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韓国における特許出願手続の期日管理

1.特許出願
 パリ条約による優先権を主張する場合は、最初の出願日から1年以内に出願しなければならない(特許法第54条第2項)。もっとも、1年が経過した場合でも、どの国においても公開されていなければ、優先権主張なしで韓国国内出願することもできる。
 PCT出願の国内移行手続の場合は、PCT出願の優先権主張日(優先権主張がない場合はPCT出願日)から31か月以内に翻訳文を提出しなければならない(特許法第201条)。ただし、出願人からの請求があれば、外国語国際特許出願(PCT)の韓国語翻訳文の提出期間を1か月延長可能である。しかし、期間経過以前に書面で延長の請求をしなければならない(特許法第201条)。

2.委任状
 委任状は包括委任状を提出することが多いが、一般委任状の場合は、特許出願ごとに提出しなければならない(特許法施行規則第2条)。委任状を出願と同時に提出しない場合には、通常1か月以内に委任状を提出することを要求する補正指示書が出され(特許審査基準第1部第4章3(1))、この期間は、海外からの出願の場合、1か月ずつ2回延長が可能である(特許法第15条)。包括委任状の場合、最新の様式なのか確認した上で、下段に包括委任状の重要事項の説明を受けたとの確認を含めて二度印を押さなければならない。

3.新規性喪失の例外
 出願前に販売または展示場に出品した場合等には、優先権主張と関係なく公知となった日から1年以内(不変期間)に韓国に出願すれば新規性喪失の例外規定を受けることができる(特許法第30条)。しかし韓国にこの規定に基づく出願をする場合でも、先出願の地位を確保するために可能な限り韓国に早く出願するのが望ましい。

4.審査請求
 韓国では、特許出願(または実用新案登録出願)に対して審査請求をしなければ、審査は着手されない。審査請求は、2017年3月1日以降出願の場合、韓国特許出願日(またはPCT出願日)から3年以内にしなければならない。実用新案登録出願の場合も、韓国の実用新案登録出願日(またはPCT出願日)から3年以内であることに注意しなければならない(特許法第59条、実用新案法第12条)。これらの期間は延長できない。

5.審査時の拒絶理由通知書
 審査時に拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)(特許法第63条)を受けた場合、意見書および補正書の提出期限として、通常発送日から2か月にあたる期日が明記・指定されている(特許・実用新案審査事務取扱規程第23条第1項)。この期日は1か月ずつ4回延長が可能である(同第23条第3項~5項)。なお、2回目の延長時からは延長回数に伴って指定期間延長申請料(韓国語「지정기간연장신청료」)が高くなる(1回:2万ウォン、2回:3万ウォン、3回:6万ウォン、4回:12万ウォン)(特許料等の徴収規則第2条第3項11)。また、2か月(1~2回)以上を一度に延長申請することもできる(特許・実用新案審査事務取扱規程第23条第2項)。すなわち、一度の申請で4か月(1~4回)の延長を行うこと、または、2か月の延長を2度(1~2回、3~4回)行うことも可能である。

6.拒絶査定
 審査で拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」)を受けた場合は、拒絶査定謄本の送逹日から3か月(第15条第1項により第132条の17による期間が延長された場合その延長された期間)以内に再審査請求または拒絶査定不服審判を請求することができる(特許法第67条の2、第132条の17)。この期間は、海外からの出願の場合は30日を2回まで延長することができる(審判便覧第13編第2章第3節 審判手続に関する法定期間)。なお、延長のための特許庁手数料は、再審査請求、拒絶査定不服審判のいずれも1回目が2万ウォン、2回目が3万ウォン(2回分を一時に延長する場合は5万ウォン)となっている(特許料等の徴収規定第2条第3項第11号)。
 拒絶査定不服審判を請求する際、審判請求書には請求の理由を記載しなければならないが、具体的な請求の理由は後で提出することが可能である。具体的な請求の理由を記載しないで審判請求書を提出する場合は、補正命令を受けるので、該当補正命令書に記載されている期限までに請求の理由を提出すればよい。この期限は延長が可能である(延長回数や期間についての定めはない)。また、請求の理由を提出した後は、審理終結前までは自発的に何度でも請求の理由を補充することが可能である(審判便覧 第3編第4章 4. 請求理由の補充がある場合の取扱い)。

7.特許査定
 審査で特許査定(韓国語「등록결정(登録決定)」)を受けたら、特許査定謄本の送達日から3か月以内に3年分の登録料を納付しなければならない。この期間が経過すると6か月の追納期間はあるが、追加費用が付加される(追納期間月ごとに追加費用は異なる。特許料等の徴収規則第8条第5項、第6項)。納付期限内または追納期間内に登録料を納付しなかった場合は、放棄したものとみなされる(特許法第79条、第81条)。

8.特許査定後の分割出願
 特許査定後、3か月以内に分割出願ができる。ただし、登録料を納付した後は分割出願ができない(特許法第52条第1項3号)。

【留意事項】
(1) 期間を延長する際、特に送達日から計算が必要な場合等、十分注意を払う必要がある。期間計算は、2か月延長するのか、または1か月の期間延長を2回分まとめてするのか等、様々な事情により少しずつ異なり得るため、考えられ得る候補日の中で一番直近の期日を念頭に置いて手続を行うのが安全である。なお、韓国では、期間計算方法は特許法第14条で定められており、原則として初日不算入である。

(2) 期間延長申請手続は期限前に行っても期限の翌日から計算される。例えば、期日が25日である場合、5日前の20日に1か月の期間延長申請をしたとしても、次の期日は翌月の(20日ではなく)25日となる。

韓国における特許出願の拒絶査定不服審判請求時の留意点

 審査段階で拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」通知書をオンライン(または書留郵便)で受領した後3か月以内に、再審査請求または拒絶査定不服審判をするか否かを決定しなければならない(特許法第67条の2、第132条の17、実用新案法15条、33条)。
 拒絶査定通知書を受けたら、拒絶理由を踏まえ請求の範囲等の補正で拒絶理由を解消できるようなら、補正書提出と共に再審査請求をするのが望ましい。その理由は、再審査請求時の補正が、補正することができる最後の機会になるからである。しかし、補正を希望しない場合には、再審査を経ずに拒絶査定不服審判を請求することもできる。
 再審査後に再び拒絶査定を受けた場合は、拒絶査定を受けた日から3か月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。ただし、審判請求時、さらなる請求の範囲等の補正は不可能である(特許法第47条)。
 また、再審査後に再び拒絶査定を受けた場合は、拒絶査定を受けた日から3か月以内に分割出願を行うことが可能である(特許法第52条)。請求の範囲等の補正が必要な場合には、分割出願と同時にまたは分割出願を行った後に当該分割出願に対して補正を行うことが望ましい(関連記事参照)。拒絶査定不服審判請求時、原出願にはさらなる補正の機会は与えられない(特許法第47条)ため、分割出願のみの権利化を目指し、原出願の拒絶査定不服審判は請求しないことが望ましい。

関連記事:「韓国における特許分割出願制度の活用と留意点」(2022.12.08)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27306/

 拒絶査定不服審判を請求した後、審判官に拒絶査定の争点等の技術内容を説明したい場合は、技術説明会の開催を要請することができる(審判事件説明会等運営規定第5条第3項)。

【留意事項】
(1)拒絶査定を受けた後、補正をしたい場合は、拒絶査定不服審判を請求せずに、再審査請求を行うべきである。審判請求時には補正することができる機会がない点に十分留意しなければならない。
(2)やむを得ず再審査請求をせずに、つまり補正なしで拒絶査定不服審判を請求しなければならない場合も、追って審決で拒絶査定が維持される恐れがあるので、審判請求時に分割出願をしておくことが望ましい。
 この時、分割出願の請求の範囲と拒絶査定不服審判請求時の請求の範囲が同一であれば審判が確定するまでは分割出願の審査は保留される。

韓国における特許分割出願制度の活用と留意点

 以下、特許出願の分割出願について詳しく紹介するが、実用新案についても同様である(実用新案法第11条、第15条などにより準用されている)。また、韓国において日本の「査定」に対応するものは「결정」(決定)であり、韓国特許法の和訳においても「決定」と表記されていることから、以下、「査定」ではなく「決定」と表記する。

 特許法第52条に分割出願について定めがある。特許法改正(2015.01.28公布、2015.07.29施行)により、2015年7月29日以降に特許決定された出願は、特許決定以降でも、特許決定の謄本の送達日から3か月以内(ただし、設定の登録料を納付する前)においても分割出願が可能である(特許法第52条1項3号)。

1.分割出願ができる期間
(1) 特許決定謄本の送達日前まで明細書等を補正できる期間内に分割出願をすることができる。ただし、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受けた場合は意見書提出期間まで、また、再審査を請求する場合は請求時に分割出願することができる(特許法第52条1項1号)。

(2) 特許拒絶決定謄本を受けた場合は、拒絶決定不服審判を請求することができる期間まで、すなわち特許拒絶決定謄本の送達日から3か月以内に分割出願をすることができる(特許法第52条第1項2号)。

(3) 特許決定または特許拒絶決定取消審決の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間に分割出願をすることができる。ただし、設定の登録料を納付する前でなければならない(特許法第52条第1項3号)。

2.分割出願に求められる要件
 分割出願は、親出願の出願当初の明細書および図面に記載された事項の範囲内で分割出願をすることができる。補正によって親出願から削除した内容であったとしてもその内容を分割出願することができる(特許法第52条第1項、特許・実用新案審査基準 第6部第1章3.3)。

3.優先権主張を含む親出願からの分割出願
 分割出願の基礎となる特許出願が適法に優先権主張された特許出願の場合には、その分割出願についても優先権主張および証明書類を提出したものとみなされる(特許法第52条第4項)。

4.分割出願の効果
 分割出願は親出願を出願する時に出願したものとみなされる(特許法第52条第2項)。

5.分離出願
 2022年4月20日から導入された分離出願制度は、既存の分割出願制度とは異なる新しい制度である。分離出願制度により、拒絶決定不服審判で請求棄却された場合に、拒絶決定されていない請求項のみを分離して出願できる。分離出願は審決の謄本の送達を受けた日から30日(審判長が付加期間を定めた場合にはその期間をいう。)以内に行うことができる。また、分離出願は新たな分離出願、分割出願または実用新案法第10条による変更出願の基礎となれない。(特許法第52条の2)

6.留意事項
(1) 審査過程で一発明一出願の要件に違反するという内容の拒絶理由を受けた場合、可能な限り分割出願をすることが望ましい。

(2) 拒絶理由通知書で特許可能な請求項と拒絶対象の請求項が明白に区分して示された場合、拒絶対象の請求項は削除または分割出願し、親出願は特許可能な請求項のみになるように補正して、先に特許を受けることが望ましい。

(3) 拒絶決定を受けた場合、再審査を請求する時に分割出願をすることができるが、この時に拒絶決定の理由となった請求項のさらなる権利化および特許可能な請求項の早期権利化を図る場合は、再審査時に特許可能な請求項のみになるように補正するとともに、必要であれば拒絶決定の理由となった請求項の分割出願を行うことが望ましい。

(4) 再審査で再び拒絶決定された場合には、拒絶決定不服審判を請求する前に、分割出願の必要性を必ず検討することが望ましい。その理由は、拒絶決定不服審判請求時には、明細書や図面に対する補正はできないからである。すなわち、再審査後の再拒絶決定に対して拒絶決定不服審判を請求する際には、特許可能な請求項のみに限定する補正もできないため、拒絶理由が含まれている請求項がある場合、拒絶決定不服審判でも原出願の拒絶理由を解消することができない。したがって、補正した請求の範囲での権利化のためには、拒絶決定不服審判を請求せずに、さらなる補正の機会のある分割出願を検討することが考えられる。

(5) しかし、上記の拒絶決定不服審判と分割出願を同時に行うことはできる。この際に、分割出願の請求の範囲を再拒絶決定された当時の請求の範囲と同一にするのが望ましい。特許請求範囲が両者同一であれば、拒絶決定不服審判が審決されるまで分割出願は審査されない。

(6) 特許決定後3か月以内に分割出願は可能であるが、特許登録料を納付する前に分割出願をしなければならない。

韓国における特許・実用新案の審査請求の留意点

1.審査請求の期間
 特許および実用新案は、出願日(国際特許出願の場合は国際出願日)から3年以内に審査請求をすることができる(特許法第59条第2項、第210条/実用新案法第12条第2項、第38条)。

 分割出願、分離出願および変更出願については、出願時に既に原出願日が起算日の審査請求期間を経過している場合であっても、分割、分離および変更出願日から30日以内に審査請求をすることができる(特許法第59条第3項/実用新案法第12条第3項)。

 なお、審査請求は取下げることができない(特許法第59条第4項/実用新案法第12条第4項)。また、期限までに審査請求しない場合、その出願は取下げられたものとみなされる。(特許法第59条第5項/実用新案法第12条第5項)

2.審査請求ができる者
 審査請求は、誰でもすることができる(特許法第59条第2項/実用新案法第12条第2項)。つまり、出願人以外の第三者も審査請求をすることができる。ただし、未成年者など行為無能力者が審査を請求する場合は、法定代理人によって手続をしなければならない(特許・実用新案審査基準 第5部第1章5.1(2))。

3.審査着手の順位および審査期間
 審査は審査請求順に行われることが原則となっている。ただし、分割、分離、変更出願の場合は、原出願の審査請求順位に従って審査される(特許法施行規則第38条、特許・実用新案審査事務取扱規定第20条、第21条)。一般審査の場合、審査請求から審査着手まで通常1年程度かかる(JETRO 知的財産ニュース 「韓国特許庁の優先審査制度、「21年度積極行政法制優秀事例」に選定」https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2021/211228a.html)。
 優先審査または審査猶予申請をした場合は例外となる(特許・実用新案審査事務取扱規定第59条、第66条、第21条の2)。優先審査の申請が可能な出願は国内出願人のみ対象となるものもあるが、「特許出願人が特許出願された発明を実施している場合や実施準備中である特許出願(特許法施行令第9条第1項第8号)」に対する優先審査の申請については外国人による出願にも活用することができる(特許・実用新案審査基準 第7部第4章3.1.1(3))。
 また、日韓特許審査ハイウェイ(PPH)を利用する場合は優先審査に該当し(特許法施行令第9条第1項第10号)、2~3か月程度でFA(First Action)を受領することができ、平均6か月程度で最終的な審査結果が出される(PPHポータル「統計情報」https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/statistics.html)。
 さらに、2021年6月から「医療・防疫物品と直接関連する特許出願」、「認証を受けた災難安全製品と直接関連した特許出願」および「災難による緊急した状況に対応する場合の対象となる特許出願」が優先審査の対象に規定された(特許法施行令第9条第2項)。
 なお、優先審査申立の取下げは、優先審査決定の通知があった場合には認められない(特許実用新案審査基準第7部第4章3.2.3)。

4.留意事項
(1) 韓国は審査が他国に比べて早く行われ、また厳しいという評価がある。審査請求を早く行い、他国よりも先に審査されて拒絶査定を受けると、他国出願に影響を及ぼすこともあり得る。
 そのため、近年、日本からの出願では、日韓特許審査ハイウェイをよく利用する傾向が見られる。日本でまず登録を受け、これを根拠に請求範囲を合わせて日韓特許審査ハイウェイを利用して韓国に出願すれば、優先審査とともに特許を受けることが有利になる。この日韓特許審査ハイウェイを利用するためには、日本でまず特許査定が下りるように審査請求時期を調整し、審査時期を合わせる必要がある。韓国で審査が着手されたとしても、上記日韓特許審査ハイウェイによる優先審査を請求することはできる。

(2) 審査請求料は請求項に基づいて計算されるため、審査請求前に不必要な請求項は削除するのが良い。

(3) 特許出願の審査が着手され、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受け、分割出願する場合、原出願日(または国際出願日)から3年(旧法は5年)が経過していないかを必ず確認する必要がある。経過している場合は、分割出願日から30日以内に審査請求をしなければいけないので、分割出願と同時に審査請求を行うのが安全である。

(4) 2021年11月に施行された特許法改正により、拒絶理由通知または特許決定の謄本送達前までに特許出願を取下げまたは放棄する場合、審査請求料を全額返還され、また、拒絶理由通知書(意見提出通知書)を受領後の意見提出期間内(延長した期間も含む)にも、その特許出願を取下げまたは放棄すれば審査請求料の3分の1を返還されるようになった(特許法第84条第1項第5号および第5号の2、特許実用新案審査基準第1部第7章4.(1))。

日本と韓国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
 日本特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。
(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)
(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。
(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

・日本特許法第44条(特許出願の分割)

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。
4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

2.韓国における特許出願の分割出願の時期的要件
 韓国特許法第52条は、2つ以上の発明を1つの特許出願とした場合には下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、その特許出願の出願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲で、その一部を1つ以上の特許出願に分割することができることを規定している。
(1) 特許法第47条第1項により補正をすることができる期間(第52条第1項第1号)。
 具体的には、出願から特許決定(特許査定)の謄本の送達日の前までは分割出願をすることができる。ただし、拒絶理由通知を受けた後は、拒絶理由通知による意見書提出期間または再審査を請求するときにのみ分割出願をすることができる。
(2) 特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間。
(3) 特許決定の謄本もしくは特許拒絶決定取消審決の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間であって設定登録を受けようとする日までの期間。

・韓国特許法 第52条(分割出願)

①特許出願人は、2つ以上の発明を1つの特許出願とした場合には、その特許出願の出願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲で次の各号のいずれかに該当する期間にその一部を1つ以上の特許出願に分割することができる。ただし、その特許出願が外国語特許出願である場合には、その特許出願に対する第42条の3第2項による韓国語翻訳文が提出された場合にのみ分割することができる。
 1. 第47条第1項により補正をすることができる期間
 2. 特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から3ヶ月(第15条第1項により第132条の17による期間が延長された場合、その延長された期間をいう)以内の期間
 3. 第66条の規定による特許決定又は第176条第1項の規定による特許拒絶決定取消審決(特許登録を決定した審決に限定されるが、再審の審決を含む)の謄本の送達を受けた日から3ヶ月以内の期間。但し、第79条の規定による設定登録を受けようとする日が3ヶ月より短い場合には、その日までの期間
②第1項によって分割された特許出願(以下”分割出願”という)がある場合、その分割出願は特許出願した時に出願したものとみなす。ただし、その分割出願に対して次の各号の規定を適用する場合には、該当分割出願をした時に出願したものとみなす。
 1. 分割出願が第29条第3項による他の特許出願又は「実用新案法」第4条第4項による特許出願に該当してこの法第29条第3項又は「実用新案法」第4条第4項を適用する場合
 2. 第30条第2項を適用する場合
 3. 第54条第3項を適用する場合
 4. 第55条第2項を適用する場合
③第1項によって分割出願をしようとする者は、分割出願をするときに特許出願書にその趣旨及び分割の基礎となった特許出願の表示をしなければならない。
④分割の基礎となった特許出願が、第54条または第55条により優先権を主張した特許出願の場合には、第1項により分割出願をしたときに、その分割出願についても優先権主張をしたものとみなし、分割の基礎となった特許出願について、第54条第4項により提出された書類または書面がある場合には、分割出願についても該当書類または書面が提出されたものとみなす。
⑤第4項により優先権を主張したものとみなす分割出願に関しては、第54条第7項または第55条第7項による期限が過ぎた後にも、分割出願をした日から30日以内に、その優先権主張の全部または一部を取り下げることができる。
⑥分割出願の場合に第54条による優先権を主張する者は、同条第4項による書類を同条第5項による期間が過ぎた後にも分割出願をした日から3か月以内に特許庁長に提出することができる。
⑦分割出願が外国語特許出願の場合には、特許出願人は第42条の3第2項による韓国語翻訳文又は同条第3項本文による新しい韓国語翻訳文を同条第2項による期限が過ぎた後にも分割出願をした日から30日となる日までは提出することができる。ただし、第42条の3第3項各号のいずれかに該当する場合には、新しい韓国語翻訳文を提出することができない。
⑧特許出願書に最初に添付した明細書に請求範囲を記載しなかった分割出願に関しては、第42条の2第2項による期限が過ぎた後にも分割出願をした日から30日になる日までは明細書に請求範囲を記載する補正をすることができる。

3.韓国における特許出願の分離出願
 韓国では、2021年10月19日の特許法改正により、新たに分離出願制度が新設された。分離出願制度は、特許拒絶決定不服審判請求で棄却された場合、棄却から30日以内に審判請求の対象となる特許拒絶決定で拒絶されていない請求項のみを新しい特許出願として分離できる制度である。

・韓国特許法第52条の2(分離出願)

①特許拒絶決定を受けた者は、第132条の17による審判請求が棄却された場合、その審決の謄本の送達を受けた日から30日(第186条第5項により審判長が付加期間を定めた場合には、その期間をいう。)以内に、その特許出願の出願書に最初に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲で、その特許出願の一部を新たな特許出願に分離することができる。この場合、新たな特許出願の請求範囲には次の各号のいずれかに該当する請求項のみを書くことができる。
 1. その審判請求の対象となる特許拒絶決定で拒絶されない請求項
 2. 拒絶された請求項で、その特許拒絶決定の基礎となった選択的記載事項を削除した請求項
 3. 第1号または第2号による請求項を第47条第3項各号(同項第4号は除く。)のいずれかに該当するよう記した請求項
 4. 第1号から第3号までのうち、いずれかの請求項で、その特許出願の出願書に最初に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲を超えた部分を削除した請求項
②第1項により、分離された特許出願(以下“分離出願”という。)に関しては、第52条第2項から第5項までの規定を準用する。この場合、“分割”は“分離”に、“分割出願”は“分離出願”とみなす。
③分離出願をする場合には、第42条の2第1項後段または第42条の3第1項にかかわらず、特許出願書に最初に添付した明細書に請求範囲を記さなかったり、明細書および図面(図面のうち説明部分に限る。)を国語ではない言語で書くことができない。
④分離出願は新たな分離出願、分割出願または「実用新案法」第10条による変更出願の基礎となれない。

関連記事:
「韓国における特許審判制度の大変化」(2022.01.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/21339/

日本と韓国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 韓国
分割出願の時期的要件 1. 補正ができる時または期間
(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を受けた後を除く)
(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内
(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内
(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

2. 特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)
(i)前置審査における特許査定
(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

3. 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内
1. 特許法第47条第1項により補正をすることができる期間。
※出願から特許決定の謄本の送達日の前まで(拒絶理由通知を受けた後は、拒絶理由通知による意見書提出期間または再審査を請求するときのみ)




2. 拒絶決定謄本の送達を受けた日から3か月以内





3. 特許査定謄本の送達日から3か月以内の期間であって設定登録を受けようとする日まで

日本と韓国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件>

 

 日本特許法第44条は、特許出願の分割に関する規定であり、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)

 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法第44条(特許出願の分割)

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。

3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。

4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

 

<韓国における特許出願の分割出願の時期的要件>

 

 韓国特許法第52条は、特許出願の分割に関する規定であり、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

(1)特許法第47条第1項により補正をすることができる期間、具体的には、特許決定の謄本の送達日の前まで。ただし、拒絶理由通知書を最初に受けた場合は意見書提出期間まで。また、再審査を請求する場合は請求するときに分割出願をすることができる。

(2)特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日以内の期間。

(3)特許決定の謄本または特許拒絶決定取消審決の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間、または設定登録を受けようとする日の早い方の日までの期間も、分割出願が可能になる。

条文等根拠:韓国特許法第52条

 

韓国特許法 第52条(分割出願)

①特許出願人は、2つ以上の発明を1つの特許出願とした場合には、その特許出願の出願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲で次の各号のいずれかに該当する期間にその一部を1つ以上の特許出願に分割することができる。ただし、その特許出願が外国語特許出願である場合には、その特許出願に対する第42条の3第2項による韓国語翻訳文が提出された場合にのみ分割することができる。

 1.第47条第1項により補正をすることができる期間

 2.特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日(第15条第1項により第132条の17による期間が延長された場合、その延長された期間をいう)以内の期間

 3.第66条の規定による特許決定又は第176条第1項の規定による特許拒絶決定取消審決(特許登録を決定した審決に限定されるが、再審の審決を含む)の謄本の送達を受けた日から3ヶ月以内の期間。但し、第79条の規定による設定登録を受けようとする日が3ヶ月より短い場合には、その日までの期間

②第1項によって分割された特許出願(以下”分割出願”という)がある場合、その分割出願は特許出願した時に出願したものとみなす。ただし、その分割出願に対して次の各号の規定を適用する場合には、該当分割出願をした時に出願したものとみなす。

 1.分割出願が第29条第3項による他の特許出願又は「実用新案法」第4条第4項による特許出願に該当してこの法第29条第3項又は「実用新案法」第4条第4項を適用する場合

 2.第30条第2項を適用する場合

 3.第54条第3項を適用する場合

 4.第55条第2項を適用する場合

③第1項によって分割出願をしようとする者は、分割出願をするときに特許出願書にその趣旨及び分割の基礎となった特許出願の表示をしなければならない。

④分割出願の場合に第54条による優先権を主張する者は、同条第4項による書類を同条第5項による期間が過ぎた後にも分割出願をした日から3ヶ月以内に特許庁長に提出することができる。

⑤分割出願が外国語特許出願の場合には、特許出願人は第42条の3第2項による韓国語翻訳文又は同条第3項本文による新しい韓国語翻訳文を同条第2項による期限が過ぎた後にも分割出願をした日から30日となる日までは提出することができる。ただし、第42条の3第3項各号のいずれかに該当する場合には、新しい韓国語翻訳文を提出することができない。

⑥特許出願書に最初に添付した明細書に請求範囲を記載しなかった分割出願に関しては、第42条の2第2項による期限が過ぎた後にも分割出願をした日から30日になる日までは明細書に請求範囲を記載する補正をすることができる。

 

 

日本と韓国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

韓国

分割出願の時期的要件

1.補正ができる時または期間

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)

(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

 

2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)

(i)前置審査における特許査定

(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

 

3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内

1.特許法第47条第1項により補正をすることができる期間(特許査定謄本の送達日の前まで。ただし、拒絶理由通知書が発行された場合には意見書提出期間内。また、再審査を請求する場合はその請求のとき)

 

2.拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日以内

 

3.特許査定謄本の送達日から3か月以内。ただし、設定登録料納付の前まで

 

 

韓国における特許・実用新案の審査請求の留意点

(1)審査請求の期間

特許出願日(国際特許出願の場合は国際出願日)が2017年3月1日前の特許出願は特許出願日(国際特許出願日の場合は国際出願日)から5年以内に審査請求をしなければならないが、特許出願日(国際特許出願日の場合は国際出願日)が2017年3月1日からの特許出願は特許出願日(国際特許出願日の場合は国際出願日)から3年以内に審査請求をしなければならない。

実用新案の審査請求期間は、法改正は行われておらず、2017年3月1以降の出願についても従前どおり出願日から3年以内に審査請求をしなければならない。

 

分割出願および変更出願は、原出願日が起算日となるが、分割出願等の出願時に既に審査請求期間が経過している場合は、分割および変更出願日から30日以内に審査請求をしなければならない。

期限までに審査請求しない場合、その出願は取り下げたものとみなされる。(特許法第59条・第199条/実用新案法第12条・第34条)

 

(2)審査請求ができる者
審査請求は、誰でもすることができる。つまり、出願人以外に第三者も審査請求をすることができるが、ごく稀である。

 

(3)審査着手の順位および審査期間

審査は審査請求順にすることが原則となっている。ただし、優先審査または審査猶予申請をした場合は例外となる。なお、優先審査の申請が可能な出願は国内出願人のみ対象となるものもあるが、「特許出願人が特許出願された発明を実施している場合や実施準備中である特許出願(特許法施行規則第9条第1項第8号)」に対する優先審査の申請については外国人も活用することができる。

 

一般審査の場合、審査請求から審査着手まで通常1年半程度かかる。

 

日韓特許審査ハイウェイを利用する場合は優先審査に該当し、特に問題がなければ、2~3ヶ月程度で最終的な審査結果がでる。

 

【留意事項】

(1)韓国は審査が他国に比べて早く行われ、また厳しいという評価がある。審査請求を早く行い、他国よりも先に審査されて拒絶査定を受けると、他国出願に影響を及ぼすこともあり得る。
そのため、近年、日本からの出願では、日韓特許審査ハイウェイをよく利用する傾向が見られる。日本でまず登録を受け、これを根拠に請求範囲を合わせて日韓特許審査ハイウェイを利用して韓国に出願すれば、優先審査とともに特許を受けることが有利になる。この日韓特許審査ハイウェイを利用するためには、日本でまず特許査定が下りるように審査請求時期を調整し、審査時期を合わせる必要がある。韓国で審査が着手されたとしても、上記日韓特許審査ハイウェイによる優先審査を請求することはできる。

 

(2)審査請求料は請求項に基づいて計算されるため、審査請求前に不必要な請求項は削除するのが良い。

 

(3)特許出願の審査が着手され、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受け、分割出願する場合、原出願日(または国際出願日)から3年(旧法は5年)が経過していないかを必ず確認する必要がある。経過している場合は、分割出願日から30日以内に審査請求をしなければいけないので、分割出願と同時に審査請求を行うのが安全である。

韓国における特許出願手続きの期日管理

(1) 特許出願

 

パリ条約による優先権を主張する場合は、最初の出願日から1年以内に出願しなければならない(特許法第54条第2項)。もっとも、1年が経過した場合でも、どの国においても公開されていなければ、優先権主張なしで韓国国内出願する場合もある。PCT出願の国内移行手続の場合は、PCT出願の優先権主張日(優先権主張がない場合はPCT出願日)から31ヶ月以内に翻訳文を提出しなければならない(特許法第201条)。ただし、出願人の申し込みがあれば、外国語国際特許出願(PCT)の韓国語翻訳文の提出期間を1ヶ月延長可能である。しかし、期間経過以前に書面で延長の申し込みをしなければならない。(特許法第201条)

 

(2) 委任状

 

委任状は包括委任状を提出することが多いが、一般委任状の場合は特許出願時ごとに提出しなければならない。委任状を出願と同時に提出しない場合には、通常30日以内に委任状を提出することを要求する補正指示書が出され、この期間は1ヶ月ずつ2回延長が可能である。包括委任状の場合、最新の様式なのか確認した上で、下段に包括委任状の重要事項の説明を受けたとの確認を含めて二度印を押さなければならない。

 

(3) 新規性喪失の例外

 

出願前に販売または展示場に出品した場合等には、優先権主張と関係なく公知となった日から1年以内(不変期間)に韓国に出願すれば新規性喪失の例外規定を受けることができる(以前は公知日から6ヶ月だったが2012年3月15日改正特許法が施行され、1年に改正された。特許法第30条)。しかし韓国にこの規定に基づく出願をする場合でも、先出願の地位を確保するために可能な限り韓国に早く出願するのが望ましい。

 

(4) 審査請求

 

韓国では、特許出願(または実用新案出願)に対して審査請求をしなければ、審査は着手されない。審査請求は、2017.3.1.以降出願の場合、韓国特許出願日(またはPCT出願日)から3年以内にしなければならない。実用新案登録出願の場合も、韓国の実用新案登録出願日(またはPCT出願日)から3年以内であることに注意しなければならない(特許法第59条、実用新案法第12条)。これらの期間は不変期間である。

 

(5) 審査時の拒絶理由通知書

 

審査時に拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受けた場合、意見書および補正書の提出期限として、通常発送日から2ヶ月にあたる期日が明記・指定されている。この期日は1ヶ月ずつ4回延長が可能である(特許・実用新案審査事務取扱規程第23条第3項~第5号)。なお、2回目の延長時からは延長回数に伴って指定期間延長申請料(韓国語「지정기간연장신청료」)が高くなる(1回:2万ウォン、2回:3万ウォン、3回:6万ウォン、4回:12万ウォン)。また、2ヶ月(1~2回)以上を一度に延長申請することもできる(特許法第63条、特許料等の徴収規則第2条③第11項)。すなわち、一度の申請で4ヶ月(1~4回)の延長をしたり、2ヶ月の延長を2度(1~2回、3~4回)行うことも可能である。

 

(6) 拒絶査定

 

審査で拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」)を受けた場合は、拒絶査定謄本の送逹日から30日以内に再審査請求または拒絶査定不服審判を請求することができる。(特許法第67条の2、第132条の3)この期間は1回に限り2ヶ月まで延長することができる。なお、延長期間にかかわらず延長のための特許庁手数料は、延長期間にかかわらず同一金額(2万ウォン)となっている(特許法第67条の2、第132条の3)。

 

拒絶査定不服審判を請求する際、審判請求書には請求の理由を記載しなければならないが、具体的な請求の理由は後に提出が可能である。具体的な請求の理由を記載しないで審判請求書を提出した場合は、補正命令を受けるので、該当補正命令書に記載されている期限までに請求の理由を提出すればよい。この期限は延長が可能である(延長回数や期間についての定めはない)。また、請求の理由を提出した後は、審理終結前までは自発的に何度でも請求の理由を補充することは可能である(審判便覧第3編第4章 4. 請求理由の補充がある場合の取扱い)。

 

(7) 特許査定

 

審査で特許査定(韓国語「등록결정(登録決定)」)を受けたら、特許査定謄本の送達日から3ヶ月以内に3年分の登録料を納付しなければならない。この期間が経過すると6ヶ月の追納期間はあるが、追加費用が付加される(追納期間月ごとに追加費用は異なる。特許料等の徴収規則第8条第5項第6号)。納付期限内または追納期間内に登録料を納付しなかった場合は、放棄したものとみなされる。

 

(8)特許査定後の分割出願

 

特許査定後、3ヶ月以内に分割出願ができる。ただし、登録料を納付した後は分割出願ができない。(特許法第52条第1項3号)

 

【留意事項】

(1)期間を延長する際、特に送達日から計算が必要な場合等、十分注意を払う必要がある。期間計算が若干難しい時もあり、この時には考えられ得る候補日の中で一番直近の期日を念頭に置いて手続きを行うのが安全である。なお、韓国では、期間計算方法は特許法第14条で定められており、原則として初日不算入である。

 

(2)期間延長申請手続は期限前に行っても期限の翌日から計算される。例えば、期日が25日である場合、5日前の20日に1ヶ月の期間延長申請をしたとしても、次の期日は翌月の(20日ではなく)25日となる。

韓国における特許出願の拒絶査定不服審判請求時の留意点

審査段階で拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」通知書をオンライン(または書留郵便)で受領した後30日以内(1回限り2ヶ月間の延長可能)に、再審査請求または拒絶査定不服審判をするか否かを決定しなければならない(特許法67条の2/特許法132条の3/特許法140条の2/実用新案法15条、33条)。30日という期間は十分ではないことが多いため、期間延長を行うのが一般的である。

 

拒絶査定通知書を受けたら拒絶理由を踏まえ、請求の範囲等の補正で拒絶理由を解消できるようなら、補正書提出と共に再審査請求をするのが望ましい。その理由は、再審査請求時の補正が、補正することができる最後の機会になるからである。しかし補正を希望しない場合には、再審査を経ずに拒絶査定不服審判を請求することもできる。

 

再審査後に再び拒絶査定を受けた場合は、拒絶査定を受けた日から30日以内(1回限り2ヶ月間の延長可能)に拒絶査定不服審判を請求することができる。ただし、審判請求時、さらなる請求の範囲等の補正は不可能である。

 

再拒絶査定に対する審判請求期間中に分割出願を行うことが可能である。請求の範囲等の補正が必要な場合には、分割出願と同時にまたは分割出願を行った後に当該分割出願に対して補正を行うことが望ましい(本データベース内コンテンツ「韓国における特許分割出願制度の活用と留意点」参照)。拒絶査定不服審判請求時、原出願にはさらなる補正の機会は与えられないため、分割出願のみの権利化を目指し、原出願の拒絶査定不服審判は請求しないことが望ましい。

拒絶査定不服審判を請求した後、審判官に拒絶査定の争点等の技術内容を説明したい場合は技術説明会の開催を要請することができる(本データベース内コンテンツ「韓国における審判官との面談及び説明会の要領」参照)。

 

【留意事項】

(1)拒絶査定を受けた後、補正をしたい場合は、拒絶査定不服審判を請求せずに、再審査請求を行うべきである。審判請求時には補正することができる機会がない点に十分留意しなければならない。

(2)やむを得ず再審査請求をせずに、つまり補正なしで拒絶決定不服審判を請求しなければならない場合も、追って審決で拒絶査定が維持される恐れがあるので、審判請求時分割出願をしておくことが望ましい。
この時、分割出願の請求の範囲と拒絶査定不服審判請求時の請求の範囲が同一であれば審判が確定するまでは分割出願の審査は保留される。

韓国における特許分割出願制度の活用と留意点

分割出願については特許法第52条、実用新案法第11条に定めがある。特許法改正(2015.01.28公布、2015.07.29施行)により、2015年7月29日以降に特許査定された出願は、特許査定以降でも、特許査定の謄本の送達日から3か月以内(ただし、設定の登録料を納付する前)においても分割出願が可能になった(特許法第52条1項3号新設)。

 

1.分割出願ができる期間

 

(1)特許査定謄本の送達日前まで明細書等を補正できる期間内に分割出願をすることができる。ただし、拒絶理由通知書(韓国語「의견제출통지서(意見提出通知書)」)を受けた場合は意見書提出期間まで、また、再審査を請求する場合は請求時に分割出願することができる(特許法第52条1項1号)。

(2)拒絶査定謄本を受けた場合は、拒絶査定不服審判を請求することができる期間まで、すなわち拒絶査定謄本の送達日から30日以内に分割出願をすることができる(特許法第52条1項2号)。

 

(3)特許査定の謄本の送達を受けた日から3ヶ月以内の期間に分割出願をすることができる。ただし、設定の登録料を納付する前でなければならない(特許法第52条1項3号)

 

2.分割出願に求められる要件

 

分割出願は、親出願の出願当初の明細書および図面に記載された事項の範囲内で分割出願をすることができる。補正によって親出願から削除した内容であったとしてもその内容を分割出願することができる。

 

3.優先権主張を含む親出願からの分割出願

 

優先権主張を含む親出願から分割出願する場合には、分割出願時にその旨を出願書に記載し、優先権証明書類を、通常の優先権主張の場合の優先権証明書の提出期間ではなく、分割出願日から3ヶ月以内に提出することができる(特許法第52条4項)。

 

4.分割出願の効果

 

分割出願は親出願を出願する時に出願したものとみなされる(特許法第52条2項)。

 

【留意事項】

(1)審査過程で1発明1出願の要件に違反するという内容の拒絶理由通知書を受けた場合、可能な限り分割出願をするのが望ましい。

 

(2)拒絶理由通知書で特許可能な請求項と拒絶対象の請求項が明白に区分して示された場合、拒絶対象の請求項は削除または分割出願し、親出願は特許可能な請求項のみになるように補正して、先に特許を受けることが望ましい。

 

(3)拒絶査定を受けた場合、再審査を請求する時に分割出願をすることができるが、この時に拒絶査定の理由となった請求項のさらなる権利化および特許可能な請求項の早期権利化を図る場合は、再審査時に特許可能な請求項のみになるように補正するとともに、必要であれば拒絶査定の理由となった請求項の分割出願を行うことが望ましい。

 

(4)再審査で再び拒絶査定がされた場合には、拒絶査定不服審判を請求する前に、分割出願の必要性を必ず検討することが望ましい。その理由は、拒絶査定不服審判請求時には、明細書や図面に対する補正書は提出できないからである。すなわち、再審査後の再拒絶査定に対して拒絶査定不服審判を請求する際には、特許可能な請求項のみに限定する補正もできないため、拒絶理由が含まれている請求項がある場合、拒絶査定不服審判でも原出願の拒絶査理由を解消することができない。したがって、補正した請求の範囲での権利化のためには、拒絶査定不服審判を請求せずに、さらなる補正の機会のある分割出願を検討することが考えられる。

 

(5)しかし、上記の拒絶査定不服審判と分割出願を同時に行うことはできる。この際に、分割出願の請求の範囲を再拒絶査定された当時の請求の範囲と同一にするのが望ましい。特許請求範囲が両者同一であれば、拒絶査定不服審判が審決されるまで分割出願は審査されない。

 

(6)特許査定後3ヶ月以内に分割出願は可能であるが、特許登録料を納付する前に分割出願をしなくてはならない。