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マレーシアにおける商標権に基づく権利行使の留意点

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マレーシアにおける「商標の使用」と使用証拠

【詳細及び留意点】

1.商標の使用

 商標の使用は、商標法において重要な意味を持っている。マレーシアは「先使用主義」の原則を採用している。すなわち、ある商標を最初に使用することで最初の所有権が与えられる。商標の先使用者が、同じ商標を先に出願した者に打ち勝つこともある。出願人が特定の商標を登録するためには、当該商標を商標として使用する意図があることを証明しなければならない。

 

2.商標法に規定された使用の態様

 1976年法律175号(商標法)の第3条(2)項は、以下のように規定している。

 (a)本法において、ある標章の使用というときは、当該標章の印刷その他の視覚的表示による使用をいうものとする。

 (b)商品に関してある標章の使用というときは、商品そのものへのまたは商品との物理的その他の関係における当該標章の使用をいうものとする。

 (c)役務に関してある標章の使用というときは、役務の利用可能性または実行に関する陳述もしくはその一部としての当該標章の使用をいうものとする。

 

 商品または役務に「関して」という表現は、商標が使用される対象は必ずしも商品自体もしくは役務自体でなくてもよいということを意味しており、包装や容器、広告もしくは送り状(製品に添付されているか否かを問わない)に登録商標を表示することも商標の使用に含まれる。

 

3.不使用に伴う取消しのリスク

 登録商標は、一定期間にわたる継続的な不使用を理由として登録を取り消されることがある。不使用取消請求は、高等裁判所に対して提訴しなければならない。商標法第46条(1)項の規定によれば、裁判所は、不服を有する者の申請により、下記(a)、(b)の何れかを理由として、ある登録商標をその登録に係る商品または役務の何れかに関して登録簿から抹消すべき旨の命令を発することができる。

 (a)当該商標が、その登録出願人の側において、または第26条(1)に基づく登録の場合は、商標を使用するまたは使用予定の一般法人もしくは登録使用者の側において、それらの商品または役務に関して当該商標を使用する善意の意図がないにもかかわらず登録され、かつ、当該商標の登録所有者または登録使用者が、当該申請の日の1月前までに、それらの商品または役務に関して当該商標の善意の使用を実際に行っていないこと。

 (b)申請の日の1月前に至るまで連続して3年以上、当該商標が登録されているにもかかわらず当該商標の登録所有者または登録使用者がそれらの商品または役務に関して当商標の善意の使用を行っていないこと。

 

 登録商標に対する不使用取消訴訟を提起する場合、立証責任は申立人に課される。すなわち、登録の取消を求める者が、当該不使用に関する証拠を提出する責任を負う。その立証がなされた後、被申立人に商標の使用証拠を提出する責任が課される。実務上、申立人の提出する当該不使用に関する証拠としては、インターネットで登録商標について検索しても商品等がヒットしないことなど比較的簡単な書面などでも提訴は受理される。

 

4.商標の使用証拠

 商標の使用を証明する為の使用証拠は、商品および役務に関係するものでなければならない。以下のようなものに商標が表示されていることで、商標の使用を証明することができる。

 (a)ラベル、チケット、パンフレット、レターヘッドまたは印刷媒体もしくは容器、包装材。

 (b)その他の視覚的表示(商品にエンボス加工や刺繍で表現された表示等)。

 (c)電子画像の形態をとった表示(映画、テレビ画面、コンピュータ画面の画像等)。

 

 商品広告における商標の使用も、広告される商品に関係する当該商標の「使用」と見なされる。広告の中には、チラシ、プラカード、看板、新聞等に印刷された広告だけでなく、テレビおよび映画による広告が含まれる。同様に、パンフレット、カタログ、業務上の書簡、送り状等、上記以外の文書に商標が使用された場合も、商品に関係する商標の使用となる。役務に関する商標の使用については、役務の提供もしくは遂行に関する陳述もしくは当該陳述の一部としての商標の使用が含まれる。