インドにおける知財侵害に係る刑事摘発(レイド)について
「インドにおける知財侵害に係る刑事摘発(レイド)のベストプラクティスに関する調査報告書」(2021年1月、日本貿易振興機構 ニューデリー事務所(知的財産権部))
目次
第1章 調査概要(調査対象及び方法) P.1
第2章 刑事救済に係る法令・制度/警察・裁判所の役割 P.2
(模倣品・海賊版商品に関する刑事訴訟手続の概要を、関連する法令とともに解説している(フローチャートあり)。また、インドにおける警察組織の階層、治安裁判所に対する手続および期間を紹介するとともに、商標権と著作権の手続の違いについて解説している。)
2-1.刑事訴訟の手続き概要・フロー P.5
2-2.刑事訴訟における警察・裁判所の権限・役割 P.13
2-3.手続きの違い(商標権と著作権) P.17
第3章 知財侵害に係る刑事摘発の実態概要 P.22
(2018年から2020年までの期間における模倣品に対する刑事執行総数、模倣品が流通する可能性が高い9つの地域・州の分析、および警察への調査結果を紹介している。また、権利者が直面する課題と対策を解説している。)
3-1.知財侵害に係る刑事摘発が多い地域、及びその内容 P.23
3-2.警察への聞き取り調査 P.51
3-3.調査主体の違いによる影響 P.60
3-4.権利者が多く遭遇する問題・解決手段 P.62
第4章 刑事救済の活用戦略 P.65
(刑事救済活用時の戦略、オンライン調査の役割および事例、刑事訴訟におけるサイバーセル(サイバーセル対策部署)の役割と重要性、知財侵害者との交渉(司法取引、裁判外でのFIR(First Information Report:犯罪被害の情報に基づいて警察が作成する最初の報告書)の取消申立)、交渉および調停の留意点、必要な費用および時間について解説している。)
4-1.オンライン調査の役割/刑事事件におけるCyber Cellの重要性 P.67
4-2.知財侵害者との交渉 P.69
4-3.必要な費用・時間 P.73
第5章 事例研究 P.74
(侵害者が裁判所命令に従わない場合の刑事訴訟の事例、管轄権がないとの理由で警察官が身元不明者に対するFIR登録を拒否した事例、刑事摘発後、被告人に対して差止めおよび損害賠償を求める民事訴訟が提起された事例、研修後に実施された警察の自発的な刑事摘発の事例ならびに消費者がチャンディーガル市警察のサイバーセルに苦情を申立てたことを受けて刑事摘発が実施された事例の、5つの事例を紹介している。)
5-1.タバコ産業–HANS– P.74
5-2.コスメ産業–仏ブランド– P.76
5-3.服飾産業–米ブランド– P.77
5-4.日用消費財産業–米ブランド– P.79
5-5.ウェブ上の知財侵害–仏ブランド– P.80
付録–A P.82
付録–B P.109
インドにおける商標制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
商標権を受けようとする者は、英語またはヒンディー語で作成した以下の書類および手数料を所轄庁に提出しなければならない。
(1) 有効出願日を確保するために必要な書類
・願書(FORM TM-A)(商標規則23(1))
・手数料
(2) 願書に記載する情報
・送達宛先住所(現地代理人の住所)、有効な電子メールアドレス、インドにおける携帯番号(商標規則17)
・出願人を特定するための情報
・出願商標の表記(8cm×8cm以下のサイズ)(商標規則26(1))
・区分(1出願多区分可)(商標法18条(2))
・指定商品・サービス
・インド国内における使用の有無(「使用に基づく出願」か「使用意思に基づく出願」)
・色彩や色彩の組み合わせの主張の有無(商標規則23(2)(d))
(3) 必要に応じて提出する書類
・出願権の証拠(出願人が商標の所有者ではない場合)
・委任状(現地代理人に代理権を与える場合)(FORM TM-M)
・優先権書類(優先権を主張する場合)と、その翻訳文(優先権書類が英語以外の言葉で記載されている場合)
・形状商標の場合(商標規則23(2)(c))、それぞれ3方向から見た表記(図面または写真)(商標規則26(3)(i))
・音声商標の場合、30秒を超えないMP3形式のファイル(商標規則26(5))
・使用に基づく出願の場合、最先の使用開始日(年月日)と使用期間(商標規則25(1))、使用の詳細を記載した嘆願書(affidavit)および使用の証拠(商標規則25(2))
・出願商標がヒンディー語と英語以外の言葉を含む場合、出願商標のヒンディー語または英語での読み方(transliteration)およびそのヒンディー語または英語での意味(translation)(商標規則28)
関連記事:「インドにおける商標出願制度概要」(2019.7.9)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17532/
2. 出願の言語
・商標権を受けようとする者は、英語またはヒンディー語で作成した以下の書類および手数料を所轄庁に提出しなければならない(商標規則12)。
・出願商標がヒンディー語と英語以外の言葉を含む場合、出願商標のヒンディー語または英語での読み方(transliteration)およびそのヒンディー語または英語での意味(translation)(商標規則28)
関連記事:「インドにおける外国語(日本語)商標の取扱い」(2018.8.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15654/
3. グレースピリオド
グレースピリオド制度はない。
4. 審査
(1) 方式審査、実体審査
・所轄庁に商標出願にかかる書類を提出し庁料金を納付すると、出願番号が付与され、方式審査および実体審査が行われる。
(2) 早期審査
・出願後、申請および追加費用の納付により早期審査を要求することができる。登録官は早期審査を認める案件を制限することができる。早期審査が認められた場合、申請から3か月以内に審査が開始される。また、その後のヒアリングや異議申立も早期に処理される。
関連記事:「インドの商標関連の法律、規則、審査マニュアル」(2019.3.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16714/
5. 出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの商標出願のフローチャート
(2) フローチャートに関する簡単な説明
・所轄庁に商標出願にかかる書類を提出し庁料金を納付すると、出願番号が付与され、方式審査および実体審査が行われる(商標法9条、11条)。
・審査の結果、拒絶の理由があると判断された場合、拒絶の理由を記載した審査報告(日本の拒絶理由通知に相当)が出願人(現地代理人)に発送される(商標法18条(5))。出願人は審査報告の受領日から所定の応答期間(1か月)内にすべての拒絶理由を解消するような応答書(意見書、補正書)を提出しなければならない。
・出願人が応答書を提出した場合、もう一度審査が行われる。拒絶理由がある場合で、出願人から聴聞(ヒアリング)申請があれば、商標登録局は出願人に聴聞通知を発送する(商標法19条)。商標登録局は、聴聞(商標法50条(3))を実施し、聴聞の実施後に、出願人に応答書(意見書、補正書)を提出する機会を与える。出願人が応答書を提出した場合、もう一度審査が行われる。
・審査および聴聞の結果、拒絶の理由がないと判断された場合、商標登録局は出願承認(accepted)し、商標登録局が発行する官報(ジャーナル)にその旨を公告する(商標法20条)。公告日から4か月の期間に異議申立がなされない場合、商標登録局は商標権を付与し、登録証を発行する。拒絶理由が残っている場合、商標登録局は出願人へ拒絶査定を通知する。
[権利設定前の争いに関する手続]
6. 拒絶査定に対する不服申立て
・商標登録局の指示または指令、例えば、商標を登録しない旨の指令、に対して不服がある者は知的財産審判委員会(IPAB: Intellectual Property Appellate Board)に不服申立てを行うことができる(商標法91条(1))。
・不服申立ては商標登録局の指示または指令の日から3か月以内に行わなければならない。
・知的財産審判委員会の審決に対する不服申立ては、商標法に明定されていない。しかし、事実もしくは証拠について正しく理解されなかった、または合理的な判断がなされなかったことから生じる法律問題に対して高等裁判所へ裁量不服申立て」の削除、を行うことができる。また、最高裁判所へ特別許可申立てを行うことができる。
7. 権利設定前の異議申立て
・何人も、商標出願の公告または再公告のあった日から4か月以内に、書面により商標権の登録に対して異議申立てを行うことができる(商標法21条)。異議申立人は、商標法および商標規則に従って異議理由を自由に構築することができる。
関連記事:「インドにおける商標異議申立制度」(2017.6.8)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13786/
[権利設定後の争いに関する手続]
8. 権利設定後の異議申立て
・制度がない。
9. 設定された商標権に対して、権利の無効を申し立てる制度
・利害関係人は、登録簿に記載されている登録商標に関する条件の違反または不履行を理由に、商標登録局または知的財産審判委員会に対して、商標登録の取消または変更を申請することができる(商標法57条)。
10. 商標の不使用取消制度
・登録商標が所定の期間インドで善意の使用がなかったことを理由に、利害関係人が、商標登録局または知的財産審判委員会に対して、商標登録の不使用取消を請求することができる(商標法47条(1))。