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インドにおける知的財産の基礎的情報(全体マップ)-実体編

1. 出願ルート
 インドでは、特許権、意匠権、商標権を取得するために、以下のルートにより出願することができる。また、特許権および商標権については、国際出願(PCT、マドリッドプロトコル)が可能である。インドには無審査で登録可能な権利、例えば、実用新案権はない。

[インドにおける出願ルート]

直接出願国際出願広域出願
特許不可
実用新案
意匠不可不可
商標不可

<諸外国・地域・機関の制度概要および法令条約等>
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/mokuji.html

2. 法令・制度等
(1) 主な法律

法域法律・規則(公用語)/(英語)
a: 法律・規則等の名称
b: 主な改正内容
URL:
改正年
(YYYY)
施行日
(DD/MM/
YYYY)
特許
(公用語・英語)
a: The Patents Act,1970(incorporating all amendments till 23-06-2017)
b: 各地の高等裁判所に関する記載が削除された(第2条(1)(i))。特許出願日が明確にされた(第45条)。特許登録簿への記載事項が明確にされた(第67条)。特許代理人について明確にされた(第128条)。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPOAct/1_113_1_The_Patents_Act_1970_-_Updated_till_23_June_2017.pdf
201723/06/2017
(日本語)
a: インド1970年特許法、2017年6月23日公布
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-tokkyo.pdf
(公用語・英語)
a: Indian Patent Act 1970, The Patents (Amendment) Act 2005
b: 拒絶理由解消期間の設定。審査請求制度の導入、既存の物質の新規な使用を不特許事由から除外。食品・薬品、医薬品分野における物質も特許の対象に。付与前および付与後異議申立制度の導入。管理官の指示や指令に対する知的財産審判委員会へ不服申立制度の導入。
http://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPOAct/1_69_1_patent_2005.pdf
200504/04/2005
(日本語)
a: インド1970年特許法、インド2005年(改正)特許法
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6086233/www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm
(公用語・英語)
a: Patents (Amendment) Rules, 2021
b:「教育機関」が定義された(規則2)。手数料に教育機関に関する事項が追加された(規則7)。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/Patents__Amendment__Rules__2021.pdf
202121/09/2021
(日本語)
a: 改正特許規則(2021)
(なし)
【参考】https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2021/in/20210930.pdf
(公用語・英語)
a: Patents (Amendment) Rules, 2020
b: 優先権書類の提出要件が改正された(規則21)。実施報告書の提出方法が改正された(規則131,Form27)
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/patents_amendment_rules_2020.pdf
202019/10/2020
(日本語)
a: 改正特許規則(2020)
(なし)
【参考】https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2020/in/news_20201021.pdf
(公用語・英語)
a: Patents Amendment Rules, 2019
b: 早期審査の要件が改正された(規則24C)。書類の配達および送達方法が改正された(規則6)。スタートアップに関する手数料の手続きが変更された(規則7)。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/patents_amendment_rules_2019.pdf
201917/09/2019
(日本語)
a: 改正特許規則(2019)
(なし)
【参考】https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2019/in/news_20190920.pdf
(公用語・英語)
a: Indian Patent Rules 2003, The Patents (Amendment) Rules 2017
b:「スタートアップ」が定義された。
http://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPORule/1_76_1_1_76_1_2018-01-02__2_.pdf
201701/12/2017
(日本語)
a: インド2003年特許規則、インド2017年(改正)特許規則
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-tokkyo_kisoku.pdf
(公用語・英語)
a: Indian Patent Rules 2003, The Patents (Amendment) Rules 2016
b: 拒絶理由解消期間が6か月に短縮され、最大で3か月延長できるようになった。スタートアップという出願人の区分が追加された。出願の取下げが無料となった。審査報告書が発送されていない出願を取り下げた場合に一部の審査請求料金が払い戻しされる制度が設けられた。請求項や要約書に参照番号を挿入することが必須になった。ビデオ会議で聴聞を受けることが可能になった。
http://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPORule/1_14_1_patent-rules-2006.pdf
201616/05/2016
(日本語)
a: インド特許規則2003年、インド特許規則2006年改正
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/998256/www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm
関連記事:「インドにおける特許出願の補正の制限」(2023.01.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27695/

関連記事:「インドにおける特許異議申立制度-付与前異議申立と付与後異議申立」(2023.02.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/33767/

関連記事:「インドにおける特許の実施報告制度(2020年特許規則改正)」(2022.07.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/license/24051/

関連記事:「インド特許出願における優先権主張の手続(2020年特許規則改正)」(2022.02.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/22598/

関連記事:「インドにおける特許出願制度概要」(2019.06.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17416/

関連記事:「インドの特許関連の法律、規則、審査マニュアル」(2019/02/14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16518/

関連記事:「インドにおける特許年金制度の概要」(2018.05.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15053/


意匠(公用語・英語)
a: Indian Design Act 2000
b: 意匠法1911年はインド意匠法2000年により置き換えられた。
http://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPOAct/1_58_1_design_act_1_.PDF
200025/05/2000
(日本語)
a: インド意匠法2000年
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-ishou.pdf
(公用語・英語)
a: Design (Amendment) Rule 2021
b: 「スタートアップ」のカテゴリーを定義した(規則2)。諸手続き費用を改正した(規則5)。ロカルノ分類の採用を規定した(規則10)。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/The_Designs__amendment___Rules__2021.pdf
202125/01/2021
(日本語)
a: 改正意匠規則(2021)
(なし)
【参考】https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2021/in/20210201.pdf
(公用語・英語)
a: Indian Design Rule 2001, The Design (Amendment) Rule 2014
b: 出願人の区分として小規模事業体が追加された。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/1_23_1_design-amendment-rules-2014.pdf
201430/12/2014
(日本語)
a: インド2001年意匠規則、インド2014年(改正)意匠規則
(なし)
(公用語・英語)
a: Indian Design Rule 2001, The Design (Amendment) Rule 2008
b: 書類を電子的に提出が可能になった。書類や図面の書式が定義された。拒絶理由解消期間の延長の規定が設けられた。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/1_26_1_design-rules-2008.pdf
200817/06/2008
(日本語)
a: インド2001年意匠規則、インド2008年(改正)意匠規則2008年改正
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-ishou_kisoku.pdf
関連記事:「日本とインドにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較」(2023.11.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/37673/

関連記事:「インド法における意匠保護に関する機能性と可視性の概念」(2020.10.22))
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19532/

関連記事:「インドにおける画像意匠の保護制度」(2020.10.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19502/

関連記事:「日本とインドにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較」(2019.10.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17762/

関連記事:「インドの意匠関連の法律、規則、審査マニュアル」(2019.03.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16711/

関連記事:「インドにおける意匠出願制度概要」(2019.06.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17418/

関連記事:「日本とインドの意匠出願における実体審査制度の有無に関する比較」(2015.07.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/9269/

関連記事:「インドにおける意匠出願の補正」(2015.03.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8156/


商標(公用語・英語)
a: Indian Trademarks Act 1999, The Trademarks (Amendment) Act 2010
b: 商標は出願日から18か月以内に登録されなければならないこととなった。商標の公告から4か月以内に異議申立が可能となった。テキスタイル商品およびテキスタイル商標の概念が削除された。マドプロ出願が導入された。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPOAct/1_46_1_tmr-amendment-act-2010.pdf
201021/09/2010
(日本語)
a: インド1999年商標法、インド2010年(改正)商標法
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-shouhyou.pdf
(公用語・英語)
a: Indian Trademarks Rules 2002, The Trademarks (Amendment) Rules 2017
b: 庁費用が上がった。出願人の区分にスタートアップが追加された。電子出願が促進された。周知商標の認定手続きが導入された。早期審査請求が可能になった。音商標の登録が可能になった。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPORule/1_69_1_Trade_Marks_Rules_2017.pdf
201703/06/2017
(日本語) a: インド2002年商標規則、インド2017年(改正)商標規則
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-shouhyou_kisoku.pdf
(公用語・ヒンズー語/英語)
a: Indian Trademarks Rules 2002, The Trademarks (Amendment) Rules 2013
b: 庁費用が上がった。
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPORule/1_58_1_tmr-amendment-rules-13september2013.pdf
201301/08/2013
(日本語)
a: インド2002年商標規則、インド2013年改正商標規則
(なし)
関連記事:「インドにおける商標異議申立制度」(2023.03.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/34075/

関連記事:「インドにおける商標のコンセント制度について」(2023.01.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27693/

関連記事:「インドにおけるブランド保護」(2021.06.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/20269/

関連記事:「インド商標法に基づく拒絶理由に関する調査報告書」(2021.08.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20765/

関連記事:「インドにおける商標制度のまとめ-実体編」(2020.06.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18629/

関連記事:「インドにおける商標制度のまとめ-手続編」(2020.10.08)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19497/

関連記事:「インドの商標関連の法律、規則、審査マニュアル」(2019.03.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16714/

関連記事:「インドにおける商標出願制度概要」(2019.07.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17532/

関連記事:「インドにおける悪意(Bad-faith)の商標出願に関する法制度および運用」(2019.2.7)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16493/

関連記事:「インドにおける連続(シリーズ)商標制度」(2018.09.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15836/

関連記事:「インドにおける証明商標制度」(2015.11.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8548/


著作権法(公用語・英語)
a: Indian Copyright Act 1957, The Indian Copyright (Amendment) Act 2012
b: 「商業的貸与」が定義された。実演家の排他的権利が再定義された。録画物が定義された。著作権委員会の構成などが定義された。強制利用許諾が設定された。WCTおよびWPPTの規定に準拠した。
https://copyright.gov.in/Documents/CRACT_AMNDMNT_2012.pdf
201207/06/2012
(日本語)
a. インド1957年著作権法、インド2012年(改正)著作権法
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/in/ip/pdf/copyright_201809.pdf
不正競争インドにはこの法律に相当する法律はない。

(2) 審査基準等

審査基準、ガイドライン、マニュアル等
a:審査基準等の名称
URL:
最終更新
b:(DD/MM/YYYY)
特許(公用語・英語)
a: Manual of Patent Office Practice and Procedure
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/Manual_for_Patent_Office_Practice_and_Procedure_.pdf
26/11/2019
(日本語)
a: 特許庁の特許実務及び手続の手引(インド)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/in/ip/pdf/201103_tokkyo_01.pdf(2011年修正)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2019/in/news_20191209.pdf(2019年改正概要)
意匠(公用語・英語)
a: Manual of Design Office Practice and Procedure
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPOGuidelinesManuals/1_30_1_manual-designs-practice-and-procedure.pdf
(日本語)
a: 意匠審査の実務及び手続の手引
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/in/ip/pdf/2011_ishou_01.pdf
商標(公用語・英語)
a: Manual of Trademarks Practice and Procedure (draft)
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPOGuidelinesManuals/1_33_1_public-notice-11march2015.pdf
10/03/2015
(日本語)
a: 商標マニュアル(案)実務と手引き
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/in/ip/pdf/manual_of_trade_marks_201503_jp.pdf

(3) 主な条約・協定(加盟状況)

条約名加盟加盟予定
(YYYY)
未加盟
(1) パリ条約
 (工業所有権の保護に関するパリ条約)

1998

(     )
(2) PCT
 (特許協力条約)

1998

(     )
(3) TRIPs
 (知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)

1995

(     )
(4) PLT
 (特許法条約)

(     )

未加盟
(5) IPC
 (国際特許分類に関するストラスブール協定)

(     )

未加盟
(6) ハーグ協定
 (意匠の国際登録に関するハーグ協定)

(     )

未加盟
(7) ロカルノ協定
 (意匠の国際分類を定めるロカルノ協定)

2019

(     )
(8) マドリッド協定
 (標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書)

2013

(     )
(9) TLT
 (商標法条約)

(     )

未加盟
(10) STLT
 (商標法に関するシンガポール条約)

(     )

未加盟
(11) ニース協定
 (標章の登録のため商品及びサービスの国際分類に関するニース協定)

2019

(     )
(12) ベルヌ条約
 (文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)

1928

(     )
(13) WCT
 (著作権に関する世界知的所有権機関条約)

2018

(     )
(14) WPPT
 (実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)

2018

(     )

3. 料金表

[特許](公用語・英語)
Title: The First Schedule Fees
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/schedules/Schedule_1.pdf
[意匠] (公用語・英語)
Title: The Designs(amendment), Rules, 2021 
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/The_Designs__amendment___Rules__2021.pdf
[商標] (公用語・英語)
Title: Forms and Fees
https://ipindia.gov.in/form-and-fees-tm.htm 
関連記事:「インドにおける産業財産権権利化費用」(2019.8.8)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/17617/ 

関連記事:「インドにおける特許年金制度の概要」(2018.5.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15053/

インドにおけるEコマースで商標を使用する際の留意点(前編)

記事本文はこちらをご覧ください。

インドにおけるEコマースで商標を使用する際の留意点(後編)

記事本文はこちらをご覧ください。

インドにおける知的財産訴訟の統計データ

1. インドにおける知的財産専門部署の導入による知的財産訴訟の改革 
 2021年4月4日に施行された「2021年審判所改革(合理化および勤務条件)令」により、知的財産審判委員会(IPAB)は廃止された。IPABは、特許庁および商標登録官の決定に対する審判請求を審理するための審判機関として2003年に設立されたが、各種審判所の機能強化および合理化を目的とした広範な改革の一環として解散された。IPABの廃止および2021年審判所改革法の施行により、IPABに継続中の知的財産事件と、1999年商標法、2001年植物品種および農業者の権利保護法、1970年特許法、1957年著作権法および1999年商品の地理的表示(登録および保護)法に基づいてIPABに提起されたであろう新たな知的財産事件のすべてが、IPABの支所が所在していたデリー、ムンバイ、コルカタ、チェンナイ、アーメダバードを所管する各高等裁判所に移管されることとなった。 
 今後、新たに提起される知的財産審判事件については、対象とされる知的財産の出願された特許庁(デリー、ムンバイ、コルカタ、チェンナイ)を管轄する高等裁判所に属することとなった。これは、既存の司法システムの中で知的財産権紛争の専門的な知識を確保し、より効率的な解決を図ることを目的としている。また、2022年にデリー高等裁判所、2023年にマドラス高等裁判所(在チェンナイ)に知的財産部が設置され、最近では、コルカタ高等裁判所においても知的財産を所管するための規則案が通知されており、近いうちにコルカタ高等裁判所にも知的財産部が設置される予定である。なお、知的財産部が設置されていない高等裁判所では、通常の上訴法廷で審理される。

2. 分析方法および分析期間 
 インドの知的財産訴訟に関しては、すべての裁判所の訴訟情報を網羅した単一のデータベースが存在しないため、公開された報告書等により知的財産訴訟の進捗状況を確認するとともに、デリー高等裁判所とボンベイ最高裁判所の公式ウェブサイトで訴訟記録を調査した。両裁判所は、同国の知的財産訴訟の約85%を扱っていると推定されている。 
 なお、各裁判所の公式サイトにおける訴訟情報の公表状況は、全てのデータを考慮したものではなく、データの統計的な正確性を保証するものではない。また、複数の知的財産権が侵害されていると主張されている場合もあり、同一の訴訟が複数回計上されることによって、全体の数値が実際の件数と若干異なる場合がある。 
 データの集計期間は2014年1月から2023年12月までであるが、2021年から2023年までのデータは、デリー高等裁判所のみに関するものである。 
 また、デリー高等裁判所は、「デリー高等裁判所知的財産部門年次報告書2022-23」を公表しており、知的財産部門の導入後の訴訟動向が提供されている。 
 本稿で提供されたデータの分析は、インドにおける知的財産訴訟の成長について楽観的な見通しを与えてくれる。

3. 新たに提起された知的財産訴訟の分析 
3-1. 2014-2016年 
 2014、2015年および2016年に新たに提起された知的財産関連の訴訟件数は、以下のとおりである。

2014年2015年2016年
商標446440495
著作権141167230
特許154054
意匠301015
その他のIP209
合計634657803

 2014年、2015年、2016年には、毎年平均約697件の訴訟が提起され、そのピークは2016年であった。 
 2014年に新たに提起された知的財産に関する訴訟のうち、約7割が商標に関するもの(商標権侵害、詐称通用等)であったが、2015年には67%、2016年には62%となっている。 
 著作権および著作隣接権に関する訴訟の割合は、2014年の22%、2015年の25.4%から2016年には28.6%と大幅に増加している。 
 特許権および意匠権に関する訴訟は、商標および著作権に関する訴訟に比べて圧倒的に少ないが、2014年には7%であった特許権および意匠権に関する訴訟は、2015年には7.6%、2016年には8.6%と増加している。

3-2. 2017-2019年 
 2017、2018年および2019年に新たに提起された知的財産関連の訴訟件数は、以下のとおりである。

2017年2018年2019年
商標316598674
著作権182293368
特許5511844
設計151714
その他のIP974
合計57710331104

 毎年の訴訟件数は、2017年には若干減少したものの、2018年以降急速に増加しており、2019年の訴訟件数は、2014年の634件から1104件に増加している。 
 2017年に提起された知的財産権に関する新規訴訟のうち、商標(商標権侵害・詐称通用等)に関するものは約55%であったが、2018年には58%、2019年には61%と増加している。 
 著作権および著作隣接権に関する訴訟の比率は、2017年には31.5%、2018年には28.4%、2019年には33.3%と引き続き増加傾向にあり、特許および意匠に関する訴訟は、2017年には12%、2018年には13%と一貫して増加傾向にあったが、2019年には5.25%に減少している。

3-3. 2020-2023年 
 2020年以降に新たに提起された知的財産権に関する訴訟件数は、以下のとおりである。

2020年2021年2022年2023年
商標412379347513
著作権215164114227
特許43403855
設計14131228
その他のIP4321
合計688599514824

 毎年の訴訟件数は、2020年から2022年にかけて、世界的なCOVID-19の流行の影響もあり減少したが、2023年には若干ではあるが再び増加しており、今後さらに増加することが予想される。 
 2020年に新たに提起された知的財産権に関する訴訟のうち、商標(商標権侵害・詐称通用等)に関するものは約6割あり、2021年には63.3%、2022年には67.5%、2023年には62.2%となっている。 
 著作権および著作隣接権に係る訴訟の比率は、2020年には31.25%、2021年には27.3%、2022年には22.1%、2023年には27.5%と20~30%台で推移しているが、特許および意匠に係る訴訟の比率は、2020年以降増加傾向にあり、全知的財産訴訟のうち特許権および意匠権に係る訴訟の比率は8.3%であったが、2021年には8.8%に上昇し、2022年には更に増加して10%となり、2023年は横ばいであった。 
 上記の数字は、インドの知的財産環境が、成長過程にあり、かつイノベーションと知的資産の保護に積極的な姿勢であるというダイナミズムを示していることを表している。

4. 提起された知的財産訴訟において認められた仮差止命令の分析 
 2014年から2023年までの仮差止処分の内訳は、以下のとおりである。

仮差止処分命令(%)仮差止命令が認められなかった件数
2014年397(62.6)237
2015年334(50.8)323
2016年312(38.9)491
2017年205(35.5)372
2018年331(34.3)634
2019年306(27.7)798
2020年321(46.7)367
2021年263(23.8)841
2022年153(29.8)361
2023年314(38.1)510

 2014年に提起された知的財産訴訟のうち、裁判所が仮差止命令を発令したのは、62.6%である。 
 2015年には、判決が出るまでの間に、50.8%の事件が原告の権利を保護するために仮差止命令を発令したが、2016年には38.8%に減少し、2017年には35.5%にさらに減少し、2018年には34.3%に減少し、2019年には27.7%とさらに減少した。 
 2020年には、裁判所は46.7%の事件で仮差止命令の発令を支持しているようであるが、2021年には23.8%に、2022年には29.8%に、再び減少している。2023年には、裁判所は38%の事件で差止命令を発令した。 
 インドの裁判所は、知的財産訴訟における仮差止命令の発令には一般的に慎重であるが、権利保有者が一応の根拠に基づいて侵害を証明できる場合には、積極的かつ迅速に仮差止命令を発令し、調査活動を行う地方委員を任命する。調査活動は、当事者による調査、証拠調べ、物件への立ち入りなどの申請に基づいて、裁判所が任命した地方委員によって実施される。

5. 知的財産訴訟の最終処分の分析(2014-2023) 
 2014年から2023年までの裁判所による差止請求に対する最終処分結果を、以下に示す。

裁判所の最終処分和解/取り下げ合計
2014年217436653
2015年260424684
2016年251221472
2017年156334490
2018年149292441
2019年360204564
2020年411440851
2021年213179392
2022年11325138
2023年11473187

 インドの裁判所は、多くの事件において、早期の裁判外の和解を推奨する傾向が見られる。インドに提起された知的財産訴訟の大半は、当事者が望む場合には、調停その他の紛争解決手段に付託されている。2014年から2018年まで、処理された事件全体のおよそ2/3が和解または取り下げとなっている。2019年には、事件の和解または取下げは36%に減少したが、裁判所による事件の処理は増加しているようである。2020年から2023年にかけても同様の傾向が見られるが、事件が係属中であり、多くの事件について最終処分の結果が得られないため、データが正確でない可能性がある。
 しかし、2023年4月の「デリー高等裁判所知的財産部年次報告書2022-23」において、知的財産権問題におけるADRメカニズムの利用が極めて成功していることが報告され、統計によれば、デリー高等裁判所では斡旋・調停センター送致事件の80%から85%が解決されている。

6. まとめ 
 2005年の施策により特許訴訟が増加したが、インドにおける知的財産訴訟に関する統計データによれば、依然として商標権と著作権の行使に関しての知的財産訴訟の提起が多くを占めている。 
 裁判所はまた、長年にわたり、知的財産訴訟における紛争の早期解決のための調停手続を奨励してきており、この手続により、裁判所は、未決の訴訟の多くを解決することができている。 
 立法改革、規制調整、技術の進歩によって推進されたインドの知的財産環境のダイナミックな変化は、進化するグローバルなイノベーション環境に適応するためのインドの積極的な姿勢を示している。迅速な特許審査プログラムの実施と商標出願の合理化は、多様な産業にわたるイノベーションの育成と促進に対するインドの目指す姿勢の明確な表れである。裁判所の枠組みの中に知的財産部門(IPD)を設立することは、知的財産事件を解決する専門の手段を提供し、より強固で効率的な法的手段を確保するための重要な一歩である。インドが知的財産という複雑な分野を進み続ける中で、これらの進歩的なイニシアティブと戦略的発展は、インドを活気に満ちた包括的なイノベーション・エコシステムの育成の最前線に位置付ける。将来、インドが経済的・技術的発展をする上で、必ずや知的財産がより不可欠な役割を果たすことになるであろう。

インドにおける新規性の審査基準に関する一般的な留意点(前編)

1. 記載個所
 発明の新規性については、インド特許法第2条(1)(j)、第13条等に規定されている。

第2条 定義及び解釈 
(1)(j)「発明」とは、進歩性を含み、かつ、産業上利用可能な新規の製品又は方法をいう。 
(第2条の他の項号は省略) 
 
第13 条 先の公開又は先のクレームによる先発明についての調査 
(1)第12条に基づいて特許出願が付託された審査官は、完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされた限りにおける当該発明が、次の事項に該当するか否かを確認するため調査しなければならない。 
(a)当該発明が、インドにおいて行われた特許出願であって1912年1月1日以後の日付を有するものについて提出された何れかの明細書において、当該出願人の完全明細書の提出日前に公開されたことによって開示されたか否か 
(b)当該発明が、当該出願人の完全明細書の提出日以後に公開された他の完全明細書であってインドにおいて行われ、かつ、前記の日付か又は前記の日付より先の優先日を主張する特許出願について提出されたものの何れかのクレーム中にクレームされているか否か 
(2)更に,審査官は、完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされた限りにおける当該発明が、当該出願人の完全明細書の提出日前にインド又は他の領域において(1)にいうもの以外の何らかの書類で開示されたか否かを確認するため、当該調査を実施しなければならない。 
(第13条の他の項号は省略) 
 
第25条 特許に対する異議申立 
(1)特許出願が公開されたが特許が付与されていない場合は、何人も、次の何れかの理由によって特許付与に対する異議を長官に書面で申し立てることができる。すなわち、 
(d)完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされた限りにおける発明が、当該クレームの優先日前にインドにおいて公然と知られ又は公然と実施されたこと 
(第25条の他の項号は省略) 
 
第64条 特許の取消 
(1)本法の規定に従うことを条件として、特許については、その付与が本法施行の前か後かを問わず、利害関係人若しくは中央政府の申立に基づいて審判部が又は特許侵害訴訟における反訴に基づいて高等裁判所が、次の理由の何れかによって、これを取り消すことができる。すなわち、 
(f)完全明細書の何れかのクレーム中にクレームされている限りにおける発明が、当該クレームの優先日前に、インドにおいて公然と知られ若しくは公然と実施されていたもの又はインド若しくはその他の領域において公開されていたものに鑑みて、自明であるか若しくは進歩性を含まないこと 
(第64条の他の項号は省略) 

 また、特許法には下記のように第2条(1)(l)があり、「新規発明」が定義されている。この規定だけを見ると、公知、公用および公開文書による開示のいずれも世界基準を採用していると解釈できる。しかし、特許法第13条、第25条、第64条、および後述する「インド特許庁実務及び手続マニュアル」によれば、国内公知または国内公用によって新規性を失うとされているので、注意が必要である。

第2条 定義及び解釈 
(1)(l)「新規発明」とは、完全明細書による特許出願日前にインド又は世界の何れかの国において何らかの書類における公開により予測されなかったか又は実施されなかった何らかの発明又は技術、すなわち、主題が公用でなかったか又は技術水準の一部を構成していない発明又は技術をいう。 
(第2条の他の項号は省略) 

 新規性に関する審査基準については、「インド特許出願調査及び審査ガイドライン」(以下、「インド特許審査ガイドライン」という。)の「3.4.1 発明の新規性」、および「インド特許庁実務及び手続マニュアル」(以下、「インド特許庁実務マニュアル」という。)の「09.03.02 新規性」に規定がある。

2. 基本的な考え方
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第1節「2. 新規性の判断」に対応するインド特許審査ガイドラインおよび/またはインド特許庁実務マニュアル(以下、「インド特許審査ガイドライン」および「インド特許庁実務マニュアル」を合わせて「インド特許審査基準」という。)は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインでは、審査官による新規性の判断について、次のように述べられている。

 発明の新規性を判断するために、審査官は、特許文献や非特許文献を調査し、特許出願された発明の主題に関連する先行文書による開示や先行出願のクレームにおける開示の有無を確認する。これは、インド特許庁が特許出願の審査を行うための事務処理の一環である。

 新規性の欠如を証明するには、明示的または黙示的に、クレームの開示が単一の文書内に完全に含まれている必要がある。複数の文書を引用する場合は、それぞれが独立しているか、引用された文書が連続した文書を形成するような方法で結合されている必要がある。

 ただし、開示の累積的な影響を考慮することはできないし、複数の文書から得られる要素の組み合わせを形成することによって、新規性の欠如を確立することもできない。複数の文書から得られる要素を組み合わせることは、自明性を主張する場合にのみ行うことができる。

3. 請求項に記載された発明の認定
3-1. 請求項に記載された発明の認定
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「2. 請求項に係る発明の認定」第一段落に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インドでは、特許の範囲は主にクレームによって規定される。審査官は、クレームで使用されている用語に、通常用いられる慣習的な意味を与えて解釈する。ただし、これらの用語に関して曖昧さが生じたり、説明が必要であったりする場合には、審査官は明細書および添付図面を参照して、文脈および詳細を確認する。

 明細書および図面は、クレームに係る発明の性質を明らかにするものであるが、そこで言及される特定の事例、または実施形態は、クレームで明示的に記載されない限り、必ずしも特許の範囲を制限するものではない。

 依然として曖昧さが残る場合、審査官は、出願時における発明の技術分野における共通一般知識を考慮に入れることができる。これには、出願時の一般的な知識と実務を考慮して、関連する技術分野の当業者の観点から、クレームを理解することができることを意味している。

3-2. 請求項に記載された発明の認定における留意点
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「2. 請求項に係る発明の認定」第二段落に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 特許出願のクレームは、出願人が求める保護の境界を示している。明細書および図面は、特に曖昧さが生じた場合に、これらの請求項を解釈および理解するために使用される。審査官は、明細書や図面を優先して特許請求の範囲に記載されている明示的な用語を無視することはできない。

 特許請求の範囲と明細書の間に矛盾がある場合、一貫性を確保するためにクレームまたは明細書を修正することによって矛盾を修正する責任は、通常、出願人にある。明細書と図面は、発明の背景と詳細を提供するが、クレームが保護範囲を決定するための主要なツールである(インド特許法第10条)。審査官の仕事は、これらのクレームが、明確であり、明細書によって裏付けられており、先行技術に比べて新規であることを確認することである。したがって、矛盾が生じた場合、審査官は、出願人にそれを補正する機会を与える。

4. 引用発明の認定
4-1. 先行技術
4-1-1. 先行技術になるか
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1 先行技術」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 一般原則

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、発明は、特許出願日または優先日のいずれか早い日より前に、世界のいずれかの文書で公表されたり、インドにおける特許出願で先行してクレームされたり、口頭であれ何であれ、インドやその他の地域社会または先住民社会で利用可能な知識の一部を形成したり、使用されたりしていない場合、すなわち、その主題が公知となっていない場合、または、その主題が技術水準の一部を形成していない場合に、新規な発明とみなされる。

 日本では、出願前かどうかは、時、分、秒の単位で判断される。外国での公知の場合は、外国の時間を日本時間に換算したものを基準とする。しかし、インドでは、日の単位のみが考慮され、時間、分、秒の単位は考慮されない。

4-1-2. 頒布された刊行物に記載された発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節3.1.1「(1)刊行物に記載された発明」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、手数料の支払の要否にかかわらず、公衆が閲覧することができる場合には、いかなる文献も公開されたものとみなされ、したがって、先行技術の一部を構成する。また、先行公開は普及の程度には関係しない。一人の公衆に、秘密保持義務を負わせることなく文献を開示することは、その文献を公衆に利用可能にすることになる。

 インド特許法は、先行公開について日本と同じ基準に従っている。インドでは、日本と同様に、誰かが実際にアクセスしたか、読んだかでなく、出願日前に公衆がアクセス可能な情報であることが重視される。日本が刊行物の記載内容や当業者が導き出すことのできる事項としているのと同様に、インドの制度も、その内容を当業者が理解できるような方法で公衆に提供されているかどうかに重点を置いている。ただし、インドのガイドラインでは、日本の審査基準のように「記載されているに等しい事項」という文言は明示的に使用されていない。

 また、審査官は、優先日前に公衆に開示されているいかなる文献をも引用することができる。審査官が、不完全な文献(公衆に利用可能であるが未完成である文献)を引用すべきではないということは、法令やガイドラインで特に禁止されていない。

4-1-3. 刊行物の頒布時期の推定
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節3.1.1「(2) 頒布された時期の取扱い」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、文献に記載されている事項が、世界のどこで、どのような方法、またはどのような言語で開示されたとしても、最初に公衆に利用可能となった日に、その事項が先行技術の一部であるとみなされる。

 ただし、インド特許審査ガイドラインでは、他の関連要因に基づいて正確な公開時期を推定するという日本の審査基準にあるような詳細なレベルには踏み込んでいない。

4-1-4. 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1.2 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(第29条第1項第3号)」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、どのような方法や言語で開示されたとしても、その事項は、最初に一般に公開された時点で最先端技術の一部とみなされる。したがって、秘密保持の義務を負わずに一人の公衆に通信を行うことは、その通信を公衆に公開することと同じであり、その事項は先行技術の一部を構成する。

 インドでは、先行技術の概念はあらゆる形式の開示に拡張されており、これにはインターネットまたはその他の電子的手段を通じて行われる開示も含まれる。何人かが実際にウェブページなどにアクセスしたという事実は必要ではない。

4-1-5. 公然知られた発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1.3 公然知られた発明(第29条第1項第1号)」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト、インド特許庁実務マニュアル09.03.02 新規性 2.

(2) 異なる事項または留意点
 前述のとおり、インド特許審査ガイドラインによれば、どのような方法や言語で開示されたとしても、その事項は、最初に一般に開示された時点で最先端技術の一部とみなされる。また、インド特許庁実務マニュアルでは、インドにおける優先日前の公知によって開示されていなかった発明は、新規とみなされる、とされている。

4-1-6. 公然実施をされた発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.1.4 公然実施をされた発明(第29条第1項第2号)」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト、インド特許庁実務マニュアル09.03.02 新規性 2.

(2) 異なる事項または留意点
 前述のとおり、インド特許審査ガイドラインによれば、どのような方法や言語で開示されたとしても、その事項は、最初に一般に開示された時点で最先端技術の一部とみなされる。また、インド特許庁実務マニュアルでは、公用に関する判断について、優先日前のインドにおける使用によって開示されていなかった発明は、新規とみなされるとしており、国内公用を基準としていると考えられる。

 インドでは、発明が優先日より前にパブリックドメインで使用されている場合、その発明は先行技術として考慮されることとなるが、これは、日本の審査基準に記載されている「公然実施された発明」に類似している。

 Lallubhai Chakubhai vs.Chimanlal Chunilal & Co. (A.I.R.1936 Bom. 99)では、ボンベイ高等裁判所は、発明が取引目的で使用される場合、発明者によるものであれ、他の当事者によるものであれ、それは公共使用とみなされると指摘した。さらに、製品を公然と販売するということは、その使用が単なるテスト目的ではなく、ビジネス目的であることを明確に示している。ただし、販売が公共使用の証拠とみなされるには、透明性があり、通常の事業活動の一環として行われなければならないとした。

(後編に続く)

インドにおける新規性の審査基準に関する一般的な留意点(後編)

(前編から続く)

5. 請求項に係る発明と引用発明との対比
5-1. 対比の一般手法
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「4.1 対比の一般手法」に対応するインド特許審査基準(「インド特許審査ガイドライン」および/または「インド特許庁実務マニュアル」)の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン5.2、インド特許庁実務マニュアル09.03.02

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによれば、すべての独立請求項について簡潔かつ正確な陳述を作成した後、審査官は、特定されたすべての技術的特徴とそれらの間の機能的関係を開示する文献を検索する。

 検索された文献に発明の目的に寄与するすべての技術的特徴が含まれている場合、その文献によって発明の新規性は否定される。これは、目的または技術的特徴が暗黙的に開示されている場合であってもあり得る。新規性の欠如を証明するには、先行開示が、単一の文書内に完全に含まれている必要がある。複数の文書を引用する場合は、それぞれが独立しているか、引用された文献が連続した文書を形成するような方法で結合されている必要がある。

 さらに、インド特許庁実務マニュアルでは、先行技術は明示的または黙示的な方法で発明を開示する必要があると述べており、また、新規性の判断においては、先行技術文献の組み合わせは認められない。

5-2. 上位概念または下位概念の引用発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「3.2 先行技術を示す証拠が上位概念または下位概念で発明を表現している場合の取扱い」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許庁実務マニュアル09.03.02

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許庁実務マニュアルでは、先行技術における一般的な開示が必ずしも特定の開示の新規性を否定するわけではないと述べている。例えば、金属製のバネでは、銅製のバネの新規性が失われるわけではない。しかし、先行技術における特定の開示は、一般的な開示の新規性を否定する。例えば、銅製のバネによって、金属製のバネの新規性は否定される。

5-3. 請求項に係る発明の下位概念と引用発明とを対比する手法
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「4.2 請求項に係る発明の下位概念と引用発明とを対比する手法」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査ガイドラインによると、クレームがいずれかの選択肢で特定される場合、または数値範囲(例:組成成分、温度等)を特定して発明を定義している場合、これらの選択肢の1つ、またはこの範囲内に含まれる1つの数値例がすでに存在する場合、その発明の新規性は否定される。

 したがって、5-2.で述べたように、一般的に定義された発明に関するクレームの新規性を否定するには、具体例を示すだけで十分である。例えば、金属製のコイルばねの開示は、弾力性のある手段に対する発明を開示している。他方、一般的な開示は、より具体的な発明に関するクレームの新規性を否定することはないので、金属製コイルバネに関する先のクレームは、銅製のそのようなバネを特定する後のクレームの新規性を否定するために使用することはできない。

 しかし、場合によっては、比較的小さく限定された可能性のある選択肢の技術分野の開示が、すべての部材の開示であるとみなされることもある。例えば、「流体」は、文脈によっては、液体と気体の両方を開示しているとみなされることがあり、電気モーターへの言及は、直列巻型と分巻型の両方の使用を開示しているとみなされることがある。

5-4. 対比の際に本願の出願時の技術常識を参酌する手法
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第3節「4.3 対比の際に本願の出願時の技術常識を参酌する手法」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インドの審査官は、先行技術文献を理解して解釈するために、出願時の一般技術常識を考慮に入れるので、日本の実務と変わらないと考えられる。

6. 特定の表現を有する請求項についての取扱い
6-1. 作用、機能、性質または特性を用いて物を特定しようとする記載がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「2. 作用、機能、性質または特性を用いて物を特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 日本と同様に、インドでもクレームがその動作、機能、性質、特性によって物を特定する場合、その機能や特性を有する、または実行するすべての物を包含すると解釈される。

 クレームがその機能、または特性の観点から定義されており、クレームに記載された発明を従来技術と直接比較することが困難になる場合、審査官は、出願人にクレームの明確化のために補正を認める場合があり得る。

6-2. 物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「3. 物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インド特許審査基準には、用途限定の発明について踏み込んだ記述はないが、インド特許法第3条(d)によれば、既知の物質の既知の効能を向上させない新しい形態の単なる発見、既知の物質の新しい性質や新しい用途の単なる発見、既知のプロセス、機械、装置の単なる使用は、そのような既知のプロセスが新しい製品をもたらすか、少なくとも1つの新しい反応物を用いるのでない限り、特許を受けることはできないとされる。

6-3. サブコンビネーションの発明
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「4. サブコンビネーションの発明を「他のサブコンビネーション」に関する事項を用いて特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 組み合わせ発明と、そのサブコンビネーションの特許性を評価する際、審査官は、各コンポーネントの進歩性と新規性、さらに組み合わせ全体を検討する。サブコンビネーションの発明が特許を受けるためには、それが新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有することが必要である。

6-4. 製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「5. 製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 対応する記載はない。

(2) 異なる事項または留意点
 インドでは、特定の状況において、製造プロセスごとに製品をクレームする「プロダクト・バイ・プロセス」クレームが認められることがある。インド特許審査基準では、プロダクト・バイ・プロセスのクレームについて言及されていないが、医薬品分野における特許出願の審査のガイドラインには7.9にプロダクト・バイ・プロセスのクレームについての規定がある。それによれば、プロダクト・バイ・プロセスのクレームでは、出願人は、プロセス用語で定義された製品が、従来技術の製品によっては開示されていないことを示さなければならない。すなわち、プロセスの新規性または進歩性に関係なく、製品そのものの新規性および進歩性の要件を満たさなければならない。

6-5. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合
 日本の特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節「6. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合」に対応するインド特許審査基準の記載は、以下のとおりである。

(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
 インド特許審査ガイドライン3.4.1 新規性の判断 コンセプト

(2) 異なる事項または留意点
 前述の「5-3. 請求項に係る発明の下位概念と引用発明とを対比する手法」を参照されたい。

7. その他
 これまでに記載した事項以外で、日本の実務者が理解することが好ましい事項、またはインドの審査基準に特有の事項ついては、以下のとおりである。

 特になし。

インドにおける商標の権利情報へのアクセス方法

 インドにおける商標の権利情報を検索するには、インド特許意匠商標総局(以下、「CGPDTM」という。)の商標権利状況検索サイト「Registered Trade Marks and Application Status Information(登録商標及び出願状況情報)」にアクセスする必要がある。CGPDTMのトップページ(https://ipindia.gov.in/)からメニューを選択してアクセスするか、もしくは下記サイトに直接アクセスする方法がある。
・CGPDTM 商標原簿サイト(Trade Marks Registry)(https://ipindiaonline.gov.in/eregister/eregister.aspx
※本稿作成時現在、アクセス可能な時間帯に制限あり(稿末の【ソース】の注記参照)。

(1) CGPDTMトップページからのアクセス

図1 CGPDTM トップページ

 CGPDTMのトップページ(https://ipindia.gov.in/)(図1)にアクセスする。トップページ上部のメニューバー中央にある「Trade Marks(商標)」から、「Related Links(関連リンク)」、「Trade Mark Status(商標ステータス)」の順にクリックすると、「Trade Mark Registry Registered Trade Marks and Application Status Information(商標権利状況検索サイト)」(図2)にアクセスできる。

図2 「Trade Mark Registry Registered Trade Marks and Application Status Information(商標権利状況検索サイト)」

(2) 商標権利状況の確認
(i) 「Trade Marks Indexes(商標索引)」からの検索
 商標権利状況検索サイトに、CGPDTMのトップページから、または直接アクセスすると図2の画面が表示される。
 図2の左端リンクの2番目のリンク「Trade Marks Indexes(商標索引)」をクリックすると、図3に示す画面が表示される。

図3「Search Index of Registered Trade Mark/Application(登録商標/出願検索)」画面

 図3の画面では、「Index Type(索引種別)」として、「Registered Trade Marks(登録商標)」、「Non Subsisting Marks(消滅商標)」、「Pending Marks(係属中商標)」、「Proprietor Index(権利者索引)」を選択できる。

(a)「Registered Trade Marks(登録商標)」調査

図4 「Registered Trade Marks(登録商標)」検索入力画面

 図3の入力画面において、「Registered Trade Marks(登録商標)」を選択し、「Index Type(索引種別)」ボックス下の「Search For:」ボックスに調べたい商標を入力する(図4)。3文字以上の商標を調べることが可能である。次に、「Class(分類)」から商標分類を選択する。「Class:」の▽をクリックし1-45の商標国際分類を選択する。複数選択はできない。さらに、表示されている画像認証コードに表示されている英数文字を下のボックスに入力する。最後に、「Search(検索)」ボタンをクリックすると、検索結果リスト表示画面(図5)が表示される。

図5 「Registered Trade Marks(登録商標)」検索結果リスト 表示画面

 図5の検索結果リストには、「Trade Mark No(商標出願番号)」、「Class(分類)」、「Application Date(出願日)」、「Trade Mark(商標)」、「Proprietor Name(権利者名)」が表示される。「Trade Mark No(商標出願番号)」に表示されている商標出願番号をクリックすると、レコード(図6および図7※)が表示され詳細情報を確認することができる。

 ※ 図6と図7は、一つのレコード表示画面であるが、「Goods&Service Details(商品および役務の詳細)」の記述が長文であったために一部省略、分割して表示した。図6の画面を下方にスクロールすると図7の画面が表示される。

図6 「Registered Trade Marks(登録商標)」レコード 表示画面1

図7 「Registered Trade Marks(登録商標)」レコード 表示画面2

 レコード(図6および図7)において確認できる情報は下記項目となる。

(図6の情報)
As on Date(右記日付において):日/月/年
Status(権利状況)
TM Application No.(商標出願番号)
Class(分類)
Date of Application(出願日)
Appropriate Office(受理官庁-インドには「Delhi(デリー)」、「Kolkata(コルカタ)」、「Mumbai(ムンバイ)」、「Chennai(チェンナイ)」の4つの受理官庁がある。)
State(州)
Country(国)
TM Applied For(商標)
TM Category(商標区分)
Trade Mark Type(商標種別-「WORD(文字)」、「DEVICE(図形)」等)
User Detail(使用に関する詳細-使用開始日、「Proposed to be used(使用意図)」等)
Certificate Detail(登録詳細情報-「Certificate No(登録番号)」、「Dated(登録日):日/月/年」)
Valid upto/ Renewed upto(権利存続期限/次回更新期限)
Proprietor name(権利者名)
Proprietor Address(権利者住所)
Email Id(Eメールアドレス)
Agent name(代理人名)
Agent Address(代理人住所)
Goods & Service Details(指定商品・指定役務)

(図7の情報)
Publication Details(官報掲載情報-「Published in Journal No.(掲載官報号)」)
History/PR Details(履歴)
Correspondence & Notices(文書および通知)※
Uploaded Documents(閲覧可能書類-包袋情報) ※

※ Correspondence & Noticesに関しては、「VIEW(閲覧)」をクリックすると、CGPDTMからの文書および通知書類が閲覧できる。
※ Uploaded Documentsに関しては、「VIEW(閲覧)」をクリックすると、包袋書類が閲覧できる。

 図7のレコード表示画面の最下部(表示は省略)の、「PRINT」をクリックすると印刷プレビューが、印刷に適したフォーマットで表示され、「EXIT」をクリックすると検索一覧表示画面に戻ることができる。

 図6のレコード表示画面の右上には、出願書類、登録証、拒絶理由通知等へのリンク等が表示される(図8)。ここでは、「View Registration Certificate(登録証閲覧)」、「View TM Application(出願書類)」、「View Examination Report(拒絶理由通知)」が表示されている。他に「View Representation Sheet(提出書類)」等が表示される場合もある。

図8 「Registered Trade Marks(登録商標)」レコード表示上部画面

 これらのリンクをクリックすると、書類がPDFやHTMLで表示される。リンクと表示される情報が一致していないこと(登録証がTM Applicationに含まれている等)があるので、確認したい書類等がある場合には、各リンクをクリックして、内容を確認することを推奨する。

(b)「Non Subsisting Marks(消滅商標)」調査

図9 「Non Subsisting Marks(消滅商標)」検索入力画面

 図9の入力画面において、「Index Type(索引種別)」の「Non Subsisting Marks(消滅商標)」を選択し、「Index Type(索引種別)」ボックス下の「Search For:」ボックスに調べたい商標を入力する(図9では未入力)。3文字以上の商標を調べることが可能である。次に「Class(分類)」から商標分類を選択する。「Class:」のプルダウンメニュー▽から1-45の商標国際分類を選択する。複数選択は不可となっている。さらに、表示されている画像認証コードに表示されている英数文字を下のボックスに入力する。最後に、「Search(検索)」ボタンをクリックすると結果が表示される(図10)。

図10 「Non Subsisting Marks(消滅商標)」検索結果リスト 表示画面

 図10の検索結果リストには、「Trade Mark No(商標出願番号)」、「Class(分類)」、「Application Date(出願日)」、「Trade Mark(商標)」、「Proprietor Name(権利者名)」が表示される。「Trade Mark No(商標出願番号)」に表示されている商標出願番号をクリックすると、レコード(図11)が表示され詳細情報が確認することができる。

図11 「Non Subsisting Marks(消滅商標)」レコード 表示画面

 図11のレコードの「Status(権利状況)」によって消失理由が確認できる。このレコードでは「Abandoned(放棄)」となっている。「View TM Application(出願書類)」、「View Additional Representation Sheet(追加提出書類)」、「View Examination Report(拒絶理由通知閲覧)」、「Correspondence & Notices(文書および通知書類)」、「Uploaded Documents(閲覧可能書類-包袋情報)」を確認することにより、消失理由等の詳細が確認できる。

(c)「Pending Marks(係属中商標)」調査
 図12の入力画面において、「Pending Marks(係属中商標)」を選択し、(a)および(b)と同様に必要事項を入力することで、係属中(出願中)の商標の検索結果リスト(図13)を表示することができる。

図12 「Pending Marks(係属中商標)」検索入力画面

図13 「Pending Marks(係属中商標)」検索結果リスト 表示画面

 図13の検索結果リストには、「Trade Mark No(商標出願番号)」、「Class(分類)」、「Application Date(出願日)」、「Trade Mark(商標)」、「Proprietor Name(権利者名)」が表示される。「Trade Mark No(商標出願番号)」に表示されている商標出願番号をクリックすると、レコードが表示され詳細情報が確認できる(レコード表示画面は省略)。

 レコード表示画面の「Status(権利状況)」によって出願状況が確認できる。「View TM Application(商標出願書類閲覧)」、「View Examination Report(拒絶理由通知閲覧)」、「Correspondence & Notices(文書および通知書類)」や包袋書類を確認することにより、出願中の商標の詳細が確認できる。

(d)「Proprietor Index(権利者索引)」調査
 図14の入力画面において、「Proprietor Index(権利者索引)」を選択し、検索することにより、権利者名での出願中、登録済、消失商標が確認できる。(a)、(b)、(c)における調査では「Class(分類)」を選択する必要があるが、「Proprietor Index(権利者索引)」では、「Class(分類)」を選択しなくても調査可能である。

図14 「Proprietor Index(権利者索引)」検索入力画面

 図15の検索結果リストは15件ずつ表示される。リスト右下のリスト番号の数字をクリックすると、そのリストが表示される。「Class(分類)」には国際商標分類が表示されるが、多区分出願(マルチクラス)の場合、「99」と表示される。「Trade Mark No(商標出願番号)」をクリックすると、レコードが表示され商標出願の状況が確認できる(レコード表示画面は省略)。

図15 「Proprietor Index(権利者索引)」 検索結果リスト 表示画面

(ii)「Trade Mark Application/ Registered Mark(商標出願/登録商標)」からの検索
 前述のとおり、CGPDTMトップページから、または直接「Trade Mark Registry Registered Trade Marks and Application Status Information(商標権利状況検索サイト)」(図16)にアクセスし、左端リンクの1番目のリンク「Trade Mark Application/ Registered Mark(商標出願/登録商標)」をクリックすると、図17に示す画面が表示される。

図16 「Trade Mark Registry Registered Trade Marks and Application Status Information(商標権利状況検索サイト)」

 図17の「Select the Search Opinion(検索項目選択)」画面で、左側の「National/IRDI Number(国内番号/国際登録国内番号)」を選択すると、「View Registered Trade Mark/Application Details(登録商標/出願 詳細)」(図18)が表示される。ここで、IRDI Numberは国際登録でインドを指定した場合にCGPDTMが付与する番号である。

図17 「Select the Search Option(調査項目選択画面)」

 図18の検索画面において、「Enter Trade Mark/Application Number:」の右のボックスに商標出願番号を入力し、表示されている画像認証コードに表示されている英数文字を下のボックスに入力し、最後に「View(閲覧)」をクリックすると、検索結果リスト(図19)が表示される。

図18 「View Registered Trade Mark/Application Details(登録商標/出願 詳細)」検索画面

 図19の検索結果リストの「Trade Mark No(商標出願番号)」をクリックすると、レコードが表示され各商標出願の状況が確認できる(レコード表示画面は省略)。

図19 「Matching Trade Marks(該当商標)」検索結果リスト 表示画面

【留意点】
 レコード上部には「NOT FOR LEGAL USE」と表示されている。また、レコード下部には「WARNING/DISCLAIMER(警告/免責事項)」が記載されており、商標原簿の情報は電子化の過程にある。データに誤りがあった場合、証拠書類とともに受理官庁へ連絡および提出してもらえば、電子情報のアップデートに役立つ旨の記載がある。この点からも、本稿で紹介する商標原簿情報については、参考情報として利用し、正確な情報を入手したい場合には、現地代理人等を通じて、確認することを推奨する。

インドにおける商品・役務の類否判断について

1.はじめに
 インドにおける商標審査は、主に1999年商標法(Trade Marks Act, 1999)および2017年商標規則(Trade Marks Rules, 2017)によって規定されている。特許意匠商標庁(Office of the Controller General of Patents, Designs, and Trade Marks:CGPDTM)がインドにおける商標登録を管理している。審査プロセスにおいて、商標が特定の基準に準拠していることを確認し、公正性、識別性を担保している。
 1999年商標法は、同法に基づく商標登録拒絶の絶対的および相対的要件を定めている。商標出願は、「商標法第9条および第11条」に基づき、絶対的または相対的要件を理由として拒絶されることがある。
 現在、インドでは日本の審査基準のような書面によるガイドラインは存在しない。著者は、判決例および商標の権利化業務等の実務を通じて得られた知見を総合し、インドの商標審査における基本原則と基準について、重要な点を紹介する。

2.相対的要件
 相対的要件とは、既存の商標、周知商標、その他の法的要因との抵触により商標登録が拒絶される可能性がある要件を指す。これらの要件は、既存の商標権者の利益を保護し、市場における明確性と識別性を維持するために設けられている。以下に、インドにおける商標登録を拒絶する際の相対的要件を説明する。

2-1.先行商標と後行商標との類似性について
 主な相対的要件の一つは、後に出願または使用された商標(以下、後行商標)と、先に出願または登録された商標(以下、先行商標)とが、同一または類似の商品または役務に関して、同一または類似の商標である、とする後行商標の出願に対する拒絶理由の要件である。このような類似性は、需要者の混同を招く可能性があり、有効な拒絶理由とされる。
 例:「ABCエレクトロニクス」が既に電子機器に関する登録商標である場合、同一または類似商品について「ABCエレクトロニクス」を新規出願すると、原則、拒絶される。

2-2.類似性の評価要素
 インドでは、日本の審査基準のような書面によるガイドラインは存在しない。商標審査官や当局が商標出願を評価する際に考慮するいくつかの要素について、実務上の経験に基づいて以下に紹介する。

a.外観類似:商標の形状、デザイン、全体的な外観を比較することにより、外観類似性が評価される。外観が視覚的にほぼ同一または類似している商標は、外観が類似しているとみなされる。

b.称呼類似:称呼類似は、商標の発音に着目したものである。2つの商標を声に出して発音したとき、類似または同一に聞こえる場合、称呼類似とみなされる。
 例:「Peak」と「Peek」は称呼類似と考えられる。

c.観念類似:観念類似は、商標によって伝達される基本的な概念またはアイデアなどの観念が類似しているかどうかを評価する。これは、外観または称呼が類似していなくても、観念が共通する商標は類似しているとみなされる。
 例:自動車の「Swift」と自動車の「Speedy」は、外観・称呼は異なるが、速さを表すという点で、観念類似と考えられる。

d.総合的類似性: 総合的類似性は、外観、称呼、観念の複合的な影響を考慮する評価要素である。全体として見た場合、2つの商標が消費者の混同を引き起こす可能性があるかどうかを評価する。
 例:2つの商標が外観、称呼があまり類似していなくても、同じ業界において類似の観念を伝える場合、総合的類似性が混同を引き起こす可能性があると考えられる。

e.商品または役務:商標の指定商品または指定役務の分類も類似性の評価要素であり、同一区分であって、類似する商標は登録が拒絶される可能性が高い。つまり、先行商標と後行商標とが同じ衣料用である場合、類似とされる可能性がある。商品・役務の類否判断については「3. 商品・役務の類否判断について」において詳述する。

f.先行登録:既に登録されている先行商標は保護レベルが高い。登録された先行商標に抵触する新規出願は拒絶される可能性が高い。
 例:「ABC」が既にソフトウェア商標として登録されている場合、「ABC」をソフトウェア商標として新規出願すると、原則、拒絶される。

g.識別要素:商標において、特徴的または独自な部分を識別要素といい、類似性の評価において非常に重要な要素である。この識別要素が共通する場合、類似とされる可能性がある。
 例:「Sunrise Electronics」と「Sunrise Clothing」の2つの商標は、「Sunrise」が識別要素であり、類似とみなされる可能性がある。

h.消費者の認識:消費者の認識は類似性の評価の重要な要素である。審査では、平均的な消費者が商標を目にしたとき、商品または役務の出所について混同または欺罔される可能性があるかどうかが考慮される。
 例1:類似の標識を見て、消費者があるブランドを別のブランドと間違える可能性が高い場合、類似とされる。
 例2:衣料品について提案された商標「コカ・コーラ」は、著名な飲料用の商標「コカ・コーラ」に基づき拒絶される可能性が高いと考えられる。

i.外国語商標:外国語商標は、当該外国語における発音と意味に基づいて評価される。
 例:英語商標とヒンディー語商標は外観が全く相違していたとしても、称呼および観念が類似している場合、類似とみなされる。

3.商品・役務の類否判断について
3-1.商品・役務の類否判断の原則
 インドの商標審査官は、前述の類似性の評価要素を組み合わせて商標の類似性を評価する。商標が類似していると判断された場合、審査官は商品・役務の類似性を検討し、商品・役務だけでなく商標の標識(mark)も類似している場合は、一般公衆や取引関係者の間で類似の可能性があるとして、欺瞞的類似と判断する。
 具体的には、商品・役務の類否は、消費者間の混同の可能性を考慮する様々な要因の有無を判断することが基本原則である。この原則は、CGPDTM、裁判所、法律専門家が商標の登録、保護、侵害について十分な情報に基づき判断しているかを吟味する際に有効とされる。考慮すべき点は以下のとおり:

a.混同の可能性:商標法上の包括的な原則は、消費者間の混同を防止することにある。商品または役務の類似性を判断する際、後行商標が先行商標と混同される可能性がある場合、後行商標は登録を拒絶されるか、その使用が侵害とみなされることが原則である。

b.平均的消費者の認識:商品または役務に接する平均的消費者の知覚がこの認識の中心である。消費者は通常、合理的な情報を持ち、観察力があり、慎重である。類似性の評価は、消費者が商標に接したときに知覚するであろう認識に基づいて行われる。

c.性質と目的:商品または役務の性質、目的、特徴が評価される。つまり、機能、使用目的、商業目的などが類似していれば、類似とみなされる可能性が高い。

d.流通経路: 商品または役務が商業上で使用される流通経路について評価される。流通経路が同一または類似している場合、混同の可能性が高い。

e.商品と役務の関連性:商品と役務とが互いに、関連性が高いか補完的であるならば、類似しているとみなされる可能性が高い。この考慮には、商品と役務とが一般的に一緒に使用されているか否かまたは論理的なつながりを共有しているか否かが含まれる。

f.識別力:識別力の高い商標は、商品または役務の類似の程度によっては混同されにくいと考えられている。問題となる商標の識別力が、混同の可能性を総合的に判断する要素として影響する。

g.外観、称呼、観念の類似性:「2-2. 類似性の評価要素」で説明した商標間の外観、称呼、観念の類似性も、混同の可能性を総合的に判断する要素として影響する。

h.消費者層:関連する消費者層または対象となる公衆が考慮される。類似性の評価は、商品または役務の対象が一般大衆か、専門家かによって判断が異なる場合がある。

i.言語と文化的要因:言語の相違および文化的な考慮は、類似性の判断に影響を与える可能性がある。例えば、ある言語で類似している商標が、別の言語では、文化的に知覚されないことから類似とみなされない場合がある。

j.技術および業界の専門知識:専門の業界および技術的製品に関係する商標については、その商品または役務の類似性を判断するために専門家の意見を求めることがある。

k.実際の使用と市場慣行:商標が指定された商品または役務において、市場で実際にどのように使用されているかの市場慣行、および、消費者が商品をどのように認識し、識別しているかの実際の使用を、証拠に基づいて評価することが、類似性を判断する上で極めて重要である。

l.消費者の記憶と想起:消費者が商標をどの程度記憶し、想起するかを考慮する。消費者がある商標を覚えていて、別の商標と間違える可能性が高ければ、類似性は高くなる。

m.グローバルな視点とローカルな視点:グローバルな評価(国際的な商標を考慮する)か、特定の領域内での評価かによって視点が異なる。

3-2.商品と役務の関連性
 商品と役務の関連性について、実務上の経験に基づき具体例を以下に紹介する。

例1:衣料品(第25類)と履物(第25類)
評価 これらは一緒に購入されることが多く、小売を含めて流通経路が共通し、同様の消費者層を対象としているため、類似と考えられる。

例2:コーヒー(第30類)と紅茶(第30類)
評価 これらの商品は、消費者が自ら交換して使用することが可能であり、流通経路が共通し、同様の消費者層を有することから、類似と考えられる。

例3:テレビ(第9類)と家具(第20類)
評価 これらの商品は、全く異なる目的を持ち、異なる消費者層を有するため、一般的には非類似である。ただし、家具にテレビ台や架台が組み込まれている場合は、類似性が主張される可能性がある。

例4:レストラン(第43類)と衣料品(第25類)
評価 これらは商品と役務で異なる区分に属し、異なるニーズに応えるものであるため、一般的には非類似である。しかし、レストランが同じ商標の衣料品を販売しているなど、具体的な関連性を示す証拠があれば、類似性が主張されるかもしれない。

例5:会計サービス(第35類)と法律サービス(第45類)
評価 これらは異なる区分に属し、異なるニーズに対応しているため、一般的には非類似である。ただし、会計事務所が同じ商標を法律サービスで提供するなど、具体的な関連性を示す証拠があれば、類似性が主張される可能性がある。

例6:ヘアケア製品(第3類)と歯科サービス(第44類)
評価 現物の商品と専門的な医療サービスという全く異なるカテゴリーに関わるものであるため、一般的には非類似である。

例7:ソフトウェア(第9類)と電気通信サービス(第38類)
評価 いずれも技術関連ではあるが、ソフトウェアは商品であり、電気通信サービスは役務である。一般的には非類似である。

例8:医薬品(第5類)および医療サービス(第44類)
評価 商品と役務とで異なり、一般的には非類似である。ただし、例えば、製薬会社が商品に関連した医療相談サービスも提供している場合など、類似性が主張される可能性がある。

例9:時計(第14類)と衣料品(第25類)
評価 両者は区分および性質が異なる商品であるが、時計と衣料品は小売店で一緒に販売されることが多く、補完的な関係にある。したがって、両者は類似していると考えられる。

例10:玩具(第28類)と教育サービス(第41類)
評価 玩具は現物の商品であり、教育サービスは無形の役務であるため、一般的には非類似である。しかし、教育サービスが玩具を教材として使用する場合など、類似性が認められる可能性がある。

3-3.商品・役務の類否判断の基準となった判決例
 以下の判決例は、インドにおける商品・役務の類否判断における複雑さと微妙さを示している。これらの判決例は、消費者の認識、商品・役務の性質、流通経路、混同の可能性といった要素の重要性を強調している点に留意する必要がある。もちろん、これらの判決例の解釈は時とともに変化する可能性があり、各事例の具体的な事情に基づいて異なる可能性がある。

判決例1:Cadila Health Care Ltd. Vs. Cadila Pharmaceuticals Ltd. [2001 (2) PTC 541 SC]
 商号商標「Cadila Health Care」を登録、使用していたところ、商号商標「Cadila Pharmaceuticals」が出願されたことから争われた事件。ボンベイ高等裁判所は、消費者を混同から保護することの重要性を強調し、密接に関連する商品の類似商標は混同を引き起こす可能性があるとした。

判決例2:Kaira District Cooperative Milk Producers Union Ltd and Anr. Vs. Maa Tara Trading Co. and Ors. [G.A./1/2020 in CS./107/2020]
 登録商標「Amul」(第29類他(商品「ロウソク」の属する第4類の商品は含まない))を所有する牛乳製造会社の原告が、一見類似した書体の「Amul」をキャンドルに付して販売していた被告に使用差止の仮処分を求めた事件。原告らは、「Amul」商標はCGPDTMによって周知商標として認められており、被告の商品はケーキ店や菓子店で販売されているため、消費者が原告商品を連想する可能性が高いとして侵害を主張し、カルカッタ高等裁判所が認めた事例。

判決例3:Sulphur Mills Limited Vs. Virendra Kumar Saini, decided by the Bombay High Court on 14 June, 2021
 原告は「FERTIS」(第1類)の商標を登録し、硫黄90%含有品の販売に使用していたところ、被告が商標「Fortis Royal WDG」(Fortisのみ大きく他の2語は小さい)を硫黄80%含有品に使用した。ボンベイ高等裁判所は、包装を比較した結果、被告が包装に原告の商標表示を使用したとの結論に達し、母音を1つ変えただけでは被告による非侵害の主張を認めることはできないと指摘して仮差止命令を認めた。

Ltd判決例4:Himalaya Drug Company Vs. S.B.L Ltd. [2013 (53) PTC 1 [2013 (53) PTC 1 (Del.) (DB)]
 登録商標「LIV.52」(医薬品)に基づき、「LIV-T」をハーブ製品に使用することの差止を認めた。裁判所は、消費者の認識と混同の可能性の原則について議論し、商品と役務を全体的に評価し、それらが提供される文脈を評価することの重要性を強調した。

判決例5:Daimler Benz Aktiegesellschaft & Anr. Vs. Hybo Hindustan 1994 PTC 28
 被告が、「BENZ」の文字と三方に手足が伸びる下着のみの人間のデザインとを含む商標(下図参照)を下着に使用することが争点となった。裁判所は、商品および役務の性質と混同の可能性を検討した。裁判所は、原告の有名な商標「BENZ」と関連性のない分野で使用したとしても、消費者の混同を招く可能性があると判断した。

【まとめ】
 本記事では商品・役務の類否判断を中心にまとめた。インドでは、日本とは異なり、絶対的要件と相対的要件および商標における標識の類否と商品・役務の類否をそれぞれ別個に判断することなく、総合的に判断していることに留意しなくてはならない。つまり、平均的な知識と不完全な記憶を有する消費者の観点から、特定の商品・役務のマーケットにおいて、2つの商標の間で混同の可能性が有るか否かを確認する必要がある。

日本とインドにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較

1.日本における意匠権の権利期間
 日本における意匠権の権利期間は、意匠登録出願の日から25年をもって終了する(意匠法第21条第1項)。
 ただし、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から15年、平成19年4月1日から令和2年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録の日から20年である。

 なお関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年間である(意匠法第21条第2項)。
 ただし、本意匠および関連意匠の双方が、平成19年3月31日以前の出願の場合は、関連意匠の意匠権の存続期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間であり、本意匠が平成19年3月31日以前の出願で、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録の日から20年である。

 なお、権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として2年次から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項、第43条第2項)。

条文等根拠:意匠法第21条、第42条、第43条

日本意匠法第21条 存続期間
意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録の出願の日から25年をもって終了する。
2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。

日本国意匠法第42条 登録料
意匠権の設定の登録を受ける者又は意匠権者は、登録料として、第二十一条に規定する存続期間の満了までの各年について、一件ごとに、一万六千九百円を超えない範囲内で政令で定める額を納付しなければならない。
(第2項以下省略)

日本意匠法第43条 登録料の納付期限
前条第一項の規定による第一年分の登録料は、意匠登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付しなければならない。
2 前条第一項の規定による第二年以後の各年分の登録料は、前年以前に納付しなければならない。
(第3項以下省略)

2.インドにおける意匠権の権利期間
 インドおける意匠権の権利期間は、出願日(優先権主張がある場合は優先日)から最長15年をもって終了する(インド意匠法第11条(1)、インド意匠規則30条(3))。

 なお、最長15年までの権利維持を希望する場合は、出願日(優先日)を起算日として10年間の満了前に所定の手数料を支払う必要がある(インド意匠法第11条(2)、インド意匠規則30条(3))。

条文等根拠:インド意匠法第11条、インド意匠規則30条

インド意匠法第11条 登録による意匠権
(1) 意匠が登録された時、登録意匠所有者は、本法に従うことを条件として、登録日から10年間当該意匠権を有する。

(2) 前記10年間の満了前に意匠権期間の延長申請が所定の方法で長官に対してされたときは、長官は、所定の手数料の納付により、意匠権期間を、最初の10年間の満了時から、次期の5年間延長する。

インド意匠規則第30条 意匠登録
((1)、(2)省略)
(3) 受理された意匠が相互主義主張日の認められているものに係る場合は、前記意匠における意匠権の登録、期間の延長または満了については、相互主義主張日から起算する。

日本とインドにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較

日本 インド
権利期間 出願日から25年 出願日(優先日)から最長15年
権利維持 登録日を年金納付起算日として2年次から毎年、年金の支払い要 出願日(優先日)を起算日として10年間の満了前に手数料の支払い要

日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日。
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月。

条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1.(2),2.(2)

日本国特許法第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

日本国特許法第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

方式審査便覧04.10 法定期間及び指定期間の取扱い
1.手続をする者が在外者でない場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
ア.意見書(特50条、商15条の2、15条の3第1項、商附則7条)
2.手続をする者が在外者である場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)及び(12)を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。
ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。)

(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能。
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能。
(*特許庁「出願の手続」第二章 第十八節 IV指定期間の延長、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_18.pdf

条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(16),2.(12)

日本国特許法第5条期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。

方式審査便覧04.10
1.手続をする者が在外者でない場合
(16)次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2.手続をする者が在外者である場合
(12)特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができる。
イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。
ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。

2.インドの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
 応答期間についての規定はない。ただし、最初の拒絶理由通知の発送日から起算される所定の期間(拒絶理由解消期間)内に特許付与可能な状態とする必要がある。そのため、拒絶理由通知への応答は拒絶理由解消期間内に行う必要がある。

 拒絶理由解消期間内に答弁や補正が行われた場合、審査官は再度審査しなければならない。2回目以降の拒絶理由通知に対しても応答は拒絶理由解消期間内に行う必要がある。

 なお、出願人が在外者であるか否かに関わらず、拒絶理由解消期間は最初の拒絶理由通知の発送日から6か月である。

条文等根拠:インド特許法第21条(1)、インド特許規則24B(5)

インド特許法第21条(出願の特許付与のために整備する期間)
(1) 特許出願については、長官が願書若しくは完全明細書又はそれに係る他の書類についての最初の拒絶理由通知を出願人に送付した日から所定の期間内に、出願人が当該出願に関して完全明細書関連か若しくはその他の事項かを問わず、本法により又は基づいて出願人に課された全ての要件を遵守しない限り、これを放棄したものとみなす。

説明--手続の係属中に、願書若しくは明細書又は条約出願若しくはインドを指定して特許協力条約に基づいてされる出願の場合においては出願の一部として提出された何らかの書類を長官が出願人に返還したときは、出願人がそれを再提出しない限り、かつ、再提出するまで又は出願人が自己の制御を超える理由により当該書類を再提出できなかったことを長官の納得するまで証明しない限り、かつ、証明するまで、当該要件を遵守したものとはみなさない。

インド特許規則24B(出願の審査)
(5) 第21条に基づいて出願を特許付与のために整備する期間は、要件を遵守すべき旨の最初の拒絶理由通知が出願人に発せられた日から6か月とする。

(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
 (1)で記したように、応答期間についての規定はない。ただし、インド特許法第21条(1)およびインド特許規則24B(5)に規定された期間(拒絶理由解消期間)は、1回に限り最大3か月の延長が可能である。

 また、出願人は、拒絶理由解消期間内に応答書を提出し、ヒアリングの申請を行った場合、拒絶査定が行われる前にヒアリングを受ける機会が出願人に付与され、上記期間経過後も特許出願をインド特許庁に係属させることができる。ヒアリングの申請は上記期間満了の10日前までに行われなければならない。

条文等根拠:インド特許規則24B(6)、インド特許法第80条、インド特許法第14条

インド特許規則24B(出願の審査)
(6)(5)に基づいて規定する、第21条に基づいて出願を特許付与のために整備する期間は、(5)に規定する期間満了前に様式4により所定の手数料を添えて期間延長を長官に請求することにより、3か月間延長することができる。

インド特許法第80条(長官による裁量権の行使)
本法に基づいて手続当事者を長官が聴聞すべき旨又は当該当事者に対して聴聞を受ける機会を与えるべき旨を定めた本法の規定を害することなく、長官は、如何なる特許出願人又は明細書訂正の申請人(所定の期間内に請求の場合に限る)に対しても、本法によって又はそれに基づいて付与された長官の何らかの裁量権をその者に不利に行使する前に、聴聞を受ける機会を与えなければならない。
ただし、聴聞を希望する当事者は、当該手続について指定された期限の満了の少なくとも 10日前に、長官に対して当該聴聞の請求をしなければならない。

インド特許法第14条(審査官の報告の長官による取扱い)
特許出願について長官の受領した審査官の報告が、出願人にとって不利であるか又は本法若しくは本法に基づいて制定された規則の規定を遵守する上で願書、明細書若しくは他の書類の何らかの補正を必要とするときは、長官は、以下の規定に従って当該出願の処分に着手する前に、拒絶の理由を可能な限り早期に当該出願人に通知し、かつ、所定の期間内に当該出願人の請求があるときは、その者に聴聞を受ける機会を与えなければならない。

日本 インド
応答期間 60日(在外者でない場合)
3か月(在外者の場合)
(拒絶理由解消期間)
6か月
応答期間の延長の可否 (拒絶理由解消期間)
延長可能期間 最大2か月(在外者でない場合)
最大3か月(在外者の場合)
最大3か月

また、出願人は、拒絶理由解消期間内に応答書を提出し、ヒアリングの申請を行った場合、拒絶査定が行われる前にヒアリングを受ける機会が出願人に付与され、拒絶理由解消期間経過後も特許出願をインド特許庁に係属させることができる。ヒアリングの申請は拒絶理由解消期間満了の10日前までに行われなければならない。