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インドネシアにおける商標制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 商標法第4条に従い、商標出願に必要な書類は以下のとおりである。
(1)署名された委任状(代理人によって出願する場合)
(2)署名された宣誓書様式
(3)優先権書類とそのインドネシア語訳(優先権主張する場合)

 電子出願により、優先権書類を除き、すべての書類を出願時に提出する必要がある。優先権を伴う出願を行う権利の消滅後3月以内に優先権書類が提出されない場合、優先権は認められなくなる(商標法第10条)。

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2. 登録できる商標/登録できない商標

(1)登録できる商標
 商標法第2条によると、保護される商標は、個人または法人によって生産された商品またはサービスを提供する活動において、それらの出所を識別させるための画像、ロゴ、名称、単語、文字、数字、色彩配色の平面または立体、音、ホログラム、またはそれらの要素の2つ以上の組合せとされる。

(2)登録できない商標
 商標法第20条によると、次の商標は登録できない。
a. 国家のイデオロギー、法規、道徳規範、宗教、倫理、公序良俗に反するもの;
b. 登録対象の商品/サービスと同じ名称、これを説明するもの、又はその単なる言及に過ぎないもの;
c. 登録対象の商品/サービスの出所、品質、形式、サイズ、種類、又はその使用目的について、公衆を誤認させる可能性のある要素を含んでいるもの、又は同類の商品/サービスに対し保護対象となっている植物品種の名称。
d. 生産された商品/サービスの品質、便宜又は効能と一致しない情報を含んでいる。
e. 識別性を有する特徴がないもの;
f. 一般名称、公有財産の象徴となっているもの;

 また、商標法第21条によると、次のいずれかと類似する出願は拒絶される。
1) 商標の要部又は全体が、次のいずれかと類似する場合
 a. 同類の商品/サービスに関して既に登録又は出願されている、他者の所有する商標;
 b. 同類の商品/サービスに関して、他者の所有する周知商標;
 c. 特定の条件を満たす、同じ種類ではない商品/サービスに関して他者の所有する周知
 商標;又は
 d. 登録済みの地理的表示
2) 次に該当する商標
 a. 有名人の名前、略称、写真又は他者が所有する法人の名称に相当する、又はこれと
 類似するもの。但し、正当な権利者の書面による同意がある場合を除く。
 b. 国家又は国内もしくは国際機関の名称又は略称、旗、紋章、シンボル又は象徴を模
 倣する、又はこれと類似するもの。但し、管轄当局の書面による同意がある場合を除
 く;
 c. 国家又は政府機関によって使用される公的な標識、印章又は証印を模倣する、又は
 これと類似するもの。但し管轄当局の書面による同意がある場合を除く。
3) 出願人が悪意をもって提出した商標出願
4) 1)項a~cまでにいう、商標出願の拒絶に関する更なる詳細な規定は、大臣令により定められる。

(3)非標準商標(非伝統的商標)
 大臣規則第3条、4~7項に従い、非伝統的商標の保護は次のとおりである。
1) 3次元
 商標が3次元の形式で表示されている場合、添付される商標ラベルは、視覚的および保護クレームの説明の両方の商標の特性の形式でなければならない
2) 音
 商標が音の形式で表示されている場合、添付される商標ラベルは、楽譜と録音物の両方の形式でなければならない。音を楽譜で表記できない場合、添付される商標ラベルはソノグラムの形式で表示するものとする。
3) ホログラム
 商標がホログラムの形式で表示されている場合、添付される商標ラベルは、さまざまな角度の視覚的な形式で表示するものとする。

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3. 出願の言語

 商標法第4条に基づき、すべての出願書類はインドネシア語で提出する必要がある。優先権書類は宣誓翻訳(sworn translation)でなければならない。

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4. グレースピリオド

 商標法第9条に基づき、優先権を伴う出願は、パリ条約締約国またはWIPO協定参加国における最初の商標登録出願受理日から6月以内に認められる。

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5. 審査

(1)実体審査
 実体審査とは、商標審査官が実施する審査プロセスである。この過程で、審査官は商標出願を登録するか拒否するかを決定する。商標法第23条は、公開中に異議申立がない場合、実体審査は公開終了後30営業日以内に終了しなければならないことを規定している。異議申立がある場合は、実質的な審査を90営業日以内に終了する必要がある。
 商標出願が拒絶された場合、出願人は拒絶通知の日から30営業日以内に拒絶に応答することができる。その後、商標出願が再審査され、商標局が最終決定を下す。これは、多区分出願に適用され、一部の区分のみが拒否された場合でも、出願人は、拒否されていない他の区分を確保するために、拒絶に応答する必要がある。

(2)早期審査
 早期審査制度はない。

(3)商標の類否判断の概要
 商標規則第17条(1)によれば、商標類否判断の概要は、他の以前の商標との視覚的、概念的、音声的類似性があるかどうかにかかわらず、商標の主要な要素から評価する。同第17条(2)において、商品/サービスの類似性は、以下に関連する商品と商品、商品とサービス、またはサービスとサービスの間の類似性である。
a. 商品/サービスの性質
b. 商品の使用目的と使用方法
c. 商品/サービスの補完性
d. 商品/サービスの競争
e. 商品/サービスの流通経路
f. 関連する消費者
g. 商品/サービスの起源
 商標法第22条は、一般名称となった商標について規定しており、その一般名称に識別可能な要素がある他の単語を追加することにより、誰でもそのような一般名称を含む商標を出願することが可能としている。

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6. 出願から登録までのフローチャート

(1)出願から登録までの商標出願のフローチャート

(2)フローチャートに関する簡単な説明
 商標出願後、電子ファイリングで提出された必要書類を確認するための方式審査が行われる。出願人が所定の期限までに方式上の欠陥を完了しなかった場合、商標出願は取り下げられたとみなさる。方式審査が完了すると、15営業日以内に商標出願は2月間オンライン公開される(商標法第14条)。
 公開期間中は、誰でも公開された商標に異議を申し立てることができる。商標庁は、異議申立があった場合、出願人または代理人に通知する。出願人は、異議申立の通知後2月以内に異議申立に反論することができる。公開中に異議申立がなかった場合、公開終了後30営業日以内に実体審査を終了する。異議申立があった場合、異議申立内容および反論を考慮した実体審査が行われ、90営業日以内に実体審査を終了する(商標法第23条)。
 商標出願の登録が決定されると、電子証明書が発行される。商標出願が拒絶された場合、出願人は仮拒絶の通知日から30営業日以内に商標庁に応答することができる(商標法第24条(3))。
 応答内容を元に再審査が行われ、応答が受理された場合、商標出願が登録されるが、商標審査官が応答を受け入れない場合、商標出願は拒絶される。拒絶された場合、出願人は拒絶の通知日から90営業日以内に商標審判委員会(Trademark Appeal Commission)に審判請求することができる(商標法第29条)。
 審判でも拒絶とされ、不服がある場合は、審決から3月以内に商務裁判所に訴訟を起こすことができ、商事裁判所の判決に対しては最高裁判所に上告することが可能である(商標法第30条)。

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7. 権利設定前の異議申立

 商標登録出願の公開期間中、だれでも異議申立が可能である(商標法第16条)。
 出願人は、商標庁からの異議申立の通知日から2月以内に、異議申立に対して反論することができる(商標法第17条)。
 異議申立があった場合、商標審査官は、異議申立および反論の内容を考慮した実体審査を行う(商標法第23条)。

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「インドネシアにおける冒認商標出願への対応」(2018.09.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/15745/
「インドネシアにおける商標異議申立制度」(2017.06.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13782/

8. 上記7の判断に対する不服申立

 出願人は、実体審査の拒絶通知に不満がある場合、拒絶の通知後90営業日以内に商標審判委員会を通じて審判請求を提出することができる(商標法第29条)。
 審決は、審判請求を受理した日から3月以内に行われ、審判請求が却下された場合、出願人は控訴の申立を商務裁判所に提出することができる(商標法第30条)。
 控訴の判決は90日以内に下され、最高裁判所長の承認があれば、30日延長可能である(商標法第85条)。
 結果が却下され、拒絶とされた場合、出願人は、判決の言い渡しから14日以内に最高裁判所に上告することを可能であり、最終決定は90日以内に下される(商標法第88条)。

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[権利設定後の争いに関する手続]

9. 権利設定後の異議申立

 インドネシアでは、付与後の異議申立制度はない。商標が商標庁に登録された後は、正当な利害関係のある当事者は、商務裁判所を通じて取消訴訟を起こすことが可能である(商標法第76条)。

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10. 設定された商標権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 商標法第76条は、第20条および第21条に規定されている理由に基づいて、登録商標の取消訴訟を商務裁判所に提起することができると規定している。
 正当な利害関係者は、取消訴訟を起こすことができ、原告が商標登録をしていない場合は、登録のために商標出願を行った後、取消訴訟を起こすことができる。
 取消訴訟の期限は登録日から5年である。
 また、取消の根拠が悪意であり、現行法、道徳、宗教および公序良俗に違反する場合、期限はなく、いつでも取消訴訟を起こすことができる(商標法第77条)。
 商事裁判所での訴訟が却下された場合、原告は最高裁判所に上告することができる。

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11. 商標の不使用取消制度

 商標法第74条によれば、正当な利害関係者は、登録または最後の使用から3年連続して使用されていない登録商標について、商務裁判所に不使用取消訴訟を提起することができる。
 ただし、以下の場合、商標が使用されていないとはみなさない。
a. 輸入制限
b. 商標の商品流通許可に関連する禁止または法務当局からの定期的な禁止
c. 政府の法律による制限

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12. その他の制度

特になし。