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香港における知財裁判外紛争解決手続(ADR)マニュアル

「香港知財ADRマニュアル」(2023年3月、日本貿易振興機構 香港事務所(知的財産権部))

目次
はじめに P.1

第1章 香港のADRをめぐる最近の動きと法制度 P.2
 第1節:香港のADRをめぐる最近の動き P.2
  香港の法制度の紹介
  香港における裁判外紛争解決手続に関する法律
  香港の現行仲裁条例
  調停条例
  謝罪条例
  ADRケースの統計
 第2節:香港のADRをめぐる法制度 P.13
  法規定
  適用される機関と機関の規定
  知的財産権に関する法律
  知的財産に関する香港の法律規定
 第3節:香港のADRに関する国際協定 P.17
  国際協定
  管轄区域を越えた協定

第2章 香港における知財ADRの実施手順 P.18
(裁判外紛争解決手続(仲裁、調停)の概要を実務上の留意点とともに説明している。なお、第4節「ADRと訴訟の比較表」においては、所要期間の目安などが紹介されており、一般的に香港の知財仲裁は18か月以内、調停は2週間から2か月、訴訟は2から3年で完了するとされている。)

 第1節:知的財産仲裁 P.20
  a. 定義と法理論 P.20
  b. 知財紛争を仲裁するメリット・デメリット P.29
  c. 仲裁で解決される知的財産案件の種類 P.34
  d. 香港の仲裁機関 P.42
  e. 香港のADR 関連事例・判決例 P.45
 第2節:知財調停 P.47
  a. 定義と法理論 P.47
  b. 調停の対象となる事件の種類 P.52
  c. 香港で調停を行うための手続 P.52
  d. 香港の調停機関 P.54
  e. 香港の調停関連事例・判決例 P.56
 第3節:ドメイン名に関する紛争解決 P.57
  a. 定義と法理論 P.57
  b. ドメイン名紛争解決のための手続 P.62
  c. 香港のドメイン紛争サビスプロバイダ P.63
  d. 香港におけるドメイン名関連事例・判決例 P.67
 第4節:ADRと訴訟の比較表 P.68
 第5節:オンライン紛争解決(Online dispute resolution) P.69
  a. 定義と法理論 P.69
  b. グローバルな知的財産紛争における各ODR の長所・短所 P.69
  c. 各ODRの知的財産権案件の種類 P.70
  d. 香港のODR機関 P.70
  e. 香港におけるODR関連事例・判決例 P.71

APPENDIX A: 特許案件における主張書面についての仲裁廷による指示のサンプル P.72

第3章 紛争解決条項とADR P.76
(第1節では紛争解決条項を交渉する際の注意点を項目ごとに解説している。第2節では、香港国際仲裁センター(HKIAC)のモデル条項を例として重要な点を説明している。第3節では、日本の当事者が他の当事者と香港での仲裁または調停に合意する際に使用できるモデル条項の例を紹介している。)

 第1節:紛争解決条項におけるADRとその交渉 P.76
  仲裁地
  アドホック仲裁または機関仲裁
  仲裁機関の選択
  仲裁規則
  準拠法
  仲裁人の人数
  仲裁の言語
  仲裁人・調停人に関する要件(例:国籍など)
  文書の提出
  暫定的救済
  緊急仲裁
  交渉期限
  調停条項
  等
 第2節:モデル条項 P.94
  香港に拠点を置く仲裁機関のモデル条項(リンク先の紹介)
  仲裁の範囲について考え方
  香港に拠点を置く機関が運営する調停に関するモデル条項(リンク先の紹介)
 第3節:モデル条項の例 P.99
  推奨される仲裁条項
  推奨される調停条項
  推奨される段階的な条項

第4章 香港知財 ADRのシミュレーション・シナリオ P.103
(日本企業が直面すると考えられる国際的な知的財産紛争の4つのシナリオを例とし、ADR において最適な判断をするために検討すべき項目を紹介している。)

 第1節:シナリオ1 P.103
 第2節:シナリオ2 P.106
 第3節:シナリオ3 P.109
 第4節:シナリオ4 P.113

香港における国際仲裁について(前編)

記事本文はこちらをご覧ください。

香港における国際仲裁について(後編)

記事本文はこちらをご覧ください。

香港における商号の保護

 商号は、会社または法人の名称または事業の名称となり得る。会社の商号は会社登記の際に会社登記所に登記され、事業名は商業登記の際に税務局に登記される。外国企業が香港でビジネスを行う場合は、現地法人を設立するか外国企業の香港支店として会社登記所に登録しなければならない。また香港でのすべての事業について、その事業開始日から1カ月以内に商業登記をしなければならない(会社登記と商業登記の申請提出は別々ではなくまとめて行うことが可能である。)
 商号登記、事業名登記および商標登録は、それぞれ異なる法律および登記および登録制度に準拠しており、異なる政府部門により管理され、異なる目的を果たしている。商号または事業名の登記は、その商号もしくは事業名またはその一部に関して商標権を付与するものではない。商標の排他的使用権を獲得するには、香港知的財産局において、登録対象となる商品または役務に関して当該商標の登録を取得する必要がある。

1.会社登記所に対する商号の登記(会社登記)
 会社の商号は、会社条例(第622章)に基づき、会社登記所に登記しなければならない。
 商号は、英語名、中国語名、または英語名と中国語名により登記することができる。ただし、英語の文字と中国語の文字との組合せによる商号は認められない。商号は、その名称が英語による場合は「Limited」という言葉で終わらなければならず、中国語による場合は「有限公司」という文字で終わらなければならない(会社条例第102条)。
 商号は、既存の名称と同一であってはならず、犯罪に当たるもの、侮辱的なもの、または公益に反するものであってはならない(会社条例第100条(1)項)。省庁、政府、委員会、事務局、連盟、評議会、商工会議所、観光協会、信託、管財人などと同じ名称は、登記の前に登記官の事前承認が必要となる(会社条例第100条(2)項)。
 会社の設立時における商号の登記申請に対して、会社登記所は、既存の香港の商号と同一であるかどうかを審査するが、その名称が第三者の財産権と抵触するかどうかは審査しない。言い換えると、他者の登録商標または周知商標と極めて類似の名称を用いて、香港に会社を設立できるということである。このような会社は「影の会社(shadow companies)」と呼ばれており、たいていは中華人民共和国に居住する取締役および株主を擁し、その背後には、商取引において潜在的顧客を欺くために、登録商標または多くの場合は周知商標の所有者の代表であるかのように自らを詐称する個人が存在している。
 登記官は、当該名称が既存の商号と極めて類似している場合は、登記日から12か月以内に(会社条例第108条(1)項(a)および(b))、また、その名称が誤解を招くものであった場合は登記日から5年以内に(会社条例第108条(1)項(c)および(d))、また、会社条例第100条(2)項(a)もしくは(b)に基づきその名称を登記すべきではなかった場合は登記日から3か月以内に(会社条例第108条(1)項(e))、当該会社に商号の変更を命じることができる。これらの所定の期間は延長することができる。
 登記官は、その名称が会社の営業内容に関して誤認を招き、公衆に被害が及ぶ可能性が高い場合、または会社条例第100条(1)項(c)もしくは(d)に基づきその名称を登記すべきではなかった場合には、登記されている期間の長さに関係なく、当該会社に商号の変更を命じることができる(会社条例第109条(1)項)。
 商標権者は、自己が香港で取引しているものと同一または類似の商品もしくは役務に関して、商標権者の登録商標と同一または混同を生じるほど類似の商号が別会社によって使用されている場合には、詐称通用を根拠に、または、状況によっては商標権侵害を根拠に民事訴訟を提起することができる。
 登記を求める商号が既存企業により既に登記されているかどうかを確認するために、会社登記所電子調査サービスを利用して、商号調査を行うことができる。

2.税務局に対する事業名の登記(商業登記)
 事業名は、事業の運営に用いられるものであり、個人、パートナーシップまたは香港内外で設立された会社により香港で営まれているあらゆる事業とその事業名は、商業登記条例(第310章)に基づき、税務局に登記しなければならない。
 下記の場合には、実際の事業が営まれていない場合でも、商業登記が要求される。

 (a)香港で実際の事業が営まれているかどうかに関係なく、会社が香港において事業所を設立した場合。
 (b)香港において事業所を設立したかどうかに関係なく、非香港企業が香港において駐在員事務所もしくは連絡事務所を有する、または香港において自己の財産を貸し出している場合。
 なお、会社は自己の事業を営むために、複数の異なる事業名を使用および登記することができる。商号と同様に、事業名は英語名、中国語名、または英語名と中国語名により登記することができる。

香港における政府による知的財産に関する各種優遇・支援制度

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香港における商号の保護

【詳細】

商号は、会社または法人の名称または事業の名称となり得る。会社の商号は会社登記の際に会社登記所に登記され、事業名は商業登記の際に税務局に登記される。外国企業が香港でビジネスを行う場合は、現地法人を設立するか外国企業の香港支店として会社登記所に登録しなければならない。また香港でのすべての事業について、その事業開始日から1カ月以内に商業登記をしなければならない(会社登記と商業登記の申請提出は別々ではなくまとめて行うことが可能である。)

 

商号登記、事業名登記および商標登録は、それぞれ異なる法律および登記および登録制度に準拠しており、異なる政府部門により管理され、異なる目的を果たしている。商号または事業名の登記は、その商号もしくは事業名またはその一部に関して商標権を付与するものではない。商標の排他的使用権を獲得するには、香港知的財産局において、登録対象となる商品または役務に関して当該商標の登録を取得する必要がある。

 

1.会社登記所に対する商号の登記(会社登記)

会社の商号は、会社条例(第622章)に基づき、会社登記所に登記しなければならない。

商号は、英語名、中国語名、または英語名と中国語名により登記することができる。ただし、英語の文字と中国語の文字との組合せによる商号は認められない。商号は、その名称が英語による場合は「Limited」という言葉で終わらなければならず、中国語による場合は「有限公司」という文字で終わらなければならない(会社条例第102条)。

商号は、既存の名称と同一であってはならず、犯罪に当たるもの、侮辱的なもの、または公益に反するものであってはならない(会社条例第100条(1)項)。省庁、政府、委員会、事務局、連盟、評議会、商工会議所、観光協会、信託、管財人などと同じ名称は、登記の前に登記官の事前承認が必要となる(会社条例第100条(2)項)。

会社の設立時における商号の登記申請に対して、会社登記所は、既存の香港の商号と同一であるかどうかを審査するが、その名称が第三者の財産権と抵触するかどうかは審査しない。言い換えると、他者の登録商標または周知商標と極めて類似の名称を用いて、香港に会社を設立できるということである。このような会社は「影の会社(shadow companies)」と呼ばれており、たいていは中華人民共和国に居住する取締役および株主を擁し、その背後には、商取引において潜在的顧客を欺くために、登録商標または多くの場合は周知商標の所有者の代表であるかのように自らを詐称する個人が存在している。

登記官は、当該名称が既存の商号と極めて類似している場合は、登記日から12ヵ月以内に(会社条例第108条(1)項(a)および(b))、また、その名称が誤解を招くものであった場合は登記日から5年以内に(会社条例第108条(1)項(c)および(d))、また、会社条例第100条(2)項(a)もしくは(b)に基づきその名称を登記すべきではなかった場合は登記日から3ヵ月以内に(会社条例第108条(1)項(e))、当該会社に商号の変更を命じることができる。これらの所定の期間は延長することができる。

登記官は、その名称が会社の営業内容に関して誤認を招き、公衆に被害が及ぶ可能性が高い場合、または会社条例第100条(1)項(c)もしくは(d)に基づきその名称を登記すべきではなかった場合には、登記されている期間の長さに関係なく、当該会社に商号の変更を命じることができる(会社条例第109条(1)項)。

商標権者は、自己が香港で取引しているものと同一または類似の商品もしくは役務に関して、商標権者の登録商標と同一または混同を生じるほど類似の商号が別会社によって使用されている場合には、詐称通用を根拠に、または、状況によっては商標権侵害を根拠に民事訴訟を提起することができる。

登記を求める商号が既存企業により既に登記されているかどうかを確認するために、会社登記所電子調査サービスを利用して、商号調査を行うことができる。

 

2.税務局に対する事業名の登記(商業登記)

事業名は、事業の運営に用いられるものであり、個人、パートナーシップまたは香港内外で設立された会社により香港で営まれているあらゆる事業とその事業名は、商業登記条例(第310章)に基づき、税務局に登記しなければならない。

下記の場合には、実際の事業が営まれていない場合でも、商業登記が要求される。

(a)香港で実際の事業が営まれているかどうかに関係なく、会社が香港において事業所を設立した場合。

(b)香港において事業所を設立したかどうかに関係なく、非香港企業が香港において駐在員事務所もしくは連絡事務所を有する、または香港において自己の財産を貸し出している場合。

なお、会社は自己の事業を営むために、複数の異なる事業名を使用および登記することができる。商号と同様に、事業名は英語名、中国語名、または英語名と中国語名により登記することができる。