韓国における審判制度概要
1. 審判の流れ
2. 審判請求
2-1. 査定系の審判請求
査定系審判は、拒絶査定不服審判(特許法第132条の17、実用新案法第33条、デザイン保護法第120条、商標法第116条)、取消査定不服審判(デザイン保護法第120条)、訂正審判(特許法第136条、実用新案法第33条)等がある(審判便覧第1編第3章第1節)。
拒絶査定不服審判は、韓国特許庁の審査で拒絶査定を受けた場合、拒絶査定書謄本の送達日から3か月以内に特許審判院に請求することができる(特許法第132条の17、実用新案法第33条、デザイン保護法第120条、商標法第116条)。
取消査定不服審判は、意匠登録取消査定※を受けた場合、その査定謄本の送達を受けた日から3か月以内に請求することができる(デザイン保護法第120条)。
※ 意匠登録取消査定とは、意匠一部審査登録出願の異議申立(デザイン保護法第68条)においてなされる取消査定をいう。詳しくは下記の関連記事を参照されたい。
関連記事:韓国における意匠(韓国語「デザイン」)出願制度概要(2020年3月19日)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18372/
訂正審判は、特許権者または実用新案権者が、特許権または実用新案権が設定登録された後に、特許請求範囲を減縮する場合、間違って記載されたものを訂正する場合、または発明でないように記載されたものを明確にする場合、明細書または図面の訂正を請求することができる(特許法第136条、実用新案法第33条)。
なお、「3.方式審査」以降では、代表的な査定系審判である拒絶査定不服審判の手続について説明する。図1のフローチャートも同様とする。
2-2. 当事者系の審判請求
当事者系の審判は、無効審判(特許法第133条、実用新案法第31条、デザイン保護法第121条、商標法第117条)、権利範囲確認審判(特許法第135条、実用新案法第33条、デザイン保護法第122条、商標法第121条)、取消審判(商標法第119条)等がある(審判便覧第1編第3章第2節)。
審判を請求しようとする者は、審判請求書に請求の趣旨および理由を記載して特許審判院に提出しなければならない(特許法第140条、実用新案法第33条、意匠法第126条、商標法第125条)。
2-3. 特許・実用新案登録取消申請
何人も、特許権または実用新案権の設定登録日から登録公告日後の6か月になる日まで、その特許または実用新案登録が取消理由に該当する場合に、特許審判院に取消申請をすることができる(特許法第132条の2、実用新案法第30条の2)。
特許取消申請は、公衆に特許の見直しを求める機会を与え、瑕疵ある特許を早期に是正することにより権利の安定を図るための制度であり、日本の特許異議申立制度に近い。詳しくは下記の関連記事を参照されたい。
関連記事:韓国における特許取消申請について(2020年11月12日)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19558/
3. 方式審査
特許審判院の審判部は、審判請求時に記載要件および指定書類等の形式的な要件を審査し、瑕疵がある場合には、補正命令がなされる。瑕疵を指定期間(通常1か月。延長可能)内に補正しない場合には、決定により審判請求は却下される。ただし、補正する事項が軽微で明確な場合には、職権で補正される(特許法第141条、実用新案法第33条、デザイン保護法第128条、商標法第127条、審判便覧第3編第3章第2節)。
不適法な審判請求としてその欠陥を補正することができないときは、審判請求は審決により却下される(特許法第142条、実用新案法第33条、デザイン保護法第129条、商標法第128条、審判便覧第3編第3章第3節)。
4. 本案審理
方式審査で瑕疵がなければ本案審理段階に入り、3人または5人の審判官で構成される合議体により審理される(特許法第143条から146条、実用新案法第33条、デザイン保護法第130から133条、商標法第129条から第132条、審判便覧第4編第1章参照)。
4-1. 査定系の場合
審判部は、審判請求書の記載事項を把握し、拒絶査定不服審判では拒絶理由および不服理由を把握し、訂正審判では提出された訂正後の明細書または図面を一体不可分の一つの訂正事項として把握し、争点を整理する。査定系では、書面審理がなされるが、当事者が口頭審理を要請する場合は、書面審理のみで決定が可能な場合を除いて、口頭審理を行わなければならない(特許法第154条第1項、実用新案法第33条、デザイン保護法第142条第1項、商標法第141条第1項、審判便覧第16編第4章、第21編第7章第1節、第24編第7章第1節)。請求人が、審判官に拒絶査定の争点等の技術、意匠あるいは商標を説明したい場合は、説明会の開催を要請することができる(審判事件説明会等運営規定第5条第3項)。
4-2. 当事者系の場合
審判部は、審判が請求されると、審判請求書の副本を被請求人に送達する(特許法第147条、実用新案法第33条、デザイン保護法第134条、商標法第133条、審判便覧第2編第2章第9節)。審判部は、まず書面審理を行い、審判請求の理由および答弁や証拠資料を調べ、争点を整理する。審判請求の理由に対する答弁の指定期間は1か月である(審判事務取扱規定第22条第1項)。当事者系は原則的に、口頭審理を行わなければならない。ただし、(i) 審判請求書副本送達後の答弁書が未提出である事件、(ii) 口述審理期日前の審判請求が取下、却下等の事由で終結が予定された事件、(iii) 当事者が提出した審判書類のみで事実認定および判断が容易であると審判長が認めた事件は、書面審理により行うことができる(審判事務取扱規定第39条の2第1項)。
5. 審理終結通知
本案審理が終わり審決段階に入ると、審判の当事者へ、審理が成熟して審理が終結に近く、追加の審判書類の提出は定められた期限までのみ可能であるということを審理進行状況案内通知により案内する(審判便覧第11編第2章第1節)。同通知により審判請求理由に対する追加意見を提出する最後の機会が与えられるので、この機会を上手く活用することが望ましい。
その後、審理終結通知がなされる。審理終結通知書には、審決を行う日(審決予定日)を記載し、該当日に審決しなければならない。これは2023年に韓国特許庁の運用変更によって導入された「審決日予告制」であり、当事者に審決予定日を知らせることによって、審決日に対する不確実性を解消し、訴訟提起の要否など今後の紛争に備えた計画を可能にするなど、当事者の利便性向上を図るものである。
審決予定日が変更された場合、審決予定日変更案内通知書を発送しなければならず、審決予定日変更案内通知書の予定日は、審理終結通知書の発送日を基準として20日を超えてはならない(審判便覧第11編第2章第2節)。
6. 審決
審理終結通知をした日から20日以内に審決をすることが原則とされている(特許法第162条、実用新案法第33条、デザイン保護法第150条、商標法第149条)。
6-1. 査定系の場合
原決定を取り消して審査部に差し戻す(認容)もしくは原査定を維持する(棄却)のいずれかの内容の審決がなされる。なお、原決定を取り消す場合は、審判部で特許査定または登録査定をすることはなく、必ず審査部に差し戻される(審判便覧第12編第4章)。
6-2. 当事者系の場合
請求棄却あるいは請求認容により審決する(審判便覧第12編第5章参照)。
韓国における審判制度概要
1.審判の流れ
図1. 審判の流れ
2.審判請求
1-1.査定系の審判請求
特許庁の審査で拒絶査定を受けた場合、拒絶査定書謄本の送達日から3か月以内に特許審判院に拒絶査定不服審判を請求することができる(特許法第132条の17/実用新案法第33条/商標法第116条/意匠法第120条)(審判便覧第1編第3章第1節参照)。
1-2.当事者系の審判請求
当事者系の審判請求は無効審判、権利範囲確認審判、取消審判、訂正審判等がある(特許法第7章/実用新案法第7章/商標法第7章/意匠法第7章)(審判便覧第1編第3章第2節参照)。
3.方式審査
審判請求時に記載要件および指定書類等の形式的な要件を審査し、瑕疵がある場合には、補正命令が発付される。瑕疵を指定期間(一般的に1か月。延長可能)以内に補正しない場合には、決定により審判請求は却下される(決定却下)(特許法第141条/実用新案法第33条/商標法第127条/意匠法第128条)(審判便覧第3編第3章第2節参照)。
補正不能の審判請求は審決により却下される(審決却下)(特許法第142条/実用新案法第33条/商標法第128条/意匠法第129条)(審判便覧第3編第3章第3節参照)。
4.本案審理
方式審査で瑕疵がなければ本案審理段階に入り、3人または5人の審判官で構成される合議体により審理される(特許法第143条~146条/実用新案法第33条/商標法第129条~第132条/意匠法第130条~133条)(審判便覧第4編第1章参照)。
4-1.査定系の場合
審判部は審判請求書の記載事項を把握し、拒絶理由および不服理由を把握し、争点を整理する。査定系では書面審理がなされるが、必要に応じて、技術説明会を開催することもある。審判請求人が技術説明会を要請することも可能である(特許法第154条第1項/実用新案法第33条/商標法第141条第1項/意匠法第142条第1項)(審判便覧第16編第4章、第21編第7章第1節、第24編第7章第1節等参照)。
4-2.当事者系の場合
審判請求書の副本を被請求人に送達する(特許法第147条/実用新案法第33条/商標法第133条/意匠法第134条)(審判便覧第2編第2章第9節参照)。審判部はまず書面審理をし、審判請求の理由および答弁や証拠資料を調べ、争点を整理する。審判請求の理由に対する答弁の指定期間は1か月となっている(審判事務取扱規定第21条第1項)。当事者系は一般的に書面審理後、口述審理を行う。書面審理のみで決定が可能な場合を除いて、当事者が口述審理を要請する場合は、口述審理を行わなければならない(特許法第154条/実用新案法第33条/商標法第141条/意匠法第142条)(審判便覧第10編参照)。
5.審理終結通知
本案審理が終わり審決段階に入ると、審理終結予定通知がなされ、最終的に審判請求理由に対する追加意見を提出する機会が与えられるので、この機会を上手く活用することが望ましい。そして、その後に審理終結通知がなされる(審判便覧第11編第3章参照)。
6.審決
審理終結通知をした日から20日以内に審決をすることが原則とされている。(特許法第162条/実用新案法第33条/商標法第149条/意匠法第150条)ただし、この規定は訓示的規定に過ぎず、20日の期間が経過しても違法ではない(審判便覧第11編第3章第2節参照)。
6-1.査定系の場合
原決定を取り消して審査部に差し戻す(認容)もしくは原査定を維持する(棄却)か、または補正不能の審判請求は却下する。なお、審判部で特許査定することなく原決定を取り消す場合は、必ず審査部に差し戻される(審判便覧第12編第4章参照)。
6-2.当事者系の場合
棄却、却下、認容等により審決する(審判便覧第12編第5章参照)。
韓国における審判制度概要
(1)審判請求
(a)査定系の審判請求
特許庁の審査で拒絶査定されれば、拒絶査定書謄本の送達日から30日以内(2ヶ月の期間延長が可能)に特許審判院に拒絶査定不服審判を請求することができる(特許法第132条の3/実用新案法第33条/商標法第116条/意匠法第120条)。
(b)当事者系の審判請求
当事者系の審判請求は無効審判、権利範囲確認審判、取消審判、訂正審判等がある(特許法第7章/実用新案法第7章/商標法第7章/意匠法第7章)。
(2)方式審査
審判請求時に記載要件および指定書類等の形式的な要件を審査し、瑕疵がある場合には、補正命令が発付される。瑕疵を指定期間(一般的に1ヶ月。延長可能)以内に補正しない場合には、決定により審判請求は却下される(決定却下)(特許法第141条/実用新案法第33条/商標法第127条/意匠法第128条)。
補正不能の審判請求は審決により却下される(審決却下)(特許法第142条/実用新案法第33条/商標法第128条/意匠法第129条)。
(3)本案審理
方式審査で瑕疵がなければ本案審理段階に入り、3人または5人の審判官で構成される合議体により審理される(特許法第143条~146条/実用新案法第33条/商標法第129条~第132条/意匠法第130条~133条)。
(a)査定系の場合
審判部は審判請求書の記載事項を把握し、拒絶理由および不服理由を把握し、争点を整理する。査定系では書面審理がなされるが、必要に応じて、技術説明会を開催することもある。審判請求人が技術説明会を要請することも可能である
(b)当事者系の場合
審判請求書の副本を被請求人に送達する(特許法第147条/実用新案法第33条/商標法第133条/意匠法第134条)。審判部はまず書面審理をし、審判請求の理由および答弁や証拠資料を調べ、争点を整理する。審判請求の理由に対する答弁の指定期間は1ヶ月となっている。当事者系は一般的に書面審理後、口述審理を行う。書面審理のみで決定が可能な場合を除いて、当事者が口述審理を要請する場合は、口述審理を行わなければならない(特許法第154条/実用新案法第33条/商標法第141条/意匠法第142条)。
(4)審理終結通知
本案審理が終わり審決段階に入ると、審理終結予定通知がなされ、最終的に審判請求理由に対する追加意見を提出する機会が与えられるので、この機会を上手く活用することが望ましい。なお、拒絶理由通知に基づく明細書の補正・意見提出の機会はない。そして、その後に審理終結通知がなされる。
(5)審決
審理終結通知をした日から20日以内に審決をすることに規定されているが、それ以上の日数がかかる場合もある(特許法第162条/実用新案法第33条/商標法第149条/意匠法第150条)。
(a)査定系の場合
原決定を取り消して審査部に差し戻す(認容)もしくは原査定を維持する(棄却)か、または補正不能の審判請求は却下する。なお、審判部で特許査定することはなく原決定を取り消す場合は、必ず審査部に差し戻される。
(b)当事者系の場合
棄却、却下、認容等により審決する。
【留意事項】