ホーム ID-am-9800

日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較

1.日本における審査請求期限
 日本においては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ(特許法第48条の3第1項)、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げたものとみなされた場合であっても、当該期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内で、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法第48条の3第5項)。

 出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨)。

 PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。この場合の審査請求期限は、国際出願日から3年である。

 また、特許出願の分割に係る新たな特許出願、意匠登録出願または実用新案登録出願の変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願については、原出願から3年の期間経過後であっても、分割または変更による特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

 なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる(特許法第48条の3第1項)。

条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第184条の17

日本国特許法 第48条の2(特許出願の審査)
 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。

日本国特許法 第48条の3(出願審査の請求)
 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。

2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

3 出願審査の請求は、取り下げることができない。

4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。

5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。

(第6から第8項省略)

日本国特許法 第184条の17(出願審査の請求の時期の制限)
 国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあつては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあつては第百八十四条の四第一項又は第四項及び第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。

2.インドネシアにおける審査請求期限
 インドネシアにおいては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある(特許法第51条(1))。審査請求は、インドネシア出願日から36か月以内に行わなければならず、出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第51条(2)(3))。なお、審査請求は出願人のみが行うことができる(特許規則第52条(1))。

条文等根拠:特許法第51条(1)(2)(3)、特許規則第52条(1)

インドネシア特許法 第51条
(1) 実体審査の請求は、手数料を納付して大臣に対して書面で行われる。
(2) (1)項における実体審査請求は、出願日から36か月以内に行われる。
(3) (1)項における期間内に実体審査請求が行われなかった場合又はそのための手数料が支払われなかった場合、出願は取下げられたものとみなされる。
(4)から(8) 省略

インドネシア特許規則 第52条
(1) 公開期間の満了後であるが、特許出願の受理の日から 36 月以内に、実体審査の請求は、特許局に対して特許出願人により行うことができる。
(2) (1)にいう実体審査の請求は、手数料の額及び納付手続が大臣により定められた手数料の納付とともに行われる。
(3) 省略

日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較

日本 インドネシア
提出期限 3年 36か月
基準日 日本の出願日 インドネシアの出願日

日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較

1. 日本における審査請求期限

 

日本においては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある(特許法第48条の2)。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。なお、特許出願が取り下げられたものとみなされた場合でも、出願審査の請求をすることができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる(特許法第48条の3第5項、特許法施行規則 第31条の2第6項)。

出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は実際に特許出願がされた日である。

PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。

なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。

条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第4項および第5項、特許法施行規則第31条の2第6項、第184条の17

日本特許法 第48条の2 特許出願の審査

特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。

 

日本特許法 第48条の3 出願審査の請求

特許出願があったときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。

2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

3 出願審査の請求は、取り下げることができない。

4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかったときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。

5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をすることができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる。

 

日本特許法施行規則 第31条の2 出願審査請求書の様式等

6 特許法第四十八条の三第五項(同条第七項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の経済産業省令で定める期間は、同条第五項に規定する正当な理由がなくなった日から二月とする。ただし、当該期間の末日が同条第一項に規定する期間(同条第七項において準用する場合にあっては、第二項に規定する期間)の経過後一年を超えるときは、同項に規定する期間の経過後一年とする。

 

日本特許法 第184条の17 出願審査の請求の時期の制限

国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあっては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあっては第百八十四条の四第一項または第四項および第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。

 

2. インドネシアにおける審査請求

インドネシアにおいては、審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある(特許法第51条(1))。出願審査請求は、インドネシア出願日から36か月以内に行わなければならず、出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第51条(2)(3))。

また、審査請求は出願人のみが行うことができる(特許規則第52条(1))。

条文等根拠:特許法第51条(1)(2)(3)、特許規則第52条(1)

 

インドネシア特許法 第51条

(1)実体審査の請求は、手数料を納付して大臣に対して書面で行われる。

(2)(1)項における実体審査請求は、出願日から36か月以内に行われる。

(3)(1)項における期間内に実体審査請求が行われなかった場合またはそのための手数料が支払われなかった場合、出願は取下げられたものとみなされる。

 

インドネシア特許規則 第52条

(1)公開期間の満了後であるが、特許出願の受理の日から36か月以内に、実体審査の請求は、特許局に対して特許出願人により行うことができる。

 

◆日本の基礎出願について優先権を主張しインドネシアに出願した場合には、以下のようになる。

 

日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較

  日本 インドネシア
提出期限 3年 36か月
基準日 日本の出願日 インドネシア出願日
審査請求できる者 出願人または第三者 出願人のみ

日本とインドネシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

1. 日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長

 

(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間

・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日

・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月

 条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10

 

日本特許法 第50条 拒絶理由の通知

 審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

 

日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正

 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。

一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき

二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。

三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき

四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

 

日本方式審査便覧 04.10、1 手続をする者が在外者でない場合

(2) 指定期間

ア 次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許および実用新案に関しては60日、意匠および商標に関しては40日とする。ただし、手続をする者またはその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許および実用新案に関しては60日を75日と、意匠および商標に関しては40日を55日とする。

a 意見書特50条:特67条の4、意19条において準用)

(3) 指定期間に関する留意点

ウ 個別の事情により、指定された期間内に手続をすることができないと認められる場合には、期間経過後であっても、特許庁長官または審査官の裁量により当該手続を有効なものとして取り扱うことができる。

 

日本方式審査便覧 04.10、2 手続をする者が在外者である場合

(2) 指定期間

ア 次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、(中略)3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1.(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。

a 意見書特50条:特67条の4、意19条において準用)

(3) 指定期間に関する留意点

上記1.(3)の取扱いは、在外者が手続きをする場合も同様とする。

(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長

 出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能である。出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能である。いずれも請求のための合理的理由は不要である。

 条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10

 

日本特許法 第5条 期間の延長等

 特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。

2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。

3 第一項の規定による期間の延長(経済産業省令で定める期間に係るものに限る。)は、その期間が経過した後であっても、経済産業省令で定める期間内に限り、請求することができる。

 

日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合

(4) 指定期間の延長(特・実・意)

 次に掲げる特許法および実用新案法ならびに特許登録令、実用新案登録令および意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内または指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。

ア.上記(2)ア.a.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合または特許法第17条の2第1項または第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。

 

日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合

(4) 指定期間の延長(特・実・意)

ウ 上記2.(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。

a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。

b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合または特許法第17条の2第1項または第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。

 

2. インドネシアの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長

(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間

・応答期間は通常3か月

 条文等根拠:特許法第62条(3)

 

インドネシア特許法 第62条

(1)審査官が特許出願された発明が第54条の規定を満たさないと報告した場合、大臣は出願人またはその代理人に対して書面により当該規定の要件を満たすよう通知する。

(2)(1)項における通知は以下を含む:

(a)充足されるべき要件;および

(b)実体審査において用いられる理由と引用文献

(3)出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書を提出しおよび/または通知書に記載される要件を満たさなければならない

 

(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長

 応答期間は最大2か月延長可能であり、さらにその延長期間も、手数料の納付とともに最大1か月延長可能である。さらに緊急事態が生じた場合の救済措置(上記2か月および1か月の期間満了後、最大6か月)も規定されている。

 条文等根拠:特許法第62条(4)~(8)

 

インドネシア特許法 第62条

(4)(3)項の期間は、最大2か月延長できる。

(5)(4)項の延長期間は、当該期間の満了の際手数料の納付と共に、最大1か月延長できる。

(6)(4)項および(5)項の期間の延長を得るためには、出願人は(3)項および(4)項の期間満了前に大臣に対して書面により申請しなければならない。

(7)緊急事態が生じた場合、出願人は(4)項および(5)項の規定に関わらず大臣に対して書面により証拠資料を提出することにより延長の申請をすることができる。

(8)大臣は、(7)項における期間の延長を(6)項の期間満了後最大6か月間与えることができる。

 

日本とインドネシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

 

日本

インドネシア

応答期間

60日

(ただし在外者は3か月)

3か月

応答期間の延長の可否

延長可能期間

最大2か月

(在外者は最大3か月)

最大3か月

緊急事態が生じた場合に

大臣の裁量でさら最大6か月

日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較

1. 日本における特許出願の出願書類

(1)出願書類

 所定の様式により作成した以下の書面を提出する。

・願書

・明細書

・特許請求の範囲

・必要な図面

・要約書

 条文等根拠:特許法第36条

 

日本特許法 第36条 特許出願

特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所

二 発明者の氏名および住所または居所

2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。

3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 発明の名称

二 図面の簡単な説明

三 発明の詳細な説明

4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。

二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。

5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。

6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。

二 特許を受けようとする発明が明確であること。

三 請求項ごとの記載が簡潔であること。

四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。

7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

 

(2)手続言語

 日本語

 

(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否

 英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。

 条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4

日本特許法 第36条の2

特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)ならびに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。

2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年四月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。

3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間内に同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。

4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。

6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第四項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

7 第四項または前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。

 

日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語

 特許法第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。

 

(4)優先権主張手続

 優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月または優先権主張出願日から4か月のいずれか遅い日までの間に特許庁長官に提出しなければならない。優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。

 ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっているが、本稿作成時点ではインドネシアとの間では実施されていない。

 条文等根拠:特許法第43条、特許法施行規則第27条の4の2、特許法施行規則第27条の3の3

 

日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続

パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨ならびに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。

2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日

二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日

三 その特許出願が前項、次条第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)または第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日

3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。

4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。

5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。

6 特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類または前項に規定する書面の提出がなかつたときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。

7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類または第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。

8 第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類または第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類または書面を特許庁長官に提出することができる。

9 第七項または前項の規定により第二項に規定する書類または第五項に規定する書面の提出があつたときは、第四項の規定は、適用しない。

 

 特許法43条1項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。

日本特許法施行規則 第27条の4の2

1~2(略)

3 特許法第四十一条第四項および第四十三条第一項(同法第四十三条の二第二項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)および第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の経済産業省令で定める期間は、次に掲げる場合に応じ、当該各号に定める期間とする。

一 特許出願(特許法第四十四条第一項、第四十六条第一項もしくは第二項または第四十六条の二第一項の規定による特許出願を除く。)について、同法第四十一条第一項、第四十三条第一項または第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による優先権の主張をする場合(第三号に規定する場合を除く。)優先日(優先権主張書面を提出することにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日または変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から一年四月の期間が満了する日またはこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から四月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求または出願公開の請求があつた後の期間を除く。)

 

 特許法第43条7項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。

日本特許法施行規則 第27条の3の3

5 特許法第四十三条第七項(同法第四十三条の二第二項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の経済産業省令で定める期間は、同法第四十三条第六項(同法第四十三条の二第二項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定による通知の日から二月とする。

 

<参考URL>

(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))

https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html

 

2. インドネシアにおける特許出願の出願書類(パリルート)

(1)出願書類

 特許法および特許規則にて規定された以下の書面を提出する。

・願書

(出願の年月日、出願人の名称および住所、発明者の名称および国籍、代理人の名称および住所、および発明の名称、優先権主張などの情報を含む)

・明細書

・特許請求の範囲

・必要な図面

・要約書

・委任状

 条文等根拠:特許法第24条、第25条、特許規則第4条

 

インドネシア特許法 第24条

(1)特許は、出願に基づき付与される。

(2)(1)項の出願は、出願人または代理人により大臣に対して手数料の納付と共にインドネシア語による書面提出によってなされる。

(3)(略)

(4)(2)項の出願は、電子媒体および/または非電子媒体により申請することができる。

 

インドネシア特許法 第25条

(1)第24条における特許出願は少なくとも以下を含む:

(a)出願書の年月日

(b)発明者の氏名、完全な住所および国籍

(c)出願人が法人でない場合には、出願人の氏名、完全な住所および国籍

(d)出願人が法人の場合には、出願人の名称および完全な住所

(e)出願が代理人を通して行われる場合、代理人の氏名および完全な住所

(f)出願が優先権を伴って出願される場合、最初の出願の国名と出願日

(2)(1)項における特許出願には以下の要件を添付しなければならない:

(a)発明の名称;

(b) 発明の明細書

(c)特許請求の範囲

(d)発明の要約

(e)図面が出願と共に添付される場合、発明の説明に必要とされる明細書に記載される図面

(f)出願が代理人により行われる場合、委任状

(g)発明者による発明の所有を宣言した書類

(h)発明者でない出願人が出願する場合、発明の所有権を譲渡することを示す書類

(i)微生物に関する出願の場合、微生物の保管証明書

 

インドネシア特許規則 第4条 特許出願書類

特許出願は、次に掲げる事項からなるものとする。

(a)特許を取得するための願書

(b)発明に関する明細書

(c)発明に含まれる1または2以上の請求の範囲

(d)説明するために必要とされる明細書において述べられている1または2以上の図面

(e)発明に関する要約

 

(2)手続言語

 インドネシア語

 条文等根拠:特許法第24条(上記)

 

(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否

 可(ただしインドネシア出願日から30日以内に明細書のインドネシア語の翻訳文の提出が必要)

 条文等根拠:特許法第34条

 

インドネシア特許法 第34条

(1)最小要件を満たした出願は出願日を付与され大臣により記録される。

(2)(1)項における最小要件とは:

(a)第25条(1)項に規定する出願データ;

(b)第25条(2)項(a)号から(e)号にいう出願データ;および

(c)出願手数料納付の証明

(3)第25条(2)項(b)号にいう発明に関する明細書が外国語で記載されている場合、インドネシア語に翻訳された明細書を伴うことを義務付けられ、(1)項の出願日から30日以内に提出されなければならない

(4)発明に関する外国語の明細書にインドネシア語の翻訳が(3)項の期間内に提出されない場合には、当該出願は取下げられたものとみなされる。

 

(4)優先権主張手続

 特許出願が優先権の主張を伴ってなされるという申立は出願時もしくは出願後4か月以内にしなければならない。また、優先権証明書については優先日から起算して16か月以内に提出しなければならない。

 条文等根拠:特許法第30条、特許規則第42条~第44条

 

インドネシア特許法 第30条

(1)優先権を伴う出願は、優先日から起算して12か月以内に提出されなければならない。

(2)第25条に規定の要件に加え、(1)項における優先権を伴う出願には、その国の権限ある公務員により認証された優先権証明書を添付しなければならない。

(3)(2)項にいう該当国の権限ある公務員により認証された優先権証明書は、優先日から起算して16か月以内に大臣に提出されなければならない

(4)(1)項、(2)項および(3)項の要件が出願人により満たされない場合には、出願は優先権を利用しない出願とみなされる。

 

インドネシア特許規則 第42条 認証謄本

(1)特許出願が優先権を伴ってなされる場合は、第4条にいう規定の遵守の他に、特許出願には、他の国で最初に提出された特許を取得するための願書の謄本を付さなければならない。

(2)(1)にいう願書の謄本とは、最初に特許出願を受理した国の権限ある当局により認証された謄本をいう。

 

インドネシア特許規則 第43条 認証謄本の提出不可

(1)第42条(2)にいう認証謄本が、特許法第29条(2)に定める期間内に提出され得ない場合は、特許出願は、当該謄本に対する認証の請求の証拠書類を付して、最初の特許出願についての願書の謄本の証拠書類を提出することにより行うことができる。

(2)(1)にいう完備された書類の提出は、特許法第29条(2)の規定の遵守とみなされるものとする。

 

インドネシア特許規則 第44条 要件

(1)第5条にいう要件の具備の他に、特許を取得するための願書は、次に掲げる事項も含むものとする。

 (a)当該特許出願は、優先権の主張を伴ってなされるという申立

 (b)当該優先権を伴う出願の基礎となる他の国における最初の特許出願の出願日

 (c)当該特許出願がなされたインドネシア以外の国名

(2)(1)にいう申立は、特許局による特許出願についての願書の受理の日以後遅くとも4月以内にそのことが行われるという条件で、別個にすることもできる

 

日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較

 

日本

インドネシア

出願書類

所定の様式により作成した以下の

書面を提出する。

・願書

・明細書

・特許請求の範囲

・必要な図面

・要約書

特許法および特許規則に規定された以下の書面を提出する。

・願書

・明細書

・特許請求の範囲

・必要な図面

・要約書

・委任状

手続言語

日本語

インドネシア語

手続言語以外の明細書での出願日確保の可否

・可(英語その他の外国語)。

・その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。

・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。

・可

・出願日から30日以内に明細書の

インドネシア語の翻訳文の提出が必要である。

優先権主張手続

・優先権主張の基礎となる出願国名と出願の年月日を記載した書面及び優先権証明書は、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

・優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。

・日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっているが、本稿作成時点ではインドネシアとの間では実施されていない。

・優先権主張は出願時または、出願後4か月以内に可能。

・優先権証明書を優先日から16か月以内に提出しなければならない。

インドネシアにおける模倣対策および概論

 「インドネシアの模倣品対策に関する調査」(2016年8月、日本貿易振興機構(JETRO)ジャカルタ事務所)

 

2 模倣対策・概論

 2.1 知的財産権侵害関連機関と権限の整理 P.15

 2.2 各機関の取締実績 P.16

 2.3 直近3年間程度での規定の改正・通知等の要点 P.17

 2.4 ⺠事訴訟手続と刑事訴訟手続の比較 P.21