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インドネシアにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 特許法2016年の第25条、第30条、第33条、第34条、第35条および第122条、特許規則2018年第4、5、18、29、36、45、83、85および86条、および法務人権省通達HKI.3-KI.05.01-247に関連する記載がある。

 特許の最小要件は次のとおりである。
(1) 出願書(発明者および出願人の氏名、住所、市民権/国籍、発明のタイトル、優先権を主張して出願する場合は優先権書類、PCT出願から派生した国内段階出願の場合はPCTデータを含む)
(2) 英語の特許明細書(詳細な説明、請求項、要約、図面、および配列リスト)
(3) 公費の領収書(申請料、請求項が10項を超える場合は追加料金、明細書が30ページを超える場合は追加料金)

 出願後に提出してもよい書類およびその期限

明細書のインドネシア語翻訳 出願後30日以内
委任状 方式審査拒絶理由通知から3月以内(2月の延長、手数料支払いによりさらに1月の延長可)
発明者による発明の所有権の宣言1
譲渡証2
微生物寄託証(該当する場合)
優先権主張出願の場合、優先権証明書の写しとその表紙の英訳 優先日から16月以内

 1:発明者が何らかの理由で署名を提出できない場合の代替の文書
  a.発明者が元従業員である場合は、雇用契約書の写し、休暇申請書、または発明者が作成した書類等
 の従業員としての発明者の状況を証明する書類(機密情報でも可。発明者の氏名と署名が必要)。
  b.他の発明者の署名により裏付けられた、発明者の署名が欠落している理由を説明する出願人による
 声明および理由を裏付ける書類。
  c.優先権出願の譲渡書類の写し。
 2:発明者の署名を提出できない場合、上記1と同様

 実用新案(簡易特許)の最小要件は次のとおりである。
(1) 出願書(発明者および出願人の氏名、住所、市民権/国籍、発明のタイトル、優先権を主張して出願する場合は優先権書類、PCT出願から派生した国内段階出願の場合はPCTデータを含む)、審査請求。
(2) 英語およびインドネシア語の特許明細書(説明、クレーム、要約、図面、および配列リスト)
(3) 公的手数料(出願料、実体審査料、クレームが10項を超える場合は追加料金、明細書が30ページを超える場合は追加料金)
(4) 発明者による発明の所有権の宣言
(5) 譲渡証
(6) 微生物寄託の証明(該当する場合)
(7) 優先権を主張して出願する場合は、優先権証明書の写しとその表紙の英訳

 出願後に提出可能なその他の要件として、委任状の提出があり、提出期限は出願日から28日である。

関連記事:
「日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.12.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17977/
「インドネシアにおける特許制度の概要」(2014.10.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6834/

2. 記載が認められるクレーム形式

 特許規則2018年第7条、第8条は、請求項は発明の本質を明確かつ一貫して表現しなければならず、明細書によって裏付けられなければならないと規定している。請求項には表および/または化学式、数式が含まれてもよい。また、請求項は、発明の単一性を形成するために相互に関連しているものとされ、独立請求項および/または従属請求項の形式が可能である。
 容認されない請求項の形式として、特許規則2018年第7条は、請求項に図面やグラフを含めてはならないと規定している。

関連記事:
「インドネシアにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16393/
「インドネシアにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務」(2018.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15857/
「インドネシアにおける医薬用途発明の保護制度」(2018.03.29)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/14761/

3. 出願の言語

 特許法2016年第24条は、特許出願はインドネシア語で提出されなければならいと規定している。

関連記事:
「日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.12.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17977/
「日本とインドネシアにおける特許出願書類の比較」(2015.07.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9396/

4. グレースピリオド

 特許規則2018年第44条は、PCTに基づく出願は、国際出願日また最も早い優先日から最大31月以内に出願されなければならいと規定している。申請書とともに追加手数料を支払うことにより、3月から12月の期間延長が認められる場合がある。

関連記事:
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
「インドネシアにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.04.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13623/
「インドネシアにおけるパリ条約ルート出願とPCTルート出願の手続きの相違点」(2015.03.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8372/

5. 審査

(1) 実体審査
 特許法2016年第51条は、特許の審査請求は、出願日から36月以内に提出しなければならないと規定している。実体審査は公開期間が終了した後に行われる。実用新案については、特許法2016年第122条に規定があり、出願時に審査請求を提出する必要がある。

 特許法2016年第62条および特許規則2018年第73条、第74条は、出願人は実体審査報告書の日付から3月以内に回答する必要があると規定している。出願人は応答期間を2月、さらに手数料の納付により1月延長することができる。

 また、特許法2016年第62条は、緊急事態の場合は、出願人は6月の応答期間の延長を受けられると規定している。

(2) 早期審査(優先審査)
 特許規則2018年第80条、第81条は、地域(ASPEC、関連記事参照)および2国間(PPH、関連情報参照)協力に基づく実体審査の早期審査について規定している。早期審査申請は、実体審査報告書の発行前に提出しなければならない。

(3) 出願の維持
 特許法2016年第21条、第126条および政府規則2019年第28号に規定があり、特許が付与された場合、特許の維持年金は出願日に遡っての支払いが必要であり、出願日から付与後1年までの費用を、付与通知から6月以内に支払う必要がある。

特許維持年金

年(出願日より) 特許費用(IDR) 請求項費用
1~3 1,000,000 75,000
4,5 1,250,000 100,000
6 1,750,000 175,000
7,8 2,250,000 225,000
9 3,000,000 300,000
10 4,000,000 300,000
11~20 6,500,000 500,000

実用新案維持年金

年(出願日より) 特許費用(IDR) 請求項費用
1~4 750,000 50,000
5 1,250,000 50,000
6 1,700,000 50,000
7 2,300,000 50,000
8 2,800,000 50,000
9 3,500,000 50,000
10 4,000,000 50,000

関連記事:
「インドネシアにおける特許の早期権利化」(2021.06.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/20273/
「インドネシアにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.02.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18319/
「日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較」(2019.12.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17983/
「インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間」(2019.09.03)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17669/
「インドネシアにおける特許年金制度の概要」(2018.10.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15967/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2014.07.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6142/

関連情報:
「日インドネシア特許審査ハイウェイ試行プログラムについて」
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_indonesia_highway.html

6. 出願から登録までのフローチャート

(1) 出願から登録までの特許出願フローチャート

(2) フローチャートに関する簡単な説明
 出願後、方式審査が行われる。提出された書類に不備がある場合、拒絶理由通知が出され、すべての正式な書類が完備されている場合は承認通知が出される。その後、公開される。公開期間は6月であり、第三者の異議申立があれば、法務人権大臣に提出する。
 実体審査は、公開期間終了後に行われ、拒絶理由通知への応答期間は3月、延長の場合はさらに2月、または手数料の支払いによりさらに追加の1月が認められる。
 拒絶査定となった場合、出願人は拒絶の通知から3月以内に審判請求ができる。
 特許査定となった場合、特許付与通知後、2月以内に証明書が交付される。

関連記事:
「インドネシア特許出願における条約に基づく優先権主張の手続」(2021.01.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19667/
「インドネシアにおける実用新案出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17467/
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
「インドネシアにおける特許権の取得」(2018.11.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16141/

[権利設定前の争いに関する手続]

7. 拒絶査定不服

 実体審査により拒絶査定となった場合、出願人は、特許法2016年第68条に規定されるように、拒絶の通知から3月以内に特許審判委員会に不服審判を請求できる。特許審判委員会は、審判請求から1月以内に審判の審理を行う。決定は審理から9月以内に下される。

関連記事:
「インドネシアにおける特許権の取得」(2018.11.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16141/

8. 権利設定前の異議申立

 特許法2016年第49条は、付与前の異議申立は、公開期間中に第三者により法務人権大臣に提出することができると規定している。出願人は、大臣からの異議申立通知から30日以内に、異議申立に対する回答を提出することを求められる。

関連記事:
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/

9. 上記7の判断に対する不服申立

 拒絶査定不服審判の審決に不服がある出願人は、特許法2016年第72条に規定されるように、特許審判委員会の拒絶の審決に対し、商務裁判所に訴訟を起こすことができる。訴訟手続きは、特許法2016年第144条に規定されている。

関連記事:
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/

[権利設定後の争いに関する手続]

10. 権利設定後の異議申立

 権利設定後の異議申立制度はない。

11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 特許付与後、第三者は、特許法2016年第70条に規定されているように、付与日から9月以内に、付与された特許に対して特許審判委員会に審判請求ができる。
 特許審判委員会は、審判請求が提出されてから1月以内に審判の審理を行い、審理後9月以内に決定が下される。

 特許の無効化は、特許法2016年第132条、第133条、第138条、第142条、および第144条で規定されている。
 第三者または検察官は、次の場合、商務裁判所を通じて特許権者に特許無効化を申し立てることができる。
 1.特許性の規定を満たしていない
 2.発明は付与された他の発明と同じである
 3.特許権者または強制ライセンシーによる特許の実施は、公共の利益にとって有害である
 4.特許権者は特許実施の義務を果たしていない

 特許無効化に対する訴訟は、被告居住地域の商務裁判所に提起される。いずれかの当事者が海外に居住している場合、中央ジャカルタ商務裁判所に訴訟が提起される。特許の無効化が1つ以上の特定の請求項にのみ関係する場合、無効化は関連する請求項に対してのみ行われ、その決定には永続的な法的効力がある。

関連記事:
「インドネシアにおける特許実施の延期申請について」(2020.09.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19472/

12. 権利設定後の権利範囲の修正

 特許付与後の明細書、請求項および/または図面の訂正に関する審判請求は特許法2016年第69条に規定されており、付与後の3月以内に請求することができる。訂正は、請求項の減縮は可能であるが、発明の保護範囲を広げることはできない。

関連記事:
「インドネシアにおける特許出願の補正の制限」(2019.10.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17812/

13. その他の制度

特になし。