韓国における指定商品・役務に関わる留意事項
韓国では、「標章の登録のための商品およびサービスの国際分類に関するニース協定」(以下、ニース分類)が1999年1月8日に発効し、ニース分類に準拠した「商品および役務の記述と類区分に関する告示」(以下、「商品告示」という。)が韓国語で示されている。現在、当該告示はニース分類の第12版を準拠している。
商標権の権利範囲は、指定された商品や役務の内容によって決まるため、指定商品および指定役務を具体的かつ明確に記載しなければならない。韓国特許庁では、「商品告示」に記載されている商品・役務の名称を採用することを推奨している。また、1出願で多区分を指定した出願が可能である。
指定商品および指定役務が明確か否かは、「商品告示」に記載された名称を基準として、「商品告示」に記載された名称以外の商品および役務の場合には、複数の区分に該当しないように明確に記載されること、およびその商品・役務が具体的に記載されていることが要求される。同じニース分類を採用している日本と韓国でも、各商品・役務でカバーされる権利範囲が異なることがあるため、注意が必要である。例えば、日本では、「被服」には帽子が含まれるが、韓国では、「被服(피복)」という商品名称自体が「商品告示」に記載されていない。韓国では、「衣類(의류)」には帽子(모자)、靴(신발)が含まれないので、日本における「被服」と同じ権利範囲を希望する場合には、韓国では、「衣類、帽子、靴」を指定して出願する必要がある。日本語の商品名に対応する韓国語の商品名の具体例については、日中韓類似群コード対応表(ニース国際分類[第12-2023版]対応)を参照し、活用されたい。
1.指定商品および指定役務記載時の留意点
指定商品および指定役務の記載には、名称ごとにコンマ(,)で仕切る必要がある。また、「他区分に属しない…」、「その他…」、「各種…」のような表現は認められない。「商品告示」に記載されている名称以外には、「…部品」、「…付属品」のような記載は認められない。そのため、具体的な部品名および付属品名を記載しなければならない。指定商品および指定役務の名称に、他人の登録商標が用いられた場合は、商品や役務の範囲が不明瞭、もしくは指定商品および指定役務の記載が不明瞭とみなされる。例えば、「iPhone用コンピュータプログラム」との商品名の記載は不明確とされ、「携帯電話用コンピュータプログラム」と記載しなければならない。
2.ニース分類上の類見出し(クラスヘディング)および包括名称
出願時に指定した商品・役務が、ニース分類上の類見出し(クラスヘディング)またはニース分類上の具体的な商品リスト(アルファベット順リスト)に記載された商品・役務を韓国語表記に翻訳した名称であっても、「商品告示」の名称と同一でない場合および分類される区分が「商品告示」とは相違し他の区分に該当する場合は認容されない。また、狭義の包括的名称および広義の包括的名称は、商品告示に明記されている名称のみが認められる。
3.指定商品および指定役務の補正可能範囲
出願人は、願書に記載された指定商品および指定役務を自発的に補正することができるが、補正を通して、指定商品および指定役務を削除または不明瞭とされた記載を具体的記載に補正することは可能でも、出願時の権利範囲を超える指定商品および指定役務を追加することは認められない。商品・役務の補正に関する要旨変更の判断基準は、願書に記載された指定商品および指定役務を基準とする。ただし、2016年改正審査基準施行後の出願からは、出願時の権利範囲内で指定商品および指定役務を追加する補正が認められることになり、これにより包括的名称はそのまま残しつつ、細分化された名称を追加することが可能になった。例えば、「衣類」を、「衣類、下着、ズボン」へ補正することが可能となった。
4.指定商品および指定役務の外国語併記が可能
指定商品および指定役務は、韓国語表記が原則であり、韓国語表記された指定商品および指定役務の名称を明確にしたり、具体的に説明したりする必要がある場合には、括弧書きで漢字または英語を併記することができる。この場合、審査官は、韓国語で表記された商品の名称を基準として権利範囲を解釈する。
5.指定商品および指定役務の追加出願が可能
出願中の商標または登録商標に指定商品および指定役務を追加して登録を受ける、「指定商品および指定役務追加登録出願」が可能であり、追加される商品および役務の範囲には制限がない。これにより、出願時に指定商品および指定役務に抜けがあり、登録後に指定商品および指定役務の範囲を拡大する必要性が生じた場合でも、新規出願することなしに既存の商標登録に追加して登録を受けることができる。指定商品追加登録出願が登録された場合、新しい登録証は発行されず、原出願または原登録に併合される。指定商品追加登録の存続期間は、原登録の存続期間と同一であるため、効率的に商標権を管理できるという利点がある。
6.出願手数料および登録料(2023.8.1施行)
分類の1区分ごとに、出願料52,000ウォン、登録料201,000、更新登録料300,000ウォンが発生する。
7.指定商品および指定役務数が20個を超える場合、加算金が発生(2023.8.1施行)
出願、登録、更新時に分類の1区分内の指定商品および指定役務の記載数10個を超える場合、超過する記載数ごとに2,000ウォンの加算金が追加される。補正によって指定商品および指定役務の記載数が増加して10個を超える場合も同様である。ただし、マドリッド出願の場合、加算金はない。
8.使用意思確認制度
指定商品および指定役務の中に出願人に使用の意思がないと疑われるものが含まれている場合や、法令等によって客観的に使用することができないと合理的に疑われる場合、審査官は、拒絶理由通知にて確認することができる。出願人が使用することができないと合理的に疑われる例としては、以下が挙げられる。
(1) 個人が、大規模な資本および施設などを必要とする商品名や役務名を記載した場合(例:デパート業、大型ディスカウントストア、銀行業など)
(2) 関連性のない非類似の商品名や役務名を多数記載した場合(関連性のない類似商品群を3個以上指定した場合等)
(3) 個人が資格等の必要となる役務に関し、関連性のない役務名2個以上を指定した場合(例:病院業、法務サービス業、建築設計業)
韓国における商標制度のまとめ-実体編
1. 商標制度の特徴
韓国商標法は、何度も一部改正されながら2016年には全文改正された。これまで「商標」と「サービス標」を区分してきたが、サービス標も商標として統合された。
登録商標が継続して3年間使用されなかった場合は誰でも不使用取消審判を請求することができる。
指定商品において、国際分類(ニース分類)、一出願多区分制度を採用している。
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2. 登録できる商標
国内で商標を使用する者、または使用しようとする者は、自身の商品と他人の商品を識別するために使用する記号、文字、図面、音、匂い、立体的形状、ホログラム、動作または色彩を商標として登録出願することができる。
また、団体標章、地理的表示、地理的表示団体標章、証明標章、地理的表示証明標章、業務標章を登録出願することができる。
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3. 商標を登録するための要件
登録を受けるためには商標法第2条で規定する商標として、同法第34条で規定する商標登録を受けることができない商標に該当しないことと、同法第33条で規定する識別力を持つこと等の要件を満たす必要がある。牽連関係がない非類似商品群を3つ以上指定した場合、使用意思確認を要求している。
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4. 商標権の存続期間
商標権の存続期間は設定登録された日から10年とする(商標法第83条)。
存続期間更新登録申請書は商標権の存続期間満了前1年以内に提出しなければならない。
上記の存続期間は10年毎に更新することができる。ただし、この期間に存続期間更新登録申請をしなかった者は、商標権の存続期間が終わった後6か月以内に手続をすることができる(商標法第84条)。
関連記事:「韓国における商標権の存続期間の更新登録制度」(2018.11.1)
韓国における指定商品追加登録制度
韓国では、登録商標または出願中の商標の指定商品を追加しようとするときには、指定商品の追加登録制度(韓国語「지정상품의추가등록출원」)を利用することができ、また、新たな商標登録出願とすることもできる。
(1)指定商品追加登録出願をするには、原商標出願または登録が存在しなければならず、商標および商標権者または出願人が同一でなければならない。追加登録出願時に、願書に「指定商品追加登録出願」と記載(選択)して提出する。
原商標登録出願が拒絶決定、放棄、取下げ、または登録商標が放棄等で消滅した場合、指定商品追加登録出願を通常の商標登録出願に補正の形態で変更することができるが、原登録商標が無効審判または取消審判により消滅した場合には変更することができない(商標法第44条第2項)。なお、多類出願である場合はまとめて変更が可能であるが、別々にした同一商標、同一出願人の商標出願はそれぞれ変更しなければならない。
(2)追加する指定商品または役務(韓国語「서비스업(サービス業)」)は、原商標の区分に含まれか否かに関係なく、追加することができる。
(3)指定商品の追加登録出願の審査は、追加登録出願時が基準となり、通常の商標登録出願の審査手続と同様に、出願の補正、優先権主張、出願公告制度および異議申立制度等は適用される(商標法第87条、第88条第2項)。ただし、追加登録出願は出願の分割をすることはできない(商標法第45条、第88条第2項)。また、出願手数料や登録料も通常の商標出願と同じである。
(4)指定商品追加登録出願が登録された場合、新しい登録証は発行されず、原出願または原登録に合体される。指定商品追加登録の存続期間は、原登録の存続期間と同一である。したがって、原登録の更新登録時には、追加登録指定商品についても共に更新申請しなければならない。
【留意事項】
指定商品が追加登録された場合、原登録と合体されて一体となるのが原則であるが、例外として、指定商品追加登録は、無効審判によって単独で消滅され得る。この場合、原登録には何の影響も及ばない。
また、商標登録取消審判で原登録された指定商品全てが取消される場合、追加登録された指定商品も原登録に付随して取消されるか否かについては、商標法上明文の規定はない。しかし、原登録された指定商品部分が不使用取消審判により取消された場合でも、本件審判請求前に追加登録出願して本件審判請求の後に追加登録された指定商品部分まで共に取消されるものではないとした判決がある(特許法院判決2011年6月22日2011허1432)。
韓国におけるマドリッド協定議定書の基礎商標の同一性の認証と商品・役務に関する審査の在り方
「マドリッド協定議定書の利用促進の観点からの調査研究報告書」(平成28年3月、日本国際知的財産保護協会)4.3.15、6.3.2
(目次)
4 基礎商標の同一性の認証に関する文献調査結果
4.2 調査結果概要
4.2.3 各国別の調査結果一覧
表2 各国知的財産権庁からの調査票回答及び文献調査結果一覧表(4) P.39
4.3 各国の特徴
4.3.15 韓国 P.213
6 商品・役務の審査について
6.1 調査方法 P.533
6.2 調査結果概要 P.535
6.3 主な指定国における商品・役務の表示に関する審査の傾向
6.3.2 韓国 P.573