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インドネシアにおいてOIモデル契約書ver2.0共同研究開発契約書(新素材編、AI編)を活用するに際しての留意点

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インドネシアにおいてOIモデル契約書ver2.0ライセンス契約書(新素材編)、利用契約書(AI編)を活用するに際しての留意点

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インドネシアにおける模倣品流通動向調査

「インドネシアにおける模倣品流通動向調査」(2023年3月、日本貿易振興機構 ジャカルタ事務所)

目次

1. 目的 P.4

2. 調査結果 P.4
(ジャカルタの地区別に衣類、バッグ、装身具、化粧品、スペアパーツ、電子機器等の市場の模倣品販売の調査結果を紹介している。また、大手Eコマースプラットフォーム(Tokopedia、Shopee、LazadaおよびBukalapak)における模倣品流通の調査結果を紹介している。)

 2.1 物理的市場の調査 P.4
 2.1.2 序論 P.4
 2.1.3 業界特有の課題 P.4
 2.1.4 模倣品市場に関する情報 – 実地調査 P.5
 2.2 オンライン調査 P.20
 2.2.1 序論 P.20
 2.2.2 模倣品のオンライン市場調査 P.21

3. 最近の政策と主な法改正 P.23
(インドネシアの税関制度の概要、2018年から2023年の間の知的財産に関する法令の改正情報、2022年の知的財産権総局(DGIP)の取組みなどを紹介している。)  

 3.1 税関 P.23
 3.2 IPに関する法令 P.23
 3.2.1 オムニバス法 P.23
 3.2.3 知的財産権総局による最新情報 P.23
 3.3 インドネシアの法規制および関連するテイクダウン規定 P.25
 3.4 IPの啓蒙活動と教育プログラム P.26

4. 模倣品取り締まり機関に関する報告 P.27
(2018年から2021までの知的財産侵害事件の件数、2019年から2022年の商標侵害訴訟、著作権訴訟、特許訴訟、工業意匠訴訟の統計情報および訴訟概要(一部案件)を紹介している。)  

 4.1. 模倣品取り締まりの関連機関およびそれぞれの管轄と権限 P.27
 4.2. 過去5年の模倣品事件 P.28

5. インドネシアの市場における模倣品の実態に関する報告 P.34
(インドネシアの主要港湾の位置、入港船舶数、取り扱う貨物の内容や量などを紹介している。また、中国税関が公表した2016年から2021年までの模倣品差押え件数やインドネシア国内での模倣品の組立ての実態を説明している。INTAの2019年報告書によるインドネシアの模倣品の消費者についての分析した内容を解説している。)  

 5.1 模倣品の流通 P.34
 5.2.2 税関チェックポイントでの模倣品の流通量 P.35
 5.2 インドネシアにおける模造製品の製造と組立て P.37
 5.3 模倣品の消費 P.37

6. インドネシアにおける企業の模倣品対策に関する報告 P.38
(インドネシアにおける模倣品対策(刑事訴訟、民事訴訟、交渉、模倣品防止戦略)について解説している。また、模倣品対策を積極的に実施している企業4社の事例を紹介している。)

 6.1 模倣品が発見された際の対策、対策に要する時間とコスト、対策の成否の理由を説明する。また、模倣品が流通している場合の企業に対する助言も紹介する。 P.38

付属書1B:著作権刑事訴訟のフローチャート P.42
付属書1A:商標刑事訴訟のフローチャート P.43

 6.2 オンラインの模倣品対策を含め、模倣品対策を積極的に実施している日本、欧州、米国の企業の事例 P.44
付属書 P.45
A. DGIP との会議
B. インドネシア国家警察との会議
C. DGCE との会議

インドネシアにおける産業財産権の検索データベースの調査2022

「ASEANにおける産業財産権の検索データベースの調査 2022」(2023年3月、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所(知的財産部))

 「ASEANにおける産業財産権の検索データベースの調査 2022」(2023年3月、日本貿易振興機構バンコク事務所(知的財産部))第2章 インドネシア

(目次)
第2章 インドネシア
(インドネシア知的財産総局(DGIP)が提供するデータベースであるDGIPシステム上の案件データに基づき、種別(特許および実用新案)ごとに、2022年に公開された出願を対象とし算出した「出願から公開までに要した期間」、および2022年に登録された案件を対象とし算出した「出願から登録までに要した期間」について紹介している。また、2004年から2022年に①公開された案件、および②登録された案件について、それぞれ、①出願から公開まで、および②出願から登録までの経過期間の分布を、全案件、出願人国籍別、出願ルート別、技術分野別にグラフで紹介している。加えて、2019年から2021年までの各年の出願を対象とし算出した、全出願人を対象とした出願件数上位ランキング、日本国籍出願人を対象とした出願件数上位ランキング、技術分野別の出願件数上位ランキング、外国出願人のインドネシア第一国出願の出願件数上位ランキングを紹介している。さらに、2003年から2022年までの各年の出願についての2023年1月時点での登録率を紹介している。)

1.特許 P.7
1.1 産業財産権の権利化期間 P.7
1.2 産業財産権の出願件数上位リスト P.27
1.3 登録率 P.34

2.実用新案 P.35
2.1 産業財産権の権利化期間 P.35
2.2 産業財産権の出願件数上位リスト P.52
2.3 登録率 P.60

インドネシアにおける判決へのアクセス方法

1.インドネシア最高裁判所のデータベースでの判決閲覧

 インドネシア最高裁判所(以下、「最高裁判所」という)のデータベースは、更新が比較的頻繁に行われており信頼できる情報源であると言われているが、インドネシア語でのみ情報が提供されている。

(1) 最高裁判所の提供するウェブサイト(https://putusan3.mahkamahagung.go.id/)へアクセスすると、図1の画面が表示される。

図1:最高裁判所データベースのウェブサイトトップページ

 最高裁判所が提供するデータベースは、全てインドネシア語で提供されており、他言語による情報提供は行われていないが、ブラウザの機械翻訳により表示言語を変更することは可能である。
 Google Chromeを使用している場合、画面表示の言語は右クリックで表示されるプルダウンメニューから「○○語に翻訳」(「〇〇」はChromeの言語設定により異なる)を選択し、変更することができる(図2)。

図2:言語変更画面

(2) トップページ上部赤線で囲んである「DIREKTORI(ディレクトリ、DIRECTRORY)」にポインターを合わせると項目が表示される(図3aおよび図3b)。

図3a:「DIREKTORI」選択画面(インドネシア語)

図3b:「ディレクトリ」選択画面(日本語)

 緑線で囲んである「KLASIFIKASHI(分類、CLASSIFICATION)」に表示される項目は、以下のとおりである(インドネシア語(日本語、英語))。

SEMUA(全て、ALL)
PIDANA MILITER(軍事犯罪(刑事)、MILITARY CRIME)
PERDATA KHUSUS(特別民事、SPECIAL CIVIL)
PERDATA AGAMA(民間宗教(民事)、CIVIL RELIGION)
PIDANA KHUSUS(特殊犯罪、SPECIAL CRIMES)
PATEN(特許、PATENT)
SENGKETA KEWENANGAN MENGADILI(司法権をめぐる紛争(紛争裁定)、DISPUTE OF JUDGMENTAL AUTHORITY)
PERDATA(民事、CIVIL)
PAJAK(税、TAX)
TUN(行政、ADMINISTRATION)
PIDANA UMUM(一般犯罪(刑事)、GENERAL CRIME)

(2) ディレクトリの中からPERDATA KHUSUS(特別民事、SPECIAL CIVIL)、を選択すると(https://putusan3.mahkamahagung.go.id/direktori/index/kategori/perdata-khusus.html)、下位分類のリストが表示される(図4aおよび図4b)。赤線で囲んであるKlasifikasi(分類、Classification)の欄に知的財産権の下位分類として、Merek(ブランド(商標)、Brand)、Hak Cipta(著作権、Copyright)、Desain Industri(工業デザイン(意匠)、Industrial Design)およびPaten(特許、Patent)などがある。
 なお、2023年11月時点では、トップページ(図3aおよび図3b)のDIREKTORI(ディレクトリ、DIRECTRORY)のPATEN(特許、PATENT)を選択しても、案件は表示されない。

図4a:特別民事の下位分類 (インドネシア語)

図4b:特別民事の下位分類(日本語)

(3) 例えば、図4bの赤線の「特許」をクリックすると、判決一覧が直近のものから遡って表示される(図5b)。(なお、表示まで、少し時間がかかる場合がある。)

図5a:判決一覧画面(インドネシア語)(「Paten」を選択した場合)

図5b:判決一覧画面(日本語)(「特許」を選択した場合)

(4) 図5bの閲覧したい判決をクリックすると、判決に関する書誌事項画面が表示される(図6aまたは6b)。

図6a:書誌事項画面(インドネシア語)

図6b:書誌事項画面(日本語)

 書誌事項画面に表示される項目は以下のとおりである。なお、機械翻訳では分かりづらいと思われる文言は、日本語を意訳して表示している。

・Nomor(判決番号、Number)
・Tingkat Proses(プロセスレベル(審理状況)、Process Level)
・Klasifikasi(分類、Classification)
・Kata Kunci(キーワード、Keywords)
・Tahun(年、Year)
・Tanggal Register(登録日、Registration date)
・Lembaga Peradilan(司法機関、Judicial Institution)
・Jenis Lembaga Peradilan(司法機関の種類、Types of Judicial Institutions)
・Hakim Ketua(裁判長、Chief Justice)
・Hakim Anggota(裁判官、Member Judge)
・Panitera(登録官、Registrar)
・Amar(判決の結論、Result)
・Catatan Amar(判決の主文、Main text)
・Tanggal Musyawarah(審議日、Deliberation date)
・Tanggal Dibacakan(判決言渡日、Date Read)
・Kaidah(規則、Rule)
・Status(ステータス、Status)
・Abstrak(要約、Abstract)

 判決の詳細は、図6aまたは図6bの赤線で囲んである「Lampiran(付録(添付文書)、Appendix)」をクリックして、PDFファイルをダウンロードすることができる(図7)。

図7:判決詳細(インドネシア語)

 また、案件によっては、図6aまたは図6bの青線で囲んである「Putusan Terkait(関連する判決、Related Verdict)」をクリックすることによって、下級審の裁判例の情報を閲覧することが可能である。

 収録数は限られているが、知的財産関連の判決を「PERDATA KHUSUS(特別民事、SPECIAL CIVIL)」以外の分類でも探すことは可能である。例えば、刑事関係の判決は、トップページの「PIDANA KHUSUS(特別刑事、SPECIAL CRIMES)」を選択して表示される画面の下位分類Klasifikasi(分類、Classification)に表示される「Kejahatan Merek(商標刑事、Brand Crime」、「Kejahatan Hak Cipta(著作権刑事、Copyright Crime)」、「Rahasia Dagang(営業秘密、Trade Secret)」に収録されている。

 また、トップページの「PENCARIAN(検索、Search)」(図8)をクリックし、キーワード検索を行うこともできる(図9)。

図8:最高裁判所データベースのウェブサイトトップページ(図1再掲)

図9:キーワード検索画面(インドネシア語)

2.Hukum Onlineでの判決閲覧
(1) 民間企業が運営するHukumonline.Comから判決情報を閲覧することも可能である。Hukumonline.Comのウェブサイト(https://www.hukumonline.com/)へアクセスする(図10)。

図10:Hukum Online.Comのウェブサイト(トップページ中部)(インドネシア語)

(2) トップページ中部左(図10)の赤線で囲んである「Pusat Data(データセンター)」から、「Putusan(判決)」タブをクリックし青線で囲んである「LIHA SEMUA(全てみる)」をクリックすると「Kategori Putusan(法分野による分類)」画面が表示される(図11)。

図11:Kategori Putusan(法分野による分類)画面(インドネシア語)

(3) 図11の緑線で囲んである「Perdata(民事)」をクリックすると分類が表示される。青線で囲んである「HKI (Hak atas Kekayaan Intelektual)(知的財産権関係の判決)」を選択すると、知的財産関係の判決が表示される(図12)。

図12:知的財産関係の判決一覧画面(インドネシア語)

図12の赤線で囲んである欄をクリックすると、種別、「Desain Industri(意匠)」、「Hak Cipta(著作権)」、「Merek(商標)」、「Paten(特許)」が表示される。例えば、緑線で囲んである「Merek(商標)」をクリックすると、商標に関する判決が表示される(図13)。

 図13:商標判決表示画面(インドネシア語)

(4) 判決の詳細を確認するためには、アカウントの作成が必要である。図13の確認したい判決をクリックすると、アカウントの作成を求められる。無料会員が閲覧できる情報は限定的である。なお、収録判決の更新は、あまり頻繁に行われていないようである。

 なお、図13の画面右上の赤線で囲んである言語(インドネシア語または英語)変換は、2023年11月時点では機能していない。なお、右クリックでブラウザの翻訳言語選択で表示される言語に変換することは可能であるが、この機能を利用して図12の種別選択を行おうとしても日本語訳が適切に表示されないため、お勧めしない。

日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較

1.日本における審査請求期限
 日本においては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ(特許法第48条の3第1項)、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げたものとみなされた場合であっても、当該期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内で、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法第48条の3第5項)。

 出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨)。

 PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。この場合の審査請求期限は、国際出願日から3年である。

 また、特許出願の分割に係る新たな特許出願、意匠登録出願または実用新案登録出願の変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願については、原出願から3年の期間経過後であっても、分割または変更による特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

 なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる(特許法第48条の3第1項)。

条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第184条の17

日本国特許法 第48条の2(特許出願の審査)
 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。

日本国特許法 第48条の3(出願審査の請求)
 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。

2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

3 出願審査の請求は、取り下げることができない。

4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。

5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。

(第6から第8項省略)

日本国特許法 第184条の17(出願審査の請求の時期の制限)
 国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあつては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあつては第百八十四条の四第一項又は第四項及び第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。

2.インドネシアにおける審査請求期限
 インドネシアにおいては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある(特許法第51条(1))。審査請求は、インドネシア出願日から36か月以内に行わなければならず、出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第51条(2)(3))。なお、審査請求は出願人のみが行うことができる(特許規則第52条(1))。

条文等根拠:特許法第51条(1)(2)(3)、特許規則第52条(1)

インドネシア特許法 第51条
(1) 実体審査の請求は、手数料を納付して大臣に対して書面で行われる。
(2) (1)項における実体審査請求は、出願日から36か月以内に行われる。
(3) (1)項における期間内に実体審査請求が行われなかった場合又はそのための手数料が支払われなかった場合、出願は取下げられたものとみなされる。
(4)から(8) 省略

インドネシア特許規則 第52条
(1) 公開期間の満了後であるが、特許出願の受理の日から 36 月以内に、実体審査の請求は、特許局に対して特許出願人により行うことができる。
(2) (1)にいう実体審査の請求は、手数料の額及び納付手続が大臣により定められた手数料の納付とともに行われる。
(3) 省略

日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較

日本 インドネシア
提出期限 3年 36か月
基準日 日本の出願日 インドネシアの出願日

インドネシアにおける商品・役務の類否判断について

1.はじめに
 日本では先行商標と出願商標が非類似とされているケースで、インドネシアでは、同じ商標の出願について、同じ先行商標と類似と判断され、拒絶査定を受けることがある。この相違は、両国の指定商品・役務に関する審査ガイドラインの違いによって生じる場合がある。例えば、日本は「類似群」と呼ばれるグループ分けを採用しており、商品・役務が同じグループに属さない限り、原則として非類似とみなされる。しかし、インドネシアの審査ガイドラインでは、商品・役務をあらかじめグループ化していないため、判断が異なる可能性がある。
 本稿では、インドネシアの審査ガイドラインに基づく商品・役務の類否判断について紹介し、日本の審査ガイドラインとの相違点を明らかにすることを目的とする。具体的には、①商品・役務の類似・非類似を判断する基本原則、②商品間の類似・非類似、③役務間の類似・非類似、④商品・役務間の類似・非類似、の4点について比較・検討する。
 なお、本稿では、商品・役務の類似性について、商品・役務の類似性を超えて保護される可能性がある著名商標の類似性、同一図形要素商標の類似性については論じていない。

2.商品・役務の類似・非類似を判断する基本原則
 インドネシアにおける審査手順は、日本の審査手順と同様であると考えられ、具体的には、通常以下のようなアプローチが行われる。

① 出願商標が識別力を有するか否かを判断する。
② ①で識別力があると判断された場合、出願商標の指定商品または指定役務と同一または類似する商品または役務を指定した先行商標を特定する。
③出願商標と上記先行商標の標識(マーク)が同一または類似であるか否かを判断する。

 (i)出願商標の指定商品と同一または類似の商品、(ii)出願商標の指定役務と同一または類似の役務、 または、(iii)出願商標の指定役務と類似の商品もしくは出願商標の指定商品と類似の役務を指定し、かつ、同一または類似の標識(マーク)を有する先行商標が存在する場合、出願商標は登録できない。商品・役務の類似性の判断基準は、「商標登録に関するインドネシア共和国法務人権大臣規則2016年第67号(以下、「大臣規則」という。)」に規定されている。

3.商品間の類似・非類似について
(1) 商品間の類否判断の考え方
 インドネシアにおける商品間の類似性を判断するための基準は日本と同様と考えられ、大臣規則第17条第2項において、以下のように規定されている:

a. 商品の性質
b. 商品の使用目的および使用方法
c. 商品の補完性
d. 商品の競合性
e. 商品の流通経路
f. 関連する消費者
g. 商品の由来(原産地、製造者または提供者)

(2) ニース分類の活用
 大臣規則第14条第4項において、ニース分類を採用することが規定されており、ガイドライン等は公開されていないが、実務上、同じくニース分類を採用している欧州連合知的財産庁(EUIPO)と同様のアプローチで審査されると考えればよい。

 例えば、同じ区分に分類される商品であっても、類似しない例を示す。

       (左側が先行商標、右側が後出願商標、以下同じ)

 また、異なる区分に分類される商品が類似とみなされる例を示す。

関連情報:欧州連合商標審査ガイドライン
Part B Examination 1 Introduction:
https://guidelines.euipo.europa.eu/2058843/2046764/trade-mark-guidelines/1-introduction
4.2.2 Influence of classification on the scope of protection:
https://guidelines.euipo.europa.eu/2058843/2042025/trade-mark-guidelines/4-2-2-influence-of-classification-on-the-scope-of-protection

(3) 商品名選択時の留意点
 インドネシアでは、電子出願システムの採用に伴い、商品または役務はシステム上に表示される選択肢から選択する必要があり、それ以外の商品名または役務名を選択することはできない。出願人は、希望する商品または役務に最も適した商品名または役務名をシステム上の選択肢から選ぶことが求められる。
 システム上に表示される商品・役務のリストは、マドリッド商品・役務リスト(Madrid Goods & Services Manager、MGS)に準拠している。

 なお、日本からの出願には類見出しのみからなる商品名が散見される。システム上に表示されている類見出しの商品名は出願可能であるが、表示されていない類見出しの商品名は指定できないとされている。
 下記、関連記事も参照されたい。

関連記事:「インドネシアにおける指定商品または役務に関わる留意事項」(2021.6.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20279/

4.役務間の類似・非類似について
(1) 役務間の類否判断の考え方
 役務間の類似性を判断するための基準も日本と同様と考えられ、大臣規則第17条第2項において、以下のように規定されている:

a. 役務の性質
b. 役務の使用目的および使用方法
c. 役務の補完性
d. 役務の競合性
e. 役務の流通経路
f. 関連する消費者
g. 役務の由来(原産地、製造者または提供者)

(2) ニース分類の活用
 大臣規則第14条第4項において、ニース分類を採用することが規定されており、ガイドライン等は公開されていないが、実務上、同じくニース分類を採用している欧州連合知的財産庁(EUIPO)と同様のアプローチで審査されると考えればよい。

 例えば、同じ区分に分類される役務であっても、類似しないとされる場合がある。

 一方、異なる区分に分類される役務であっても、その役務に関連性があれば、類似とみなされる場合がある。

(3) 役務「小売(Retail Services:小売の業務における顧客への便益の提供)」について
 「小売」を役務とする商標、すなわち、デパートやスーパーマーケットのように提供される品目を特定しない「小売」サービス全般を指定する商標の出願、は認められている。
 なお、MGSでは、retail and wholesale services(小売および卸売の業務における顧客への便益の提供);retail or wholesale services(小売または卸売の業務における顧客への便益の提供);retail or wholesale store services(小売または卸売の店舗業務における顧客への便益の提供)を選択できるので、これらを指定することで現地代理人と日本の出願人の理解を一致させることが可能となり、好ましい。
 「小売」を役務とする商標の標識(マーク)と同一または類似の先行商標が商品商標として存在する場合、これを引用して拒絶される可能性がある。
 また、販売商品を特定しない小売を指定する先行商標が存在しても、特定商品の小売を指定する後願商標が登録された例を以下に示す。

 さらに、販売商品を特定しない「小売」を指定する先行商標が、同じ「小売」を指定する役務商標(下表上段)や多くの商品を例示した「小売」の役務商標(下表下段)を排除した例を示す。

 なお、「小売」を役務とする登録商標は、市場における混同が証明できる場合に限り、同一または類似の商品商標に対しても排他権を有する。また、当該登録商標が特定の商品に使用されていないことを理由として不使用取消請求しても、他の商品で「小売」の役務商標を使用している限り、取消の対象とはならない。

(4) 役務名選択時の留意点
 商品名と同様に、MGSに挙げられている役務名は、電子出願システム上に表示される選択肢から役務名を選択することが求められ、その役務名を変更することはできない。希望する役務を含む最も類似した役務名を選択する必要がある。最も広範な役務名から、より具体的な役務名まで選択することが望まれる。

5.商品・役務間の類否について
(1) 商品・役務間の類否判断の考え方
 商品・役務間の類似性を判断するための基準も日本と同様と考えられ、大臣規則第17条第2項において、以下のように規定されている:

a. 商品と役務の性質
b. 商品と役務の使用目的および使用方法
c. 商品と役務の補完性
d. 商品と役務の競合性
e. 商品と役務の流通経路
f. 関連する消費者
g. 商品と役務の由来(原産地、製造者または提供者)

 異なる区分の商品や役務であっても、事業や消費者が関連するなど、上記の基準に基づいて、類似しているとみなされる可能性がある。以下に例を挙げる。

(2) 商品・役務間を考慮した指定商品・役務の選択時の留意点
 商標出願時に、出願人は指定する商品および役務の区分について、保護を希望する範囲を関連する商品および役務に拡大することを検討すべきである。商標審査官は、標識(マーク)が非常に類似しているか、よく知られているか、または先行商標からの異議申立があり、注意している場合を除き、例えば、商品・役務間の場合には、必ずしも区分を跨いだクロスサーチ(日本の備考審査)を行うとは限らないことに留意しなければならない。

インドネシアにおける冒認商標出願対策について

 「冒認出願対策リーフレット」(2022年11月、ジェトロ・バンコク事務所 知的財産部、ジェトロ・シンガポール事務所 知的財産部)

目次
I. インドネシア商標制度の概要
(インドネシアにおける商標登録制度の概要および手続を紹介している(フローチャートあり)。

II. 商標検索の方法
(インドネシア知的財産総局の検索サイトでの商標の検索方法を紹介している。)

III. インドネシアにおいて第三者が商標出願又は商標登録したことを発見した場合の対策
(冒認出願に対する法的対抗措置(異議申立、無効取消請求、不使用取消請求)をその留意点とともに紹介している。また、異議申立または無効取消請求の根拠となる条文も紹介している。)

IV. 事前にどのような予防策をとるべきか
(冒認出願を予防する3つの方法を紹介している。)

インドネシアにおけるモデル契約書(技術検証契約書(AI編))を活用するに際しての留意点

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インドネシアにおけるモデル契約書(技術検証契約書(新素材編))を活用するに際しての留意点

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