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韓国におけるロイヤルティ送金に関する法制度と実務運用の概要

1. ロイヤルティ送金に関する法制度
(1) ロイヤルティ送金に関する法規定は、外国為替取引法と外国為替取引規程等の適用を受ける。

(2) ロイヤルティに関する課税は、法人税法、所得税法、地方税法、および付加価値税法等で定めている。

(3) 日本と韓国の間には、「大韓民国と日本国間の所得に対する租税の二重課税の回避と脱税防止のための協約」(以下「韓日租税協約」という。)※1により、制限税率が適用される。

※1 韓国での名称。日本においては「韓国との租税(所得)条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約)」という。

2. ロイヤルティ送金に伴う課税
(1) ライセンサーが個人であれば所得税法が適用され、法人であれば法人税法が適用される。外国法人の使用料所得に対する基本税率は20%である(法人税法第93条第8号、第98条第1項第6号)。

(2) しかし、日韓の間には、韓日租税協約が優先し韓日租税協約第12条第1項によると、一方の締約国で発生し、他方の締約国の居住者に支給される使用料に対しては、同他方の締約国で課税することができる。
 しかし、そのような使用料は、使用料が発生する締約国でも同締約国の法により課税され得る。ただし、使用料の収益的所有者が、他方の締約国の居住者である場合、そのような付加される租税は、使用料総額の10%を超過することはできないと規定している(韓日租税協約第12条第2項)。

(3) 上記において「使用料」(ロイヤルティ)とは、ソフトウェア、映画フィルムおよびラジオとテレビ放送用フィルムやテープを含む文学的、芸術的または学術的作品に関する著作権、特許権、商標権、意匠、実用新案、図面、秘密公式や工程の使用、または使用権、産業的・商業的または学術的装備の使用、または使用権、産業的・商業的または学術的経験に関する情報の対価として受ける全ての種類の支給金をいう。
 上記のいずれかに該当する権利、資産または情報を国内で使用したり、その対価を国内で支給したりする場合、その対価およびその権利等を譲渡することにより発生する所得を国内源泉使用料の所得と定めている(法人税法第93条第8号ハ)。

3. ロイヤルティの送金手続きおよび様式
3-1送金(支払い)等の認可基準
(1) 1件当たり米ドル5千ドルを超える支給等をしようとする場合、外国為替銀行の長に、支給等の事由と金額を立証する書類を提出しなければならない(外国為替取引規程第4-2条第1項)。

(2) 国内居住者は、年間累計金額が米ドル10万ドル以内である場合、別途の証憑書類なしに支給等ができるようになった。なお、2023年7月4日以前は年間で米ドル5万ドルだった(外国為替取引規程第4-3条第1項第1号及び同項第2号)。

(3) 支払等をしようとする者は、当該支払等をするに先立ち、当該支払等またはその原因となる取引、行為が法、令、この規程および他法令等により申告等をしなければならない場合には、その申告等を先に行わなければならない(外国為替取引規程第4-2条第2項)。

(4) 支給等をしようとする者は、第1項による支給等の証憑書類を、電子的方法を通じて提出することができる(外国為替取引規程第4-2条第6項)。

(5) 条約および一般に承認された国際法規と国内法令に反する行為に関する支給等をしてはならない(外国為替取引規程第4-1条第2項)。

3-2租税条約上の制限税率を受けるための証憑書類
(1) 外国法人に対する租税条約上の制限税率適用のための源泉徴収手続の特例規程に基づき、法人税法第98条の6第1項により制限税率の適用を受けようとする国内源泉所得の実質帰属者は、企画財政部令で定める国内源泉所得の制限税率適用申請書※2を該当国内源泉所得の支給を受ける前までに源泉徴収の義務者に提出しなければならない(法人税法施行令第138条の7第1項)。

※2 国内源泉所得制限税率適用申請書(外国法人用)(法人税法施行規則/別紙第72号の2書式)
https://www.law.go.kr/LSW/flDownload.do?gubun=&flSeq=129921229

(2) 外国法人に対する租税条約上の制限税率適用のための源泉徴収手続の特例規程に基づき、法人税法第93条による国内源泉所得の実質帰属者である外国法人が租税条約による制限税率の適用を受けようとする場合には、大統領令で定めるところにより制限税率適用申請書および国内源泉所得の実質帰属者であることを証明する書類を第98条第1項による源泉徴収義務者に提出しなければならない(法人税法第98条の6第1項)。

3-3外国為替取引の秘密保障 
 外国為替取引法による許可、認可、登録、申告、報告、通報、仲介、中継、集中、交換等の業務に従事する者は、その業務に関して知り得た情報を「金融実名取引および秘密保障に関する法律」第4条において定める場合を除いては、この法で定める用途ではない用途で使用したり、他人に漏洩したりしてはならないと規定している(外国為替取引法第22条)。

4. 日本企業が円滑に手続きを踏むための注意点
 韓国企業が日本等の外国にロイヤルティ送金を行うことにおいて、送金前に納付しなければならない税金の源泉徴収関連法規等を綿密に調べなければならない。そうしなければ、その後に税務調査を受けることになり、各本税および加算税まで負担することになる等の問題が発生する可能性がある。実務的には税務関連の専門家の意見を聞くことが必要であると思われる。

韓国における特許制度のまとめ-手続編

1.出願に必要な書類
(1) 特許出願をする場合には、特許出願書、明細書、必要な図面及び要約書等を提出しなければならない(特許法第42条第1項及び第2項)。
(2) 個別委任状と包括委任状のうち、どちらか一つを提出しなければならない。

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2.記載が認められるクレーム形式
(1) 認められるクレーム形式
・多項制を採択しており、独立項と従属項を区分し記載する。
・プログラムの場合、“プログラムを記録した記録媒体”、“記録媒体に保存されたコンピュータプログラム(アプリケーション)”の形式が認められる。

(2) 認められないクレーム形式
・請求項の従属項の記載方法に関して、2以上の項を引用した請求項は、その請求項の引用された項が、更に2以上の項を引用する方式(マルチ-マルチクレーム)で記載することができない(特許法第42条第8項及び特許法施行令第5条第6項)。
・コンピュータプログラム言語自体、コンピュータプログラム自体、単純な情報が提示されたデータ、信号等は認められない。

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3.出願の言語
 特許出願に関する書類は原則として韓国語で記載しなければならない(特許法施行規則第11条)が、明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)については、英語で記載して提出することができる(特許法第42条の3第1項)。
 ただし、英語で特許出願をした場合には、出願日(最優先日)から1年2か月になる日まで明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)の韓国語翻訳文を提出しなければならない(特許法第42条の3第2項)。

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4.グレースピリオド
 特許を受けることができる権利を有する者の発明が、特許を受けることができる権利を有する者によって公知等がされている場合、または特許を受けることができる権利を有する者の意思に反して公知等がされた場合には、その日から12か月以内に特許出願をすれば特許出願された発明に対して新規性及び進歩性を適用する際に、その発明は公知等がされていないものとみなす(特許法第30条)。

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5.審査
(1) 実体審査
 特許出願は、審査請求があるときに限り審査する。審査請求は、誰でもすることができ、審査請求期間は出願日から3年(2017年2月28日以前に特許出願された場合には5年)である(特許法第59条)。

(2) 早期審査(優先審査)
 特許出願が出願公開後、第三者の特許出願された発明の無断実施が認められた場合、または以下の事由に該当する出願について優先審査を申請することができる(特許法第61条)。
 1)防衛産業分野の特許出願
 2)緑色技術(温室ガス減縮技術、エネルギー利用効率化技術、清浄生産技術、清浄エネルギー技術、資源循環および親環境技術(関連融合技術を含む)等、社会・経済活動の全過程にわたり、エネルギーと資源を節約して効率的に使用し、温室ガス及び汚染物質の排出を最小化する技術を言う)と直接関連した特許出願
 2の2)人工知能またはモノのインターネット(IoT)等、第4次産業革命と関連した技術を活用した特許出願
 3)輸出促進に直接関連する特許出願
 4)国家または地方自治団体の職務に関する特許出願
 5)ベンチャー企業の認定を受けた企業の特許出願
 5の2)技術革新型中小企業として選定された企業の特許出願
 5の3)職務発明補償優秀企業として選定された企業の特許出願
 5の4)知識財産経営認証を受けた中小企業の特許出願
 6)「科学技術基本法」による国家研究開発事業の結果物に関する特許出願
 7)条約による優先権主張の基礎となる特許出願
 7の2)特許庁が「特許協力条約」に基づく国際調査機関として国際調査を遂行した国際特許出願
 8)特許出願人が特許出願された発明を実施しているか、実施準備中である特許出願
 9)電子取引と直接関連した特許出願
 10)特許庁長が外国の特許庁長と優先審査することに合意した特許出願
 11)優先審査の申請をしようとする者が特許出願された発明に関して調査・分類専門機関のうち、特許庁長が定めて告示した専門機関に先行技術の調査を依頼した場合であって、その調査結果を特許庁長に通知するよう、該専門機関に要請した特許出願
 12)65歳以上の者、または健康に重大な異常がある者がした特許出願
※IP5 PPH、グローバルPPH、PCT-PPH等が利用可能である。

(3) 出願を維持するための料金:不要

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6.出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート

(*) 海外からの出願は、特許法第15条第1項の「交通が不便な地域」に相当するため、2回の延長が可能である。しかし、韓国国内からの出願は「交通が不便な地域」に相当する場合と相当しない場合があり、相当しない場合は1回しか認められない(特許法第15条第1項、実用新案は実用新案法第3条で準用、審判便覧第13編第2章第3節)。

(2)フローチャートに関する簡単な説明
i) 特許決定(査定)の謄本を送達するまで明細書または図面を自発補正することができるが、意見提出通知書(拒絶理由通知)が送達された場合には、意見書の提出期間にのみ補正をすることができる(特許法第47条第1項)。
ii) 意見提出通知書(拒絶理由通知)に対する意見書提出期限は、通知書の発送日から2か月であるが、4か月までの期間延長を申請することができる。期間延長は1か月単位で4回まで、または、必要であれば4か月を超過しない範囲で2か月以上を一括して申請することができる。さらにまた、やむを得ない事由の発生で4か月を超過して指定期間の延長を受けようとする場合には、その事由を記載した疎明書を添付して延長申請をする必要がある(特許法施行規則第16条、特許・実用新案審査事務取扱規定第23条)。
iii) 拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた後、補正書を提出し再審査を請求すること(特許法第67条の2)、補正をせずに拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。再審査を請求した後、再拒絶決定(査定)を受けた場合には、再審査を請求することができず、補正なく拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる。
iv) 拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた日から3か月以内に再審査請求または拒絶決定(査定)不服審判を請求することができ、上記期間は30日ずつ2回の期間延長を申請することができる(特許法第15条第1項、同第186条第5項、特許法施行規則第16条第4項、同第16条第5項)。
v) 拒絶決定(査定)不服審判の棄却審決の後、審決の謄本の送達を受けてから30日以内に、拒絶されていない請求項のみを分離して出願(分離出願)することができる(特許法第52条の2)。
vi) 特許決定(査定)の謄本を受け取ったら、謄本を受けた日から3か月以内に最初の3年分の特許料を納付しなければならない(特許法第79条、特許料等の徴収規則第8条)。特許料納付期間が経過した後、6か月以内に追納することができるが、追納期間内にも納付しなければ特許出願は放棄したものとみなす(特許法第81条第3項)。

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[権利設定前の争いに関する手続]

7.拒絶決定(査定)に対する不服
 特許出願の拒絶決定(査定)に不服がある場合に、決定謄本の送達を受けてから3か月以内に特許審判院に拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。

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8.異議申立制度
 権利設定前の異議申立制度はない。しかし、特許出願が公開された後であれば、その特許出願に関して誰でも拒絶理由に該当し特許されることができないという旨の情報を証拠とともに特許庁長に提供することができる(特許法第63条の2)。

9.上記7の審決に対する不服
 特許審判院の審決に対して不服がある場合には、特許法院に訴え(審決取消訴訟)を提起することができる(特許法第186条第1項)。
 また、特許法院の判決に不服がある場合には、判決が法令に違反したことを理由に大法院へ上告することができる(特許法第186条第8項)。

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[権利設定後の争いに関する手続]

10.権利設定後の異議申立
 誰でも、特許権の設定登録日から登録公告日後6か月になる日まで、その特許が特許取消事由に該当する場合、特許審判院に特許取消申請をすることができる(特許法第132条の2第1項)。
 特許取消申請の事由は、産業上の利用可能性、国内外の頒布された刊行物等による新規性、進歩性及び先願主義の違反等がある(特許法第132条の2第1項各号)。

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11.設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度(無効審判)
 利害関係人または審査官は、設定登録された特許権が無効事由に該当する場合、特許審判院に無効審判を請求することができる(特許法第133条第1項)。
 無効事由:特許法第25条、第29条、第32条、第36条第1項から第3項、第42条第3項第1号または第4項、第33条第1項、第44条、第47条第2項前段、第52条第1項、第53条第1項、条約違反

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12.権利設定後の権利範囲の訂正審判
 特許権者は、請求の範囲を減縮する場合、誤って記載された事項を訂正する場合、または明確に記載されていない事項を明確にする場合に、明細書または図面について特許審判院に訂正審判を請求することができる(特許法第136条第1項)。
 特許取消申請、特許無効審判または訂正の無効審判が特許審判院に係属中である場合には、訂正審判を請求することができないが(特許法第136条第2項)、このときは訂正請求制度を利用して、補正が可能である(特許法第132条の3、第133条の2、第137条第3項及び第4項)。

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13.その他の制度
・特許決定(査定)の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間内(特許料納付前)に分割出願が可能である(特許法第52条第1項第3号)。
・特許拒絶決定(査定)不服審判の審判請求が棄却された場合、審決の謄本の送達を受けた日から30日以内に、その特許出願の一部を新たな特許出願とする分離出願制度がある(特許法第52条の2)。

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韓国における特許制度のまとめ-実体編

1. 特許制度の特徴

(1)特許出願は、審査請求がある時にのみ審査する(特許法第59条第1項)。
 審査請求期間は特許出願日(国際出願日)より従前5年から3年に短縮された(特許法第59条第2項)。

(2)韓国を指定国として指定したPCTによる国際出願は、優先日から2年7か月(国内書面提出期間)以内に発明の説明、請求範囲、図面の説明部分および要約書の韓国語翻訳文を提出しなければならない(特許法第201条第1項)。
 ただし、国内書面提出期間満了日前1か月からその満了日まで、翻訳文の提出期間を延長してほしいという趣旨を書面(特許法第203条第1項)に記載して提出した場合、翻訳文の提出期間を1か月延長することができる(特許法第201条第1項ただし書)。

(3)特許出願が審査段階で拒絶決定(拒絶査定)になると、拒絶決定不服審判の請求前に、明細書または図面を補正して再審査を請求することができる(特許法第67条の2)。
 拒絶決定不服審判の請求後には、明細書等を補正することができず、審査前置制度は廃止された。

(4)特許決定(特許査定)後、特許決定の謄本の送達を受けた日から3か月以内に分割出願が可能である(特許法第52条第1項第3号)。ただし、特許料納付以前でなければならない。

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2. 発明の保護対象
 特許法では、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作として高度なものをいう」(特許法第2条第1号)と発明について定義を規定している。

・保護されない発明

(1)公共の秩序または善良な風俗に外れたり公衆の衛生を害するおそれがある発明については、特許を受けることができない(特許法第32条)。

(2)人間を手術、治療または診断する方法である医療行為は産業上、利用することができる発明(特許法第29条第1項本文)に該当しないという理由で拒絶している(特許・実用新案審査基準第3部第1章5.1)。

(3)コンピュータプログラム言語およびコンピュータプログラム自体は、コンピュータを実行する命令に過ぎないこととして特許法の保護対象ではない(特許・実用新案審査基準第3部第1章4.1.8)。

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3. 特許を受けるための要件

(1)積極的要件
 産業上の利用可能性(特許法第29条第1項本文)、新規性(特許法第29条第1項各号)、進歩性(特許法第29条第2項)、拡大された先出願の地位(第29条第3項および第4項)、先願主義(特許法第36条)

(2)消極的要件
 公共の秩序または善良な風俗から外れたり公衆の衛生を害するおそれがある発明については、特許を受けることができない(特許法第32条)。

(3)特許出願書類の記載要件
 特許出願に関する手続は、書面の注意を要求しているので、願書、明細書(発明の説明、請求の範囲)、必要な図面および要約書等は、法で定める要件に符合するよう記載しなければならない(特許法第42条、特許法施行令第5条、第6条)。

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4. 職務発明の取り扱い
 職務発明に関しては、発明振興法(第2条、第10条から第19条、第58条)で規定している。
 職務発明とは従業員等が、その職務に関して発明したものが性質上、使用者等の業務範囲に属し、その発明をするようになった行為が従業員等の現在または過去の職務に属する発明をいう(発明振興法第2条第2号)。
 職務発明については、原則的に発明者である従業員等に特許を受けることができる権利が帰属する一方、使用者等には従業員の職務発明に対する通常実施権を認めている(発明振興法第10条)。従業員等が使用者に職務発明を承継し、または専用実施権を設定する場合、使用者は従業員等に相当の補償をしなければならない(発明振興法第15条)。

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5. 特許権の存続期間

(1)存続期間
 特許権の存続期間は、特許権の設定登録がされた日から特許出願日後20年になる日までである(特許法第88条第1項)。

(2)特許権の存続期間の延長制度
 特許発明を実施するために他の法令に従い許可を受けたり、登録等をしなければならず、その許可または登録等のために必要な有効性・安全性等の試験に長期間を要する発明の場合には、その実施することができなかった期間に対して5年の期間まで、その特許権の存続期間を一度だけ延長することができる(特許法第89条第1項、特許法施行令第7条)。

(3)審査の遅延による存続期間の延長
 特許出願について、特許出願日からの4年と出願審査請求日からの3年のうち、遅い日より遅延して特許権の設定登録がなされる場合には、その遅延された期間に相当する期間、特許権の存続期間を延長することができる(特許法第92条の2第1項、特許法施行令第7条の2)。

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6. 特許権の行使と侵害

(1)特許権者は侵害禁止請求権、損害賠償請求権、信用回復請求権等を有する(特許法126条、特許法128条、特許法131条)。

(2)特許権侵害の場合、損害と認める金額の3倍を越えない範囲で請求できる懲罰的賠償制度が導入された(特許法第128条第8項および9項)。

(3)特許技術が含まれるソフトウェアは、これを保存した媒体として権利行使が可能であり、方法発明の場合は、その方法を使用する行為またはその方法の使用を請約(申出)する行為まで含まれ、オンライン伝送行為までも権利行使が可能である(特許法第2条第3項ロ目および第94条2項)。

(4)特許表示は「特許+特許番号」または「方法特許+特許番号」で表示し、特許出願中の表示は「特許出願(審査中)+出願番号」または「方法特許出願(審査中)+出願番号」とする。特許表示物の虚偽表示をする場合、3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金に処する(特許法第223条、特許法228条)。