韓国における関連意匠制度
1. 制度の趣旨
意匠は、模倣や変形により比較的簡単に他人の権利を侵害することができるため、意匠権の効力が登録意匠、またはこれに類似する意匠にまで及ぶように規定している(デザイン保護法第92条)。しかし、類似する意匠の範囲は抽象的かつ明確でないため、類似する意匠を別途関連意匠として登録し、模倣と侵害を未然に防止し、侵害に対して迅速な措置ができるように、関連意匠制度を設けている。一方、関連意匠制度は、意匠登録出願後に改良・変形した類似意匠が別途権利として登録を受けることができるようにすることにより、出願人の権利保護を強化する役割も果たしている(デザイン保護法第35条、韓国デザイン審査基準(以下「デザイン審査基準」という。)第2部第6章1.)。
2. 登録要件
(1) 関連意匠は、自己の登録意匠または出願意匠(基本意匠)とのみ類似した意匠でなければならない(デザイン保護法第35条第1項、デザイン審査基準第2部第6章2.1、3.1)。
(2) 関連意匠は、基本意匠の意匠登録出願日から3年以内に出願しなければならない。また、関連意匠の意匠権を設定登録する際に、基本意匠の意匠権が設定登録されていない場合、基本意匠の意匠権が取消、放棄または無効審決等で消滅した場合は、関連意匠の登録を受けることができない(デザイン保護法第35条第1項、デザイン審査基準第2部第6章3.2)。
従来、関連意匠の出願期間は、基本意匠の意匠登録出願日から1年以内であったが、2023年のデザイン保護法の改正(2023年6月20日改正、2023年12月21日施行、以下「改正デザイン保護法」という。)によって、3年以内に拡大された。ただし、経過措置によって、この改正は2023年12月21日以降に出願された基本意匠に対して適用されることに注意する必要がある。また、関連意匠の登録の際に基本意匠が存続していなければならないという要件も、改正デザイン保護法によって追加された。
(3) 登録を受けた関連意匠または出願された関連意匠とのみ類似する(基本意匠とは類似しない)意匠は、意匠登録を受けることができない(デザイン保護法第35条第2項、デザイン審査基準第2部第6章3.4)。
(4) 関連意匠登録出願を単独の意匠登録出願に、単独の意匠登録出願を関連意匠登録出願に変更する補正が可能である(デザイン保護法第48条第2項、デザイン審査基準第4部第1章3.2.1)。
(5) 基本意匠の意匠権に専用実施権が設定されている場合は、関連意匠登録を受けることができない(デザイン保護法第35条第3項、デザイン審査基準第2部第6章3.5)。
(6) 関連意匠登録出願は、その意匠が基本意匠とだけ類似する複数の自己の先行関連意匠に類似するとしても、新規性(デザイン保護法第33条第1項各号)、および先後願の規定(デザイン保護法第46条第1項、第2項)によって拒絶されることはない(デザイン保護法第35条第4項、デザイン審査基準第2部第6章4.1、4.2)。これらは、以前、運用によって対応されていたが、改正デザイン保護法によって法律として明文化された。
(7) 関連意匠登録を受けることができる物品の範囲は、基本意匠と同一であるか、類似の物品である。類似の物品とは、用途が同一で機能が異なる物品、または用途は異なっても混用可能性のある物品(デザイン審査基準第2部第6章4.3)。
3. 権利事項
(1) 関連意匠は、基本意匠と別の独自の権利範囲を有する(デザイン保護法第35条第1項、第92条)。すなわち、基本意匠に類似しない意匠であっても、関連意匠に類似する意匠は、関連意匠の権利範囲に含まれる。
(2) 関連意匠は、基本意匠が消滅しても消滅せず、独自の権利として存続する。ただし、関連意匠として登録された意匠権の存続期間満了日は、その基本意匠の意匠権の存続期間満了日となる(デザイン保護法第91条第1項)。
(3) 意匠権を移転する場合、基本意匠の意匠権と関連意匠の意匠権は、同じ者に共に移転しなければならない(デザイン保護法第96条第1項)。また、基本意匠の意匠権が取消、放棄または無効審決等で消滅した場合、その基本意匠に関する2以上の関連意匠の意匠権を移転しようとするならば、同じ者に共に移転しなければならない(デザイン保護法第96条第6項)。
(4) 基本意匠の意匠権に係る専用実施権と関連意匠の意匠権に係る専用実施権は、同じ者に同時に設定しなければならない(デザイン保護法第97条第1項)。また、基本意匠の意匠権が取消、放棄または無効審決等で消滅した場合、その基本意匠に関する 2 以上の関連意匠の専用実施権を設定するためには、同じ者に共に設定しなければならない(デザイン保護法第97条第6項)。
4. 留意事項
(1) 改正デザイン保護法によって、関連意匠は、基本意匠の意匠登録出願日から3年以内に出願することが可能となった。ただし、経過措置によって、この改正は2023年12月21日以降に出願された基本意匠に対して適用されることに注意する必要がある。
(2) 関連意匠の権利は、基本意匠の権利とは別の独自の権利として存続するが、その存続期間は基本意匠の存続期間と同一である点に注意する必要がある。
韓国における関連意匠制度
1.登録要件
(1) 関連意匠は、自己の登録意匠または出願意匠(基本意匠)とのみ類似した意匠でなければならない(デザイン保護法第35条第1項)。
(2) 登録を受けた関連意匠または出願された関連意匠とのみ類似する(基本意匠とは類似しない)意匠は、意匠登録を受けることができない(デザイン保護法第35条第2項、デザイン審査基準第2部第6章3.4)。
(3) 関連意匠は、基本意匠の意匠登録出願日から1年以内に出願されなければならない(デザイン保護法第35条第1項)。なお、2022年12月9日付の「デザイン保護法の一部改正法律案(議案番号:2118831)」(以下「改正法律案」という。)では、関連意匠の出願期間を基本意匠の意匠登録出願日から1年以内から3年以内に拡大することと、当該関連意匠を設定登録するときに、基本意匠が設定登録されていないか、基本意匠の意匠権が取消、放棄又は無効審決等により消滅した場合の制限に関する規定の導入が提案されている(改正法律案第35条)。
(4) 関連意匠登録出願を単独の意匠登録出願に、単独の意匠登録出願を関連意匠登録出願に変更する補正が可能である(デザイン保護法第48条第2項)。
(5) 関連意匠登録を受けることができる物品の範囲は、基本意匠と同一であるか、類似の物品である。類似の物品とは、用途が同一で機能が異なる物品、または用途は異なっても混用可能性のある物品(デザイン審査基準第2部第6章4.3)。
(6) 基本意匠の意匠権に専用実施権が設定されている場合は、関連意匠登録を受けることができない(デザイン保護法第35条第3項)。
(7) 2021年10月20日付で施行されたデザイン審査基準において、先行する関連意匠との先願判断に係る規定が新設された。すなわち、関連意匠登録出願は、その意匠が基本意匠に類似する自己の先行関連意匠に類似するとしても、先願の規定(デザイン保護法第46条第1項及び第2項)により拒絶されることはない(デザイン審査基準第2部第6章4.2)。
2.権利事項
(1) 関連意匠は、基本意匠と別の独自の権利範囲を有する。すなわち、基本意匠に類似しない意匠であっても、関連意匠に類似する意匠は、関連意匠の権利範囲に含まれる。
(2) 関連意匠は、基本意匠が消滅しても消滅せず、独自の権利として存続する。ただし、関連意匠として登録された意匠権の存続期間満了日は、その基本意匠の意匠権の存続期間満了日となる(デザイン保護法第91条第1項)。
(3) 意匠権を移転する場合、基本意匠の意匠権と関連意匠の意匠権は、同じ者に共に移転しなければならない(デザイン保護法第96条第1項)。また、基本意匠の意匠権が取消し、放棄または無効審決等で消滅した場合、その基本意匠に関する2以上の関連意匠の意匠権を移転しようとするならば、同じ者に共に移転しなければならない(デザイン保護法第96条第6項)。
(4) 基本意匠の意匠権に係る専用実施権と関連意匠の意匠権に係る専用実施権は、同じ者に同時に設定しなければならない(デザイン保護法第97条第1項)。
3.留意事項
(1) 関連意匠は、基本意匠の意匠登録出願日から1年以内に出願されなければならないため、その出願時期に注意する必要がある。なお、2022年12月9日の「改正法律案」では、3年以内への拡大が提案されている。
(2) 関連意匠の権利は、基本意匠の権利とは別の独自の権利として存続するが、その存続期間は基本意匠の存続期間と同一である点に注意する必要がある。
(3) デザイン保護法改正(2013年5月28日改正、2014年7月1日施行)によって、従前の類似意匠登録出願はできなくなっており、関連意匠登録出願として出願しなければならない。
韓国におけるデザイン保護法
「模倣対策マニュアル韓国編」(2019年3月、日本貿易振興機構(ジェトロ))「第II編 韓国の知的財産制度と関連法 第4章 デザイン保護法」
(目次)
第II編 韓国の知的財産制度と関連法
第4章 デザイン保護法 P.123
1.保護対象 P.123
2.登録要件 P.123
3.デザイン登録を受けるまでの手続の概要 P.125
4.権利の取得と維持 P.134
5.デザイン一部審査登録異議申立 P.135
6.デザイン審判手続 P.136
7.ハーグ協定による国際デザイン登録出願制度 P.138
韓国における関連意匠制度
- 登録要件
(1) 自己の登録意匠または出願意匠(基本意匠)とのみ類似した意匠でなければならない(意匠法第35条第1項前段)。
(2) 登録を受けた、または、出願された関連意匠とのみ類似の意匠は、意匠登録を受けることができない(意匠法第35条第2項)。
(3) 関連意匠は、基本意匠の意匠登録出願日から1年以内に出願されなければならない(意匠法第35条第1項)。
(4) 関連意匠登録出願を単独の意匠登録出願に、単独の意匠登録出願を関連意匠登録出願に変更する補正をすることができる(意匠法第48条第2項)。
(5) 関連意匠登録を受けることができる物品の範囲は、基本意匠と同一であるか、類似の物品である。この場合、類似物品とは、用途が同一で機能が異なる物品である(意匠審査基準第8章)。
(6) 基本意匠の意匠権に専用実施権が設定されている場合には、関連意匠登録を受けることができない(意匠法第35条第3項)。
- 権利事項
(1) 関連意匠は、基本意匠と別途の独自の権利範囲を有する。すなわち、基本意匠に類似しない意匠であっても、関連意匠に類似する意匠は、関連意匠の権利範囲に含まれる。
(2) 関連意匠は、基本意匠が消滅しても消滅せず独自の権利として存続する。ただし、関連意匠として登録された意匠権の存続期間満了日はその基本意匠の意匠権存続期間満了日となる(意匠法第91条第1項)。
(3) 基本意匠の意匠権と関連意匠の意匠権は、同じ者に共に移転しなければならない(意匠法第96条第1項)。
(4) 基本意匠の意匠権が取消し、放棄または無効審決等で消滅した場合、その基本意匠に関する2以上の関連意匠の意匠権を移転しようとするならば、同じ者に共に移転しなければならない(意匠法第96条第6項)。
(5) 基本意匠の意匠権と関連意匠の意匠権に係る専用実施権は、同じ者に同時に設定しなければならない。
【留意事項】
(1) 関連意匠は、基本意匠の意匠登録出願日から1年以内に出願されなければならないため、出願時期に注意する必要がある。
(2) 関連意匠は、基本意匠と別途に独自的に存続するが、その存続期間は基本意匠と同一であるため、この点に注意する必要がある。
(3) 意匠法改正(2013年5月28日改正、2014年7月1日施行)によって、従前の類似意匠登録出願はすることができず、関連意匠登録出願で出願しなければならない。