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香港の意匠特許における機能性および視認性

 現行の香港登録意匠規則(第522章)(以下、「意匠規則」)の第2条に基づき、登録意匠は、あらゆる工業的方法により物品に応用される形状、形態、模様または装飾の特徴であって、完成品において視覚に訴え、視覚により判断されるものを保護する。意匠規則の第5条に従い、登録意匠として登録可能な新規の意匠は、あらゆる物品または組物に関して登録することができる。

 

 意匠規則の第2条は、構造の方法または原理、および下記のいずれかに該当する物品の形状または形態の特徴を明示的に排除している。

・当該物品が果たさなければならない機能によってのみ決定づけられるもの。

・創作者の意図により当該物品が不可欠な部分を構成する、別の物品の外観に依存するもの。

 

 現行の意匠規則は、廃止された英国登録意匠法(1949年)と概ね似通っている。したがって、機能性および視覚に訴える審美性に関して、古い英国の基準が依然として香港において適用されている。

 

機能性

 

 上記に述べた第2条に従い、意匠は物品の機能性や作用については保護しない。ただし、物品が機能する方法に対する保護は、特許規則に基づいて取得することができる。

 

 創作者が機能的要件のみを考慮して物品をデザインした場合、たとえ生み出された完成品が見た目に快いものであったり、当該物品の所期の使用目的への適合性に関してエンジニアの心を引きつける外観を有していたりしたとしても、その意匠の特徴は、当該物品が果たさなければならない機能によってのみ決定づけられているとみなされるだろう。

 

 それにもかかわらず、英国の枢密院は、LEGOブロックの意匠が少なくとも部分的に心を引きつける審美性を備えて進化してきたことを承認した。LEGOブロックは玩具であり、玩具の機能は視覚に訴えることであるという理由で、LEGOブロックの外観は他のブロックとの連結機能によってのみ決定づけられていないと認定されたのである。

 

視認性

 

 意匠規則の第2条に示された意匠の定義では、意匠は当該物品を購入する需要者に影響を及ぼす視認可能な要素を有していなければならないことが示唆されている。したがって、物品の通常の使用時に使用者が見ることのできない、もしくは小さすぎて人間の目には見えない内部構造といった物品の美的要素、または需要者が物品を購入する際の意思決定においてほとんど考慮されない物品の美的要素は、現行の意匠規則に定義された意匠の範囲には含まれないだろう。

 

 一方、意匠の美的特徴は、販売時点において視認可能である必要はないが、当該物品の通常の使用時、または意図された方法による使用時には、視認可能でなければならない。K K Suwa Seikosha’s Design Application事件において、購入時点には視認できなかった時計内部の液体表示の意匠は、登録可能と判示された。Ferrero S.p.A’s Application事件において、彩色されたチョコレートのリングからなるイースターエッグ内部の意匠は、イースターエッグが消費される時点まで美的特徴を見ることはできないものの、登録可能と判示された。

 

法規と実務

 

 現行の法規および実務に基づき、意匠出願の実体審査は行われない。意匠登録所は、出願された意匠の特徴が新規かどうか、かかる特徴が機能的なものにすぎないかどうか、またはかかる特徴が視認可能かどうかについて判断するために、先行意匠を調査することはない。意匠登録出願が方式要件を満たしている限り、登録が認められることになる。意匠規則の第45条は、登録の時点で新規ではなかった、または他の理由で登録可能ではなかった登録意匠の取消について規定している。

 

 香港高等法院はElster Metering Ltd v. Billions Ltd事件において、意匠規則第2条の意匠の定義が満たされていないこと、さらに当該意匠における新規性の欠如を理由に、二つの意匠の登録を取り消した。そのうちの一つの意匠は、水量計の内部測定室の構成部品に関するものであった。高等法院は、この構成部品の意匠は当該部品が果たす機能によってのみ決定づけられていること、さらに当該部品は外から見ることができず、当該水量計を購入するかどうかの意思決定に影響を及ぼすほどの視覚的魅力がないという理由で、当該意匠の登録を取り消した。この意匠は、原告の水量計の対応する構成部品とほぼ同じに見えたため、新規性の欠如も判示された。

 

結論

 

 登録意匠出願の実体審査が行われないため、香港意匠登録簿には、新規性または審美性に関する基準を満たしていない登録意匠が含まれている可能性がある。それゆえ、ある製品を発売する際に、その製品に競合する登録意匠が登録簿に登録されている場合には、取消訴訟の提起を視野に入れて、競合する登録意匠の実体的争点に関する脆弱性を精査することは有益である。