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インドにおける「商標の使用」と使用証拠

1. 「商標の使用」の定義および使用証拠について
 インドでは、商標法第2条(2)(c)において、「商標の使用」が定義されている。

インド商標法第2条(2)(c)
標章の使用というときは、
 (i)商品に関しては、物理的関係であるかまたはその他いかなる関係であるかを問わず、当該商品についての標章の使用をいうものと解釈する。
 (ii)役務に関しては、当該役務の利用可能性、提供、または実施についての記述もしくはその一部としての当該標章の使用をいうものと解釈する。

商標は、商品または役務上で物理的に使用される必要があるが、商品や商品の包装に貼付するなどの物理的使用以外の関係でも使用することができる。例えば、請求書、カタログおよび商品資料の中での「商標の使用」も、実際に市場に商品が存在することを前提とする商品に関係した使用とみなされる。
 なお、広告中で商標を使用することは、商品が市場において、少なくとも販売の申出が行われていることを条件として、「商標の使用」とみなされる。すなわち、商品が市場における販売の申出もなしに広告中において商標が使用されているだけの場合、商標法上の定義にいう「商標の使用」を構成しない。
 
 使用証拠は、権限を有する者からの当該使用を確認、署名する宣誓供述書によって提出されるのが一般的である。宣誓供述書によって確認される主な事項は、商標が使用されている事業、当該商標の使用開始日、当該商標が使用される商品のリスト、当該商標に関する広告活動の性質とそれに関連して発生した経費、インド国内における当該商標が使用される商品の販売業者と配給業者の名称であり、当該商標が使用されてきた代表的な分野が記載されることもある。

 売上高と広告に関する数値は、年単位で示す必要がある。顧客に発行した請求書、伝票、領収書および/またはそれらの写しは、裏付書類となる。新聞、雑誌、定期刊行物その他の広告媒体に表示された広告の見本はすべて、その商標の知名度を示す証拠となる。これらの書類は、すべて、宣誓供述書の添付書類となり、証拠として提出する。この宣誓供述書に加えて、商品と役務の販売業者、配給業者および消費者からの宣誓供述書を提出することも、具体的な顧客の存在を示し、登録官による確認をさらに強化することになるため望ましい。

 個別案件において要求される使用証拠の水準は、商標法における「商標」の要件に照らして、一般則としての商標の識別性等が不適切である程、高くなる。例えば、記述的な語句は不適切であるため、その識別性を立証するには強力な使用証拠が要求される。これは、地理的表示を有する名称または語句やその原産地である商品の製造場所を記述する名称または語句にも当てはまる。姓の場合は、稀な姓であれば、それが識別性を有するに至ったことを示す強力な使用証拠を要求されることはない。

2. 使用中の商標に関する願書における「商標の使用」の陳述
 商標規則25(1)において、商標登録願書は、当該商標を今後使用しようとするのでない限り、当該商標が願書に記載のすべての商品または役務に関して使用された期間および使用者についての陳述を含まなければならないことが明記されており、規則25(2)には、出願日前の「商標の使用」を主張する場合、出願人は、裏付けとなる書類とともに、当該使用について証言する宣誓供述書を提出することが求められている。

 なお、同様に、出願人または商標権者が出願商標または登録商標の使用を裏付ける書類を提出し、当該使用の宣誓を陳述する場合としては、第三者から不使用取消審判請求を受け登録商標の使用証拠を提出する場合や、被異議申立人(出願人)が異議申立の反駁時に自己の出願を支持するために陳述する場合などが挙げられるが、更新時に「商標の使用」の陳述や使用証拠を要求する規定はない。