中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その1:拒絶査定不服審判)
1.不服審判請求の種類
商標審査部による拒絶査定通知、登録不許可決定書、登録商標無効宣告決定、不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部に対して不服審判請求する。
不服審判請求には次の4種類がある。
(1) 商標審査部が下した商標登録出願の拒絶査定に対する、中国商標法(以下「商標法」という。)第34条に基づく不服審判請求事件
(2) 商標審査部が下した登録不許可決定に対する、商標法第35条に基づく不服審判請求事件
(3) 商標審査部が下した登録商標無効宣告決定に対する、商標法第44条に基づく不服審判請求事件
(4) 商標審査部が下した登録商標の取消決定または非取消決定に対する、商標法第54条に基づく不服審判事件
2.拒絶査定不服審判の審理手続の流れ
拒絶査定不服審判以外の審理手続きの流れについては、別の記事である「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その2:登録不許可不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その3:登録商標無効宣告不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要(その4:不使用取消不服審判)」をご参照ください。
中国商標拒絶査定不服審判フロー
商標審判部における拒絶査定不服審判手続は、(1) 請求人による審判請求、(2) 方式審査、(3) 審判合議体による審理、(4) 審決という手順で進められる。
(1) 請求人による不服審判請求および補足
拒絶査定について商標登録出願人に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に、商標審判部に不服審判を請求することができる(商標法第34条)。
不服審判請求をする場合、商標審判部に書面の請求書類1部を提出する。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書において声明し、かつ請求日から3か月以内に補足証拠を提出しなければならない。
上述の法定補足期間は延長不可である。実務では、法定期間を過ぎても、引き続き補足証拠を提出できるが、特別な状況でなければ、審判官の参考資料としてのみ扱われる(商標審判規則(以下「審判規則」という。)第23条)。
(2) 方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を具備するか否か、つまり、請求書と証拠が所定の様式で記載されているか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(商標法実施条例(以下「実施条例」という)第57条、審判規則第17条)。
(3) 審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体を結成して審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情や状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(審判規則第6条、第27条)。
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審理を行うと決定された場合は、この限りでない(審判規則第4条)。なお、口頭審理の請求は、必ずしも許可されるとは限らない。実施条例第60条の規定によれば、当事者は口頭審理を要求することができる。この場合、口頭審理を行う必要性についての具体的理由を提出しなければならない。商標審判部は、当事者が提出した理由が十分であるか否かを考慮し、口頭審理を行うか否かを判断することになる。通常は、口頭審理を行わず、書面審理で進められる比率が圧倒的に大きい。
以下のいずれかに該当する場合、審判を終了し、結審する(審判規則第32条)。
(i) 請求人が死亡した、または終止した後に相続人がいない、または相続人が審判権を放棄した場合。
(ii) 請求人が審判請求を取り下げた場合。
(iii) 当事者が自己により又は調停を経て合意して結審できる場合。
(iv) 審判を終了すべきその他の場合。
(4) 審決
商標審判部は、請求人が陳述した理由と提出した証拠を審理して審決を下し、書面の審決を請求人に送付する。請求人は、審決に不服がある場合、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第34条)。
3.証拠提出の留意点
請求人は、請求の事実に対して挙証責任を有し、請求時に、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1) 審判請求人が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2) 中国以外の領域で形成された証拠は、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。
(3) 外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条)。
中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その4:不使用取消不服審判)
1.不服審判請求の種類
商標審査部(中国語「国家知識産権局商標局審査処」)による拒絶査定・登録不許可決定・登録商標無効宣告決定・不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部(中国語「国家知識産権局商標局評審処」)に対して不服審判請求する。
不服審判請求には下記4種がある。
(1) 商標審査部が下した商標登録出願の拒絶査定についての、商標法第34条に基づく不服審判請求事件
(2) 商標審査部が下した登録不許可決定についての、商標法第35条に基づく不服審判請求事件
(3) 商標審査部が下した登録商標無効宣告決定についての、商標法第44条に基づく不服審判請求事件
(4) 商標審査部が下した登録商標の取消決定または非取消決定についての、商標法第54条に基づく不服審判事件
2.不使用取消不服審判の審理手続の流れ
不使用取消不服審判以外の審理手続の流れについては、別コンテンツ「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その1:拒絶査定不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その2:登録不許可不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その3:登録商標無効宣告不服審判)」を参照のこと。
図1 中国商標不使用取消不服審判フロー
商標審判部における商標不使用取消不服審判手続は、(1) 請求人による審判請求、(2) 方式審査、(3) 被請求人の答弁、(4) 答弁に対する弁駁、(5) 審判合議体による審理、(6) 審決という手順で進められる。
(1) 請求人による不服審判請求および補足
不服審判請求するとき、商標審判部に書面の請求書類の正本1部を提出すると同時に、相手方がある場合、相手方当事者数に相当する副本を提出しなければならない。また、請求書類を提出した後、証拠を補充する必要がある場合、請求書または答弁書に声明し、請求日から3か月以内に一括して補充する証拠を提出しなければならない。
上述の法定補充期間は延長不可である。補充期間の満了後に形成した、または請求人が他の正当な理由で期間満了前に提出できなかった証拠を期間満了後に提出する場合、商標審判部はかかる証拠を相手方当事者に渡して証拠調べを経てその証拠を採用することができる。実務では、法定の補充期間を過ぎても、引き続き補充の証拠を提出できるが、上述のような特別な状況でなければ、提出された証拠は審判官の参考資料とされる(審判規則第23条)。
(2) 方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を満たすか否か、つまり、請求書と証拠が規定の様式で記載されて提出されたか否かなどを審理する。要件を満たすときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を満たしていしないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(実施条例第57条、審判規則第17条)。
(3) 被請求人の答弁
商標審判部は商標審判の請求を受理した後、請求書の副本を被請求人に送達し、受領後30日以内に答弁するよう要求する。期限内に答弁しなくても、商標審判部の審理に影響を与えないが、実務上は、この反論の機会を利用して、答弁する被請求人が圧倒的に多い(実施条例58条、審判規則第21条)。
証拠を補充する必要がある場合、答弁書に声明し、かつ答弁書の提出日から3か月以内に補充する証拠を提出しなければならない(実施条例59条、審判規則第23条)。
(4) 答弁に対する弁駁
商標審判部は被請求人の答弁資料を請求人に送付し、指定の期限内に弁駁(中国語「質証」)を行うことを命じることができる(審判規則第23条2項)。
弁駁手続とは、商標審判部が証拠交換通知書を請求人に送付した後、請求人はそれを受領した日から30日以内に、被請求人の証拠を調べたうえ、その答弁理由を反駁するものである。なお、提出は1回限りである。
(5) 審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体を結成して審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(実施条例第60条、審判規則第27条)
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審理を行うと決定された場合はこの限りでない(審判規則第4条)。なお、口頭審理の請求は、必ずしも商標審判部に許可されるとは限らない。実施条例第60条の規定によれば、当事者は口頭審理を要求することができる。この場合、口頭審理を行う必要性について具体的理由を提出しなければならない。商標審判部は、当事者が提出した理由が十分であるか否かを考慮し、口頭審理を行うか否かを判断する。実務上、口頭審理を行わず、書面審理が進められる傾向にある。
以下のいずれかに該当する場合、審判を終了し、結審する(審判規則第32条)。
(i) 請求人が死亡した、または終止した後に相続人がいない、または相続人が審判権を放棄した場合。
(ii) 請求人が審判請求を取り下げた場合。
(iii) 当事者が自己により又は調停を経て合意して結審できる場合。
(iv) 審判を終了すべきその他の場合。
(6) 審決
商標審判部は、請求人と被請求人が陳述した理由と提出した証拠、被請求人の答弁書、請求人の証拠抗弁書を審理して審決を下し、当該審決を当事者双方に書面で送付する。登録商標の維持または取消決定に不服がある場合には、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第54条)。
3.証拠提出の留意点
審判当事者は、請求の事実または答弁の事実に対して挙証責任を有し、請求時または答弁時には、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1) 当事者が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難である場合、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2) 中華人民共和国以外または香港、マカオ、台湾地区で形成された証拠は、その証拠が形成された国で公証・認証手続を行わなければならない(審判規則第41条)。
(3) 外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条)。
中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その4:不使用取消不服審判)
1.不服審判請求の種類
商標審査部(中国語「商標局」)による拒絶査定通知・登録不許可決定書・登録商標無効宣告決定・不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部(中国語「商標評審委員会」)に対して不服審判請求する。
不服審判請求の種類としては下記4種がある。
(1)商標審査部が下した商標登録出願の拒絶査定について、商標法第34条に基づく不服審判請求事件
(2)商標審査部が下した登録不許可決定書について、商標法第35条に基づく不服審判請求事件
(3)商標審査部が下した登録商標無効宣告決定について、商標法第44条に基づく不服審判請求事件
(4)商標審査部が下した登録商標の取消決定または非取消決定について、商標法第54条に基づく不服審判事件
2.不使用取消不服審判の審理手続の流れ
不使用取消不服審判以外の審理手続きの流れについては、別コンテンツ「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その1:拒絶査定不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その2:登録不許可不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その3:登録商標無効宣告不服審判)」を参照のこと。
中国商標不使用取消不服審判フロー
商標審判部における商標不使用取消不服審判手続は、(1)請求人による審判請求、(2)方式審査、(3)被請求人の答弁、(4)答弁に対する弁駁、(5)審判合議体による審理、(6)審決という手順で進められる。
(1)請求人による不服審判請求および補足
不服審判請求するとき、商標審判部に書面の請求書類の正本1部を提出すると同時に、相手方がある場合、相手方当事者数に相当する副本を提出しなければならない。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書に声明し、かつ請求日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない。
上述の法定補足期間は延長不可である。補足期間の満了後に形成し、または請求人が他の正当な理由で期間満了前に提出できなかった証拠は、期間満了後に提出する場合、商標審判部はかかる証拠を相手方当事者に交付して証拠調べを経てその証拠を採用することができる。実務では、法定の補足期間を過ぎても、引き続き補足証拠を提出できるが、上述のような特別な状況でなければ、審判官の参考資料のみになる(審判規則第23条)。
(2)方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の用件を具備するか否か、つまり、請求書と証拠が要求の様式で記載されて提出されたか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(実施条例第57条、審判規則第17条)。
(3)被請求人の答弁
商標審判部は商標審判の請求を受理した後、請求書の副本を被請求人に送達し、受領後30日以内に答弁するよう要求する。期間が満了して答弁しなくても、商標審判部の審理に影響を与えないが、実務上は、この反論の機会を利用して、答弁する被請求人が圧倒的に多い(実施条例58条、審判規則第21条)。
証拠を補足する必要がある場合、答弁書に声明し、かつ答弁書の提出日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない(実施条例59条、審判規則第23条)。
(4)答弁に対する弁駁
商標審判部は被請求人の答弁資料を請求人に送付し、指定の期限内に弁駁(中国語「質証」)を行うことを命じることができる(審判規則第23条2項)。
弁駁手続とは、商標審判部が証拠交換通知書を請求人に送付した後、請求人はそれを受領した日から30日以内に、被請求人の証拠を調べたうえ、その答弁理由を反駁するものである。なお、提出は1回限りである。
(5)審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体を結成して審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(実施条例第60条、審判規則第27条)
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審理を行うと決定された場合はこの限りでない(審判規則第4条)。なお、口頭審理の請求は、必ずしも商標審判部に許可されるとは限らない。実施条例第60条の規定によれば、当事者は口頭審理を要求することができる。この場合、口頭審理を行う必要性についての具体的理由を提出しなければならない。商標審判部は、当事者が提出した理由が十分であるか否かを考慮し、口頭審理を行うか否かを判断することになる。通常は、口頭審理を行わず、書面審理が進められる比率が圧倒的に大きい。
審理を経て終結された事件については、法に基づき審判を終了し、結審する(審判規則第32条)
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(6)審決
商標審判部は、請求人と被請求人が陳述した理由と提出した証拠、被請求人の答弁書、請求人の証拠抗弁書を審理して審決を下し、書面の審決を当事者双方に送付する。登録商標の維持または取消決定に不服がある場合には、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第54条)。
3.証拠提出の留意点
審判当事者は、請求の事実または答弁の事実に対して挙証責任を有し、請求時または答弁時には、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1)当事者が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2)中国以外の領域で形成された証拠は、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。
(3)外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条)。
中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その2:登録不許可不服審判)
1.不服審判請求の種類
商標審査部(中国語「商標局」)による拒絶査定通知・登録不許可決定書・登録商標無効宣告決定・不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部(中国語「商標評審委員会」)に対して不服審判請求する。
不服審判請求の種類としては下記4種がある。
(1)商標審査部が下した商標登録出願の拒絶査定について、商標法第34条に基づく不服審判請求事件
(2)商標審査部が下した登録不許可決定書について、商標法第35条に基づく不服審判請求事件
(3)商標審査部が下した登録商標無効宣告決定について、商標法第44条に基づく不服審判請求事件
(4)商標審査部が下した登録商標の取消決定または非取消決定について、商標法第54条に基づく不服審判事件
- 登録不許可不服審判の審理手続の流れ
登録不許可不服審判以外の審理手続きの流れについては、別コンテンツ「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その1:拒絶査定不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その3:登録商標無効宣告不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その4:不使用取消不服審判)」を参照のこと。
2014年5月1日の法改正により、異議申立事件において、商標局が登録を許可すると決定した場合、異議申立人より不服審判を請求できなくなっているが、その代わりに、商標法第44条、第45条の規定に基づき、商標審判部に当該登録商標の無効審判を請求することができる。一方、商標局が登録を許可しないと決定した場合、被異議申立人は不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に、商標審判部に不服審判を請求することができる。
中国商標登録不許可不服審判フロー
商標審判部における商標登録不許可不服審判手続は、(1)請求人による審判請求、(2)方式審査、(3)被請求人の意見提出、(4)審判合議体による審理、(5)審決という手順で進められる。
(1)請求人による不服審判請求および補足
不服審判請求するとき、商標審判部に書面の請求書類の正本1部を提出すると同時に、相手方当事者数に相当する副本を提出しなければならない。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書に声明し、かつ請求日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない。
上述の法定補足期間は延長不可である。補足期間の満了後に形成し、または請求人が他の正当な理由で期間満了前に提出できなかった証拠は、期間満了後に提出する場合、商標審判部はかかる証拠を相手方当事者に交付して証拠調べを経てその証拠を採用することができる。実務では、法定の補足期間を過ぎても、引き続き補足証拠を提出できるが、上述のような特別な状況でなければ、審判官の参考資料のみになる(審判規則第23条)。
(2)方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を具備するか否か、つまり、請求書と証拠が要求の様式で記載されて提出されたか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(実施条例第57条、審判規則第17条)。
(3)被請求人(元異議申立人)の意見提出
商標審判部は、審判請求を受理してから、被請求人に「元異議申立人(被請求人)が登録不許可不服審判に参加する通知書」とともに、審判請求書類(副本)を1部送付し、当該通知を受領した日から30日以内に意見書を提出するよう要求する。意見書を提出する場合、正本、副本を1部ずつ、当該通知および封筒と併せて商標審判部へ提出する。期限までに意見を提出しない場合でも、当該案件の審理に影響を与えない(実施条例第53条、審判規則第21条第2項)。
(4)審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体を結成して審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(実施条例第60条、審判規則第27条)。
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審理を行うと決定された場合はこの限りでない(審判規則第4条)。なお、口頭審理の請求は、必ずしも商標審判部に許可されるとは限らない。実施条例第60条の規定によれば、当事者は口頭審理を要求することができる。この場合、口頭審理を行う必要性についての具体的理由を提出しなければならない。商標審判委員会は、当事者が提出した理由が十分であるか否かを考慮し、口頭審理を行うか否かを判断することになる。通常は、口頭審理を行わず、書面審理が進められる比率が圧倒的に大きい。
審理を経て終結された事件については、法に基づき審判を終了し、結審する(審判規則第32条)。
(5)審決
商標審判部は、請求人と被請求人が陳述した理由と提出した証拠、被請求人より提出した意見書を審理して審決を下し、書面の審決を請求人に送付する。審決に不服がある場合には、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第35条)。
3.証拠提出の留意点
審判請求人は、請求の事実に対して挙証責任を有し、請求時には、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1)当事者が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2)中国以外の領域で形成された証拠は、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。
(3)外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条)。
中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その3:登録商標無効宣告不服審判)
1.不服審判請求の種類
商標審査部(中国語「商標局」)による拒絶査定通知・登録不許可決定書・登録商標無効宣告決定・不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部(中国語「商標評審委員会」)に対して不服審判請求する。
不服審判請求の種類としては下記4種がある。
(1)商標審査部が下した商標登録出願の拒絶査定について、商標法第34条に基づく不服審判請求事件
(2)商標審査部が下した登録不許可決定書について、商標法第35条に基づく不服審判請求事件
(3)商標審査部が下した登録商標無効宣告決定について、商標法第44条に基づく不服審判請求事件
(4)商標審査部が下した登録商標の取消決定または非取消決定について、商標法第54条に基づく不服審判事件
2.登録商標無効宣告不服審判の審理手続の流れ
登録商標が、商標法第10条・第11条・第12条の規定に違反するとき、または、欺瞞的手段もしくはその他不正手段により登録を受けたときは、商標局が自ら当該登録商標の無効宣告をする場合がある。商標局が登録商標の無効宣告を決定したときは、書面で当事者に通知しなければならない。当事者が商標局の決定に不服であるときは、通知を受領した日から15日以内に、商標審判部に不服審判を請求することができる(商標法第44条第1項)。
登録商標無効宣告不服審判以外の審理手続きの流れについては、別コンテンツ「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その1:拒絶査定不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その2:登録不許可不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その4:不使用取消不服審判)」を参照のこと。
中国登録商標無効宣告不服審判フロー
商標審判部における登録商標無効宣告不服審判手続は、(1)請求人による審判請求、(2)方式審査、(3)審判合議体による審理、(4)審決という手順で進められる。
(1)請求人による不服審判請求および補足
不服審判請求するとき、商標審判部に書面の請求書類1部を提出する。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書に声明し、かつ請求日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない。
上述の法定補足期間は延長不可である。実務では、法定期間を過ぎても、引き続き補足証拠を提出できるが、特別な状況でなければ、審判官の参考資料のみになる(商標審判規則(以下「審判規則」という)第23条)。
(2)方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を具備するか否か、つまり、請求書と証拠が要求の様式で記載されて提出されたか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(実施条例第57条、審判規則第17条)。
(3)審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体を結成して審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(実施条例第60条、審判規則第27条)。
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審理を行うと決定された場合はこの限りでない(審判規則第4条)。なお、口頭審理の請求は、必ずしも商標審判部に許可されるとは限らない。実施条例第60条の規定によれば、当事者は口頭審理を要求することができる。この場合、口頭審理を行う必要性についての具体的理由を提出しなければならない。商標審判部は、当事者が提出した理由が十分であるか否かを考慮し、口頭審理を行うか否かを判断することになる。通常は、口頭審理を行わず、書面審理が進められる比率が圧倒的に大きい。
審理を経て終結された事件については、法に基づき審判を終了し、結審する(審判規則第32条)。
(4)審決
商標審判部は、請求人が陳述した理由と提出した証拠を審理して審決を下し、書面の審決を請求人に送付する。審決に不服がある場合には、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第34条)。
3.証拠提出の留意点
請求人は、請求の事実に対して挙証責任を有し、請求時には、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1)請求人が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2)中国以外の領域で形成された証拠は、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。
(3)外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条)。
中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その1:拒絶査定不服審判)
1.不服審判請求の種類
商標審査部(中国語「商標局」)による拒絶査定通知・登録不許可決定書・登録商標無効宣告決定・不使用取消決定に不服がある場合は、商標審判部(中国語「商標評審委員会」)に対して不服審判請求する。
不服審判請求の種類としては下記4種がある。
(1)商標審査部が下した商標登録出願の拒絶査定について、商標法第34条に基づく不服審判請求事件
(2)商標審査部が下した登録不許可決定書について、商標法第35条に基づく不服審判請求事件
(3)商標審査部が下した登録商標無効宣告決定について、商標法第44条に基づく不服審判請求事件
(4)商標審査部が下した登録商標の取消決定または非取消決定について、商標法第54条に基づく不服審判事件
- 拒絶査定不服審判の審理手続の流れ
拒絶査定不服審判以外の審理手続きの流れについては、別コンテンツ「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その2:登録不許可不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その3:登録商標無効宣告不服審判)」、「中国における商標不服審判制度(中国語「申請復審制度」)の概要 (その4:不使用取消不服審判)」を参照のこと。
中国商標拒絶査定不服審判フロー
商標審判部における拒絶査定不服審判手続は、 (1)請求人による審判請求、(2)方式審査、(3)審判合議体による審理、(4)審決という手順で進められる。
(1)請求人による不服審判請求および補足
不服審判請求するとき、商標審判部に書面の請求書類1部を提出する。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書に声明し、かつ請求日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない。
上述の法定補足期間は延長不可である。実務では、法定期間を過ぎても、引き続き補足証拠を提出できるが、特別な状況でなければ、審判官の参考資料のみになる(商標審判規則(以下「審判規則」という)第23条)。
(2)方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を具備するか否か、つまり、請求書と証拠が要求の様式で記載されて提出されたか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(商標法実施条例(以下「実施条例」という)第57条、審判規則第17条)。
(3)審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体を結成して審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(実施条例第60条、審判規則第27条)。
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審理を行うと決定された場合はこの限りでない(審判規則第4条)。なお、口頭審理の請求は、必ずしも商標審判部に許可されるとは限らない。実施条例第60条の規定によれば、当事者は口頭審理を要求することができる。この場合、口頭審理を行う必要性についての具体的理由を提出しなければならない。商標審判委員会は、当事者が提出した理由が十分であるか否かを考慮し、口頭審理を行うか否かを判断することになる。通常は、口頭審理を行わず、書面審理が進められる比率が圧倒的に大きい。
審理を経て終結された事件については、法に基づき審判を終了し、結審する(審判規則第32条)。
(4)審決
商標審判部は、請求人が陳述した理由と提出した証拠を審理して審決を下し、書面の審決を請求人に送付する。審決に不服がある場合には、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第34条)。
3.証拠提出の留意点
請求人は、請求の事実に対して挙証責任を有し、請求時には、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1)請求人が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2)中国以外の領域で形成された証拠は、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。
(3)外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条)。
中国における登録商標無効審判制度(中国語「請求宣告注冊商標無効制度)の概要
登録商標無効審判フロー
1.審理手続の流れ
(1)請求人による審判請求
登録商標無効審判(中国語「請求宣告注冊商標無効」)は、商標審判部(中国語「商標評審委員会」)に対して行う。無効審判は次の場合に請求できる。
(a)登録商標が、商標法第4条・第10条・第11条・第12条・第19条第4項の規定に違反するとき、または、欺瞞的手段もしくはその他不正手段により登録を受けたときは、商標局が自ら当該登録商標を無効宣告するが、その他の事業単位または個人は、登録商標の無効審判を商標審判部に請求できる(商標法第44条第1項)。
(b)登録商標が、商標法第13条第2項と第3項(他人の馳名商標を模倣等したもので公衆に誤認を与えるものは登録・使用禁止)、第15条(授権されていない代理人等による出願は登録・使用禁止)、第16条第1項(地理的表示が当該地域によるものではなく公衆に誤認を与えるものは登録・使用禁止)、第30条(先行商標と同一・類似するものは登録不可)、第31条(複数の出願人から同一・類似の商品について同一・類似の商標の登録商標出願がなされた場合、出願日が異なる場合は先願に係る商標を予備査定し、同日出願の場合は先行使用と認められる商標を予備的査定し、他の出願を拒絶する)、第32条(他人の先行権利を侵害する商標、または他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で先取りして出願した商標は登録不可)の規定に違反するときは、商標の登録日から5年以内に、先行権利者(中国語「在先権利人」)または利害関係人(中国語「利害関係人」)は商標審判部にその登録商標の無効審判を請求できる。ただし、悪意による登録の場合には、馳名商標権者は5年の期間制限を受けない(商標法第45条第1項)。
請求人は無効審判を請求するとき、商標審判部に書面の請求書類の正本1部を提出すると同時に、相手方当事者数に相当する副本を提出しなければならない。また、請求書類を提出した後、証拠を補足する必要がある場合、請求書に声明し、かつ請求日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない。上述の法定補足期間は延長不可である。補足期間の満了後に形成し、または請求人が他の正当な理由で期間満了前に提出できなかった証拠は、期間満了後に提出する場合、商標審判部はかかる証拠を相手方当事者に交付して証拠調べを経てその証拠を採用することができる(実施条例第59条、商標審判規則(以下「審判規則」という)第20条・第23条)。
(2)方式審査
商標審判部は、審判請求書を受領した後、方式審査の要件を具備するか否か、つまり、請求書類と証拠が要求の様式で記載し、提出されたか否かなどを審理する。要件を具備するときは、その請求を受理し、請求人に受理通知書を送付する。要件を具備しないときは、請求人に不受理通知書を送付し、かつその理由を説明する。補正が必要な場合、補正通知書を送付し、それを受領した日から30日以内に補正するよう請求人に通知する(実施条例第57条、審判規則第22条)。
(3)被請求人の答弁
商標審判部は商標審判の請求を受理した後、直ちに請求書類の副本を商標権者に送達し、受領後30日以内に答弁するよう要求する。期間が満了して答弁しなくても、商標審判部の審理に影響を与えないが、実務上は、この反論の機会を利用して、答弁する商標権者が圧倒的に多い。
証拠を補足する必要がある場合、答弁書に声明し、かつ答弁書の提出日から3ヵ月以内に補足証拠を提出しなければならない(実施条例第58条・第59条、審判規則第23条)
(4)答弁に対する弁駁
当事者が法定の期間内に提出した証拠資料について、商標審判部が当該証拠資料を相手方当事者に送付し、指定の期限内に弁駁(中国語「質証」)を行うことを命じることができる(審判規則第23条第2項)。
弁駁手続とは、商標審判部が証拠交換通知書を請求人に送付した後、請求人はそれを受領した日から30日以内に、被請求人の証拠を調べたうえ、その答弁理由を反駁するものである。なお、提出は1回限りである。
(5)審判合議体による審理
審理は、原則として合議制を採用する。通常、3名以上の奇数人数の商標審判官により構成される合議体で審理を行う。ただし、審理事実が明らかで、事情状況が簡潔な事件について、商標審判官1名の単独審判を行うことができる(審判規則第6条・第27条)。
商標審判事件の審理は、原則として書面審理にて行う。ただし、実施条例第60条の規定により口頭審判を行うと決定された場合はこの限りでない(「審判規則」第4条)。なお、商標審判部は当事者の請求に応じて、または実際の需要により、審判請求に対して口頭審理を行うことを決定することができる(実施条例第60条)。通常は、口頭審理を行わず、書面審理が進められる比率が圧倒的に大きい。
審理を経て終結された事件については、商標審判部は法に基づき決定または審決を下す(審判規則第33条)。商標審判部が下した決定または審決に不服がある場合、審決を受領した日から30日以内に人民裁判所(中国語「人民法院」)に行政訴訟を提起することができる(商標法第44条、第45条)。
(6)審決
商標審判部は、請求人と被請求人が陳述した理由と提出した証拠を審理し、12ヵ月間以内(特殊な事情がある場合、6ヵ月間延長可能)に審決を下し、書面の審決を当事者双方に送付する。登録商標の維持または取消の審決に不服がある場合には、審決を受領した日から30日以内に、人民裁判所に対して行政訴訟を提起することができる(商標法第45条)。
2.証拠提出の留意点
審判当事者は、請求の事実または答弁の事実に対して挙証責任を有し、請求時または答弁時には、相応する証拠資料を提出しなければならない。証拠には、書証、物証、視聴資料などが含まれる。
証拠提出の際には、次の点に留意する必要がある。
(1)当事者が商標審判部に書証を提出するときは、原本を提出しなければならない(審判規則第40条)。全ての証拠について原本を提出することは困難であるが、実務上、重要な証拠は、できるだけ原本またはその公証本を提出すべきである。
(2)中国以外の領域で形成された証拠については、その証拠が形成された国で公証・認証手続きを行わなければならない(審判規則第41条)。
(3)外国語証拠を提出するときは、その中国語の翻訳文を添付しなければならない(審判規則第42条、商標実施条例第6条)。
【留意事項】
(1) 商標法第44条第1項による無効審判は請求期限がない。第45条第1項による無効審判は、通常5年間の除斥期間がある。悪意による登録の場合には、馳名商標権者は5年の期間制限を受けない。
(2) 商標法第44条第1項による無効審判は商標局以外の何人でも請求可能。第45条第1項に基づく審判請求は、先行権利者と利害関係者に限られる。
(3) 請求人または被請求人は、審判請求または答弁のとき、証拠を補足する必要がある場合、請求書類または答弁書に声明しなければならない。声明しない場合は、補足不可となる。
(4) 無効審判の期間は、通常12ヵ月間であるが、特殊な事情がある場合、6ヵ月間延長可能である。
中国改正商標法関連規定の主な改正点
【詳細】
中国・改正商標法マニュアル(2015年3月、日本貿易振興機構 進出企業支援・知的財産部 知的財産課)一の3、4、5、6、7
(目次)
一 改正法及び関連規定の主な改正点
3 馳名商標認定保護規定 P.44
(1) 第2条:馳名商標の概念の明確化 P.44
(2) 第3条、第5条、第6条、第7条:馳名商標の認定機関及び認定申請のルートの明確化 P.45
(3) 第4条:馳名商標の認定規則の明確化 P.46
(4) 第8条:当事者の責任の明確化 P.46
(5) 第9条:馳名商標の証拠に対する要求の細分化 P.46
(6) 第10条、第11条、第12条:馳名商標保護請求の処理期限についての改正 P.47
(7) 第13条、第14条、第15条:地方工商部門の馳名商標に関わる業務職責の明確化・細分化 P.49
(8) 第17条:商標局による認定取消しの新設 P.49
(9) 第18条、第19条、第20条:馳名商標に関わる各級の工商部門の職責及びその職員の責任及び監督の明確化 P.50
(10) 条項の削除:原規定の第9条、第13条 P.50
4 商標評審規則 P.51
(1) 第一章 総則 P.51
① 第2条:審判案件の審理の規範化、商標審判案件の種類及び係争商標の呼称の明確化 P.51
② 第3条、第5条:データ電文方式による審判書類を提出・送達する規定の追加 P.53
③ 第8条第2項:和解に合意した案件の商標評審委員会による継続的な審理 P.53
(2) 第二章 請求及び受理 P.54
① 第20条:当事者の提出した副本が要求に合致しない場合の法的結果の明確化 P.54
② 第23条:挙証期間満了後に提出する証拠の規範化 P.54
③ 第26条:商標の譲渡又は移転後の案件審理の規範化 P.55
(3) 第三章 審理 P.55
① 第30条:当事者の合法的な権利の保障及びプロセスに関する規定のさらなる整備 P.55
② 第31条:先行権利案件の結果を待つという規定の追加 P.56
③ 第35条:審判決定・裁定の商標局への引き渡し、執行時間の延長 P.57
④ 第36条:審判決定・裁定を下した後の撤回及び更正に関する規定の追加 P.58
⑤ 第37条:人民法院の判決を執行するための再審プロセスの規範化 P.59
(4) 第四章 証拠規則 P.60
① 第38条第2項:証拠形式の明確化 P.60
② 第44条第2項:証拠調べの必要性の規定 P.60
(5) 第五章 期間、送達 P.61
① 第53条:提出形式及び提出期間の計算方法及び提出文書に対する要件 P.61
② 第54条:文書送達の効率の向上 P.62
③ 第55条:外国当事者の法律文書の送達方式 P.63
(6) 第六章 附則 P.64
① 第57条:新旧法適用の基本原則の確定 P.64
5 工商総局による改正実施後の「中華人民共和国商標法」に関する問題の通知 P.66
(1) 商標登録事項について P.66
① 各種の商標登録出願案件、異議申立案件が適用する法律の問題について P.66
② 商標案件審査期限の計算問題 P.66
(2) 商標審判について P.67
① 各種の商標審判案件の適用する法律について(2014年5月1日以降に審理する案件) P.67
② 商標審判案件の審査期限を計算する問題について P.67
(3) 商標監督管理について P.67
① 商標違法行為の時間と適用法律に関する問題について P.67
② 「馳名商標」を使用する行為に対して適用する法律の問題について P.67
6 商標評審委員会による商標法改正決定実施後の商標審判案件に関する問題の通知 P.68
(1) 商標法改正決定施行前に提出した争議案件 P.68
(2) 異議申立不服審判の請求について P.68
(3) 審判案件の文書様式について P.68
(4) 審判案件の費用を納付する規定について P.69
7 最高人民法院「改正商標法の施行決定後の商標事件の管轄と法律適用の問題に関する解釈」 P.70
(1) 第1条:人民法院が受理する商標事件のタイプ P.70
(2) 第2条、第3条:案件を管轄する規定について P.71
(3) 第5条~第9条:各類の商標案件の適用する法律の規定について P.71
参考資料
1 改正法の条文・対照表
(4) 馳名商標認定保護規定 P.150
(5) 商標評審規則 P.157
(6) 工商総局による改正実施後の「中華人民共和国商標法」に関する問題の通知 P.169
(7) 最高人民法院「改正商標法の施行決定後の商標事件の管轄と法律適用の問題
に関する解釈」 P.171
(8) 商標評審委員会による商標法改正決定実施後の商標審判案件に関する問題の通知 P.174
中国改正商標法及び実施条例の主な改正点
【詳細】
中国・改正商標法マニュアル(2015年3月、日本貿易振興機構 進出企業支援・知的財産部 知的財産課)一の1、2
(目次)
一 改正法及び関連規定の主な改正点
1 商標法 P.1
(1) 第一章 総則 P.2
① 第4条:商標登録出願条件の確立 P.2
② 第7条:誠実信用の原則の追加 P.2
③ 第8条:音声商標の導入 P.3
④ 第14条:馳名商標の認定と保護 P.3
⑤ 第15条:冒認出願対策の強化 P.5
⑥ 第19条:代理機構への管理強化 P.6
(2) 第二章 商標登録の出願 P.7
① 第22条第2項:「一出願多区分」制度を導入 P.7
② 第22条第3項:電子出願の導入 P.7
(3) 第三章 商標登録の審査及び認可 P.8
① 第28条:審査期限の規定 P.8
② 第29条:審査手続きの改善 P.9
③ 第33条:異議申立の主体資格の制限 P.10
④ 第35条:異議後の救済手続きの変化 P.11
(4) 第四章 登録商標の更新、変更、譲渡及び使用許諾 P.13
① 第40条:更新期間の延長 P.13
(5) 第五章 登録商標の無効宣告 P.13
① 第44条~第47条 P.13
(6) 第六章 商標使用の管理 P.15
① 第57条:新たな商標権侵害行為を定義 P.15
(7) 第七章 登録商標専用権の保護 P.16
① 第58条:新たな不正競争行為を追加 P.16
② 第59条:先使用主義への適当な配慮 P.16
③ 第60条第2項:商標権侵害行為の再犯への処罰の追加 P.17
④ 第63条:懲罰規定の新設及び権利者の挙証責任の軽減 P.17
⑤ 第64条:商標権者の賠償要求時における使用義務の規定の追加 P.19
(8) その他 削除された元の商標法の3つの条文 P.19
① 旧商標法第42条 P.19
② 旧商標法第45条 P.20
③ 旧商標法第50条 P.20
2 商標法実施条例 P.21
(1) 第一章 総則 P.21
① 第3条:馳名商標認定の立法趣旨の明確化 P.21
② 第5条:外国出願人が受取人を明記する規定の追加 P.22
③ 第8条:「電子データ」の形式で商標登録出願に関する規定の追加 P.22
④ 第9条、第10条:出願人が書類を提出する日付、要求及び送達に関する規定 P.23
⑤ 第11条:審査・審理期間に含まれない状況 P.24
⑥ 第12条:期間の計算方法について P.25
(2) 第二章 商標登録の出願 P.25
① 第13条:商標登録願書に関する要件 P.25
② 第14条:商標登録出願人の身分証明に関する規定 P.27
③ 第18条:商標出願の受理条件に関する規定 P.27
(3) 第三章 商標登録出願の審査 P.28
① 第22条:商標分割出願に関する規定 P.28
② 第23条:商標登録出願の内容に対する説明及び修正に関する規定 P.28
③ 第24~第28条:商標異議申立に関する規定 P.28
④ 第29条:出願又は登録書類の訂正に関する規定 P.30
(4) 第四章 登録商標の変更、譲渡、更新 P.30
① 第30条:商標権者の名義変更に関する規定 P.30
② 第31条:商標譲渡について P.31
③ 第32条:商標権の移転について P.32
(5) 第五章 商標国際登録 P.32
(6) 第六章 商標審判 P.33
① 第51条:商標審判の定義について P.34
② 第52条~第56条:商標審判案件の審理範囲の規定について P.34
③ 第59条:商標審判案件の請求又は答弁の補足証拠に関する規定について P.36
④ 第61条、第62条:請求人が審判請求を取り下げること及び取り下げた結果に関する規定について P.36
(7) 第七章 商標使用の管理 P.37
① 第65条:通用名称になった商標を取消す規定について P.37
② 第66条:正当理由なしで連続して三年不使用の登録商標を取消す規定について P.37
③ 第67条:3年連続不使用の登録商標の正当な理由について P.38
④ 第69 条:登録商標使用許諾届出の規定について P.38
⑤ 第70条:商標専用権の質権設定の規定について P.38
⑥ 第71条:被許諾者の名称と原産地を明記しない法律責任の規定について P.38
⑦ 第73条、第74条:商標抹消請求の規定について P.39
(8) 第八章 登録商標専用権の保護 P.40
① 第75条:他人の商標専用権を侵害する行為に、便宜を提供する行為の定義 P.40
② 第78条:違法経営額を計算する考慮要素の規定について P.40
③ 第79条:権利侵害製品が合法的に取得されたことを証明する情況の規定 P.41
④ 第80条:商標権侵害の製品であることを知らずに販売し、当該商品を合法的に取得したことを証明できる法的責任の規定 P.41
⑤ 第81条:商標権帰属に争議がある情況の定義について P.41
⑥ 第82条:商標権侵害案件における商標権侵害製品に対する鑑定手続きの規定 P.42
(9) 第九章 商標代理 P.42
(10) 第十章 附則 P.43
参考資料
1 改正法の条文・対照表
(1) 商標法全文 P.87
(2) 商標法対比表 P.104
(3) 商標法実施条例 P.130