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インドネシアにおけるパリ条約ルート出願とPCTルート出願の手続きの相違点

【詳細】

  1. パリ(条約)ルート

 パリ条約の一般原則は、特許出願人は最初の特許出願後1年以内に他のパリ条約加盟国において同一発明の後続特許出願を行うことができる、というものである。これにより、特許出願人は最初の出願の出願日に基づく権利を主張することができる。パリ条約に基づく「優先権」を主張することにより、後続の出願の出願日が上述の1年以内であれば、新規性及び他の出願との先後願の判断について、後続の出願はあたかも最初の出願と同じ日付でインドネシアに出願したと同様の権利を受けることが認められる(インドネシア特許法第1条(12)、第3条、第27条)。

 

 インドネシアのパリ条約批准は1997年の「大統領令第15号」に基づいて行われ、2001年特許法(第14号)第27条(1)は、パリ条約もしくは世界貿易機関(WTO)加盟国に関する優先権について規定している。

 

 インドネシアの規則では、優先権を主張する特許出願人は、優先日から16ヶ月以内に優先権証明書を提出しなければならない。このほかに、インドネシア特許庁は以下のような文書の提出を要求することがある。

 ・他の国における実体的審査の結果に関する文書

 ・当該出願が他の国において特許権を付与されている場合にはその特許証

 ・当該出願が他の国において拒絶されている場合にはその拒絶理由通知

 ・当該出願が他の国において取り消されている場合には、その特許取消決定

 ・その他、当該出願の実体審査を円滑に行うために必要とされる文書

 

  1. PCT(特許協力条約)ルート

(1)PCTルートからのインドネシアへの国内移行

 1978年6月に発効した特許協力条約(PCT)は、複数の加盟国での簡素化された特許出願手続を可能としている。特許協力条約(PCT)に基づいてされる出願は、管轄の特許庁または国際機関(WIPO国際事務局)に1つの出願を行うことにより、国際出願日が与えられ、多数の国(指定国)への出願日を確保できる。

 

 インドネシアは1997年付の「PCTおよびPCTに基づく規則の批准に関する大統領令第16号」により特許協力条約を批准している。インドネシアの国内段階の特許出願は、当該出願が主張する最も早い優先日から31ヶ月以内に提出されることが要求される。

 

 インドネシアの規則では、国際特許出願を国内段階に移行する際には、発明者の国籍や条約で定められた詳細要件についての情報、委任状、ならびに優先権譲渡証明書の原本もしくは公証された優先権譲渡証明書の謄本等が併せて要求される。書面のインドネシア語訳は、国内段階の手続開始日から30日以内に提出されなければならない。

 

 

(2) 国際特許出願の優先権の回復に関するインドネシア特許庁の見解

 2011年2月10日、インドネシア特許庁は、受理官庁もしくは指定国官庁として、PCT規則で規定される優先権の回復について、インドネシア国内では認めない旨の当局の見解を発表した。

 

 PCT規則では、優先権期間中に国際出願の願書が提出されなかった国際出願につき、以下のような条件に従って優先権の回復を定めている。(特許協力条約に基づく規則第 26の2.3及び規則第49の3.2)      

  -優先権期間の満了日から2ヶ月以内(優先日から14ヶ月以内)に提出されること

  -相当の注意にも関わらず提出遅れが生じたこと

  -故意による遅延ではないこと

 

 しかしながら、インドネシア特許庁によれば、上記の権利回復はインドネシア特許法に基づく特許保護基準(パリ条約ルートの優先権の取り扱い)に合致しないことから、インドネシア特許庁はインドネシアに提出されたPCT出願及びインドネシアに国内移行されたPCT出願が事後に要求する優先権の回復を認めないとしている。