。
(h)指定する商品またはサ-ビスに特有の標識のみから成る標章。
(i)日常の言語または誠実なかつ確立された商業上の慣行において商品またはサ-ビスを示すために通例または普通になっている標識または表示のみからなる標章。
(j)商品またはサ-ビスの種類、品質、量、意図されている目的、価格、原産地、商品の製造またはサ-ビスの提供の時期、その他の特性を示すために商業上用いられる標識または表示のみから成る標章。
(k)技術上の要因、商品自体の性質または商品の固有の価値に影響する要素により必要とされる形状から成る標章。
(l)色のみから成る標章。ただし、形状により定義される場合はこの限りでない。
(m)公の秩序または善良の風俗に反する標章。
2.手続および期限
異議申立は、官報における商標出願の公告から30日以内に宣誓異議申立書を提出することにより開始される。この期限は法務局が認めた場合、延長することができる(フィリピン商標規則第703条)。
異議申立書は、書面によらなければならず、宣誓され、かつフォーラムショッピング(法廷地漁り)*1がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されなければならない。裏付文書は、原本または真正な認証謄本でなければならない。英語で記載されていない文書には、英語訳を添付しなければならない(Office Order No. 14-068, Series of 2014, of May 27, 2014 Section 1)。
*1:国際事件において、手続法の違い、国際私法の違いによる準拠法の違いなどのため、必ずしも同じ内容の判決が下されるは限らない。そのため自らに有利な判決が下される見込みがある国を選んで提訴するという訴訟戦術を用いることがある。これをフォーラム・ショッピング(法廷地漁り)という。(出典:「フォーラム・ショッピング」.金子宏他.『法律学小辞典』第3版.株式会社有斐閣,1999年,p.978.)。
出願人は、答弁通知書の受領から30日以内に、宣誓答弁書を提出しなければならない。出願人は、更に所定の料金を支払い最長で30日ずつ2回延長することができる。なお、2回目の30日間の延長はやむを得ない理由において認められる。また、答弁書知書の受領から90日を超えてはならない(Office Order No. 99, series of 2012)。また、提出書類に不備があった場合、補正命令の受領から5日以内に対応しなければならない。出願人は所定の料金を支払い5日ずつ2回延長することができる(IPOPHL MEMORANDUM CIRCULAR NO.2019 024 Series of 2019)。
出願人が宣誓答弁書を提出しない場合、または宣誓答弁書が期限後に提出された場合、異議申立は、異議申立人の異議申立書、証人の宣誓供述書、その他異議申立人により提出された書証に基づき決定が下される。
宣誓答弁書が期限内に提出されると、事件は調停に付され、両当事者は、調停員の助力を得て、事件を友好的に解決するよう勧奨される。
両当事者が、調停において和解に達することができない場合、審理前協議の日が設定され、両当事者は、事実を明記し、争点を明確にし、書証を提示または比較することができる。
審理前協議が終了すると、聴聞官は、両当事者に対してそれぞれ、審理前協議の終了から10日以内に陳述書(Position Papers)を提出するよう求める(Office Order No. 79, series of 2005 Section5)。
陳述書の提出期間が経過すると、事件は法務局による決定のために付託されたものとみなされる。
異議申立の提出から異議申立に関する法務局による決定までには、通常12~24ヶ月を要する。決定は、商標の登録を却下する異議申立の認容、または異議申立された商標の登録を認める異議申立の却下のいずれかである。
3.不服申立
法務局の決定に対して、いずれの当事者もIPOPHLの長官に不服申立を行うことができる。長官の決定に対しては、控訴裁判所に控訴することができ、控訴裁判所の判決に対しては、最終的にフィリピン最高裁判所に上告することができる。
4.悪意の登録
フィリピンで登録されていない外国商標も他国での先行する登録を理由に、第三者商標が当該外国商標と同一である場合、異議申立手続を提起することができる。同一商標に関する紛争において判断当局が採用する原則は、偶然はあり得ないというものである。一方の者は、他方の者の商標を複製したに違いないとされる。商標の出所を説明することができない者または当該商標の長期の先使用または採用を立証することができない者は、侵害者とみなされる。これらの者は、当該外国商標を意図的に悪意で複製したとみなされる。これは、当該外国商標の所有者がフィリピンにおいて事業を営んでいない場合であっても当てはまる。出願人がインターネット上の掲示や広告といった当該外国商標に触れる機会を有していた場合、当該出願人は、外国権利者の当該商標について悪意の事前知識を有していたものとみなされる。
フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等
フィリピンの商標関連等の法律、規則、審査基準等(英語・日本語)は、以下のとおりである。
なお、フィリピン知的財産庁ウェブサイトへの接続状況は、利用する通信環境によって左右される可能性がある。アクセスエラーとなる場合は、時間帯や利用端末を変えて接続を試みると接続できる場合がある。または、フィリピン知的財産庁のトップページ(http://www.ipophil.gov.ph/)から、画面上部の「LAWS,ISSUANCES,AND TREATIES(法律、公布および条約)」をクリックし、個別の法令文にアクセスすることも可能である。
フィリピンにおける商標異議申立制度
フィリピンでは、知的財財産法134条の規定により、商標出願に対して異議申立を提起することができる。商標登録により損害を受ける者は何人も、フィリピン知的財産庁(Intellectual Property Office of the Philippines: 以下「IPOPHL」)の法務局に対して、異議申立を行うことができる。フィリピンを指定するマドリッド・プロトコル制度を通じて行われる国際商標出願も、異議申立手続の対象となる。IPOPHLの法務局は、異議申立事件において第一審管轄権を有する。
1.異議申立理由
異議申立の法的根拠は、知的財産法123条により、以下のように定められている。
(1)登録を求める商標が、先の出願日または優先日を有する、同一または関連商品に使用される他者の商標と同一または酷似している。
(2)登録を求める商標が、フィリピンにおいても周知な国際的周知商標と同一または混同を招くほど類似している。
(3)商標出願が、反道徳的、欺瞞的もしく中傷的な事柄から成る、または個人(存命中であるか故人であるかを問わない)、団体、宗教もしくは国の象徴を傷付け、それらとの関連を誤認させるように示唆し、もしくはそれらに侮辱もしくは汚名を与えるおそれがある。
(4)商標出願が、フィリピン、フィリピンの政治上の分権地もしくは外国の国旗、紋章その他の記章、またはそれらに類似したものから成る。
(5)存命中の特定の個人を識別する名称、肖像もしくは署名から成る標章、またはフィリピンの故大統領の名称、署名もしくは肖像から成る標章(ただし、未亡人がいる場合は、その存命中に限る。また、未亡人の書面による承諾を得ている場合を除く)。
(6)登録を求める商標が、商品またはサ-ビスの特に性質、品質、特性または原産地について公衆を誤認させるおそれがある。
(7)指定する商品またはサ-ビスに特有の標識のみから成る標章、または、日常の言語または誠実なかつ確立された商業上の慣行において商品またはサ-ビスを示すために通例または普通になっている標識のみから成る標章。
(8)商品またはサ-ビスの種類、品質、量、意図されている目的、価格、原産地、商品の製造またはサ-ビスの提供の時期、その他の特性を示すために商業上用いられる標識または表示のみから成る標章。
(9)技術上の要因、商品自体の性質または商品の固有の価値に影響する要素により必要とされる形状から成る標章。
(10)色のみから成る標章。ただし、形状により定義される場合はこの限りでない。
2.手続および時間枠
異議申立は、官報における商標出願の公告から30日以内に宣誓異議申立書を提出することにより開始される。この期限は、30日ずつ2回延長することができる。したがって、異議申立人には、宣誓異議申立書を提出するために公告の日から合計90日間が与えられる。
異議申立書は、書面によらなければならず、宣誓され、かつフォーラムショッピング(法廷地漁り)がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されなければならない。裏付文書は、原本または真正な認証謄本でなければならない。英語で記載されていない文書には、英語訳を添付しなければならない。
出願人は、答弁通知書の受領から30日以内に、宣誓答弁書を提出しなければならない。出願人は、更に最長で30日ずつ2回延長する権利を有する。
出願人が宣誓答弁書を提出しない場合、または宣誓答弁書が期限後に提出された場合、異議申立は、異議申立人の異議申立書、証人の宣誓供述書、その他異議申立人により提出された書証に基づき決定が下される。
宣誓答弁書が期限内に提出されると、事件は調停に付され、両当事者は、調停員の助力を得て、事件を友好的に解決するよう勧奨される。
両当事者が、調停において和解に達することができない場合、審理前協議の日が設定され、両当事者は、事実を明記し、争点を明確にし、書証を提示または比較することができる。
審理前協議が終了すると、聴聞官は、両当事者に対してそれぞれ、審理前協議の終了から10日以内に陳述書(Position Papers)を提出するよう求める。
陳述書の提出期間が経過すると、事件は法務局による決定のために付託されたものとみなされる。
異議申立の提出から異議申立に関する法務局による決定までには、通常12~24ヶ月を要する。決定は、商標の登録を却下する異議申立の認容、または異議申立された商標の登録を認める異議申立の却下のいずれかである。
3.不服申立
法務局の決定に対して、いずれの当事者もIPOPHLの長官に不服申立を行うことができる。長官の決定に対しては、控訴裁判所に控訴することができ、控訴裁判所の判決に対しては、最終的にフィリピン最高裁判所に上告することができる。
4.悪意の登録
フィリピンで登録されていない外国商標も他国での先行する登録を理由に、第三者商標が当該外国商標と同一である場合、異議申立手続を提起することができる。同一商標に関する紛争において判断当局が採用する原則は、偶然はあり得ないというものである。一方の者は、他方の者の商標を複製したに違いないとされる。商標の出所を説明することができない者または当該商標の長期の先使用または採用を立証することができない者は、侵害者とみなされる。これらの者は、当該外国商標を意図的に悪意で複製したとみなされる。これは、当該外国商標の所有者がフィリピンにおいて事業を営んでいない場合であっても当てはまる。出願人がインターネット上の掲示や広告といった当該外国商標に触れる機会を有していた場合、当該出願人は、外国権利者の当該商標について悪意の事前知識を有していたものとみなされる。