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インドにおける商標異議申立制度

 インドにおける商標異議申立手続は、2010年商標(改正)法第21条および2017年商標規則の規則42~51に規定されている。

1.異議申立
 何人も、登録出願の公告若しくは再公告のあった日から4か月以内に、所定の方法により所定の手数料を納付して書面をもって登録官に対して登録異議の申立てをすることができる(商標法第21条(1))。異議申立は「何人」も行うことができ、この点において、「当該登録によって被害を受ける者」のみが提起できる登録の取消(商標法第57条)とは異なっている。「何人」とは、必ずしも個人である必要はなく、法人または非法人組織であってもよい。
 異議申立は、商標法に定められた理由を根拠としなければならない。主として、絶対的拒絶理由について規定する商標法第9条、および相対的拒絶理由について規定する商標法第11条が適用される。
 商標法第9条には、(1)項から(3)項があり、商標法第9条(1)項は、出願商標の識別性の問題に関する(a)号から(c)号の規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

(a) 識別性を欠く商標、すなわち、ある者の商品もしくは役務を、他人の商品もしくは役務から識別できないもの
(b) 取引上、商品の種類、品質、数量、意図する目的、価格、原産地、当該商品生産の時期もしくは役務提供の時期、または当該商品もしくは役務の他の特性を指定するのに役立つ標章または表示からもっぱら構成されている商標
(c) 現行言語において、または公正な確立した取引慣行において慣習的となっている標章または表示からもっぱら構成されている商標

 商標法第9条(1)項にはただし書が設けられており、出願日より前に、商標が使用の結果として識別性を獲得している、または周知である場合には、登録を拒絶されることはない。

 商標法第9条(2)項は、公益および公序良俗の問題に言及する規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

(a) 公衆を誤認させるか、または混同を生じさせる内容のものであるとき
(b) インド国民の階級もしくは宗派の宗教的感情を害するおそれがある事項からなり、またはそれを含んでいるとき
(c) 中傷的もしくは卑猥な事項からなり、またはそれを含んでいるとき
(d) その使用が1950年紋章および名称(不正使用防止)法により禁止されているとき

 商標法第9条(3)項は、識別性があるとみなすことができない特定の形状からなる商標の登録を禁じており、以下の商標は登録することができないとしている。

(a) 商品自体の内容に由来する商品の形状
(b) 技術的成果を得るために必要な商品の形状
(c) 商品に実質的な価値を付与する形状

 相対的拒絶理由に関しては、商標法第11条(1)項に従い、(a)先の商標と同一、かつ商品又は役務が類似する場合、及び(b)先の商標と類似、かつ商品又は役務の同一性又は類似性により公衆に混同を生じさせるおそれがある場合、その商標は登録されない。

 商標法第11条(2)項はパリ条約第6条の2に対応するものであり、周知商標は、商品および役務が異なる場合であっても第三者の商標から保護される。

 商標法第11条(3)項は、コモン・ロー上の権利および著作権法の重要性を認め、詐称通用に関する法律または著作権法により商標の使用を阻止すべき場合には、当該商標は登録されないとしている。

 商標法第11条(6)項、(7)項は、商標が周知であるかどうかを判断する際に考慮すべき事実および証拠について説明している。以下に挙げるこれらの事項は、異議申立人または出願人が異議申立手続において、自己の商標が周知であると認定してもらい、それにより自己の主張を裏づけるための証拠の収集および提出の際の参考となる。

・当該商標の使用促進の結果として得られたインドにおける知識を含め公衆の関係階層における当該商標についての知識または認識
・当該商標の使用についての期間、範囲および地域
・当該商標が適用される商品もしくは役務についての博覧会もしくは展示会における広告または宣伝および紹介を含め、当該商標の使用促進についての期間、範囲および地域
・本法に基づく当該商標の登録、または登録出願についての期間および地域であって、当該商標の使用または認識を反映している範囲
・当該商標に関する諸権利の執行記録、特に、当該商標が当該記録に基づいて裁判所または登録官により周知商標として認識された範囲
・実際のまたは潜在的な消費者の数
・流通経路に介在する人員の数
・それを取り扱う業界

 商標法第11条(10)項では、「同一または類似の商標に対して周知商標を保護しなければならず、かつ、商標権に影響を及ぼす、出願人もしくは異議申立人の何れかに含まれた不誠実を参酌しなければならない」とし、周知商標と同一または混同を生じるほど類似の商標を採用する第三者に関連する「悪意」の概念について確認するとともに、周知商標を保護する必須義務を登録官に負わせている。

 商標法第11条(11)項は逆に、「商標が登録官に重要な情報を開示して公正に登録された場合または商標についての権利が本法の施行前に善意の使用を通じて取得された場合は、本法は、当該商標が周知商標と同一または類似するとの理由では、当該商標登録または当該商標使用の権利の有効性を一切害さない。」とし、善意で使用されている出願または登録商標を保護している。異議申立に対する抗弁として、この規定を用いることができる。

 なお、先行商標の所有者が既に後続商標に同意している場合には、商標法第12条による特別の状況があるものとして、後続商標の登録を許可している(商標法第11条(4)項)。商標法第12条では、「善意の同時使用」または他の「特別な事情」がある場合には、商標が商標法第11条に抵触するにもかかわらず、登録官は当該商標の登録を許可することができると定めている。

2.答弁書
 出願人は、登録官から異議申立書を受領した日から2か月以内に、答弁書を提出しなければならない。答弁書の提出期限は延長できないため、出願人が2か月以内に答弁書を提出しない場合、異議対象の出願は放棄されたとみなされる。(商標法第21条(2))

3.証拠
 出願人により提出された答弁書が、登録官により異議申立人に送達された後、異議申立人は、答弁書を受領した日から2か月(商標規則109により、1か月の延長が可能)以内に証拠を提出するよう要求される。異議申立人が証拠の提出を望まない場合、この2か月+1か月の期間内に異議申立書に明記された事実に依拠する旨を登録官に対して通知するとともに、出願人にも通知しなければならない。また、聴聞の希望がある場合には、登録官はその機会を与えなければいけない。これらの措置が取られない場合、異議申立人は自己の異議申立を放棄したとみなされる。(商標法第21条(4)、商標規則45)

 異議申立人が証拠を提出、または事実に依拠する旨を通知した後、出願人は、異議申立人の証拠を受領した日から2か月(商標規則109により、1か月の延長が可能)以内に、出願を裏づける証拠を提出、または答弁書に明記した事実に依拠する旨を登録官に対して通知するとともに、異議申立人にも通知するよう要求される(商標法第21条(4)、商標規則46)。異議申立人とは異なり、出願人がこれらの措置を取らなかったとしても、出願が放棄されたとみなされることはない。この場合、インドの法律に基づき、出願人は答弁書を提出することにより、自己の出願を防御する意思を示したと理解され、この防御は、出願人が証拠を提出しない場合でも、維持することができる。

 出願人が証拠を提出した場合、異議申立人は、出願人の証拠を受領後1か月(商標規則109により、1か月の延長が可能)以内に、弁駁証拠を提出することができる(商標規則47)。これをもって、異議申立手続における答弁および証拠段階は終了する。

 なお、いずれの側もこれ以上の証拠を提出することはできないが、登録官は、自己が適当と認めるときはいつでも、出願人または異議申立人の何れに対しても、登録官が適当と認める費用またはその他の条件を付して、証拠を提出することを許可することができる(商標規則48)。

 留意事項として、証拠の提出に関する期間の延長については、商標法第131条に「登録官において、所定の方法により、かつ、所定の手数料を添えた申請に基づき、指定期間の満了の前後を問わず、何らかの行為をする期間(本法に別途規定された期間を除く)を延長するに十分な理由があると納得したときは、登録官は、適当と認める条件を付して、その期間を延長し、かつ、この旨を当事者に通知することができる。」と規定されており、登録官の裁量に基づくものであることが挙げられる。

4.ヒアリング(聴聞)
 答弁書および証拠の提出段階が完了すると、登録官は口頭による意見陳述のために双方の当事者を招集するヒアリングの日程を定める(商標規則50(1))。ヒアリングの日付は、最初の通知の日から少なくとも1月後でなければならず(商標規則50(1))、また、ヒアリングの日の少なくとも3日前に、合理的な理由によるヒアリングの延期を請求することができるが、3回以上の延期は与えられず、かつ、各延期期間は30日を超えない(商標規則50(2))。双方の当事者は、口頭による意見陳述の代わりに、またはこれに追加して、抗弁書を提出することができる(商標規則50(5))。

5.異議申立手続の期間
 商標局にはかなりの未処理案件があり、多数の異議申立が係属中である。未処理案件を処理するために、長年にわたり様々な取り組みが行われてきた。しかし、異議申立の未処理案件は、2022年3月時点で、225,000件以上がインドの5か所の商標庁で係属中であり、これに対して聴聞官を大幅に増やすなどの対策が取られているとの情報がある
 また、インド特許意匠商標総局(the Office of the Controller General of Patents, Designs & Trade Marks (CGPDTM))ウェブサイトの商標「Quality Policy of Office」(http://www.ipindia.gov.in/quality-policy-of-office-tm.htm)では、案件の処理にあたっては時間制限のあるプロセスを順守するとともに、内部の相乗効果を活用して、迅速に結果を提供することを、商標審査における品質ポリシーの一つとしている。

6.審判請求
 商標法第21条に基づく登録官のあらゆる命令または決定を不服とする当事者は、商標法第91条(1)にもとづき、その命令または決定が当該当事者に通知された日から3か月以内に、知的財産審判部に審判請求を提出することができるとされていたが、2021年8月13日に2021年審判改革法(Tribunals Reforms Act, 2021)が制定され、知的財産審判部が廃止された。よって、今後は高等裁判所に設置された知的財産権に関連する案件を取り扱うための知的財産部において、不服申立てが管轄されることになる。
参考情報:
インドにおける知的財産審判委員会(IPAB)の廃止-その後-(2022.1.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/21344/

インドにおける商標制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 

商標権を受けようとする者は、英語またはヒンディー語で作成した以下の書類および手数料を所轄庁に提出しなければならない。

(1) 有効出願日を確保するために必要な書類

・願書(FORM TM-A)(商標規則23(1))

・手数料

(2) 願書に記載する情報

・送達宛先住所(現地代理人の住所)、有効な電子メールアドレス、インドにおける携帯番号(商標規則17)

・出願人を特定するための情報

・出願商標の表記(8cm×8cm以下のサイズ)(商標規則26(1))

・区分(1出願多区分可)(商標法18条(2))

・指定商品・サービス

・インド国内における使用の有無(「使用に基づく出願」か「使用意思に基づく出願」)

・色彩や色彩の組み合わせの主張の有無(商標規則23(2)(d))

(3) 必要に応じて提出する書類

・出願権の証拠(出願人が商標の所有者ではない場合)

・委任状(現地代理人に代理権を与える場合)(FORM TM-M)

・優先権書類(優先権を主張する場合)と、その翻訳文(優先権書類が英語以外の言葉で記載されている場合)

・形状商標の場合(商標規則23(2)(c))、それぞれ3方向から見た表記(図面または写真)(商標規則26(3)(i))

・音声商標の場合、30秒を超えないMP3形式のファイル(商標規則26(5))

・使用に基づく出願の場合、最先の使用開始日(年月日)と使用期間(商標規則25(1))、使用の詳細を記載した嘆願書(affidavit)および使用の証拠(商標規則25(2))

・出願商標がヒンディー語と英語以外の言葉を含む場合、出願商標のヒンディー語または英語での読み方(transliteration)およびそのヒンディー語または英語での意味(translation)(商標規則28)

 

関連記事:「インドにおける商標出願制度概要」(2019.7.9)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17532/

 

 

2. 出願の言語

 

・商標権を受けようとする者は、英語またはヒンディー語で作成した以下の書類および手数料を所轄庁に提出しなければならない(商標規則12)。

・出願商標がヒンディー語と英語以外の言葉を含む場合、出願商標のヒンディー語または英語での読み方(transliteration)およびそのヒンディー語または英語での意味(translation)(商標規則28)

 

関連記事:「インドにおける外国語(日本語)商標の取扱い」(2018.8.14)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15654/

 

 

3. グレースピリオド

 

グレースピリオド制度はない。

 

 

4. 審査

 

(1) 方式審査、実体審査

・所轄庁に商標出願にかかる書類を提出し庁料金を納付すると、出願番号が付与され、方式審査および実体審査が行われる。

 

(2) 早期審査

・出願後、申請および追加費用の納付により早期審査を要求することができる。登録官は早期審査を認める案件を制限することができる。早期審査が認められた場合、申請から3か月以内に審査が開始される。また、その後のヒアリングや異議申立も早期に処理される。

 

関連記事:「インドの商標関連の法律、規則、審査マニュアル」(2019.3.26)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16714/

 

 

5. 出願から登録までのフローチャート

 

(1) 出願から登録までの商標出願のフローチャート

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(2) フローチャートに関する簡単な説明

・所轄庁に商標出願にかかる書類を提出し庁料金を納付すると、出願番号が付与され、方式審査および実体審査が行われる(商標法9条、11条)。

・審査の結果、拒絶の理由があると判断された場合、拒絶の理由を記載した審査報告(日本の拒絶理由通知に相当)が出願人(現地代理人)に発送される(商標法18条(5))。出願人は審査報告の受領日から所定の応答期間(1か月)内にすべての拒絶理由を解消するような応答書(意見書、補正書)を提出しなければならない。

・出願人が応答書を提出した場合、もう一度審査が行われる。拒絶理由がある場合で、出願人から聴聞(ヒアリング)申請があれば、商標登録局は出願人に聴聞通知を発送する(商標法19条)。商標登録局は、聴聞(商標法50条(3))を実施し、聴聞の実施後に、出願人に応答書(意見書、補正書)を提出する機会を与える。出願人が応答書を提出した場合、もう一度審査が行われる。

・審査および聴聞の結果、拒絶の理由がないと判断された場合、商標登録局は出願承認(accepted)し、商標登録局が発行する官報(ジャーナル)にその旨を公告する(商標法20条)。公告日から4か月の期間に異議申立がなされない場合、商標登録局は商標権を付与し、登録証を発行する。拒絶理由が残っている場合、商標登録局は出願人へ拒絶査定を通知する。

 

 

[権利設定前の争いに関する手続]

 

6. 拒絶査定に対する不服申立て

 

・商標登録局の指示または指令、例えば、商標を登録しない旨の指令、に対して不服がある者は知的財産審判委員会(IPAB: Intellectual Property Appellate Board)に不服申立てを行うことができる(商標法91条(1))。

・不服申立ては商標登録局の指示または指令の日から3か月以内に行わなければならない。

・知的財産審判委員会の審決に対する不服申立ては、商標法に明定されていない。しかし、事実もしくは証拠について正しく理解されなかった、または合理的な判断がなされなかったことから生じる法律問題に対して高等裁判所へ裁量不服申立て」の削除、を行うことができる。また、最高裁判所へ特別許可申立てを行うことができる。

 

 

7. 権利設定前の異議申立て

 

・何人も、商標出願の公告または再公告のあった日から4か月以内に、書面により商標権の登録に対して異議申立てを行うことができる(商標法21条)。異議申立人は、商標法および商標規則に従って異議理由を自由に構築することができる。

 

関連記事:「インドにおける商標異議申立制度」(2017.6.8)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13786/

 

 

[権利設定後の争いに関する手続]

 

8. 権利設定後の異議申立て

 

・制度がない。

 

 

9. 設定された商標権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 

・利害関係人は、登録簿に記載されている登録商標に関する条件の違反または不履行を理由に、商標登録局または知的財産審判委員会に対して、商標登録の取消または変更を申請することができる(商標法57条)。

 

 

10. 商標の不使用取消制度

 

・登録商標が所定の期間インドで善意の使用がなかったことを理由に、利害関係人が、商標登録局または知的財産審判委員会に対して、商標登録の不使用取消を請求することができる(商標法47条(1))。

 

インドにおける商標異議申立制度

インドにおける商標異議申立手続は、2010年商標(改正)法の第21条および2002年商標規則の規則47~57に規定されている。

 

異議申立書

 

商標出願に対して異議を申し立てたいと望む「いかなる者」も、登録官に対して異議申立書を提出することができる。それゆえ、インドにおいて「権利を害された者」のみが提起できる取消手続とは異なっている。「いかなる者」とは、必ずしも個人である必要はなく、法人または非法人組織であってもよい。

 

異議申立書は、商標出願が商標公報に公告されてから4ヵ月以内に提出する必要がある。

 

異議申立は、商標法に定められた理由を根拠としなければならない。主として、絶対的拒絶理由について詳述する第9条、および相対的拒絶理由について詳述する第11条が適用される。

 

第9条には、(1)項から(3)項が含まれている。第9条(1)項は、出願商標の識別性の問題に関する(a)号から(c)号の規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

 

(a)識別性を欠く商標、すなわち、ある者の商品もしくは役務を、他人の商品もしくは役務から識別できないもの

(b)取引上、商品の種類、品質、数量、意図する目的、価格、原産地、当該商品生産の時期もしくは役務提供の時期、または当該商品もしくは役務の他の特性を指定するのに役立つ標章または表示からもっぱら構成されている商標

(c)現行言語において、または公正な確立した取引慣行において慣習的となっている標章または表示からもっぱら構成されている商標

 

第9条(1)項には例外規定が設けられており、出願日より前に、商標が使用の結果として識別性を獲得している、または周知である場合には、登録を拒絶されることはない。

 

第9条(2)項は、公益および公序良俗の問題に言及する規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

 

(a) 公衆を誤認させるか、または混同を生じさせる内容のものであるとき

(b) インド国民の階級もしくは宗派の宗教的感情を害するおそれがある事項からなり、またはそれを含んでいるとき

(c) 中傷的もしくは卑猥な事項からなり、またはそれを含んでいるとき

(d) その使用が1950年紋章および名称(不正使用防止)法により禁止されているとき

 

第9条(3)項は、識別性があるとみなすことができない特定の形状からなる商標の登録を禁じており、以下の商標は登録することができないとしている。

 

(a) 商品自体の内容に由来する商品の形状

(b) 技術的成果を得るために必要な商品の形状

(c) 商品に実質的な価値を付与する形状

 

相対的拒絶理由に関しては、第11条(1)項に従い、先行商標との同一性または類似性、および商品または役務の同一性または類似性を理由に、公衆に混同を生じる可能性がある場合、その商標は登録されない。

 

第11条(2)項は、パリ条約の第6条の2を要約したものであり、本質的に異なる商品および役務に関して、周知商標が第三者の商標から保護される。

 

第11条(3)項では、コモンロー上の権利および著作権法の重要性を認め、詐称通用に関する法律または著作権法により商標の使用を阻止すべき場合には、当該商標は登録されないとしている。

 

第11条(6)項、(7)項は、商標が周知であるかどうかを判断する際に考慮すべき事実および証拠について説明している。以下に挙げるこれらの事項は、異議申立人または出願人が異議申立手続において、自己の商標が周知であると認定してもらい、それにより自己の主張を裏づけるための証拠の収集および提出の際の参考となる。

 

  • 当該商標の使用促進の結果として得られたインドにおける知識を含む公衆の関係階層における当該商標についての知識または認識
  • 当該商標の使用についての期間、範囲および地域
  • 当該商標が適用される商品もしくは役務についての博覧会もしくは展示会における広告または宣伝および紹介を含め、当該商標の使用促進についての期間、範囲および地域
  • 本法に基づく当該商標の登録、または登録出願についての期間および地域であって、当該商標の使用または認識を反映している範囲
  • 当該商標に関する諸権利の執行記録、特に、当該商標が当該記録に基づいて裁判所または登録官により周知商標として認識された範囲
  • 実際のまたは潜在的な消費者の数
  • 流通経路に介在する人員の数
  • それを取り扱う業界

 

第11条(10)項では、「同一または類似の商標に対して周知商標を保護しなければならず、かつ、商標権に影響を及ぼす、出願人もしくは異議申立人の何れかに含まれた不誠実を参酌しなければならない」とし、周知商標と同一または混同を生じるほど類似の商標を採用する第三者に関連する「悪意」の概念について確認すると共に、周知商標を保護する必須義務を登録官に負わせている。

 

第11条(11)項は逆に、「商標が登録官に重要な情報を開示して公正に登録された場合または商標についての権利が本法の施行前に善意の使用を通じて取得された場合は、本法は、当該商標が周知商標と同一または類似するとの理由では、当該商標登録または当該商標使用の権利の有効性を一切害さない。」とし、善意で使用されている出願または登録商標を保護している。異議申立における抗弁として、この規定を用いることができる。

 

なお、先行商標の所有者が既に後続商標に同意している場合には、後続商標の登録を許可している。(第11条(4)項)

 

また、第12条では、「善意の同時使用」または他の「特別な事情」がある場合には、商標が第11条に抵触するにもかかわらず、登録官は当該商標の登録を許可することができると定めている。

 

答弁書

 

出願人は、登録官から異議申立書を受領した日から2ヵ月以内に、答弁書を提出しなければならない。答弁書の提出期限は延長できないため、出願人が2ヵ月以内に答弁書を提出しない場合、異議対象の出願は放棄されたとみなされる。

 

証拠

 

出願人により提出された答弁書が、登録官により異議申立人に送達された後、異議申立人は、答弁書を受領した日から2ヵ月(1ヵ月の延長が可能)以内に証拠を提出するよう要求される。異議申立人が証拠の提出を望まない場合、この2ヵ月+1ヵ月の期間内に異議申立書に明記された事実に依拠する旨を登録官に対して通知すると共に、出願人にも通知しなければならない。これらの措置が取られない場合、異議申立人は自己の異議申立を放棄したとみなされる。

 

異議申立人が証拠を提出、または事実に依拠する旨を通知した後、出願人は、異議申立人の証拠を受領した日から2ヵ月(1ヵ月の延長が可能)以内に、出願を裏づける証拠を提出、または答弁書に明記した事実に依拠する旨を登録官に対して通知すると共に、異議申立人にも通知するよう要求される。異議申立人とは異なり、出願人がこれらの措置を取らなかったとしても、出願が放棄されたとみなされることはない。この場合、インドの法律に基づき、出願人は答弁書を提出することにより、自己の出願を防御する意思を示したと理解され、この防御は、出願人が証拠を提出しない場合でも、維持することができる。

 

出願人が証拠を提出した場合、異議申立人は、出願人の証拠を受領後1ヵ月(1ヵ月の延長が可能)以内に、弁駁証拠を提出することができる。

 

これをもって、異議申立手続における訴答および証拠段階は終了する。

 

なお、以下の2002年商標規則の規則53に基づき、最終審理の前に追加証拠を提出することが可能である。

 

追加の証拠は、何れの側に対しても提出してはならないが、登録官に対する何らかの手続においては、登録官は、自己が適当と認めるときはいつでも、出願人または異議申立人の何れに対しても、証拠を提出することについて、登録官が適当と認める費用またはその他の条件を付して、許可することができる。

 

しかしながら、商標規則に定められた証拠の提出期限については、追加の延長を請求することが可能であるかどうかが問題となる。この問題は2つの異なる高等裁判所で争われたが、それぞれの見解が分かれている。グジャラート高等裁判所は追加証拠の提出を認める立場を示したが(2006年)、デリー高等裁判所はこれを認めていない(2007年)。したがって、高等裁判所の上位の法廷が、追加証拠の提出を認める裁定を下すまでは、異議申立の当事者は十分な注意を払い、商標規則に定められた期限を厳守することが望ましい。

 

ヒアリング

 

答弁書および証拠の提出段階が完了すると、登録官は口頭による意見陳述のために双方の当事者を招集するヒアリングの日程を定める。双方の当事者は、口頭による意見陳述の代わりに、またはこれに追加して、主張の要約書を提出することができる。

 

異議申立手続の期間

 

商標局にはかなりの未処理案件があり、何千件もの異議申立が係属中である。未処理案件を処理するために、過去数年にわたり様々な取り組みが行われてきた。とりわけ異議申立もしくは出願が取り下げられた事件、出願人が期限内に答弁書を提出しなかった事件、または当事者間で和解したために異議決定が出されなかった事件が整理された。

 

このような取り組みの中でも目新しいのが、1987年法律サービス庁法に基づいて定められた仲裁または調停を通して係属中の事件を処理することを目的とした、商標局とデリー州法律サービス庁(DSLSA)との協力体制である。2016年当初に、未決の500件の異議申立についてパイロット・プロジェクトが実施されたが、現在では最終ヒアリングがまだ行われていない全ての異議申立に対して仲裁または調停手続が認められるようになっている。

 

審判請求

 

商標法第21条に基づく登録官のあらゆる命令または決定を不服とする当事者は、商標法第91条(1)にもとづき、その命令または決定が当該当事者に通知された日から3ヵ月以内に、知的財産審判部に審判請求を提出することができる。