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ニュージーランドにおける分割出願に関する留意事項

1.特許法および特許規則改正とその適用
1-1.特許法

 ニュージーランドでは2013年に特許法が改正され(2013年特許法、以下、「新法」という)、2014年9月13日以降に出願された出願および国内移行されたPCT出願に適用される。2014年9月12日以前に出願された出願および国内移行されたPCT出願には、1953年に制定された特許法(1953年特許法、以下、「旧法」という)が適用される。

 分割出願については、親出願に新法が適用されている場合に新法が適用され、親出願に旧法が適用されている場合に旧法が適用される(新法第258条)。

1-2.特許規則
 1954年特許規則(以下、「旧特許規則」という)が改正され、2014年特許規則(以下、「新特許規則」という)が2014年8月11日から施行されている。また、分割出願に関する規定の改正が2018年4月5日に施行された。具体的には、規則52(3)「親出願でクレームされている事項と実質的に同じクレームで分割出願をすることができない」 を廃止、規則82を置き換え、下記2-2記載を含む規定がされた。

2.新法下の分割出願
2-1.時期的要件

 新法下では、分割出願は、親出願が認可(*)される前であればいつでも行うことができる(新法第34条)。ただし、以下の審査請求期限に注意を要する。

(*)ニュージーランドでは、出願が特許法で要求される要件を全て満足すると認可(Acceptance、アクセプタンス)され、認可通知が発行される。認可通知発行後、その旨が官報に公告され(新法第74条)、公告日から3か月が異議申立期間となる(新法第92条(1)、新特許規則92、規則93)。この期間内に異議申立がない場合、または異議申立があった場合でも異議理由なしの決定がされた場合には、特許が付与される(旧法下でも同様)。

 ニュージーランドでは、2013年特許法改正により審査請求制度が導入された(新法第64条)。分割出願の審査請求期限は、親出願の出願日から5年と定められている(新特許規則71(a))。審査請求制度の導入により、分割出願が可能な期間は、親出願の出願日から5年に制限されることとなった。審査請求期間が出願日より5年と定められているため、この期間内に審査請求がなされない場合には、出願は放棄されたものとみなされるからである。

 分割出願の出願日は親出願の出願日まで遡る(新法第34条(4))。

2-2.実体的要件
 分割出願は、親出願の出願時に開示されていた内容に関するものでなければならない(新法第34条(1))。分割出願が、親出願に開示されていない内容を含む場合、出願日は親出願の出願日まで遡らず、実際に分割出願が出願された日となる。

 分割出願と親出願とは同一の事項に係るクレームを含んではならない。分割出願が認可されるためには、分割出願のクレームが親出願のクレームとは異なる必要があり、同様に、親出願が認可されるためには、親出願のクレームが分割出願のクレームと異なっている必要がある(新特許規則82)。なお、新特許規則82は、出願の完全明細書の許可(Acceptance of complete specification)の要件である。

2-3.公開
 公開済みの親出願に基づく分割出願がなされた場合、その分割出願は公報において公告される(新法第77条)。

3.旧法下の分割出願
3-1.時期的要件

 旧法下では、分割出願は親出願が認可される前であればいつでも行うことができる(旧特許規則23(1))。

 分割出願の出願日は、親出願の出願日まで遡る(旧特許規則23(1))。

3-2.実体的要件
 分割出願は、親出願に開示される内容に関するものでなければならない。分割出願が、親出願に開示されていない内容を含む場合、出願日は親出願の出願日まで遡らず、実際に分割出願が出願された日となる。

 分割出願と親出願とは、同じ内容のクレームを含んではならない。一方の出願のクレームを他方の出願のクレームとは異なるように補正することが要求される(旧特許規則23(2))。

3-3.公開
 旧法下では出願公開制度はなく、旧法が適用される分割出願は特許付与されるまで公開されない。

4.認可期間の延長のための分割出願の利用
 旧法下では、親出願が認可される前であれば、いつでも分割出願を行うことができる。しかも、分割出願の期限はその直接の親出願が認可前であるかどうかで決まる。したがって、分割出願から分割出願を繰り返し行うことにより、全て同じ出願日(最初の親出願の出願日)が与えられた一連の分割出願を作り出すことができる。また、親出願の内容全体を引き継いだ分割出願を行った後で親出願を放棄することにより、出願が認可されるのが保留され、認可されるまでの期間(**)を実質的に延ばすことができる。

 親出願の内容全体を引き継いだ分割出願を提出した後で親出願を放棄するという手法は新法下でも可能であるが、分割出願の審査請求期限が親出願の出願日から5年と定められている以上、この5年を経過している場合には、分割出願を行うことにより認可されるまでの期間を更に延ばすことはできない。

(**)認可期間(アクセプタンス期間)

 ニュージーランドでは出願日から一定の期間内に出願が認可される必要がある。この一定の期間は、旧法下では出願日から15か月であり(旧特許規則27)、新法下では最初の審査報告書(拒絶理由通知)の発行から12か月である(新法第75条、新特許規則83)。

ニュージーランドにおける分割出願に関する留意事項

【詳細】

1.特許法改正とその適用

ニュージーランドでは2013年に特許法が改正され(2013年特許法。以下、「新法」と称する)、2014年9月13日に以降に出願された出願および国内移行されたPCT出願に適用される。2014年9月12日以前に出願された出願および国内移行されたPCT出願には、1953年に制定された特許法(1953年特許法。以下、「旧法」と称する)が適用される。

分割出願については、親出願に新法が適用されている場合に新法が適用され、親出願に旧法が適用されている場合に旧法が適用される。(新法第258条)

 

2.新法下の分割出願

2-1.時期的要件

新法下では、分割出願は、親出願が認可(*)される前であればいつでも行うことができる。(新法第34条) ただし、以下の審査請求期限に注意を要する。

(*)ニュージーランドでは、出願が特許法で要求される要件を全て満足すると認可(アクセプタンス)され、認可通知が発行される。認可通知発行後、その旨が官報に公告され、公告日から3か月が異議申立て期間となる。この期間内に異議申立てがない場合、または異議申立てがあった場合でも異議理由なしの決定がされた場合には、特許が付与される。(旧法下でも同様)

ニュージーランドでは、2013年特許法改正により審査請求制度が導入された。(新法第64条)分割出願の審査請求期限は、親出願の出願日から5年と定められている。(2014年特許規則(以下、「新法特許規則」と称する)71(a)) 審査請求制度の導入により、分出願が可能な期間は、親出願の出願日から5年に制限されることとなった。審査請求期間が出願日より5年と定められているため、この期間内に審査請求がなされない場合には、出願は放棄されたものとみなされるからである。

分割出願の出願日は親出願の出願日まで遡る。(新法第34条(3))

 

2-2.実体的要件

分割出願は、親出願の出願時に開示されていた内容に関するものでなければならない。(新法特許法第34条(1)) 分割出願が、親出願に開示されない内容を含む場合、出願日は親出願の出願日まで遡らず、実際に分割出願が出願された日となる。

分割出願と親出願とは同じ内容のクレームを含んではならない。(新法特許規則52(3))分割出願が認可されるためには分割出願のクレームが親出願のクレームとは異なる必要があり、同様に、親出願が認可されるためには親出願のクレームが分割出願のクレームと異なっている必要がある。

 

2-3.公開

公開済みの親出願に基づく分割出願がなされた場合、その分割出願は公開される。(新法特許第77条)

 

3.旧法下の分割出願

3-1.時期的要件

旧法下では、分割出願は親出願が認可される前であればいつでも行うことができる。(1954年特許規則(以下、「旧法特許規則」と称する)23(1))

分割出願の出願日は親出願の出願日まで遡る。(旧法特許規則23(1))

 

3-2.実体的要件

分割出願は、親出願に開示される内容に関するものでなければならない。分割出願が、親出願に開示されない内容を含む場合、出願日は親出願の出願日まで遡らず、実際に分割出願が出願された日となる。

分割出願と親出願とは同じ内容のクレームを含んではならない。一方の出願のクレームを他方の出願のクレームとは異なるように補正することが要求される。(旧法特許規則の規則23(2))

 

3-3.公開

旧法下では出願公開制度はなく、旧法が適用される分割出願は特許付与されるまで公開されない。

 

4.認可期間の延長のための分割出願の利用

旧法下では、親出願が認可される前であればいつでも分割出願を行うことができる。しかも、分割出願の期限はその直接の親出願が認可前であるかどうかで決まる。したがって、分割出願から分割出願を繰り返し行うことにより、全て同じ出願日(最初の親出願の出願日)が与えられた一連の分割出願を作り出すことができる。また、親出願の内容全体を引き継いだ分割出願を行った後で親出願を放棄することにより、出願が認可されるのが保留され、認可されるまでの期間(**)を実質的に延ばすことができる。

親出願の内容全体を引き継いだ分割出願を提出した後で親出願を放棄するという手法は新法下でも可能であるが、分割出願の審査請求期限が親出願の出願日から5年と定められている以上、この5年を経過している場合には、分割出願を行うことにより認可されるまでの期間を更に延ばすことはできない。

(**)認可期間(アクセプタンス期間)

ニュージーランドでは出願日から一定の期間内に出願が認可される必要がある。この一定の期間は、旧法下では拒絶理由通知の発行から15か月であり、新法下では拒絶理由通知の発行から12か月である。