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フィリピンにおける商標制度のまとめ-実体編

1. 商標制度の特徴

 フィリピンの商標制度の特徴として、商標権の維持に際して商標の実際の使用が要求される点が挙げられるため、以下に紹介する。
 知的財産法第124条第2項、第145条、商標規則第204に規定されるように、すべての出願人または登録人は、商標の実際の使用の宣言(DAU)を、その旨の証拠を添えて、出願の提出日から3年以内、登録の第5周年日から1年以内、更新日から1年以内、各更新の第5周年日から1年以内の期間に提出しなければならない。このDAUを提出しない場合、出願は登録を拒絶され、登録商標は局長によって登録簿から抹消される。
 なお、商標規則第205に規定されるように、出願の提出日から3年以内に提出することを要求されるDAUについては、出願人または登録人による請求時に、6月の延長期間を付与することができるが、当該請求が3年の期間の満了前になされ、かつ、所定の手数料が納付される場合に限る。商標の実際の使用は、延長された期間内に開始することができる。
 また、商標規則第209に規定されるように、同一分類における一部の商品および/またはサービスの実際の使用は、商品およびサービスの分類全体についての使用を構成する。1の分類についての実際の使用は、関連分類についての使用とみなされる。商標規則第210に規定されるように、商標に使用されているラベル、フィリピンにおいて商品が販売されまたはサービスが提供されていることを明瞭に示すウェブサイトからダウンロードされたページ、実際に使用されているときの商標を付した商品または商品のマークが付与された容器およびサービスを提供される1または複数の事業所の写真などは、商標の実際の使用に係る証明として受理される。
 また、商標規則第211に規定されるように、出願人または登録人は、認可されるときには、DAUの代わりに不使用に係る1または複数の理由および弁明を示す不使用の宣言(DNU)を提出することができる。DNUの提出は、出願人または登録人が、商品を市場に出すことまたはサービスを提供することに先立って別の政府機関によって課せられた要件のために商標を商業上使用することを禁止される場合、商標が異議申立または取消事件の対象となっている場合などに許可される。

関連記事:
「フィリピンにおける『商標の使用』と使用証拠」(2016.04.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11057/

2. 登録できる商標

2-1. 登録できる商標
 知的財産法第121条第1項に規定されるように、標章とは、企業の商品(商標)またはサ-ビス(サ-ビス・マ-ク)を識別することができる可視標識をいう。例えば、文字商標、図形商標、図形に文字が付された商標、3D商標、刻印または押印された商品の容器が商標登録され得る。

2-2. 登録できない商標
 知的財産法第123条第1項において、登録を受けることができない標章として、以下の標章が規定されている。
(a)反道徳的、欺瞞的若しく中傷的な事柄;個人(存命中であるか故人となっているかを問わない)、団体、宗教もしくは国の象徴を傷付け、それらとの関連を誤認させるように示唆しもしくはそれらに侮辱もしくは汚名を与えるおそれがある事柄からなる標章
(b)フィリピン、フィリピンの政治上の分権地もしくは外国の国旗、紋章その他の記章またはそれらに類似したものからなる標章
(c)存命中の特定の個人の名称、肖像もしくは署名からなる標章(ただし、その者の承諾を得ている場合を除く)またはフィリピンの故大統領の名称、署名もしくは肖像からなる標章(ただし、未亡人がいる場合は、その存命中に限る。また、未亡人の書面による承諾を得ている場合を除く)
(d)他の権利者に帰属する登録された標章または先の出願日もしくは優先日を有する標章に同一であって、かつ、次の何れかに係る標章
(i)同一の商品またはサ-ビス
(ii)密接に関連する商品またはサ-ビス
(iii)欺瞞するかもしくは混同を生じさせるおそれがある程に類似している場合
(e)フィリピンにおいて登録されているか否かを問わず、フィリピンの権限のある当局により出願人以外の者の標章として国際的におよびフィリピンにおいて広く認識されていると認められた標章に同一であるかもしくは混同を生じさせる程に類似しているかまたはそのような標章の翻訳であり、かつ、同一または類似の商品またはサ-ビスに使用する標章。ただし、標章が広く認識されているか否かを決定するに当たっては、一般公衆の有する知識ではなく、関連する公衆の有する知識(当該標章の普及の結果として獲得されたフィリピンにおける知識を含む)を考慮する。
(f)(e)の規定に従って広く認識されていると認められ、かつ、登録が求められている商品またはサ-ビスと類似していない商品またはサ-ビスについてフィリピンにおいて登録されている標章に同一であるかもしくは混同を生じさせる程に類似しているかまたはそのような標章の翻訳である標章。ただし、当該類似していない商品またはサ-ビスについての当該標章の使用が、当該類似していない商品またはサ-ビスと当該登録された標章の権利者との間の関連性を示唆し、かつ、当該権利者の権利が当該使用により害されるおそれがある場合に限る。
(g)商品またはサ-ビスの特に性質、質、特性または原産地について公衆を誤認させるおそれがある標章
(h)指定する商品またはサ-ビスに特有の標識のみからなる標章
(i)日常の言語または誠実なかつ確立された商業上の慣行において商品またはサ-ビスを示すために通例または普通になっている標識または表示のみからなる標章
(j)商品またはサ-ビスの種類、質、量、意図されている目的、価格、原産地、商品の製造またはサ-ビスの提供の時期その他の特性を示すために商業上用いられる標識または表示のみからなる標章
(k)技術上の要因、商品自体の性質または商品の固有の価値に影響する要素により必要とされる形状からなる標章
(l)色のみからなる標章。ただし、形状により定義される場合はこの限りでない。
(m)公の秩序または善良の風俗に反する標章
 なお、知的財産法第123条第2項に規定されるように、上記(j)、(k)、(l)に該当する標識または図案に関しては、フィリピンにおいて商業上使用された結果として登録を求める商品との関連において識別性を有するに至った場合、これを登録することを妨げない。

関連記事:
「フィリピンにおける商標の識別性に関する調査」(2021.09.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20806/
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける物品デザインの商標的保護とトレードドレス」(2018.08.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15644/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/

3. 商標を登録するための要件
 知的財産法第124条第1項に規定されるように、標章の登録出願は、フィリピン語または英語で記載しなければならず、かつ、商標の複製、ニ-ス分類の類に従って群にまとめられた登録を求める商品またはサ-ビスの名称およびその商品またはサ-ビスの各群が属するニ-ス分類の番号などを含まなければならない。
 知的財産法第127条に規定されるように、出願が行われると、出願日を付与する要件として、出願に標章の登録を求めることの明示のまたはその趣旨の表示、出願人の特定、出願人または代表者がいる場合は代表者に連絡をするために十分な表示、登録を求める標章の複製、登録を求める商品またはサ-ビスの一覧表が記載されているか否かが審査される。この要件を満たし、かつ、所定の手数料が納付されている場合に、出願日が付与される。
 出願日が付与されると、登録要件として、出願に係る標章が、知的財産法第123条に規定される上述した登録を受けることができない標章に該当しないか否かが審査される。

「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/

4. 商標権の存続期間
 知的財産法第145条に規定されるように、登録証は、10年の間効力を有する。また、知的財産法第146条に規定されるように、登録証は、所定の手数料を付して願書を提出することにより、期間の満了の時に10年の期間について更新することができる。この更新のための願書は、登録され、もしくは更新された期間の満了前6月以内のいつでも提出することができ、または期間の満了後6月以内は所定の追加の手数料を納付することにより提出することができる。

関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/

フィリピンにおける商標の使用宣誓書

 商標出願に際して商標の使用証拠は必要とされないが、商標の実際の使用に関する宣誓書(Declaration of Actual Use : DAU)およびフィリピンにおける当該商標の商業的使用の証拠を提出することが義務づけられている。DAUは、以下に示す期間内に提出しなければならない。

(a)出願日から起算して3年以内

(b)商標の登録日から起算して5年を経過した日から1年以内

(c)商標の更新日から起算して1年以内

(d)商標の更新日から起算して5年を経過した日から1年以内

 出願人または登録人は、上記期限満了前に、上記(a)のDAU提出期限について1回に限り6ヶ月の延長を請求することができる。ただし、上記(b)(c)(d)のDAUの提出期限については延長することはできない。

 DAUが提出されない場合、自動的に当該商標出願は拒絶され、または登録が取消される。使用宣誓書の提出についてまとめると以下の通りとなる。

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 日本の権利者が提出すべき書類

(1)商標の実際の使用に関する宣誓書(Declaration of Actual Use : DAU)

宣誓書フォームに商標権者による署名が必要。署名後、公証人による公証(notarization)が必要である。

宣誓書フォーム

https://drive.google.com/file/d/1IVF-3-l6zkjHGQiPLA6ng8umnemBMEpq/view

(アクセス出来ない場合には、フィリピン知的財産庁(IPOPHL)申請書ページhttps://www.ipophil.gov.ph/application-forms/の「TRADEMARK-Declaration_of_Actual_Use」をクリックしてください。

(2)商標使用の証拠

商標規則に基づき、商標の実際の使用を示す証拠として、下記のものを提出することができる。

(a)商標の使用を示すラベル

(b)フィリピンで商品が販売されている、またはサービスが提供されていることを明確に示す出願人または登録人のウェブサイトからの出力

(c)商標の付した商品の写真、もしくはサービスが提供されている店舗の写真

(d)フィリピンにおける商標の実際の使用を示す販促資料

(e)商品もしくはサービスがフィリピンで入手可能であることを示す商品もしくはサービス提供に関する領収書または請求書

(f)商標の使用を示すサービスに関する契約書の写し

(3)不使用の宣誓

 下記のいずれかの場合には、DAUに代わり、不使用に関する宣誓書を提出することができる。

(a)出願人または登録人が、商品を上市する、またはサービスを提供する前に、別の政府機関により課せられた要件のために、商標を商業的に使用することを禁じられた場合

(b)商標の使用を禁じる禁止命令または差止命令が、法務局、裁判所、または準司法機関により出された場合

(c)商標が異議申立または取消訴訟の対象となっている場合

 商標の不使用は、商標所有者の意思とは無関係に生じる状況により引き起こされた場合に許容される。ただし、資金不足は商標の不使用の正当な理由とはならない。不使用に関する宣誓書は、宣誓の上、商標の実際の商業的使用を妨げている事実を明確に示さなければならない。

フィリピンにおける商標の使用宣誓書

【詳細】

商標出願に際して商標の使用証拠は必要とされないが、フィリピン商標規則の規則204に基づき、商標の実際の使用に関する宣誓書(Declaration of Actual Use : DAU)およびフィリピンにおける当該商標の商業的使用の証拠を提出することが義務づけられている。DAUは、以下に示す期間内に提出しなければならない。

(a)出願日から起算して3年以内 さらに

(b)商標の登録日から起算して5年を経過した日から1年以内

出願人または登録人は、上記期限満了前に、上記(a)のDAU提出期限について1回に限り6ヶ月の延長を請求することができる。ただし、上記(b)のDAUの提出期限については延長することはできない。

DAUが提出されない場合、自動的に当該商標出願は拒絶され、または登録が取り消される。使用宣誓書の提出についてまとめると以下の通りとなる。

使用宣誓書 期限 備考
上記(a)のDAU 出願日から起算して3年以内 6ヶ月延長可能
上記(b)DAU 登録日から起算して5年後の応答日から1年以内 期限延長不可

 

○商標使用の証拠

出願人または登録人は、商標の実際の使用に関する認証済宣誓書を提出しなければならない外国人の場合、公証人認証およびフィリピン大使館および領事館による領事認証が必要である。商標規則に基づき、商標の実際の使用を示す証拠として、下記のものを提出することができる。

(1)フィリピンで商品が販売されている、またはサービスが提供されていることを明確に示す出願人または登録人のウェブサイトからの出力。

(2)商品の写真、または商標を付して商品が販売されている、もしくはサービスが提供されている店舗の写真。

(3)フィリピンにおける商標の実際の使用を示す販促資料。

(4)商品もしくはサービスがフィリピンで入手可能であること、またはフィリピンから取引が行われていることを示すオンライン商品販売またはサービス提供の受領書。

(5)商標の使用を示すサービスに関する契約書の写し。

 

○不使用の宣誓

下記のいずれかの場合には、DAUに代わり、出願日から3年以内または状況に応じて延長された期間内に、不使用に関する宣誓書を提出することができる。

(1)出願人または登録人が、商品を上市する、またはサービスを提供する前に、別の政府機関により課せられた要件のために、商標を商業的に使用することを禁じられた場合。

(2)商標の使用を禁じる禁止命令または差止命令が、法務局、準司法機関または裁判所により出された場合。

(3)商標が異議申立または取消訴訟の対象となっている場合。

商標の不使用は、商標所有者の意思とは無関係に生じる状況により引き起こされた場合に許容される。ただし、資金不足は商標の不使用の正当な理由とはならない。不使用に関する宣誓書は、宣誓の上、商標の実際の商業的使用を妨げている事実を明確に示さなければならない。