韓国におけるデザイン登録における機能性および視認性
1.機能性(Functionality)
韓国デザイン保護法(2016.1.27. 法律第13840号によって改正されたもの)第34条第4号において、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」はデザイン登録を受けることができないと規定されている。デザインは、物品形態の美感を保護するためのもので、美感と関係がない「機能的な形状」は、特許法および実用新案法の保護対象とすることが妥当であるからである。
韓国特許庁のデザイン審査基準第4部第9章1では、同法第34条第4号を適用するにあたり、(1)物品の技術的機能を確保するために必然的に定められた形状(必然的形状)からなったデザインは、模様・色彩またはこれらの結合の有無に関わらずこれを適用するべきであるが、(a)その機能を確保できる代替的な形状が存在するのか否か(すなわち、代替できる形状が多数存在すれば、機能性のみではないものと見ることができる)および(b)必然的な形状のほかに考慮すべき形状を含むのか否かを考慮して判断しなければならないと規定している。
また、(2)物品の互換性などを確保するために標準化された規格で定められた形状(準必然的形状)からなったデザインも、上記で言及された必然的形状に準じて取り扱うと規定しているが、ただし、規格を定めた主目的が機能の発揮にない物品((例)規格封筒、USB規格ポートなど)に対しては適用していない。ここで、「標準化された規格」とは、産業標準化法に基づく韓国産業標準(KS)、国際標準化機構のISO規格など法律と公的な標準化機関によって確定された「公的な標準規格」と、公的な規格ではないが、その規格が当該物品分野において業界標準として認知されており、当該標準規格に基づく製品がその物品の市場を事実上支配しているもので規格としての名称、番号などに応じて標準になっている形状、尺度などの詳細を特定することができる「事実上の標準規格」を言う。
したがって、本規定は、デザイン保護法の保護対象ではない技術的思想の創作に対する排他的独占権付与を防止し、物品の互換性を確保するためのデザインの実施を妨げて産業発展を阻害する恐れを防止しようとする規定であると言える。
いわゆる「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」が韓国特許庁に出願された場合、審査過程で韓国デザイン保護法第34条第4号に該当するという拒絶理由で意見提出通知書が発付される。
「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」であるか否かの判断は、出願されたデザインの全体形状がこれに該当する場合にのみ適用され、その判断時点は、登録可否の決定時を基準に判断する。
いわゆる「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」が、審査過程で看過されて過誤登録された場合、デザイン保護法第121条第1項2号により、利害関係人または審査官はそのデザイン登録に対してデザイン保護法第34条第4号に違反したことを理由とする無効審判を請求することができる。
一方、当該デザインが一部審査の対象であれば、デザイン保護法第68条第1項2号により、誰でもデザイン一部審査登録公告日後3か月になる日までそのデザイン一部審査登録がデザイン保護法第34条第4号に違反したことを理由に、特許庁長にデザイン一部審査登録異議申立てをすることができる。
一方、商標権の効力を制限する韓国商標法第90条第1項第5号とは異なり、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン権に対して、その効力を制限するデザイン保護法上の規定はない。したがって、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン権が有効に登録された以上、第三者の無断実施に対してデザイン権を行使することができる。
物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザインであるか否かに関する判断基準を扱った大法院の判例を紹介する。
(i).[登録デザインの概要]
この事件の登録デザインの物品は、該当車種のフレームの寸法、形状、反り、厚さ、高さ、広さ、端部の形状などがそのまま複製されなければ接続が不可能であるので、ガラスの高さ、反り、厚さ、端部の形状は、すべて車体への接続という本質的機能を確保するために必然的に定められた形状であり、変更が可能な部分は、上記物品においてデザインとしての意味がない部分に局限されるので、この事件の登録デザインは、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザインで無効となるべきであると判断した。
本判決は、「物品の機能を確保するために不可欠な形状」の範囲に対して、需要者がその物品を見るとき、特定形状を当然にある部分として認識し、その形状に対して特別な審美感を感じない程度まで含まれなければならないことを示している。本判決を通じて、大法院がデザインの機能性判断において「唯一機能基準(solely functional standard)」を適用していることを確認できる。
(ii).[登録デザインの概要]
登録権者が第三者に対して、イ号図面の貨物トラック用積載箱支持具は、デザイン登録第237866号の権利範囲に属するという積極的権利範囲確認審判を請求し、被請求人は、その形状と模様が、ダンプトラックの積載箱と間隔を置いて回転軸を支持するための物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなっているので、その権利範囲が認められないと主張したが、大法院は「デザインの構成のうち物品の機能に関する部分であっても、その機能を確保できる選択可能な代替的な形状が存在する場合には、物品の機能を確保するために不可欠な形状であると言えない」と判示し、権利範囲が否定されないことを確認し、被請求人側の上告を棄却した。
本判決は、物品の機能を確保するために不可欠な形状の判断基準を明示的に確認したという意義がある。
2.視認性(Visibility)
韓国デザイン保護法(2016.1.27.法律第13840号によって改正されたもの)第2条第1号において、「デザイン」とは、物品(物品の部分および字体を含む)の形状・模様・色彩またはこれらを結合したものとして、視覚を通じて美感を起こさせるものと規定して、デザインの視認性に言及している。
韓国特許庁のデザイン審査基準では、デザインの成立要件のうちデザインの視認性に関して「視覚を通じて」とは、肉眼で識別できることを原則とし、次に該当するものはデザイン登録の対象にならないと規定している(デザイン審査基準第4部第1章2(3))。
(1)視覚以外の感覚を主にして把握されること、
(2)粉状物または粒状物の一つの単位、
(3)外部から見ることができないところ(すなわち、分解したり破壊したりしなければ見ることができないところ)。ただし、蓋を開ける構造となっているものは、その内部もデザインの対象になる。
(4)拡大鏡などによって拡大しなければ物品の形状などが把握されないこと。
上記で例示された(4)に関連して、デザインに関する物品の取引において拡大鏡などによって物品の形状などを拡大して観察することが通常である場合には、視認性があるものと判断すると規定している。その例として下記のような場合を挙げている。
(例)視認性があるものと判断する場合
[デザインの説明]
材質は金属材および合成樹脂材である。
平面図で一辺の長さは0.4mmである。
[図1.1] | [図1.2] |
「発光ダイオード」
上記で言及したデザイン保護法第2条で定義したデザインの視認性要件を備えていないデザインが韓国特許庁に出願された場合、工業上利用することができるデザインではないとみなされ、デザイン保護法第33条第1項本文に違反するという拒絶理由で意見提出通知書が発付される。
デザインの視認性要件を備えていないデザインが、審査過程で看過されて過誤登録された場合、デザイン保護法第121条第1項2号により、利害関係人または審査官はそのデザイン登録に対してデザイン保護法第33条第1項本文に違反したことを理由とする無効審判を請求することができる。
一方、当該デザインが一部審査の対象であれば、デザイン保護法第68条第1項2号によって、誰でもデザイン一部審査登録公告日後3か月になる日までそのデザイン一部審査登録がデザイン保護法第33条第1項本文に違反したことを理由に、特許庁長にデザイン一部審査登録異議申立てをすることができる。
補足:
デザイン保護法第2条には、「デザイン」とは、「視覚を通じて美感を引き起こすものを言う。」と、デザインの定義が示されている。また、デザイン保護法第33条第1項本文には、「工業上利用することができるデザイン」が登録要件であることが示されている。デザイン保護法の第2条を満たしていない(視認性要件を備えていない)場合、「工業上認められるデザイン」として認められないため、デザイン保護法第33条本文の違反と判断され、拒絶理由通知書が出される。
また、デザイン保護法第2条1項第6号において、「デザイン一部審査登録」出願の定義(「デザイン一部審査登録」とは、デザイン登録出願がデザイン登録要件のうち一部のみを備えているのかを審査して登録することを言う。」)が示されており、視認性要件を満たしていないデザインはデザイン保護法第2条違反に該当し、また、上述のとおりデザイン保護法第33条第1項の違反と判断される。
デザインの視認性要件を扱った大法院の判例を紹介する。
(i)[登録デザインの概要]
当該物品「照明器具用枠」は、器具の中に満たされた空気が何らかの原因で少し抜け出た場合でも、器具の外皮の形状と模様を枠によってある程度維持するための物品として、原審決では「照明器具用枠」が外皮で覆われているので、外部から枠全体の姿を見ることはできないが、枠を組み立てた後外皮が覆われる前には枠全体の姿を見ることができ、器具を分解したり破壊しなくても、器具を修理するために外皮の一部をさらけ出したり、広告の内容を変更するために外皮を交換する場合には、その枠の形状を見ることができるので、視認性が認められると判断した。
しかし、大法院で、この事件の登録デザインの物品(照明器具用枠)は相当に大型であるので、組立・設置された状態で取引、運搬されるものではなく、部品別に分解された状態で取引、運搬されることが一般的であるので、取引時や運搬時または設置時にも登録された形状と模様が外部に現れると認められず、広告の内容などを変更するために外皮を交換する場合を想定してみても、外皮を除去すると、一時的にデザインの形状と模様が現れるだろうが、直ちにデザイン物品である枠自体を分解し、新しい外皮を設置した後、その新しい外皮の中に入って枠を再組立することになるはずであることから、この事件の登録デザイン物品である枠は、それ自体の完成された形状と模様が取引者や一般の需要者に露出して審美感をかもし出せる場合はほとんどないはずあり、さらに、完成品である器具の外皮を除去ないし損なわない限り、その模様と形状を外部から容易に把握・識別することができないので、デザイン登録の対象にならないと原判決を覆した。
一方、韓国で極微小な物品のデザインを正面から扱った判例はまだない。ただし、上述したように、韓国特許庁のデザイン審査基準では肉眼で識別できない極微小なデザインであっても、そのデザインに関する物品の取引において拡大鏡などによって物品の形状などを拡大して観察することが通常である場合には、視認性があると判断する。
また、韓国特許庁のデザイン審査基準でデザインの類否を判断するにあたり、類否は、全体的に観察して総合的に判断すると規定しながら、「観察」は、肉眼で比較して観察することを原則とするが、デザインに関する物品の取引において物品の形状などを拡大して観察することが通常である場合には、拡大鏡、顕微鏡などを使用して観察することができるとして、極微小なデザインの類否判断に対する基準を提示している。
韓国における意匠出願時の図面作成要領
図面の作成方法においては、意匠法施行規則別紙第4号書式および意匠審査基準に規定されており、下記のように作成する。
1.意匠出願書の作成において「意匠の図面」は【物品類】、【意匠の対象とる物品】、【意匠の説明】、【意匠の創作内容の要点】、図面(【図面1.1】、【図面1.2】、【図面1.3】、【図面1.4】、【図面1.5】、【図面1.6】、【図面1.7】…)の順で作成するようになっている。
2.上記出願書の【意匠の説明】欄に図面説明をしなくてはならない。
3.図面の記載順序は、創作内容を最もよく表現した図面を優先順位とし、「意匠の説明」欄に「【図面1.1】、【図面1.2】、【図面1.3】、【図面1.4】、【図面1.5】、【図面1.6】、【図面1.7】…」の順で図面説明をしなければならない。
記載例示):図面1.1は全体的な形態を表現した図面で、図面1.2は意匠の正面を表現した図面であり、図面1.3は意匠の背面を、図面1.4は意匠の左側面を、図面1.5は意匠の右側面を、図面1.6は意匠の平面を、図面1.7は意匠の底面を表現した図面である。
4.正投影図法で作成された図面は、図面の修正なしに上記例示に合わせればよい。
5.意匠の具体的な形態を表現するために付加図面が必要な場合には、展開図、断面図、切断部断面図、拡大図、部分拡大図または分解斜視図等を【付加図面1.1】、【付加図面1.2】、【付加図面1.3】…の順とし「意匠の説明」欄で説明する。
記載例示):付加図面1.1は展開図面で、付加図面1.2は切断部断面図であり、付加図面1.3は拡大図面である。
6.その他に意匠の用途等についての理解を助けるために、参考図面が必要な場合には、使用状態図、各部名称を示す図面等を【参考図面1.1】、【参考図面1.2】とし、「意匠の説明」欄で説明する。
記載例示):参考号面1.1 は使用状態図で、参考図面1.2は各部の名称を表現した図面である。
7.意匠の内容を充分に表現するために何組かの図面が必要な場合(動くもの、開くもの)には、「変化前状態の図面は図面A1.1から図面A1.7までであり、変化後の図面は図面B1.1から図面B1.7までである」のように「意匠の説明」欄で説明する。
8.次の場合には、該当図面を省略することができる。ただし、【意匠の説明】欄に省略理由を記載しなければならない。
(1)正面と背面が同じか対称の場合
(2)左側面部分と右側面部分が同じか対称の場合
(3)平面部分と底面部分が同じか対称の場合
(4)上記の他に図面中で同じ部分が複数の場合
(5)恒常設置または固定されていて特定部分を見ることができない場合
(6)画像デザインの場合
9.図面を3次元モデリング(Modeling)ファイル形式で提出する場合には、3DS(3D Studio)、DWG(Drawing)、DWF(Design Web Format)、IGES(Initial Graphic Exchange Specification)または3DM(3 Dimensional Modeling)ファイルを使用することができる。また複数で提出する場合には、すべてのデザインを3次元モデリングファイル形式で提出しなければならない。
10.図面内には、中心線、基線、水平線等を表示するための細線または内容の説明をするための支持線、符号または文字を記入することはできない。ただし、陰影を加える場合には模様と混同されない範囲で、細線、点または濃淡等を制限的に使用することができ、断面を表示する場合、切断された部分にハッチング(連続した斜線)を使用しなければならない。
韓国におけるデザイン登録における機能性および視認性
1. 機能性(Functionality)
韓国デザイン保護法(2016.1.27. 法律第13840号によって改正されたもの)第34条第4号において、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」はデザイン登録を受けることができないと規定されている。デザインは、物品形態の美感を保護するためのもので、美感と関係がない「機能的な形状」は、特許法および実用新案法の保護対象とすることが妥当であるからである。
韓国特許庁のデザイン審査基準では、同法第34条第4号を適用するにあたり、(1)物品の技術的機能を確保するために必然的に定められた形状(必然的形状)からなったデザインは、模様・色彩またはこれらの結合の有無に関わらずこれを適用するべきであるが、(a)その機能を確保できる代替的な形状が存在するのか否か(即ち、代替できる形状が多数存在すれば、機能性のみではないものと見ることができる)および(b)必然的な形状のほかに考慮すべき形状を含むのか否かを考慮して判断しなければならないと規定している。
また、(2)物品の互換性などを確保するために標準化された規格で定められた形状(準必然的形状)からなったデザインも、上記で言及された必然的形状に準じて取り扱うと規定しているが、但し、規格を定めた主目的が機能の発揮にない物品((例)規格封筒、USB規格ポートなど)に対しては適用していない。ここで、「標準化された規格」とは、産業標準化法に基づく韓国産業標準(KS)、国際標準化機構のISO規格など法律と公的な標準化機関によって確定された「公的な標準規格」と、公的な規格ではないが、その規格が当該物品分野において業界標準として認知されており、当該標準規格に基づく製品がその物品の市場を事実上支配しているもので規格としての名称、番号などに応じて標準になっている形状、尺度などの詳細を特定することができる「事実上の標準規格」を言う。
したがって、本規定は、デザイン保護法の保護対象ではない技術的思想の創作に対する排他的独占権付与を防止し、物品の互換性を確保するためのデザインの実施を妨げて産業発展を阻害する恐れを防止しようとする規定であると言える。
いわゆる「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」が韓国特許庁に出願された場合、審査過程で韓国デザイン保護法第34条第4号に該当するという拒絶理由で意見提出通知書が発付される。
「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」であるか否かの判断は、出願されたデザインの全体形状がこれに該当する場合にのみ適用され、その判断時点は、登録可否の決定時を基準に判断する。
いわゆる「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン」が、審査過程で看過されて過誤登録された場合、デザイン保護法第121条第1項2号により、利害関係人または審査官はそのデザイン登録に対してデザイン保護法第34条第4号に違反したことを理由とする無効審判を請求することができる。
一方、当該デザインが一部審査の対象であれば、デザイン保護法第68条第1項2号により、誰でもデザイン一部審査登録公告日後3ヶ月になる日までそのデザイン一部審査登録がデザイン保護法第34条第4号に違反したことを理由に、特許庁長にデザイン一部審査登録異議申立てをすることができる。
一方、商標権の効力を制限する韓国商標法第90条第1項第5号とは異なり、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン権に対して、その効力を制限するデザイン保護法上の規定はない。したがって、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザイン権が有効に登録された以上、第三者の無断実施に対してデザイン権を行使することができる。
物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザインであるか否かに関する判断基準を扱った大法院の判例を紹介する。
(i).[登録デザインの概要]
この事件の登録デザインの物品は、該当車種のフレームの寸法、形状、反り、厚さ、高さ、広さ、端部の形状などがそのまま複製されなければ接続が不可能であるので、ガラスの高さ、反り、厚さ、端部の形状は、すべて車体への接続という本質的機能を確保するために必然的に定められた形状であり、変更が可能な部分は、上記物品においてデザインとしての意味がない部分に局限されるので、この事件の登録デザインは、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなったデザインで無効となるべきであると判断した。
本判決は、「物品の機能を確保するために不可欠な形状」の範囲に対して、需要者がその物品を見るとき、特定形状を当然にある部分として認識し、その形状に対して特別な審美感を感じない程度まで含まれなければならないことを示している。本判決を通じて、大法院がデザインの機能性判断において「唯一機能基準(solely functional standard)」を適用していることを確認できる。
(ii).[登録デザインの概要]
登録権者が第三者に対して、イ号図面の貨物トラック用積載箱支持具は、デザイン登録第237866号の権利範囲に属するという積極的権利範囲確認審判を請求し、被請求人は、その形状と模様が、ダンプトラックの積載箱と間隔を置いて回転軸を支持するための物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなっているので、その権利範囲が認められないと主張したが、大法院は「デザインの構成のうち物品の機能に関する部分であっても、その機能を確保できる選択可能な代替的な形状が存在する場合には、物品の機能を確保するために不可欠な形状であると言えない」と判示し、権利範囲が否定されないことを確認し、被請求人側の上告を棄却した。
本判決は、物品の機能を確保するために不可欠な形状の判断基準を明示的に確認したという意義がある。
2. 視認性(Visibility)
韓国デザイン保護法(2016.1.27. 法律第13840号によって改正されたもの)第2条第1号において、「デザイン」とは、物品(物品の部分および字体を含む)の形状・模様・色彩またはこれらを結合したものとして、視覚を通じて美感を起こさせるものと規定して、デザインの視認性に言及している。
韓国特許庁のデザイン審査基準では、デザインの成立要件のうちデザインの視認性に関して「視覚を通じて」とは、肉眼で識別できることを原則とし、次に該当するものはデザイン登録の対象にならないと規定している。
(1)視覚以外の感覚を主にして把握されること、
(2)粉状物または粒状物の一つの単位、
(3)外部から見ることができないところ(即ち、分解したり破壊したりしなければ見ることができないところ)。但し、蓋を開ける構造となっているものは、その内部もデザインの対象になる。
(4)拡大鏡などによって拡大しなければ物品の形状などが把握されないこと。
上記で例示された(4)に関連して、デザインに関する物品の取引において拡大鏡などによって物品の形状などを拡大して観察することが通常である場合には、視認性があるものと判断すると規定している。その例として下記のような場合を挙げている。
(例)視認性があるものと判断する場合
[デザインの説明]
材質は金属材および合成樹脂材である。
平面図で一辺の長さは0.4mmである。
[図1.1] | [図1.2] |
「発光ダイオード」 |
上記で言及したデザイン保護法第2条で定義したデザインの視認性要件を備えていないデザインが韓国特許庁に出願された場合、工業上利用することができるデザインではないとみなされ、デザイン保護法第33条第1項本文に該当するという拒絶理由で意見提出通知書が発付される。
デザインの視認性要件を備えていないデザインが、審査過程で看過されて過誤登録された場合、デザイン保護法第121条第1項2号により、利害関係人または審査官はそのデザイン登録に対してデザイン保護法第33条第1項本文に違反したことを理由とする無効審判を請求することができる。
一方、当該デザインが一部審査の対象であれば、デザイン保護法第68条第1項2号によって、誰でもデザイン一部審査登録公告日後3ヶ月になる日までそのデザイン一部審査登録がデザイン保護法第33条第1項本文に違反したことを理由に、特許庁長にデザイン一部審査登録異議申立てをすることができる。
デザインの視認性要件を扱った大法院の判例を紹介する。
(i).[登録デザインの概要]
当該物品「照明器具用枠」は、器具の中に満たされた空気が何らかの原因で少し抜け出た場合でも、器具の外皮の形状と模様を枠によってある程度維持するための物品として、原審決では「照明器具用枠」が外皮で覆われているので、外部から枠全体の姿を見ることはできないが、枠を組み立てた後外皮が覆われる前には枠全体の姿を見ることができ、器具を分解したり破壊しなくても、器具を修理するために外皮の一部をさらけ出したり、広告の内容を変更するために外皮を交換する場合には、その枠の形状を見ることができるので、視認性が認められると判断した。
しかし、大法院で、この事件の登録デザインの物品(照明器具用枠)は相当に大型であるので、組立・設置された状態で取引、運搬されるものではなく、部品別に分解された状態で取引、運搬されることが一般的であるので、取引時や運搬時または設置時にも登録された形状と模様が外部に現れると認められず、広告の内容などを変更するために外皮を交換する場合を想定してみても、外皮を除去すると、一時的にデザインの形状と模様が現れるだろうが、直ちにデザイン物品である枠自体を分解し、新しい外皮を設置した後、その新しい外皮の中に入って枠を再組立することになるはずであることから、この事件の登録デザイン物品である枠は、それ自体の完成された形状と模様が取引者や一般の需要者に露出して審美感をかもし出せる場合はほとんどないはずあり、さらに、完成品である器具の外皮を除去ないし損なわない限り、その模様と形状を外部から容易に把握・識別することができないので、デザイン登録の対象にならないと原判決を覆した。
一方、韓国で極微小な物品のデザインを正面から扱った判例はまだない。但し、上述したように、韓国特許庁のデザイン審査基準で肉眼で識別できない極微小なデザインであっても、そのデザインに関する物品の取引において拡大鏡などによって物品の形状などを拡大して観察することが通常である場合には、視認性があると判断する。
また、韓国特許庁のデザイン審査基準でデザインの類否を判断するにあたり、類否は、全体的に観察して総合的に判断すると規定しながら、「観察」は、肉眼で比較して観察することを原則とするが、デザインに関する物品の取引において物品の形状などを拡大して観察することが通常である場合には、拡大鏡、顕微鏡などを使用して観察することができるとして、極微小なデザインの類否判断に対する基準を提示している。