ホーム PH-ao-4000

フィリピンにおける特許制度のまとめ-手続編

1.特許出願および実用新案登録出願に必要な書類
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならず、かつ、特許の付与を求める願書、発明の明細書、発明の理解に必要な図面、1以上のクレーム、要約を含まなければならない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/

2.記載が認められるクレーム形式
 発明に関する規則415(d)に規定されるように、クレームは、明細書に記載する発明と一致しなければならない。また、クレームで用いる語句については、明細書中に明確な裏付または先例を記載して、当該明細書を参照することによりクレームの用語の意味を確認することができるようにしなければならない。絶対に必要な場合を除き、発明の技術的特徴に関してクレームが明細書または図面を引用することがあってはならない。特に、「明細書第xxx部に記載したように」または「図面第xxx図に例示したように」等の引用をしてはならない。
 また、発明に関する規則415(c)に規定されるように、多項従属クレーム(マルチクレーム)は、他の多項従属クレームの基礎としてはならない。
 また、発明に関する規則416に規定されるように、適切な場合、クレームには次の(a)~ (c)のものを含める。
(a) 発明の主題を指定する記述、およびクレームする主題の定義のために必要とするが、組み合わせると先行技術の一部をなす技術的特徴を示す文言
(b) (a)にいう特徴との組合せで保護を求める技術的特徴を、「を特徴とする」または「によって特徴付けられる」との表現を先行させて記述した特徴付けの部分、および
(c) 出願に図面が含まれる場合に、クレームを理解しやすくするときは、クレームに記載した技術的特徴の後に、これらの特徴と関連付ける参照記号を括弧に入れて付すことが望ましい。これらの参照記号は、クレームを限定するとは解されない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「フィリピンにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16395/
「フィリピンにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について」(2017.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13691/

3.特許出願および実用新案登録出願の言語
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/

4.グレースピリオド
 知的財産法第25条に規定されるように、当該出願の出願日または優先日の前12月の間における当該出願に含まれている情報の開示は、(1) その開示が当該発明者によってなされた場合、(2) 特許庁によってなされ、当該情報が、当該発明者がした別の出願に記載され、かつ、当該庁によって開示されるべきではなかったかまたは当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者により当該発明者の認識もしくは同意なしになされた出願に記載されている場合、または、(3) その開示が当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者によってなされた場合に該当するときは新規性を失わないものとする。

関連記事:
「フィリピンにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.06.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13772/

5.審査および年金制度について
5-1.特許出願の実体審査
 知的財産法第48条に規定されるように、特許出願の実体審査の請求書は、対応する手数料とともに、特許出願の出願公開の日から6月以内に提出されなければならない。

5-2.早期審査(優先審査)
5-2-1.特許審査ハイウェイ
 フィリピン知的財産庁は、日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、韓国特許庁(KIPO)、欧州特許庁(EPO)と、特許審査ハイウェイプログラムを実施している。
 フィリピン知的財産庁において特許審査ハイウェイを申請するためには、特許審査ハイウェイのリクエストフォーム、当該リクエストフォームに含まれているクレーム対応表、ガイドラインに記載されている他の関連文書を提出する必要がある。

5-2-2. ASEAN特許審査協力プログラム
 ASEAN特許審査協力プログラム(以下「ASPECプログラム」という。)は、参加地域の特許庁間で特許調査および審査結果を共有することによって業務の効率化を図る制度であり、加盟国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
 ASPECプログラムを申請するためには、ASPECリクエストフォームおよびクレーム対応表と、ASPECプログラムに参加する知財庁の対応する出願における、少なくとも1つのクレームが許可または特許可能であることを示す、特許付与、または、サーチおよび審査の結果を提出する必要がある。

5-3.出願の維持
特許維持年金(Philippine Pesos)
(参照:フィリピン知的財産庁より「SCHEDULE OF FEES ON PATENTS」https://www.ipophil.gov.ph/services/schedule-of-fees/patents/

年度(公開日より) 小規模企業 大規模企業
5 1,550.00 3,240.00
6 2,000.00 4,320.00
7 2,580.00 5,400.00
8 3,100.00 6,480.00
9 4,140.00 8,640.00
10 5,170.00 10,800.00
11 6,670.00 13,920.00
12 8,280.00 17,280.00
13 9,770.00 20,400.00
14 11,900.00 24,840.00
15 13,970.00 29,160.00
16 15,980.00 33,360.00
17 18,050.00 37,680.00
18 21,670.00 45,240.00
19 26,040.00 54,360.00
20 31,222.00 65,160.00
請求項の数が5を超える場合の1請求項毎の追加料金 210.00 420.00

関連記事:
「フィリピンにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.03.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18368/
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける特許年金制度の概要」(2018.10.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15971/
「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/
「フィリピンにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.05.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11186/
「日本とフィリピンにおける特許審査請求期限の比較」(2015.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9372/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2022.07.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/24171/

6.特許出願から登録までのフローチャート
6-1.特許出願から登録までのフローチャート

6-2.フローチャートに関する簡単な説明
 特許出願後、知的財産法第42条および特許審査マニュアル2.1に規定されるように方式審査が行われ出願日が付与される。知的財産法第44条および第47条に規定されるように出願日または優先日から18月後、特許出願は、公衆の人々が発明の特許性についての所見を申し立てることができるようにするために、フィリピン知的財産庁の公報に公開される。特許性についての所見が申し立てられた場合、出願人にはその旨が通知され、出願人は見解を述べることができる。
 次に、知的財産法第48条に規定されるように特許出願の公開から6月以内に、出願人は所定の手数料を納付して審査請求を行う。これにより特許出願が実体審査される。審査官が拒絶理由を発見した場合、拒絶理由が通知される。知的財産法第50条に規定されるように審査官が拒絶理由を発見しないか、拒絶理由通知に対する出願人の応答によって拒絶理由が解消した場合、すべての手数料を所定の期間内に納付することを条件に特許が付与される。知的財産法第52条に規定されるように特許の付与は、他の関連する情報とともに公報によって公示される。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/

[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶査定不服申立
 2022 年特許・実用新案・意匠に関する改正施行規則(以下、施行規則という。)913に規定されているように、第2回目またはその後の審査もしくは審理において、審査官は拒絶または異論が確定されたと宣言することができる。その際の出願人の応答は、クレームの拒絶の場合は、局長に対し不服申立を行うことができる。クレームの拒絶を伴わない異論の場合は、局長に申請することができる。
 また、施行規則905に規定されているように、出願人は、拒絶の確定通知の郵送日から2月以内(延長不可)に、特許局長へ不服申立を行うことができる。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/

8.権利設定前の異議申立
 施行規則803に規定されるように、特許出願の公開日または出願人が行った実体審査請求の日のいずれか遅い期日から6月以内に、何人も、関連先行技術を引用して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性に関する事項を含む、その発明の特許性について、書面により意見を表明することができる。出願人は、当該意見について見解を述べることができる。意見、見解、協議における討議は、当該特許出願の審査において考慮される。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/

9.上記7の判断に対する不服申立
 施行規則1308および1309に規定されるように、特許局長の決定が審査官による拒絶を支持する場合、出願人は特許局長の決定を受領してから1月以内であれば長官に不服申立できる。不服申立人は、不服申立の通知の提出日から30日以内に、その不服申立を維持するための論拠および主張の準備書面を提出する。
 また、施行規則1311に規定されるように、特許局長の決定を覆し出願を認める長官の決定は、直ちに確定される。これに対して、知的財産庁長官の決定が出願を拒絶する特許局長の決定を支持する場合、出願人は、15日以内に上訴裁判所へ上訴することができる(不服申立てに関する改正統一法(庁命令No.41/2020年)11条)。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/

[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
 権利設定後の異議申立制度はない。

11.設定された特許権に対して権利の無効を申し立てる制度
 当事者系手続に関する規則3第1条(a)に規定されるように、利害関係人は、発明としてクレームされているものが特許性を有していないものであること、特許が当該技術の熟練者が実施することができる程十分に明確かつ完全な方法では当該発明を開示していないこと、特許が公序良俗に反すること、または特許に出願当時の出願に記載された開示の範囲にない事項が含まれていることを理由として、特許またはその何れかのクレームもしくはクレームの一部の取消を申請することができる。
 また、当事者系手続に関する規則3第1条(b)に規定されるように、裁判所の最終命令または決定により特許について権利を有すると宣言された者は、決定が確定した後3月以内に、既に発行されている特許の取消を求めることができる。
 申請書は書面によるものでなければならず、認証され、かつフォーラムショッピング(申請者に有利な管轄地の選択)がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されていなければならない。申請者は、記録されている被申請者または代表者/代理人への送達の証明とともに、申請書の原本のみを提出する。申請書には、次のものが記載されている必要がある。
(1) 申請者、および被申請者を含むその他の当事者の氏名および住所
(2) 取消を求められた特許、実用新案の登録番号、登録者の名称、および登録日
(3) 申請者の1つまたは複数の訴因および求められる救済を構成する事実。
 申請者は、フィリピンの弁護士の委任状、および適切にマークされた証拠の宣誓供述書、文書または客観的証拠を申請書に添付しなければならず、英語以外の文書については英語の翻訳を添付する必要がある。フィリピン国外で作成された文書については、アポスティーユ(公的認証)されているか、領事認証されている必要がある。

関連記事:
「フィリピンにおける特許、実用新案および意匠の無効手続を管轄する組織並びに統計データ」(2018.08.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15646/

12.権利設定後の権利範囲の修正
 施行規則1209によると、特許の所有者は、当該特許により与えられている保護の範囲を限定すること、明白な錯誤を訂正しまたは事務的な誤りを訂正すること、および、善意でした錯誤または誤りを訂正することを目的として、特許に変更を施すことを特許局に請求する権利を有する。
 また、施行規則1210によると、特許の補正または訂正は、庁の印章により認証されて特許局長が署名した補正または訂正の証明書を伴わなければならず、その証明書は、当該特許証に添付するものとする。補正または訂正は、IPOPHL 電子公報において公告し、庁が交付する特許の謄本は、補正または訂正の証明書の謄本を含むものとする。

13.その他の制度
 特許権侵害事件において、被告は、特許が無効であるという答弁または反訴を行うことができる。フィリピン知的財産庁より発行された特許証は、矛盾するか、同じものが無効の方法で発行されたことを示す他の証拠によって克服されない限り、有効であると推定される。

関連記事:
「フィリピンにおける知的財産権エンフォースメント」(2020.01.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18187/
「フィリピンにおける産業財産権侵害対策」(2013.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/4462/

フィリピンにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならず、かつ、特許の付与を求める願書、発明の明細書、発明の理解に必要な図面、1以上のクレーム、要約を含まなければならない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/

2. 記載が認められるクレーム形式
 発明に関する規則415(d)に規定されるように、クレームは、明細書に記載する発明と一致しなければならない。また、クレームで用いる語句については、明細書中に明確な裏付または先例を記載して、当該明細書を参照することによりクレームの用語の意味を確認することができるようにしなければならない。絶対に必要な場合を除き、発明の技術的特徴に関してクレームが明細書または図面を引用することがあってはならない。特に、「明細書第xxx部に記載したように」または「図面第xxx図に例示したように」等の引用をしてはならない。
 また、発明に関する規則415(c)に規定されるように、多項従属クレーム(マルチクレーム)は、他の多項従属クレームの基礎としてはならない。
 また、発明に関する規則416に規定されるように、適切な場合、クレームには次の(a)~(c)のものを含める。
(a)発明の主題を指定する記述、およびクレームする主題の定義のために必要とするが、組み合わせると先行技術の一部をなす技術的特徴を示す文言
(b)(a)にいう特徴との組合せで保護を求める技術的特徴を、「を特徴とする」または「によって特徴付けられる」との表現を先行させて記述した特徴付けの部分、および
(c)出願に図面が含まれる場合に、クレームを理解しやすくするときは、クレームに記載した技術的特徴の後に、これらの特徴と関連付ける参照記号を括弧に入れて付すことが望ましい。これらの参照記号は、クレームを限定するとは解されない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「フィリピンにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16395/
「フィリピンにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について」(2017.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13691/

3. 出願の言語
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/

4. グレースピリオド
 知的財産法第25条に規定されるように、当該出願の出願日または優先日の前12月の間における当該出願に含まれている情報の開示は、(1)その開示が当該発明者によってなされた場合、(2)特許庁によってなされ、当該情報が、当該発明者がした別の出願に記載され、かつ、当該庁によって開示されるべきではなかったかまたは当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者により当該発明者の認識もしくは同意なしになされた出願に記載されている場合、または、(3)その開示が当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者によってなされた場合に該当するときは新規性を失わないものとする。

関連記事:
「フィリピンにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.06.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13772/

5. 審査
5-1. 実体審査
 知的財産法第48条に規定されるように、実体審査の請求書は、対応する手数料とともに、特許出願の出願公開の日から6月以内に提出されなければならない。

5-2. 早期審査(優先審査)
5-2-1. 特許審査ハイウェイ
 フィリピン知的財産庁は、日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、韓国特許庁(KIPO)、欧州特許庁(EPO)と、特許審査ハイウェイプログラムを実施している。
 フィリピン知的財産庁において特許審査ハイウェイを申請するためには、特許審査ハイウェイのリクエストフォーム、当該リクエストフォームに含まれているクレーム対応表、ガイドラインに記載されている他の関連文書を提出する必要がある。

5-2-2. ASEAN特許審査協力プログラム
 ASEAN特許審査協力プログラム(以下「ASPECプログラム」という。)は、参加地域の特許庁間で特許調査および審査結果を共有することによって業務の効率化を図る制度であり、加盟国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
 ASPECプログラムを申請するためには、ASPECリクエストフォームおよびクレーム対応表と、ASPECプログラムに参加する知財庁の対応する出願における、少なくとも1つのクレームが許可または特許可能であることを示す、特許付与、または、サーチおよび審査の結果を提出する必要がある。

年度(公開日より)小規模企業大規模企業
51,550.003,240.00
62,000.004,320.00
72,580.005,400.00
83,100.006,480.00
94,140.008,640.00
105,170.0010,800.00
116,670.0013,920.00
128,280.0017,280.00
139,770.0020,400.00
1411,900.0024,840.00
1513,970.0029,160.00
1615,980.0033,360.00
1718,050.0037,680.00
1821,670.0045,240.00
1926,040.0054,360.00
2031,222.0065,160.00
請求項の数が5を超える場合の1請求項毎の追加料金210.00420.00

関連記事:
「フィリピンにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.03.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18368/
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける特許年金制度の概要」(2018.10.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15971/
「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/
「フィリピンにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.05.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11186/
「日本とフィリピンにおける特許審査請求期限の比較」(2015.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9372/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2014.07.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6142/

6. 出願から登録までのフローチャート
6-1. 出願から登録までの特許出願フローチャート

6-2. フローチャートに関する簡単な説明
 特許出願後、まず方式審査が行われる。次に、出願日または優先日から18月後、特許出願は、公衆の人々が発明の特許性についての所見を申し立てることができるようにするために、フィリピン知的財産庁の公報に公開される。特許性についての所見が申し立てられた場合、出願人にはその旨が通知され、出願人は見解を述べることができる。
 次に、出願公開から6月以内に、出願人は所定の手数料を納付して審査請求を行う。これにより特許出願が実体審査される。審査官が拒絶理由を発見した場合、拒絶理由が通知される。審査官が拒絶理由を発見しないか、拒絶理由通知に対する出願人の応答によって拒絶理由が解消した場合、出願が許可され、登録料の納付後に特許証が発行される。付与された特許は、公衆の情報のためにフィリピン知的財産庁の公報に公開される。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/

[権利設定前の争いに関する手続]

7. 拒絶査定不服
 発明に関する規則913に規定されているように、第2回目またはその後の審査もしくは審理において、審査官は拒絶またはその他の処分を確定することができ、その際の出願人の応答は、クレームの拒絶の場合は不服申立または本規則に定める補正に限られる。クレームの拒絶を伴わない異論または要求の場合は、本規則に規定する通り局長に申請することができる。
 また、発明に関する規則905に規定されているように、出願人は、出願の審査の決定が確定した場合、決定通知の郵送日から4月以内に、局長へ申請または不服申立を行うことができる。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/

8. 権利設定前の異議申立
 知的財産施行規則803に規定されるように、出願の公開日または出願人が行った実体審査請求の日のいずれか遅い期日から6月以内に、何人も、関連先行技術を引用して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性に関する事項を含む、その発明の特許性について、書面により意見を表明することができる。出願人は、当該意見について見解を述べることができる。意見、見解、協議における討議は、当該特許出願の審査において考慮される。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/

9. 上記7の判断に対する不服申立
 知的財産施行規則1308および1309に規定されるように、局長の決定が審査官による拒絶を支持する場合、出願人は局長の決定を受領してから30日以内であれば長官に不服申立できる。不服申立人は、不服申立の通知の提出日から30日以内に、その不服申立を維持するための論拠および主張の準備書面を提出する。
 また、知的財産施行規則1311に規定されるように、局長の決定を覆し出願を認める長官の決定は、直ちに確定される。これに対して、長官の決定が出願を拒絶する局長の決定を支持する場合、出願人は、15日以外に上訴裁判所へ上訴することができる。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/

[権利設定後の争いに関する手続]

10. 権利設定後の異議申立
 権利設定後の異議申立制度はない。

11. 設定された特許権に対して権利の無効を申し立てる制度
 当事者系手続に関する規則3第1条(a)に規定されるように、利害関係人は、発明としてクレームされているものが特許性を有していないものであること、特許が当該技術の熟練者が実施することができる程十分に明確かつ完全な方法では当該発明を開示していないこと、特許が公序良俗に反すること、または特許に出願当時の出願に記載された開示の範囲にない事項が含まれていることを理由として、特許またはその何れかのクレームもしくはクレームの一部の取消を申請することができる。
 また、当事者系手続に関する規則3第1条(b)に規定されるように、裁判所の最終命令または決定により特許について権利を有すると宣言された者は、決定が確定した後3月以内に、既に発行されている特許の取消を求めることができる。
 申請書は書面によるものでなければならず、認証され、かつフォーラムショッピング(申請者に有利な管轄地の選択)がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されていなければならない。申請者は、記録されている被申請者または代表者/代理人への送達の証明とともに、申請書の原本のみを提出する。申請書には、次のものが記載されている必要がある。
(1)申請者、および被申請者を含むその他の当事者の氏名および住所
(2)取消を求められた特許、実用新案の登録番号、登録者の名称、および登録日
(3)申請者の1つまたは複数の訴因および求められる救済を構成する事実。
 申請者は、フィリピンの弁護士の委任状、および適切にマークされた証拠の宣誓供述書、文書または客観的証拠を申請書に添付しなければならず、英語以外の文書については英語の翻訳を添付する必要がある。フィリピン国外で作成された文書については、アポスティーユ(公的認証)されているか、領事認証されている必要がある。

関連記事:
「フィリピンにおける特許、実用新案および意匠の無効手続を管轄する組織並びに統計データ」(2018.08.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15646/

12. 権利設定後の権利範囲の修正
 発明に関する規則1209によると、特許の所有者は、当該特許により与えられている保護の範囲を限定すること、明白な錯誤を訂正しまたは事務的な誤りを訂正すること、および、善意でした錯誤または誤りを訂正することを目的として、特許に変更を施すことを局に請求する権利を有する。
 また、発明に関する規則1210によると、特許の補正または訂正は、庁の印章により認証されて局長が署名した補正または訂正の証明書を伴わなければならず、その証明書は、当該特許証に添付するものとする。補正または訂正は、公報において公告し、庁が交付する特許の謄本は、補正または訂正の証明書の謄本を含むものとする。

13. その他の制度
 特許権侵害事件において、被告は、特許が無効であるという答弁または反訴を行うことができる。フィリピン知的財産庁より発行された特許証は、矛盾するか、同じものが無効の方法で発行されたことを示す他の証拠によって克服されない限り、有効であると推定される。

関連記事:
「フィリピンにおける知的財産権エンフォースメント」(2020.01.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18187/
「フィリピンにおける産業財産権侵害対策」(2013.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/4462/