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香港における商標権に基づく権利行使の留意点

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香港における「商標の使用」と使用証拠

【詳細及び留意点】

商標出願の時点では使用の要件はないが、出願書式において、香港における指定商品および指定役務に関して、商標が出願人によりまたは出願人の同意の下で使用されていること、または出願人は当該商標を使用するまたはその使用を認める誠実な意図を有していることを示す必要がある。登録前も商標登録の更新時のいずれにおいても、使用を立証する必要はない。

しかし、商標の使用を立証する使用証拠は、不使用取消、異議申立および侵害訴訟において提出を要求され、商標出願に対する絶対的拒絶理由通知または相対的拒絶理由通知の克服に際しても重要となる。

1.商標の使用

商標登録は、商標が、登録に係る商品または役務に関して,商標権者またはその同意を得た者により少なくとも継続して3年間香港で真正に使用されておらず、不使用の正当な理由がない場合には、第三者からの不使用取消請求があれば取り消される。(香港商標条例第52条(2)(a))。当該期間において商標が実際に使用されていたことを立証する責任は、商標権者が負う(香港商標条例第82条)。したがって、商標権者にとって、商標の登録日から3年以内に、登録されたすべての指定商品または指定役務に関して、その登録商標の真正な使用を開始し、3年以上の継続する期間にわたる商標の使用休止を避け、さらに使用証拠を保管することが重要である。この使用証拠は、不使用取消請求から商標登録を防御する上で必要となる。ライセンシーによる商標の使用は、商標権者による有効な商標の使用となる。

商標条例には、何が商標の「使用」と看做されるか明確な定義はないが、出願において指定されたまたは登録された商品または役務に関する使用でなければならない。

商標の使用は、商標が登録された態様における商標の識別性を変えない要素において異なる態様による使用が含まれる(香港商標条例第52条(3)(a))。例えば、ブロック体大文字で登録された文字商標が、異なるフォントまたは大文字と小文字で使用される場合や、白黒で登録された商標が別の色で使用される場合は、登録された商標の識別性を変えたものとは看做されない。香港における使用には、輸出のみを目的として香港において商品または商品の包装に商標を付すことが含まれるとともに、商標が役務に関して登録されている場合、香港外部に提供されるまたは提供が予定される役務に関する使用(例えば、ホテルまたはレストランサービスが香港外で提供される場合において、当該ホテルまたはレストランサービスについて、香港において商標を宣伝すること)が含まれる。

何人も、登録されている商品または役務と同一または類似する商品または役務に関して、登録商標と同一または類似する商標を業として使用する場合は、登録商標を侵害する(香港商標条例第18条(1)、(2)、(3)および(4))。これを適用する上で、特に次の場合は、何人も商標を使用することになる(香港商標条例第18条(5))。

(1)商標を商品または包装に適用する場合

(2)商標の下で販売のために商品を提供または展示する場合

(3)商標の下で商品を市場に出す場合

(4)販売のために商品を提供または展示する目的、または商品を市場に出す目的で、商標の下で商品を在庫する場合

(5)商標の下で役務を提供または供与する場合

(6)商標の下で商品を輸入または輸出する場合

(7)商標を商業文書または広告に使用する場合

侵害を構成する商標の「使用」には、商標を適用することが商標権者またはライセンシーにより許可されていないことを知っている者またはそう信じる理由を有する者が、商品のラベル表示または包装のために、商業文書として、または商品もしくは役務の公告のために、使用される予定の材料に当該商標を適用しまたは適用させることも含まれる(香港商標条例第18条(6))。

商標権者は、登録商標の右上にシンボルマーク「®」を使用することを推奨する。

2.使用証拠

商標の真正な商業的使用を立証するため、商標権者は、販売額や売上高の数値や広告支出、インボイスの原本または写し、カタログ、宣伝広告資料といった過去の情報や資料を保管し、そうした情報や資料に基づく適切な使用証拠の作成に備えることが重要である。

不使用取消請求に対する抗弁に際しては、当該不使用取消請求の申請がなされる前3年間の期間内に、当該登録商標の真正な商業的使用が実際に行われたことを立証する必要がある。真正な使用とは、必ずしも中断のない使用または長期の使用を意味するものではない。使用証拠が、登録された商品または役務のすべての使用を立証していない場合、その使用を立証することができない商品または役務に関して、商標登録が部分的に取り消されることとなる。

商標出願において、拒絶理由の克服の際に必要とされる「使用による識別力」または「善意の同時使用」を立証するための使用は、例えば出願日前2~5年といった、中断のない比較的長期にわたるものであることが多い。使用証拠が出願におけるすべての商品または役務の使用を立証できない場合、当該出願の指定商品または指定役務は、使用が立証された商品または役務に限定される。

使用証拠は、商標権者または出願人の代表者により署名された宣誓書の形式で提出されなければならない。香港外で作成される宣誓書は、当該国での認証が必要となる。

宣誓書に関する公証人の認証手続において、宣誓者の署名の証明を第三者に代理させるという日本において広く行われているプラクティスは、香港においては認められない。宣誓者は、公証人の面前で宣誓書に署名しなければならない。

宣誓書の形式による使用証拠は、案件に応じて英語または中国語によるものでなければならない。その他の外国語による場合は、当該文書または関連部分の適切な公証翻訳文が要求される。

商標登録局ワークマニュアルは、宣誓書に関するその他方式要件について、その詳細を定めている。