香港における商標制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
・所定の出願書類
出願書類に記載が求められる主要な情報
1) 出願人の詳細
a 出願人の氏名および住所(私書箱の住所は不可)
b 出願人が法人であるのか否か、または個人であるのか。また、法人であるならばその管轄
2) 商標の登録請求に関する商品またはサービスの陳述
3) 商標の表示
4) パリ条約に基づく優先権を主張する場合、先の出願の管轄、出願番号、出願日
- 委任状の提出は求められない。
- 優先権書類は登録官が要求した場合にのみ提出が必要。
(商標条例(Cap.559)第38条、商標規則(Cap.559A)規則6~10)
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「香港における商標出願制度概要」(2019.07.04)
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「香港の商標関連の法律、規則等」(2019.03.26)
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「香港における指定商品もしくは指定役務に関わる留意事項」(2016.05.06)
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「香港における英語あるいは中国語(公用語)以外の言語を含む商標出願」(2015.03.31)
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「香港における商標制度の概要」(2021.09.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/20877/
2. 登録できる商標/登録できない商標
(1)登録できる商標
・1事業の商品またはサービスと他の事業の商品またはサービスを識別することができ、かつ、視覚的に表すことが可能な標識。
・語(人名を含む)、表示、意匠、文字,符号,数字,図形要素,色彩,音,匂い,形状,および当該標識の組合せから構成することができる。
(商標条例(Cap.559)第3条)
(2)登録できない商標(絶対的拒絶理由)
・商標の「意味」(上記(1)登録できる商標)の要求を満たさない標識。
・識別性のない商標。
・商取引または事業において、商品もしくはサービスの種類、品質、数量、用途、価格、原産地、生産もしくは提供時期、またはその他の特徴を指定することに資する標識のみで構成される商標。
・現行の言語において、または誠実かつ確立した取引慣行において通例となっている標識のみで構成される商標。
・次のもののみで構成される標識
a 商品自体の特質に由来する形状、
b 技術的な成果を得るために必要な商品の形状、
c 商品に実質的価値を与える形状。
・一般に認められた道徳規範に反する、または公衆を欺く虞のある商標。
・その使用が、法律に基づいて香港で禁止されている、またはその商標登録出願が悪意でされている商標。
・商標が次のものから構成され、または次のものを含む商標
a 中国の国旗またはその意匠、
b 中国の国歌「義勇軍行進曲」、
c 中国の国章またはその意匠、
d 香港特別行政区の区旗またはその意匠、
e 香港特別行政区の区章またはその意匠。
・所管当局の許可がない場合、次のものから構成され、または次のものを含む商標
a パリ条約加盟国またはWTO加盟国の旗、
b パリ条約国またはWTO加盟国の紋章またはその他の国章、
c パリ条約加盟国またはWTO加盟国によって採用され、管理と保証を示す公式の標識または特徴、
d 1つまたは複数のパリ条約加盟国またはWTO加盟国が加盟している国際政府間組織の紋章、旗、またはその他の紋章、
e 1つ以上のパリ条約加盟国またはWTO加盟国が加盟している国際政府間組織の略語と名前。
(商標条例(Cap.559)第11条、第64、65条)
(3)非標準商標
・証明標章。
・団体標章。
・防御商標。
(商標条例(Cap.559)第60~62条、商標規則(Cap.559A)規則99~101)
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「香港における指定商品もしくは指定役務に関わる留意事項」(2016.05.06)
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「香港における英語あるいは中国語(公用語)以外の言語を含む商標出願」(2015.03.31)
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3. 出願の言語
・公用語(英語または中国語)。
・標識にローマ字以外の文字または中国語以外の文字が含まれている場合は、翻訳と音訳を提供する必要がある。
(商標条例(Cap.559)第38条(4)、商標規則(Cap.559A)規則120)
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4. グレースピリオド
商標の新規出願には規定はないが、更新時には次の規定がある。
・登録の有効期限が切れてから6月以内の商標の遅延更新は、遅延更新料の支払いで許容される。
・登録は、有効期限から6月以内に更新されない場合、商標登録から削除される。
・遅延の理由を伴う権利回復の申請は、削除から6月以内に行うことができるが、登録官の承認が必要である。
(商標条例(Cap.559)第50条、商標規則(Cap.559A)規則32,34,35)
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5. 審査
(1)実体審査
・登録官は、(i)商標登録出願が商標条例に定められた登録要件を満たしているか否かを審査し、(ii)商標登録簿を検索し、同じまたは類似の商標が、他者によって既に登録されているか、または出願されているかを確認する。
・その後、登録官は出願人に、出願に異議を唱える所見または出願を受理することを書面により通知する。
・異議が提起された場合、出願人は要件を満たすために6月の猶予があり、さらに3月の延長が認められる場合がある。この1度限りの延長申請には理由を述べる必要はない。
・出願人が期間内に異議を克服できない場合、登録官は異議を維持する追加の所見を通知し、出願人は3月以内に応答するか、または登録可能性について聴聞を請求することができる。この期間は、商標規則で指定される特定の状況で、登録官が承認した場合、連続した3月の期間、延長できる。
(商標条例(Cap.559)第42条、商標規則(Cap.559A)規則12,13)
(2)早期審査
早期審査の規定はない。
(3)商標の類否判断の概要(相対的拒絶理由)
商標は、次の場合は登録されない。
・出願人の商標が先の商標と同一であり、申請される商品またはサービスが先の商標の保護に係る商品またはサービスが同一である場合。
・出願人の商標が先の商標と同一であり、申請される商品またはサービスが先の商標の保護に係る商品またはサービスと類似しており、当該商品またはサービスに関する商標の使用が公衆に混同を生じさせる虞がある場合。
・出願人の商標が先の商標に類似しており、申請される商品またはサービスが先の商標の保護に係る商品またはサービスと同一または類似しており、当該商品またはサービスに関する商標の使用が公衆に混同を生じさせる虞がある場合。
・出願人の商標が、パリ条約の下で保護されている先の周知商標と同一または類似しており、正当な理由なしに当該商標を使用すると、先の周知商標の識別性または名声を不当に利用し、または害を及ぼすことになる場合。
(商標条例(Cap.559)第12条)
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6. 出願から登録までのフローチャート
(1)出願から登録までの商標出願のフローチャート
(2)フローチャートに関する簡単な説明
・出願
出願書類と所定の手数料を提出すると、登録官は領収書を発行し、出願書類に出願番号を割り当てる。
・方式審査
登録官は、実体審査の前に方式審査を実施する。以下の情報が提供されている場合、出願には出願日が付与される。
a. 所定の出願書類
b. 出願人の名前と住所
c. 出願人が商標の登録を求める商品またはサービスの陳述
d. 商標の表現
出願人は、所定の手数料を支払い、商標が使用中であるかまたは使用されること意図しているかについて、出願書類に示す必要がある。
登録官は、商品またはサービスの説明があいまいである等、出願に対して欠陥の異議を唱える場合がある。ただし、提起された異議は、出願日に影響しない。不備が認められた場合、出願人は2月以内に是正する必要がある。この期間は延長不可であり、応答期限ではなく、すべての不備を克服し、対象の出願を実体審査にすすめる承認を得るための期間である。
不備の性質に応じて、2月以内に欠陥が是正されない場合、出願は以下の扱いとなる。
a. 却下:出願が作成されなかったとみなされる
b. 取下げ:出願が放棄されたものとされる
c. 限縮:不明確または誤って分類された商品またはサービスの強制的な削除後に審査が続行される
(商標条例(Cap.559)第38、39条、商標規則(Cap.559A)規則11)
・実体審査
方式審査が終了し、欠陥がすべて修正された後、登録官は、出願が登録に必要な要件を満たしているか否かを判断するために出願の実体審査を実施する。登録官は商標登録簿の検索を実行し、同じまたは類似の分類の商品およびサービスに関して、同じまたは類似の商標がすでに別の事業者により登録または出願されているか否かを確認する(相対的拒絶理由)。さらに、商標が商標条例に定められた登録要件を満たしているか否かを確認する(絶対的拒絶理由)。
次いで、登録官は書面で所見を発行し、出願に対する異議の理由を説明するか、登録を受け入れることを確認する。
(商標条例(Cap.559)第42条、商標規則(Cap.559A)規則12)
・異議
異議が提起された場合、出願人は要件を満たすために6月の猶予が与えられ、さらに3月の延長が認められる場合がある。出願人が期間内に異議を克服できない場合、登録官は異議を維持する追加の所見を通知し、出願人は3月以内に応答するか、または登録可能性について聴聞を請求することができる。この期間は、商標規則で指定される特定の状況で、登録官が承認した場合、連続した3月の期間、延長できる。
(商標規則(Cap.559A)規則13)
・公告
商標の登録が承認されると、異議申立を受けるために香港知的財産ジャーナル(https://www.ipd.gov.hk/eng/ip_journal.htm)に公告される。異議申立期間は、公告日から起算して3月であり、異議申立人が十分な理由を申し立て、登録官が承認した場合は2月延長される。
(商標条例(Cap.559)第43、44条、商標規則(Cap.559A)規則15、16)
・登録
3月の異議申立期間または延長された2月の期間中に異議申立が提出されなかった場合、または異議申立が取り下げられた場合、または出願人に有利に決定された場合、登録官は出願を受理し、登録証を発行する。
(商標条例(Cap.559)第47条、商標規則(Cap.559A)規則29、30)
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[権利設定前の争いに関する手続]
7. 拒絶査定不服審判制度
出願人は、登録可能性聴聞を請求することができる。聴聞会では、出願についてすべての証拠が検討され、聴聞官によって決定が下される。
(商標条例(Cap.559)第70条、商標規則(Cap.559A)規則13)
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8. 権利設定前の異議申立
・異議申立の理由を記載した様式T6と所定の手数料を提出することにより、何人も異議申立を提出することができる。
・異議申立期間は、公告日から起算する3月以内であるが、出願人が十分な理由を示し、登録官が承認すれば、2月の延長が可能である。
(商標条例(Cap.559)第44条、商標規則(Cap.559A)規則16)
関連記事:
「香港における商標異議申立制度」(2017.06.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13794/
「香港における商標のコンセント制度」(2017.02.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13203/
「香港における商標権に基づく権利行使の留意点」(2016.06.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11758/
9. 上記7の判断に対する不服申立
・出願人は、登録官の決定に対して高等裁判所に上訴することができる。
・出願人による上訴の通知(召喚状)は、登録官の決定から28日以内に登録官に提出しなければならない。
(商標条例(Cap.559)第84条、高等裁判所規則(Cap.4A)指令55、100)
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「香港における商標の権利取得手続」(2021.09.23)
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[権利設定後の争いに関する手続]
10. 権利設定後の異議申立
権利設定後の異議申立制度はない。
11. 設定された商標権に対して、権利の無効を申し立てる制度
・次の理由により、何人も商標登録の無効の宣言を申請することができる。
1) 商標は、絶対的拒絶理由(上記2.(2)登録できない商標(絶対的拒絶理由))に違反して登録されている。
2) 商標は、相対的拒絶理由(上記5.(3)商標の類否判断の概要(相対的拒絶理由))に違反して登録されている。
・無効の宣言の申請は、様式T6と申請が行われた理由の陳述書および所定の手数料を提出することにより行われる。
(商標条例(Cap.559)第53条、商標規則(Cap.559A)規則46)
関連記事:
「香港の商標関連の法律、規則等」(2019.03.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16717/
「香港における商標条例および詐称通用の法理の適用に関する判例」(2015.08.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/precedent/8679/
12. 商標の不使用取消制度
・何人も、登録に係る商品またはサービスに関して、所有者によりまたはその同意を得て少なくとも継続して3年間香港で真正に使用されておらず、不使用の有効な理由(例えば、商標により保護される商品またはサービスの輸入制限または他の政府の要件)がないことを理由に、商標登録の取消を申請することができる。
・申請は、様式T6と申請が行われた理由の陳述書および所定の手数料を提出することにより行われる。
(商標条例(Cap.559)第52条(2)、商標規則(Cap.559A)規則36)
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「香港における「商標の使用」と使用証拠」(2016.05.31)
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13. その他の制度
特になし。
香港における商標異議申立制度
商標条例第44条および商標規則の規則16(1)に従い、何人も、出願が公報に公告された日から起算して3ヵ月以内に、当該出願に対して異議申立を提起することができる。たとえば、ある出願が3月1日に公告されたとすると、異議申立の期限は6月1日ではなく5月31日を以て満了することになる。
正当な理由がある場合、異議申立期間は1度だけ延長が可能であり、延長期間は2ヵ月とされる。実際には、異議申立手続を回避するため、異議申立を提起する前に出願の自発的取り下げを求める警告状を送付することが望ましい。警告状の送付は、異議申立手続に勝訴した場合に出願人に対する費用請求に有利な要因となり得るだけでなく、正式な異議申立書の提出期限の延長が必要になった場合に、期限延長を求める有効な理由として利用することができる。
異議申立書
一般的な異議申立理由は、以下の相対的理由および絶対的理由に基づく。
相対的理由
商標条例第12条に定める商標登録拒絶の相対的理由は、異議申立の対象となる商標が先行する別の商標と同一もしくは類似であり、かつ、出願に係る商品または役務が先行商標の保護に係る商品または役務と同一もしくは類似である場合に適用される。出願に係る商品または役務と先行商標の保護に係る商品または役務が類似しているが同一ではない場合、出願に係る商品または役務に関する商標の使用が公衆に混同を生じさせるおそれがあるという要件が加えられる。
先行商標がパリ条約に基づき保護される周知商標であった場合、出願に係る商品または役務に関する商標の使用が公衆に混同を生じさせるおそれがあり、正当な理由なく周知商標の識別力もしくは名声を不当に利用し、または損なう限りにおいて、出願に関わる商品または役務が周知商標の保護に関わる商品または役務と同一もしくは類似である必要はない。
商標条例のこの規定は、詐称通用(パッシングオフ)に関する法に基づき、または先行する他の権利によって(著作権もしくは登録意匠に関する法によって)、商標の使用が禁じられる場合にも適用することができる。
絶対的理由
異議申立を提起する場合、商標条例第11条に定める以下のいずれかの商標登録拒絶の絶対的理由を適用することもできる。
(1)出願人の商品または役務を他と識別しえず、かつ視覚的に表示しえない標章。
(2)識別力を欠く標章。
(3)商取引または事業において、商品もしくは役務の種類、品質、数量、用途、価格、原産地、商品の生産時期もしくは役務の提供時期、またはその他の特徴を指定することに資する標識のみから構成される標章。
(4)現行の言語において、または確立された誠実な取引慣行において通例となっている標識のみから構成される標章。
(5)商品の性質に由来する形状、技術的な成果を得るために必要な形状、または商品に実質的な価値を付与する形状のみから構成される標章。
(6)一般に認められた道徳規範に反する標章、または公衆を欺罔するおそれのある標章。
(7)いずれかの法に基づき、または法によって香港における使用が禁止されている標章、または悪意でなされた出願。
(8)国旗、国章および一定の国際機関の記章から構成されるか、これらを含んでいる標章。
答弁書
異議申立人が異議申立書を提出した後、出願人は、異議申立書のコピーを受領した日から3ヵ月以内に、答弁書を提出しなければならない。出願人が答弁書を提出しなかった場合、当該出願は取り下げられたものとして処理される。
証拠
答弁書が提出された場合、異議申立人は、答弁書のコピーを受領した日から6ヵ月以内に異議理由を裏付ける証拠を提出しなければならない。裏付けとなる証拠は、宣誓供述書の形式で提出されなければならない。異議申立人が期限内に証拠を提出しなかった場合、異議申立は放棄されたものと見なされる。
異議申立人が証拠を提出した後、出願人は、異議申立人の証拠のコピーを受領した日から6ヵ月以内に、自らの出願を防御する証拠を宣誓供述書の形式で提出することができる。出願人は、証拠を提出しない旨の陳述書を提出することにより、証拠を提出しない方針を選択することもできる。
出願人が証拠を提出した場合、異議申立人は新たな証拠を提出する機会を与えられる。ここで提出される証拠は、出願人が提出した証拠に応答するものに厳しく限定される。これらの証拠は、異議申立人が出願人の証拠のコピーを受領した日から6ヵ月以内に提出されなければならない。それ以後はいずれの当事者も、登録官の許可を得ない限り新たな証拠の提出は許されない。
期限の延長
答弁書および証拠の提出期限は、所定の期限までに書面によって期限延長を請求することができる。答弁書について認められる期限延長が2ヵ月であるのに対し、証拠について認められる期限延長は3ヵ月とされる。当事者の請求による前記の期限延長には、相手方の同意が要求される。
ヒアリング
証拠の応酬が終わると、その事案は係属中のヒアリング・リストに記載され、商標登録所はヒアリングの日時を決定し、当事者に書面で通知する。現在のところ、商標登録所がヒアリングの日時を決定するまでには少なくとも証拠応酬段階の終了後18~24ヵ月の期間を要する。
ヒアリングの日時が決定されると、異議申立人と出願人は、ヒアリングに出席するか否かを選択することができる。当事者の一方もしくは双方がヒアリングに出席しない方針を選択した場合、審問官は、それまでに提出された文書および証拠に基づいて異議決定を下すことになる。
一般に、異議決定は、ヒアリングが行われなかった場合を含み、設定されたヒアリングの日から6~9ヵ月程度後に送達される。この異議決定に不服がある場合は高等裁判所に上訴することができるが、その場合、異議決定の日から28日以内に、不服申立書および上訴理由が提出されなければならない。
敗訴者負担
香港は敗訴者負担制度を採用している、通常、勝訴者が被った費用の支払が敗訴者に命じられることになる。
手続の一時停止
当事者双方が和解のための交渉を希望する場合、任意の時期に異議申立手続の一時停止を申請することができる。手続の一時停止は、出願人と異議申立人の両者によって共同で申請されなければならない。手続停止の期間は、当事者双方が合意した期間とすることができ、商標登録所は最大9ヵ月までの停止期間を認めることができる。いずれかの当事者が1ヵ月の猶予期間付きの通知書を相手方および登録官に送付することにより、停止期間が終了する前に手続を再開する許可が与えられる。上記最大9か月の間において、停止期間を更に延長する許可は、当事者双方が共同で新たな申請を提出することによって与えられる。
保証金
香港に居住しておらず香港での営業も行っていない相手方に対し、当事者は手続費用の保証金を要求することができる。このような手続費用の保証金が認められた場合、相手方は、敗訴した当事者が手続費用について負う債務を賄うに十分な金額を所定の期間内に提供することを要求される。要求された保証金が提供されない場合、異議申立書、答弁書もしくは出願の放棄または取下げがなされたものとされる。この保証金は、限られた資産しか持たない当事者に異議申立手続の遂行もしくは抗弁を断念させるための有効な手段となり得る。だが、当事者双方がいずれも香港に居住しておらず香港での営業も行っていない場合、両当事者に対し手続費用の保証金が求められる可能性が高い。
香港における商標のコンセント制度
「商標制度におけるコンセント制度についての調査研究報告書」(平成28年2月、株式会社サンビジネス)Ⅲ-3-(1)-(vi)、Ⅲ-3-(3)
(目次)
Ⅲ 海外公開情報調査
3 海外公開情報調査の結果
(1) 対象国・地域ごとの調査結果
(vi) 香港 P.15
(3) 対象国・地域ごとの調査結果の比較 P.22
資料編
資料Ⅰ 海外公開情報調査
資料Ⅰ-1 質問票調査回答
6 香港 P.90
資料Ⅰ-2 各国・地域のコンセントに関する規定
1 商標法でコンセント制度が規定されている国
② 香港商標条例(2009年L.N.254により改正2010年2月26日施行第559章) P.127
香港における商標権に基づく権利行使の留意点
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