インドネシアにおける特許発明の新規性喪失の例外
1.インドネシアにおける特許制度
インドネシアにおける特許制度は先願主義である。これは、インドネシアの法域において特許出願を行う最初の者が、すべての要件が満たされ出願が登録された時点で特許権を有することを意味する。インドネシア特許法第13/2016号の第37条において述べられている通り、「異なる日に異なる出願人による類似の発明に関する二以上の出願がある場合、最先の出願日を有する出願が、登録されるべきものとみなされる出願である」。したがって、特許出願の出願日に注意を払うことが極めて重要である。
2.特許における新規性とは?
新規性は、特許にとって最も重要な要件である。インドネシア特許法に基づき、出願の出願日時点において、発明が「従前の技術開示」とは「同一でない」場合に、当該発明は新規であるとみなされる。
ここで、「技術開示」とは、書面、口頭による説明、実演その他の方法により、インドネシアの国内外で発表されたものであり、出願日または優先日(優先権主張出願の場合)より前に当該発明を当業者が実施することを可能とするものをいう。
「従前の技術開示」には、審査対象である出願の出願日以降に公開され、実体審査を受けている他のインドネシア出願であって、その出願日が審査対象である出願の出願日または優先日より前であるものが含まれる(インドネシア特許法第13/2016号の第5条(3)に規定)。
「同一でない」という用語は、その一以上の技術的特徴においてすべての先行技術と異なることを意味するものである。「従前の技術開示」という用語は、特許文献と非特許文献の双方から成る最新技術または先行技術を意味する。
新規性の判断基準は、既に公衆に利用可能となっていない技術に対してのみ特許が付与されることを確実にする。すなわち、クレーム発明は、特許出願の出願日または優先日よりも前に、世界中のどこかで、例えば、刊行物により、または、公に製造され、実施され、口頭により提示され、または使用されたことの結果として、公衆に既に開示されていてはならない。
3.新規性喪失の例外
出願の新規性喪失は、以下の場合において例外とみなされ得る
3-1.自己開示
3-1-1. 試験としての実施
発明に関して特許を受ける権利を有する出願人が、インドネシア特許出願の出願日の前6ヶ月以内に研究または開発を目的として試験を実施した場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(1))。
3-1-2. 展示会における公開
発明が、インドネシアまたは他国において開催された国際展示会、または公に認められた国内展示会において、インドネシア特許出願の出願日の前6ヶ月以内に公開された場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(1))。
3-1-3.講演会その他科学技術会議における発表
発明が、インドネシア特許出願日の前6ヶ月以内に科学技術講演会またはその他科学技術会議において発明者により発表された場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(1))。学術誌における発明の開示、例えば、論文、学位論文または学術論文を目的とした実験または実験段階における学術講義、および、大学や公の学術機関における研究結果に関する議論のための学術フォーラムは、特許出願が当該開示後6ヶ月以内に行われれば、発明の新規性を否定しない。
3-2.不正開示
当該発明に関して特許を受ける権利を有する出願人の意図に反して、インドネシア特許出願の出願日の前12ヶ月以内に発明が公知となった場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(2))。
4.新規性喪失の例外の申請に関する手続
インドネシア特許法には、発明の公開が出願より前に行われたことを宣誓するための要件を定める明確な規定はない。しかし、第三者がその公開に乗じる可能性を回避するために、一定の時点において宣誓を行うことが推奨される。こうした宣誓書を提出する時期は、知的財産権総局により要求された時である。さらに、出願人がこうした宣誓書の提出を希望する場合、その提出物には、公開の詳細および状況が含まれなければならない。
5.新規性喪失の例外に関する証拠書面
新規性喪失の例外にかかる技術開示の証拠は、書面でなければならない。新規性の判断基準で述べた通り、「技術開示」は特許文献と非特許文献を含む。非特許文献の例としては、非言語の開示、実演、または観察された先の使用などの再現可能なあらゆる形態の情報、学術誌における論文、ビデオテープ、CD-ROM、テープその他の情報を保存する媒体に含まれる情報、およびオンライン調査結果からの抄録などのオンライン設備を通じて取得された情報(出願人は、当該発表のアクセス日を特定しなければならない)が含まれる。さらに、その他の方法で公衆に利用可能となった開示、例えば、実演、販売申し出、マーケティング活動、先の使用または一定の関連当事者に対するレクチャーなどであってもよい。