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インドネシアにおける商標制度・運用実態について

 「インドネシアにおける商標制度・運用に係る実態調査」(2022年3月、日本貿易振興機構 バンコク事務所(知的財産権部))

目次
第1章 はじめに P.7

  1. 背景、目的 P.7
  2. 調査概要 P.8

第2章 インドネシアにおける商標制度 P.12

  1. 出願統計 P.12
    (2017年から2021年8月までの商標出願件数の統計および分析結果を解説している。)
    1.1. 2017年から2021年8月までの年別商標出願件数 P.12
    1.2. 2017年から2021年8月までの非伝統的商標の出願件数 P.13
    1.3. パンデミック期間中の出願件数 P.13
  2. 商標法等の改正動向 P.15
    (2016から2020年の商標法等の改正動向、審査基準等について解説している。)
    2.1. 商標法 P.15
    2.2. 雇用創出に関する2020年法律11号(オムニバス法) P.20
    2.3. 商標の審査基準 P.27
    2.4. 電子出願 P.32
  3. インドネシアの商標制度を理解する上での前提 P.34
    (インドネシア商標に関する法律および規則、法的枠組み、制度概要等について解説している。)
    3.1. インドネシアにおける商標を規制する法律および施行規則 P.34
    3.2. 法的枠組み-国際標準と比較 P.35
    3.3. インドネシアにおいて商標を担当する当局 P.36
    3.4. インドネシアにおける商標制度 P.36
    3.4.1. 先願主義 P.37
    3.4.2. 商標の使用およびその宣言書または陳述書の要件 P.37
    3.4.3. 優先権主張の可否 P.37
    3.4.4. 多区分出願の可否 P.38
    3.4.5. 分類/指定商品役務 P.38
    3.4.6. 権利不要求(disclaimer)制度の有無 P.39
    3.4.7. 団体商標制度の有無 P.39
    3.4.8. コンセント制度の有無 P.39
    3.4.9. 情報提供制度の有無 P.40
    3.4.10. 商標の保護期間 P.40
    3.4.11. 商標権者に認められる権利 P.40
  4. 商標の保護対象 P.41
    (保護対象、非伝統的商標に関する留意点について解説している。)
    4.1. 商標の定義・保護対象 P.41
    4.2. 非伝統的な商標に関する留意点 P.42
  5. 審査フロー P.44
    (出願から更新手続までの審査フロー(フローチャートあり)、拒絶理由通知に対する応答期限の延長等について解説している。)
    5.1. 商標出願手続のフローおよび手続期間 P.44
    5.2. 商標審査フロー P.45
    5.2.1. 方式審査段階 P.45
    5.2.2. 分類/指定商品役務審査段階 P.46
    5.2.3. 実体審査段階 P.46
    5.2.4. 不服申立て P.47
    5.2.5. 登録段階 P.48
    5.2.6. 更新手続 P.48
    5.3. 拒絶理由通知に対する応答期限の延長 P.49
    5.4. 早期審査制度の有無 P.50
    5.5. 記録 P.50
    5.5.1. 譲渡 P.50
    5.5.2. 住所・名称の変更 P.51
    5.5.3. ライセンス契約 P.52
  6. 方式要件 P.54
    (出願要件、オンライン手続等について解説している。)
    6.1. 商標出願の要件 P.54
    6.1.1. 直接出願 P.54
    6.1.2. マドプロ出願 P.56
    6.2. オンラインシステムによる手続が必要とされる各種手続(出願・中間・登録後) P.56
  7. 指定商品・役務の審査 P.58
    (指定商品・役務の審査方針、直接出願とマドプロ出願の相違点について解説している。)
    7.1. 採択可能な商品・役務について P.58
    7.2. 指定商品・役務の審査指針 P.59
    7.3. 直接出願とマドプロ出願との相違点 P.60
  8. 絶対的拒絶理由(識別性)の審査 P.61
    (識別性の審査方針、権利不要求制度等について解説している。)
    8.1. 商標法における識別性の定義 P.61
    8.2. 商標の識別性審査指針 P.61
    8.3. 登録例または拒絶例 P.61
    8.4. 使用による識別性の立証 P.63
    8.5. 権利不要求制度 P.64
  9. 相対的拒絶理由の審査 P.65
    (類似性の審査について拒絶事例を挙げて解説している。また、周知商標の保護、悪意の出願、コンセント制度についても解説している。)
    9.1. 商標類似性審査手続 P.65
    9.2. 登録例または拒絶例 P.66
    9.3. 周知商標の保護 P.67
    9.4. 悪意の商標出願 P.71
    9.5. コンセント制度 P.71
    9.6. 直接出願とマドプロ出願との相違点 P.72
  10. 異議申立て、無効取消、不使用取消制度について P.73
    (異議申立て、無効取消請求、不使用取消について解説している。)
    10.1. 商標出願に対する異議申立て P.73
    10.2. 登録商標の無効取消請求 P.75
    10.3. 登録商標の登録取消(不使用取消) P.77
  11. 登録後の注意事項 P.78
    (登録後の注意事項、ライセンスの登録、更新等について解説している。)
    11.1. 登録後の対応 P.78
    11.2. 登録された形態に準拠しない使用-登録取消のリスク P.78
    11.3. 住所または商標権者の変更の記録 P.79
    11.4. ライセンスの登録 P.79
    11.5. インドネシアにおける「®」および「TM」記号の使用 P.80
    11.6. 商標の更新(商標法35条2項、3項および4項) P.80
  12. エンフォースメント P.81
    (商標権侵害の対策として、民事、刑事訴訟について6件の判例を用いて解説している。また、税関による水際対策、電子商取引、未登録周知商標についても解説している。)
    12.1. 商標権のエンフォースメントの概要 P.81
    12.2. 民事上および刑事上の商標権侵害訴訟の実務 P.85
    12.3. エンフォースメント事例 P.86
  13. 知財庁が提供するオンラインツールの概要 P.111
    (知的財産総局のオンラインデータベース、電子出願システムについて解説している。)
    13.1. 商標局オンラインデータベース P.111
    13.2. 知財総局電子出願システム P.115
  14. 料金 P.120
    (商標手続に関連する料金の一覧表を紹介している。)

インドネシアにおける商標制度のまとめ-実体編

1. 商標制度の特徴
 インドネシアの特徴的な商標制度として周知商標が挙げられるので、以下に紹介する。
 インドネシアでは、商標登録は先願主義を採用しているが、登録されていない周知商標の商標権も商標局により認められる。未登録の周知商標と類似の商標があった場合、周知商標の所有者は、商標規則第18条に基づき、その商標が周知であることを証明する必要がある。
 商標規則第18条によれば、周知商標に該当するか否かの判断基準は、関連する事業分野における商標に関する一般の公衆知識に基づいている。公衆とは、対象の周知商標により保護される商品/サービスの生産、販売促進、流通および販売について公正な関係を維持している消費者または社会一般とされている。
 商標規則第18条(3)において、上記周知商標であるかは、以下を考慮して決定される。
1)周知商標の関連するビジネス分野の人々による知識または認知度
2)販売量と利益
3)市場シェア
4)使用分野
5)使用期間
6)投資を含む販売促進に対する強度
7)他の国での登録
8)商標の執行および管轄当局による周知商標としての商標の承認
9)評判と品質保証による固有の価値

 商標規則第19条に基づき、異なる商品/サービスにおける周知商標の拒絶の要件は次のとおりである。
1)異議申立
2)周知商標の他の分類での登録

 商標法第23条は、公開中に異議申立がない場合、実体審査は公開終了後30営業日以内に終了しなければならないことを規定している。異議申立がある場合は、実質的な審査を90営業日以内*1に終了する必要がある。

*1:雇用創出法第11/2020号による改正により150日から短縮された。

関連記事:
「インドネシアにおける指定商品または役務に関わる留意事項」(2021.06.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20279/
「インドネシアにおける商標出願制度概要」(2019.07.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17530/
「インドネシアの商標関連の法律、規則等」(2019.03.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16723/
「インドネシアにおける悪意(Bad-faith)の商標出願に関する法制度、運用および判例」(2019.02.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16495/
「インドネシアにおける商標権の取得」(2018.11.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16164/
「インドネシアにおける商標登録手続の概要と商標の使用義務」(2018.09.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15838/
「インドネシアにおける商標の重要判例」(2018.06.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15370/
「インドネシアにおける商標法および特許法の改正動向」(2016.03.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10389/
「インドネシアにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10257/
「インドネシアにおける商標の使用」(2015.10.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/license/8550/
「インドネシアにおける産業財産権制度」(2013.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/4450/
「インドネシアにおける知的財産制度」(2013.09.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/4413/

2. 登録できる商標

 商標法第1条によると、「商標とは、個人または法人によって生産された商品/サービスを提供する際、それらの出所を識別させるための標識で、グラフィックイメージ、ロゴタイプ、名称、単語、文字、数字、色の組合せといった平面や立体、音声、ホログラム、またはそれらの要素が2つ以上組合さった形で表示される。」ものである。
 また、商標法第2条によると、商標法の範囲は、商品商標、サービス商標、および地理的表示とされる。

商標法第20条によると、以下の商標は登録できない。
第20条
次の商標は登録できない:
a. 国家のイデオロギー、法規、道徳規範、宗教、倫理、公序良俗に反するもの;
b. 登録対象の商品/サービスと同じ名称、これを説明するもの、又はその単なる言及に過ぎないもの;
c. 登録対象の商品/サービスの出所、品質、形式、サイズ、種類、又はその使用目的について、公衆を誤認させる可能性のある要素を含んでいるもの、又は同類の商品/サービスに対し保護対象となっている植物品種の名称。
d. 生産された商品/サービスの品質、便宜又は効能と一致しない情報を含んでいる。
e. 識別性を有する特徴がないもの;
f. 一般名称、公有財産の象徴となっているもの;
g. 機能的な外観を備えるもの*2
*2:雇用創出法第11/2020号による改正により付加された。

 さらに、商標法第21条は次のように規定している。
第21条
1) 商標の要部又は全体が、次のいずれかと類似する場合、出願は拒絶される;
a. 同類の商品/サービスに関して既に登録又は出願されている、他者の所有する商標;
b. 同類の商品/サービスに関して、他者の所有する周知商標;
c. 特定の条件を満たす、同じ種類ではない商品/サービスに関して他者の所有する周知商標;又は
d. 登録済みの地理的表示
2) 次に該当する商標は拒絶される;
a. 有名人の名前、略称、写真又は他者が所有する法人の名称に相当する、又はこれと類似するもの。但し、正当な権利者の書面による同意がある場合を除く。
b. 国家又は国内もしくは国際機関の名称又は略称、旗、紋章、シンボル又は象徴を模倣する、又はこれと類似するもの。但し、管轄当局の書面による同意がある場合を除く;
c. 国家又は政府機関によって使用される公的な標識、印章又は証印を模倣する、又はこれと類似するもの。但し管轄当局の書面による同意がある場合を除く。
3) 出願人が悪意をもって提出した商標出願は拒絶される。
4) 1)項 a.~c.までにいう、商標出願の拒絶に関する更なる詳細な規定は、大臣令により定められる。

関連記事:
「インドネシアの商標関連の法律、規則等」(2019.03.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16723/
「インドネシアにおける悪意(Bad-faith)の商標出願に関する法制度、運用および判例」(2019.02.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16495/
「インドネシアにおける商標権の取得」(2018.11.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16164/
「インドネシアにおける冒認商標出願への対応」(2018.09.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/15745/
「インドネシアにおける商標出願への拒絶理由通知に対する応答」(2018.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15677/
「インドネシアにおける意匠および商標の冒認出願対策」(2018.08.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15675/
「インドネシアにおける物品デザインの商標的保護」(2018.06.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15368/
「インドネシアにおける小売役務の保護の現状」(2018.04.19)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/14892/

3. 商標を登録するための要件

 商標法第20条および第21条に違反しない商標を登録することができる。商標を登録するために使用の証拠を提出する必要はない。

関連記事:
「インドネシアにおける指定商品または役務に関わる留意事項」(2021.06.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20279/
「インドネシアの商標関連の法律、規則等」(2019.03.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16723/
「インドネシアにおける商標権の取得」(2018.11.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16164/
「インドネシアにおける商標出願への拒絶理由通知に対する応答」(2018.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15677/
「インドネシアにおける商標の取得」(2015.01.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/7531/

4. 商標権の存続期間

 商標法第35条に従い、商標の保護は出願日から10年間有効であり、10年ごとの更新が可能である。

関連記事:
「インドネシアの商標関連の法律、規則等」(2019.03.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16723/
「インドネシアにおける産業財産権権利化期間」(2014.11.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/7180/

インドネシアにおける物品デザインの商標的保護

記事本文はこちらをご覧ください。

インドネシアにおける小売役務の保護の現状

記事本文はこちらをご覧ください。

インドネシアにおける商標審査基準関連資料

【詳細】

 ASEAN主要国及び台湾における特許及び商標の審査基準・審査マニュアルに関する調査研究報告書【商標編】(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅱ部2

 

(目次)

第Ⅱ部 調査対象国・地域の審査基準関連資料の詳細

 2 インドネシア P.69

【参考】調査対象国・地域の知的財産権担当官庁及びウェブサイト公開されている関連法規、審査基準関連資料の情報

 2 インドネシア P.130