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インドにおける新規性の審査基準に関する一般的な留意点(前編)

1. 記載個所
 発明の新規性については、インド特許法第2条(1)(j)、第13条等に規定されている。

第2条 定義及び解釈 
(1)(j)「発明」とは、進歩性を含み、かつ、産業上利用可能な新規の製品又は方法をいう。 
(第2条の他の項号は省略) 
 
第13 条 先の公開又は先のクレームによる先発明についての調査 
(1)第12条に基づいて特許出願が付託された審査官は、完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされた限りにおける当該発明が、次の事項に該当するか否かを確認するため調査しなければならない。 
(a)当該発明が、インドにおいて行われた特許出願であって1912年1月1日以後の日付を有するものについて提出された何れかの明細書において、当該出願人の完全明細書の提出日前に公開されたことによって開示されたか否か 
(b)当該発明が、当該出願人の完全明細書の提出日以後に公開された他の完全明細書であってインドにおいて行われ、かつ、前記の日付か又は前記の日付より先の優先日を主張する特許出願について提出されたものの何れかのクレーム中にクレームされているか否か 
(2)更に,審査官は、完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされた限りにおける当該発明が、当該出願人の完全明細書の提出日前にインド又は他の領域において(1)にいうもの以外の何らかの書類で開示されたか否かを確認するため、当該調査を実施しなければならない。 
(第13条の他の項号は省略) 
 
第25条 特許に対する異議申立 
(1)特許出願が公開されたが特許が付与されていない場合は、何人も、次の何れかの理由によって特許付与に対する異議を長官に書面で申し立てることができる。すなわち、 
(d)完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされた限りにおける発明が、当該クレームの優先日前にインドにおいて公然と知られ又は公然と実施されたこと 
(第25条の他の項号は省略) 
 
第64条 特許の取消 
(1)本法の規定に従うことを条件として、特許については、その付与が本法施行の前か後かを問わず、利害関係人若しくは中央政府の申立に基づいて審判部が又は特許侵害訴訟における反訴に基づいて高等裁判所が、次の理由の何れかによって、これを取り消すことができる。すなわち、 
(f)完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされている限りにおける発明が、当該クレームの優先日前に、インドにおいて公然と知られ若しくは公然と実施されていたもの又はインド若しくはその他の領域において公開されていたものに鑑みて、自明であるか若しくは進歩性を含まないこと 
(第64条の他の項号は省略) 

 また、特許法には下記のように第2条(1)(l)があり、「新規発明」が定義されている。この規定だけを見ると、公知、公用および公開文書による開示のいずれも世界基準を採用していると解釈できる。しかし、特許法第13条、第25条、第64条、および後述する「インド特許庁実務及び手続マニュアル」によれば、国内公知または国内公用によって新規性を失うとされているので、注意が必要である。

第2条 定義及び解釈 
(1)(l)「新規発明」とは、完全明細書による特許出願日前にインド又は世界の何れかの国において何らかの書類における公開により予測されなかったか又は実施されなかった何らかの発明又は技術、すなわち、主題が公用でなかったか又は技術水準の一部を構成していない発明又は技術をいう。 
(第2条の他の項号は省略) 

 新規性に関する審査基準については、「インド特許出願調査及び審査ガイドライン」(以下、「インド特許審査ガイドライン」という。)の「3.4.1 発明の新規性」、および「インド特許庁実務及び手続マニュアル」(以下、「インド特許庁実務マニュアル」という。)の「09.03.02 新規性」に規定がある。

2. 基本的な考え方
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第1節「2. 新規性の判断」に対応するインド特許審査ガイドラインおよび/またはインド特許庁実務マニュアル(以下、「インド特許審査ガイドライン」および「インド特許庁実務マニュアル」を合わせて「インド特許審査基準」という。)は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインでは、審査官による新規性の判断について、次のように述べられている。

 発明の新規性を判断するために、審査官は、特許文献や非特許文献を調査し、特許出願された発明の主題に関連する先行文書による開示や先行出願のクレームにおける開示の有無を確認する。これは、インド特許庁が特許出願の審査を行うための事務処理の一環である。

 新規性の欠如を証明するには、明示的または黙示的に、クレームの開示が単一の文書内に完全に含まれている必要がある。複数の文書を引用する場合は、それぞれが独立しているか、引用された文書が連続した文書を形成するような方法で結合されている必要がある。

 ただし、開示の累積的な影響を考慮することはできないし、複数の文書から得られる要素の組み合わせを形成することによって、新規性の欠如を確立することもできない。複数の文書から得られる要素を組み合わせることは、自明性を主張する場合にのみ行うことができる。

3. 請求項に記載された発明の認定
3-1. 請求項に記載された発明の認定
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「2. 請求項に係る発明の認定」第一段落に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インドでは、特許の範囲は主にクレームによって規定される。審査官は、クレームで使用されている用語に、通常用いられる慣習的な意味を与えて解釈する。ただし、これらの用語に関して曖昧さが生じたり、説明が必要であったりする場合には、審査官は明細書および添付図面を参照して、文脈および詳細を確認する。

 明細書および図面は、クレームに係る発明の性質を明らかにするものであるが、そこで言及される特定の事例、または実施形態は、クレームで明示的に記載されない限り、必ずしも特許の範囲を制限するものではない。

 依然として曖昧さが残る場合、審査官は、出願時における発明の技術分野における共通一般知識を考慮に入れることができる。これには、出願時の一般的な知識と実務を考慮して、関連する技術分野の当業者の観点から、クレームを理解することができることを意味している。

3-2. 請求項に記載された発明の認定における留意点
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「2. 請求項に係る発明の認定」第二段落に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 特許出願のクレームは、出願人が求める保護の境界を示している。明細書および図面は、特に曖昧さが生じた場合に、これらの請求項を解釈および理解するために使用される。審査官は、明細書や図面を優先して特許請求の範囲に記載されている明示的な用語を無視することはできない。

 特許請求の範囲と明細書の間に矛盾がある場合、一貫性を確保するためにクレームまたは明細書を修正することによって矛盾を修正する責任は、通常、出願人にある。明細書と図面は、発明の背景と詳細を提供するが、クレームが保護範囲を決定するための主要なツールである(インド特許法第10条)。審査官の仕事は、これらのクレームが、明確であり、明細書によって裏付けられており、先行技術に比べて新規であることを確認することである。したがって、矛盾が生じた場合、審査官は、出願人にそれを補正する機会を与える。

4. 引用発明の認定
4-1. 先行技術
4-1-1. 先行技術になるか
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1 先行技術」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 一般原則

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、発明は、特許出願日または優先日のいずれか早い日より前に、世界のいずれかの文書で公表されたり、インドにおける特許出願で先行してクレームされたり、口頭であれ何であれ、インドやその他の地域社会または先住民社会で利用可能な知識の一部を形成したり、使用されたりしていない場合、すなわち、その主題が公知となっていない場合、または、その主題が技術水準の一部を形成していない場合に、新規な発明とみなされる。

 日本では、出願前かどうかは、時、分、秒の単位で判断される。外国での公知の場合は、外国の時間を日本時間に換算したものを基準とする。しかし、インドでは、日の単位のみが考慮され、時間、分、秒の単位は考慮されない。

4-1-2. 頒布された刊行物に記載された発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節3.1.1「(1)刊行物に記載された発明」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、手数料の支払の要否にかかわらず、公衆が閲覧することができる場合には、いかなる文献も公開されたものとみなされ、したがって、先行技術の一部を構成する。また、先行公開は普及の程度には関係しない。一人の公衆に、秘密保持義務を負わせることなく文献を開示することは、その文献を公衆に利用可能にすることになる。

 インド特許法は、先行公開について日本と同じ基準に従っている。インドでは、日本と同様に、誰かが実際にアクセスしたか、読んだかでなく、出願日前に公衆がアクセス可能な情報であることが重視される。日本が刊行物の記載内容や当業者が導き出すことのできる事項としているのと同様に、インドの制度も、その内容を当業者が理解できるような方法で公衆に提供されているかどうかに重点を置いている。ただし、インドのガイドラインでは、日本の審査基準のように「記載されているに等しい事項」という文言は明示的に使用されていない。

 また、審査官は、優先日前に公衆に開示されているいかなる文献をも引用することができる。審査官が、不完全な文献(公衆に利用可能であるが未完成である文献)を引用すべきではないということは、法令やガイドラインで特に禁止されていない。

4-1-3. 刊行物の頒布時期の推定
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節3.1.1「(2) 頒布された時期の取扱い」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、文献に記載されている事項が、世界のどこで、どのような方法、またはどのような言語で開示されたとしても、最初に公衆に利用可能となった日に、その事項が先行技術の一部であるとみなされる。

 ただし、インド特許審査ガイドラインでは、他の関連要因に基づいて正確な公開時期を推定するという日本の審査基準にあるような詳細なレベルには踏み込んでいない。

4-1-4. 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1.2 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(第29条第1項第3号)」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、どのような方法や言語で開示されたとしても、その事項は、最初に一般に公開された時点で最先端技術の一部とみなされる。したがって、秘密保持の義務を負わずに一人の公衆に通信を行うことは、その通信を公衆に公開することと同じであり、その事項は先行技術の一部を構成する。

 インドでは、先行技術の概念はあらゆる形式の開示に拡張されており、これにはインターネットまたはその他の電子的手段を通じて行われる開示も含まれる。何人かが実際にウェブページなどにアクセスしたという事実は必要ではない。

4-1-5. 公然知られた発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1.3 公然知られた発明(第29条第1項第1号)」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト、インド特許庁実務マニュアル09.03.02 新規性 2.

(2) 異なる事項または留意点
 前述のとおり、インド特許審査ガイドラインによれば、どのような方法や言語で開示されたとしても、その事項は、最初に一般に開示された時点で最先端技術の一部とみなされる。また、インド特許庁実務マニュアルでは、インドにおける優先日前の公知によって開示されていなかった発明は、新規とみなされる、とされている。

4-1-6. 公然実施をされた発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1.4 公然実施をされた発明(第29条第1項第2号)」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト、インド特許庁実務マニュアル09.03.02 新規性 2.

(2) 異なる事項または留意点
 前述のとおり、インド特許審査ガイドラインによれば、どのような方法や言語で開示されたとしても、その事項は、最初に一般に開示された時点で最先端技術の一部とみなされる。また、インド特許庁実務マニュアルでは、公用に関する判断について、優先日前のインドにおける使用によって開示されていなかった発明は、新規とみなされるとしており、国内公用を基準としていると考えられる。

 インドでは、発明が優先日より前にパブリックドメインで使用されている場合、その発明は先行技術として考慮されることとなるが、これは、日本の審査基準に記載されている「公然実施された発明」に類似している。

 Lallubhai Chakubhai vs.Chimanlal Chunilal & Co. (A.I.R.1936 Bom. 99)では、ボンベイ高等裁判所は、発明が取引目的で使用される場合、発明者によるものであれ、他の当事者によるものであれ、それは公共使用とみなされると指摘した。さらに、製品を公然と販売するということは、その使用が単なるテスト目的ではなく、ビジネス目的であることを明確に示している。ただし、販売が公共使用の証拠とみなされるには、透明性があり、通常の事業活動の一環として行われなければならないとした。

(後編に続く)

インドにおける新規性の審査基準に関する一般的な留意点(後編)

(前編から続く)

5. 請求項に係る発明と引用発明との対比
5-1. 対比の一般手法
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「4.1 対比の一般手法」に対応するインド特許審査基準(「インド特許審査ガイドライン」および/または「インド特許庁実務マニュアル」)の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン5.2、インド特許庁実務マニュアル09.03.02

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、すべての独立請求項について簡潔かつ正確な陳述を作成した後、審査官は、特定されたすべての技術的特徴とそれらの間の機能的関係を開示する文献を検索する。

 検索された文献に発明の目的に寄与するすべての技術的特徴が含まれている場合、その文献によって発明の新規性は否定される。これは、目的または技術的特徴が暗黙的に開示されている場合であってもあり得る。新規性の欠如を証明するには、先行開示が、単一の文書内に完全に含まれている必要がある。複数の文書を引用する場合は、それぞれが独立しているか、引用された文献が連続した文書を形成するような方法で結合されている必要がある。

 さらに、インド特許庁実務マニュアルでは、先行技術は明示的または黙示的な方法で発明を開示する必要があると述べており、また、新規性の判断においては、先行技術文献の組み合わせは認められない。

5-2. 上位概念または下位概念の引用発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.2 先行技術を示す証拠が上位概念または下位概念で発明を表現している場合の取扱い」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許庁実務マニュアル09.03.02

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許庁実務マニュアルでは、先行技術における一般的な開示が必ずしも特定の開示の新規性を否定するわけではないと述べている。例えば、金属製のバネでは、銅製のバネの新規性が失われるわけではない。しかし、先行技術における特定の開示は、一般的な開示の新規性を否定する。例えば、銅製のバネによって、金属製のバネの新規性は否定される。

5-3. 請求項に係る発明の下位概念と引用発明とを対比する手法
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「4.2 請求項に係る発明の下位概念と引用発明とを対比する手法」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによると、クレームがいずれかの選択肢で特定される場合、または数値範囲(例:組成成分、温度等)を特定して発明を定義している場合、これらの選択肢の1つ、またはこの範囲内に含まれる1つの数値例がすでに存在する場合、その発明の新規性は否定される。

 したがって、5-2.で述べたように、一般的に定義された発明に関するクレームの新規性を否定するには、具体例を示すだけで十分である。例えば、金属製のコイルばねの開示は、弾力性のある手段に対する発明を開示している。他方、一般的な開示は、より具体的な発明に関するクレームの新規性を否定することはないので、金属製コイルバネに関する先のクレームは、銅製のそのようなバネを特定する後のクレームの新規性を否定するために使用することはできない。

 しかし、場合によっては、比較的小さく限定された可能性のある選択肢の技術分野の開示が、すべての部材の開示であるとみなされることもある。例えば、「流体」は、文脈によっては、液体と気体の両方を開示しているとみなされることがあり、電気モーターへの言及は、直列巻型と分巻型の両方の使用を開示しているとみなされることがある。

5-4. 対比の際に本願の出願時の技術常識を参酌する手法
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「4.3 対比の際に本願の出願時の技術常識を参酌する手法」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インドの審査官は、先行技術文献を理解して解釈するために、出願時の一般技術常識を考慮に入れるので、日本の実務と変わらないと考えられる。

6. 特定の表現を有する請求項についての取扱い
6-1. 作用、機能、性質または特性を用いて物を特定しようとする記載がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「2. 作用、機能、性質または特性を用いて物を特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 日本と同様に、インドでもクレームがその動作、機能、性質、特性によって物を特定する場合、その機能や特性を有する、または実行するすべての物を包含すると解釈される。

 クレームがその機能、または特性の観点から定義されており、クレームに記載された発明を従来技術と直接比較することが困難になる場合、審査官は、出願人にクレームの明確化のために補正を認める場合があり得る。

6-2. 物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「3. 物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査基準には、用途限定の発明について踏み込んだ記述はないが、インド特許法第3条(d)によれば、既知の物質の既知の効能を向上させない新しい形態の単なる発見、既知の物質の新しい性質や新しい用途の単なる発見、既知のプロセス、機械、装置の単なる使用は、そのような既知のプロセスが新しい製品をもたらすか、少なくとも1つの新しい反応物を用いるのでない限り、特許を受けることはできないとされる。

6-3. サブコンビネーションの発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「4. サブコンビネーションの発明を「他のサブコンビネーション」に関する事項を用いて特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 組み合わせ発明と、そのサブコンビネーションの特許性を評価する際、審査官は、各コンポーネントの進歩性と新規性、さらに組み合わせ全体を検討する。サブコンビネーションの発明が特許を受けるためには、それが新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有することが必要である。

6-4. 製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「5. 製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インドでは、特定の状況において、製造プロセスごとに製品をクレームする「プロダクト・バイ・プロセス」クレームが認められることがある。インド特許審査基準では、プロダクト・バイ・プロセスのクレームについて言及されていないが、医薬品分野における特許出願の審査のガイドラインには7.9にプロダクト・バイ・プロセスのクレームについての規定がある。それによれば、プロダクト・バイ・プロセスのクレームでは、出願人は、プロセス用語で定義された製品が、従来技術の製品によっては開示されていないことを示さなければならない。すなわち、プロセスの新規性または進歩性に関係なく、製品そのものの新規性および進歩性の要件を満たさなければならない。

6-5. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「6. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 前述の「5-3. 請求項に係る発明の下位概念と引用発明とを対比する手法」を参照されたい。

7. その他
 これまでに記載した事項以外で、日本の実務者が理解することが好ましい事項、またはインドの審査基準に特有の事項ついては、以下のとおりである。

 特になし。