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メキシコにおける特許の分割出願についての留意点

【詳細】

メキシコ産業財産法には、特許の分割出願に関して詳細な規定はない。実務上、出願の分割の根拠として言及されるのは、以下に示す第43条および第44条のみである。

・第43条 特許出願は、単一の発明に関するもの、または相互に関連して単一の発明概念を構成する複数の発明に関するものでなければならない。

・第44条 出願が第43条の要件を満たさない場合、産業財産庁は、出願人が2ヶ月以内に当該出願を複数の出願に分割し、分割された各出願の出願日および優先日として当初の出願日および優先日を維持できることを、出願人に書面により通知する。この2ヶ月の期間内に出願人が出願を分割しなかった場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。

 

1. 分割出願の提出期限

メキシコにおける分割出願は、下記の期間内に提出することができる。

・単一性欠如の拒絶理由が指摘された庁指令への応答時に提出できる。期限は、庁指令の受領から2か月以内であり、出願人からの申請により、さらに2か月の延長が可能である。

・メキシコ特許出願の手続中および特許の付与までいつでも、自発的な分割出願を提出できる。

自発的な分割出願の提出期限について、メキシコ産業財産法に明文規定はないものの、現行のメキシコ特許実務では、元のメキシコ特許出願の最終的な特許料納付まで、すなわち、特許認可通知の発行後、特許料納付の期間として与えられる2ヶ月の期間内に、分割出願を提出することができるとされている。

 

2. 単一性欠如の拒絶に対する応答時に提出される分割出願

出願が発明の単一性の要件を満たしていない場合、メキシコ産業財産法第44条の規定に基づき、審査官は、出願に含められている複数の発明を特定し、単一性欠如の拒絶理由に基づく庁指令を発行する。出願人は、審査官により特定された発明について、当該出願から、1つあるいは複数の分割出願を提出する判断が求められる。

メキシコ産業財産法第44条によれば、単一性欠如の拒絶を含む庁指令への応答の際に、または当該庁指令への応答期間内に、出願人は1つあるいは複数の分割出願を提出しなければならない。分割出願を提出しなければならない時期に関して、この第44条の規定には、複数の解釈が可能である。第44条を最も厳格に解釈した場合には、庁指令の応答時に、親出願で選択されない発明を、その数に応じてそれぞれ、1つあるいは複数の分割出願として提出しなければならない。

しかしながら、現在のメキシコ産業財産庁の運用は、上記よりは寛容な解釈に基づくものとなっている。例えば、3つ以上の発明が含まれているという単一性欠如の拒絶理由に基づく庁指令の場合には、庁指令への応答時に、選択されなかったその他複数の発明に関するクレームをすべて含めて一つの分割出願として提出することを認めている。その後、分割出願の審査において、複数の発明が含まれていると認められる場合は、単一性欠如の拒絶理由に基づく庁指令が新たに発行され、更なる分割出願の提出期限が設定される。この時点で、出願人が複数の発明の保護を望む場合には、庁指令への応答として再び発明のうちの1つを本分割出願の発明として選択し、選択しなかったその他発明に関して更なる分割出願を提出することができる。

 

3. 分割出願での審査対象クレームと重複特許の問題

メキシコにおいて、分割出願は、原出願にて開示された事項のみを含むものでなければならないが、さらに、分割出願でクレームされる発明は親出願でクレームされる発明とは異なるものでなければならない。すなわち、分割出願は、原出願に含まれていた1以上のクレームにより提出することも可能であるが、既に実体審査の対象とされたクレーム(親出願または先の分割出願のクレーム)と同一のクレームを含む分割出願を提出した場合には、出願人は、後の審査において、既に審査されたクレームとは異なる発明を記載するようにクレームの補正を要求されることとなる。最近の審査では、分割出願における発明が親出願または先の分割出願で既に審査されたものと同じ発明である場合には、新たな審査を行わない審査官もいる。しかし、出願人は、他の出願(親出願または先の分割出願)において未審査のクレーム(既に親出願または分割出願において削除されたクレームを含む)に記載された発明の権利化を分割出願で求めることができる。

したがって、メキシコにおいて特許の分割出願を提出する際、出願人は、親出願または先の分割出願において既に審査された発明を考慮して、分割出願として提出すべきクレームを検討することが望ましい。一方、出願人は、原出願時に提出したすべてのクレームを単一の分割出願として提出した後、手続中または庁指令への応答時に自発的にクレームを補正することも、手続き上は可能である。

 

4. 分割出願の提出要件

分割出願を提出するには、下記の書類が必要である。

・明細書、図面(必要な場合)、塩基配列またはアミノ酸配列に関する配列表(必要な場合)

・1つ以上のクレーム

・正式に署名された譲渡証および委任状(出願人が特許出願に関する権利を第三者に譲渡または移転した場合のみ)

 

5. 分割出願の審査および公開

分割出願は、通常提出日の古い順に審査されるが、親出願で行われた審査の影響を受け、分割出願が比較的早く審査されることがある。

なお、分割出願は、特許付与まで公開されることはない。そのため、メキシコの実務上、出願から分割出願が提出されているかどうかを、第三者が出願公開の情報から知ることはできない。

メキシコにおける指令書への応答期間と期間延長

【詳細】

 すべてのメキシコ特許出願は、方式審査と実体審査を受ける。

 最初に受ける方式審査は、出願書類の方式的な面、例えば、譲渡証、翻訳文、優先権証明書、委任状等の出願に必要な書類の有無、ならびに、余白、書体、文字の大きさおよび図面等の書面の書式・体裁に関わる。方式的な面での要件が満たされてない場合には、出願人に、方式審査指令書によりその不備が通知される。

 方式審査段階においては、メキシコ特許庁により指摘された方式に関する拒絶理由のすべてを解消するために、出願人には、最大で2回の指令書が送付される。ただし、2回目の指令書への応答においても、方式要件を満さないと判断された場合、その出願は、さらなる応答の機会を与えられることなく、放棄されたものとみなされる。

 方式審査指令書に対する応答書の提出には、出願人に、その指令書の送達の日(出願代理人がメキシコ特許庁から指令書を受領した日)から通常2ヶ月の応答期間が与えられる。さらに、その応答期間は、一回のみ2ヶ月の期間延長が可能である。その2ヶ月の延長期間は自動的に与えられ、延長取得について事前の申請は必要としないが、その延長に関する庁費用は、応答書を提出する際に納付する。

 すなわち、メキシコにおいては、方式審査指令書に対する応答書を提出することができる期間は最大で、指令書の送達の日から4ヶ月であり、これ以上は延長することができない。

 出願が方式的な要件をすべて満たした後、その出願は官報において公開される。公開から6ヶ月経過した後、出願は実体審査に入り、この段階において発行される指令書は、実体審査指令書である。

 実体審査においては、メキシコ特許庁により指摘される拒絶理由すべてを解消するために、出願人には、最大で4回の指令書が送付される。第4回の最後の指令書への応答においても、特許要件を満たさないと判断された場合には、拒絶査定が発行される。拒絶査定に対して不服の場合、更なる手続きは、裁判所に対して行うこととなる。

 方式審査指令書と同様、実体審査指令書に対する応答書を提出には、出願人に、その送達の日(出願代理人がメキシコ特許庁から指令書を受領した日)から通常2ヶ月の応答期間が与えられる。さらに、その応答書を提出するため、一回のみ2ヶ月の期間延長が可能である。その2ヶ月延長期間は、自動的に与えられ、延長取得について事前の申請は必要としないが、その延長に関する庁費用は、応答書を提出する際に納付する。

 方式審査指令書と同様、実体審査指令書に対する応答書を提出することができる期間は最大でその通知から4ヶ月であり、これ以上は延長することができない。応答最終期限日が、祝日あるいは休日であった場合には、応答期限日は、次の開庁日とみなされる。

 出願人からの応答書の提出に対して、メキシコ特許庁は、次の指令書(次の実体審査指令書、認可通知あるいは拒絶査定)を、その応答書の受領から4ヵ月以内に発行する。したがって、通常、出願人は、応答書を提出してから4ヵ月以内に次の指令書を受領するものと想定することができる。ただし、世界5極特許庁(日本、米国、欧州、中国、韓国)の審査手順に準じるメキシコ特許庁の審査基準に基づいて、審査官は対応の外国出願の審査経過を参照することができ、対応外国出願でのさらなる審査結果を待って、次の指令書を発行することもできる。したがって、上記の4ヵ月以内という期間は、対応外国出願の審査状況によって延びる場合もある。

 方式審査指令書および実体審査指令書と同様、認可通知を受領すると、認可費用の納付を行うため、出願人は、その通知の日(メキシコ特許庁が法定代理人に通知した日)から通常2ヶ月の納付期間が与えられる。さらに、認可費用の納付のため、一回のみ2ヶ月の期間延長が可能である。その2ヶ月の延長期間は自動的に与えられ、延長取得について事前の申請は必要としないが、その延長に関する庁費用は、認可費用を納付する際に同時に納付する。

 上述のとおり、現在の応答期間の規定によれば、出願人は延長費用を前もって負担する必要がなく、最終期限日までに指令書への対応の是非を決定することができる。

メキシコにおける特許制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-Ⅱ-B

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 Ⅱ メキシコ合衆国

  B 特許 P.103

   1 産業財産権制度の枠組 P.103

   2 出願・登録の手続 P.113

   3 審査業務 P.116

   4 統計情報 P.119

 参考資料 総括表

  B 特許 P.410