中国における意匠の優先権主張について
1. 意匠の優先権主張(中国語「要求优先权」)の手続
1-1. 外国優先権
(1) 外国優先権について、出願人は、意匠を外国で最初に出願した日から6か月以内に、中国で同一の主題について意匠出願するときは、その外国と中国が締結した協定、共に加盟している国際条約、または優先権の相互承認原則に基づき、優先権を享受することができる(専利法第29条第1項)。外国特許出願および実用新案出願も、外国で初めて出願した日から6か月以内に、外国優先権を主張して中国に意匠出願をする際の基礎出願とすることができる(審査指南第1部第3章5.2.1.1)。
(2) 出願人が意匠の外国優先権を主張するときは、出願時にその旨の書面を提出し、後の出願から3か月以内に最初の出願時の出願書類の謄本を提出しなければならない。その旨の書面を提出しないか、または期間内に出願書類の謄本を提出しないときは、優先権を主張していないものとみなされる(専利法第30条第2項、第3項)。
(3) 外国優先権を主張する場合、出願人が提出する基礎出願の出願書類の謄本について、基礎出願の受理機関による証明を受けなければならない。国務院専利行政部門と受理機関とが締結した取り決めに従い、国務院専利行政部門が電子交換などの方法により基礎出願の出願書類の謄本を入手したときは、出願人は受理機関が証明した基礎出願の出願書類の謄本を提出したものとみなす(実施細則第34条第1項)。
なお、中国では、意匠出願について、デジタルアクセスサービス(DAS)の利用が認められる。
(4) 外国優先権を主張する出願人が基礎出願の出願人と一致しない場合、中国出願に係る出願人が基礎出願の優先権の承継人であることを証するための証明資料(優先権譲渡証明書(中国語「优先权转让证明」)を提出しなければならない(審査指南第1部第3章5.2.1.4)。
(5) 出願人は、1つの意匠出願において、複数の外国優先権を主張することができる。複数の優先権を主張する場合、当該意匠出願の期限は、最も早い優先日から起算する(実施細則第35条第1項、審査指南第4部第5章9.5)。
(6) 外国優先権を主張する中国出願の出願日から2か月以内、または受理通知書を受取った日から15日以内(期限の遅いものを基準とする)に、出願費の納付と同時に優先権主張の費用を納付しなければならない(実施細則第112条第2項、審査指南第1部第1章6.2.5、第1部第3章5.2.4)。
1-2. 国内優先権
(1) 中国国内出願からの優先権について、出願人は、中国で最初に意匠出願した日から6か月以内に国務院専利行政部門に同一の主題について意匠出願するときは、国内優先権を享受することができる(専利法第29条第2項)。なお、2023年の実施細則の改正で、基礎出願が意匠出願の場合だけでなく、特許または実用新案の出願である場合も、図面に示された意匠と同一の主題について、中国で最初に出願した日から6か月以内に、国内優先権を主張して意匠出願できることが規定された(実施細則第35条第2項)。
出願人が国内優先権を主張する場合、その先願は後願が提出された日から取り下げられたものとみなされる。ただし、意匠の出願人が特許または実用新案出願を基礎として優先権主張している場合は除く(実施細則第35条第3項)。
(2) 国内優先権を主張する場合、出願人が願書に基礎出願の出願日および出願番号を明記するときは、基礎出願の出願書類の謄本を提出したものとみなされる(実施細則第34条第1項)。
(3) 国内優先権を主張する出願人が基礎出願の出願人と一致しない場合、中国出願に係る出願人が基礎出願の優先権の承継人であることを立証するための証明資料(優先権譲渡証明書)を提出しなければならない(審査指南第1部第3章5.2.2.4)。
(4) 出願人は1つの意匠出願において、複数の国内優先権を主張することができる。複数の優先権を主張する場合、当該意匠出願の期限は、最も早い優先日から起算する(実施細則第35条第1項、審査指南第4部第5章9.5)。
(5) 国内優先権を主張する出願の出願日から2か月以内、または受理通知書を受取った日から15日以内(期限の遅いものを基準とする)に、出願費の納付と同時に優先権主張の費用を納付しなければならない(実施細則第112条第2項、審査指南第1部第3章5.2.4、第1部第1章6.2.5)。
2. 意匠の優先権主張成立の要件
(審査指南第4部第5章9.1)
2-1. 外国優先権
(1) 意匠の同一主題の認定は、後願意匠とその最初の外国出願に示した内容に基づいて判断する。同一主題に該当する意匠は以下の二つの条件を同時に満たさなければならない(審査指南第4部第5章9.2)。
(a) 同一製品における意匠に該当すること。
(b) 後願で保護を求める意匠が、その最初の出願に明確に示されていること。
例えば、最初の外国出願に斜視図、正面図、背面図、左側面図のみがあり、後願に平面図と右側面図を追加した場合、後願の正面図、背面図、左側面図および斜視図が最初の外国出願のものと同一であり、かつ平面図および右側面図の形態が最初の外国出願の斜視図に明瞭に表れているのであれば、優先権主張は成立する(審査指南第4部第5章9.2)。
また、最初の外国出願において、意匠の簡単な説明(中国語「简要说明」)を備えていない場合でも、実施細則第31条の規定に則して提出した意匠の簡単な説明*が、基礎出願書類における図面または写真に示される範囲を超えていなければ、優先権の主張には影響しない(実施細則第34条第4項)。
* 実施細則第31条
意匠の簡単な説明において、意匠物品の名称、用途および意匠の設計要点を明記し、かつ設計要点が最も明瞭に示されている図面または写真を一枚指定しなければならない。正投影図を省略するまたは色の保護を求める場合は、簡単な説明にその旨を明記しなければならない。
同一の物品における複数の類似意匠を一つの意匠専利として出願する場合、簡単な説明の中で、そのうちの一つを基本設計に指定しなければならない。
(2) 2021年6月1日以前は、外国基礎意匠出願が部分意匠であったとしても、中国出願時に当該部分意匠の点線を実線に変更して全体意匠として出願する場合には、優先権を主張できると認めていた。2021年6月1日より、中国では、部分意匠制度が導入されたが、全体意匠の出願に基づいて優先権を主張して部分意匠の出願をする場合、あるいは、部分意匠の出願に基づいて優先権を主張して全体意匠の出願をする場合、このような優先権を享有できるかどうかという点について、最新の実施細則および審査指南に明確な規定はない。しかし、実務では、全体意匠の出願に基づいた部分意匠の出願における優先権の主張、部分意匠の出願に基づいた全体意匠の出願における優先権の主張、同一の全体物品のうちの一部に係る部分意匠の出願に基づいた別の部分に係る部分意匠の出願における優先権の主張、が許されている。また、意匠の優先権主張成立の要件の同一主題の判断においても、先願と後願の保護範囲が完全に一致することは要求されておらず、後願で保護を求める意匠が、先願において明確に表示されていることが求められている。例えば、先願において破線で表示されていた部分が、後願で実線に変更された場合でも、実務上、意匠の内容に実質的な変更がなく、線の形式的な変更に過ぎないと捉えられ、後願と先願が同一主題に属すると通常見なされ、優先権主張は認められる。
(3) 実務上、中国出願と最初の外国出願の意匠の物品名は、完全に同一でなくてもよい。例えば、基礎出願が自動車用タイヤである場合、中国出願時に「タイヤ」としてもよい。また、最初の外国出願の意匠がタイヤトレッドの部分意匠である場合、中国出願時に点線を実線に変更してタイヤ全体の意匠として出願し、これに合わせて「タイヤトレッド」という物品の名称を、「タイヤ」という名称に変更することができる。
(4) また、実務上、中国出願と最初の外国出願との図面は、異なる製図方法により作成したものであってもよいが、表現する意匠は同一でなければならない。
2-2. 国内優先権
意匠の国内優先権主張の成立の要件については明確な規定はないが、基本的には外国優先権についてと同じであり、上記第2項の「2-1. 外国優先権」の内容が、国内優先権主張の成立の要件となる。
中国における専利出願の取下げ
1. 自発的な取下げ
中国では、出願人は、専利※1出願について、権利が付与されるまで、いつでもその出願を取下げる(中国語「撤回」)ことができる(専利法第32条)。ただし、専利出願の取下げに当たっては、如何なる条件も付けてはならない※2(中国専利審査指南(以下「審査指南」という。)第1部第1章6.6)。
※1 専利には、日本の特許、実用新案、意匠が含まれる。
※2 例えば、公開条件を満たす案件(方式審査(中国語「初步审查」)の要件を満たした案件)について取下げ手続を行う場合に、「公開されない」という条件をつけることはできない。
(1) 取下げの際に必要な手続
出願人は専利出願を取下げる場合、国務院専利行政部門(国家知識産権局専利局)に、発明創造の名称(中国語「发明创造的名称」)、出願番号および出願日(中国語「申请号和申请日」)を記載した、専利出願の取下げ声明を提出しなければならない(実施細則第41条第1項)。
専利出願の取下げは、出願人全員の同意が必要であり、出願人全員が署名もしくは捺印した専利出願の取下げに同意する旨の証明資料を添付するか、または出願人全員が署名もしくは捺印した専利出願の取下げ声明そのものを提出する方法がある。なお、専利代理機構に委任している場合は、専利出願の取下げ手続は、その専利代理機構が代行する必要がある(審査指南第1部第1章6.6)。
(2) 取下げ声明、取下げに同意する旨の証明資料
上述の出願人全員が署名もしくは捺印した専利出願の取下げに同意する旨の証明資料、または出願人全員が署名もしくは捺印した専利出願の取下げ声明は、原本を提出しなければならない。証明書類が複製物である場合、公証を受けているものか、または証明書類を発行した主管部門が公印を押捺したものでなければならない(原本が専利局に届け出されて確認されているものを除く)。外国で作成された証明書類が複製物である場合、公証を受けなければならない(審査指南第1部第1章6.7.2.6(3))。
(3) 取下げ声明の取り消し
出願人は、正当な理由なく、専利出願の取下げ声明の取り消しを要求してはならない。ただし、専利出願の真の保有者以外の者が、悪意的な専利出願取下げを要求した後に、専利出願の真の保有者(有効な法律書類を提供してこれを証明しなければならない)は専利出願の取下げ声明の取り消しを要求してよいとされている(審査指南第1部第1章6.6)。
(4) 効果
専利出願の取下げ声明が規定事項に合致しない場合は未提出とみなす通知書が、規定に合致する場合には手続合格通知書が、審査官により発行される。専利出願の取下げの発効日は手続合格通知書の発行日であり、公開された発明専利出願については、さらに、専利公報で公告しなければならない(審査指南第1部第1章6.6)。
専利出願の取下げ声明が、専利出願が公開、公告の準備段階に移行した後に提出された場合、出願書類は通常どおりに公開または公告されるが、審査手続は終止される(審査指南第1部第1章6.6)。
2. みなし取下げ
専利出願は、主に以下の場合に取下げられたものとみなされる。
(1) 特許出願については、出願人が出願日(優先日があるときは優先日)から3年以内に審査請求を行わない場合(専利法第35条第1項)
(2) 特許、実用新案、意匠出願の方式審査(中国語「初步审查」)において、補正命令(中国語「补正通知」)が出され、出願人が指定期間内に正当な理由なく応答しない場合(実施細則第50条第1項および第2項)
(3) 特許出願の実体審査において、拒絶理由通知が出され、出願人が指定期間内に正当な理由がなく応答しない場合(専利法第37条)
(4) 出願費用等を規定される期間内に納付しない場合(実施細則第112条第1項)
(5) 登録料等を規定される期間内に納付しない場合(専利権の取得を放棄したとみなされる)(実施細則第60条第2項)
【留意事項】
専利出願について、発明等の実施状況または権利化の見通し等の理由から権利化は不要と判断した場合、その出願を放棄する方法として、上記の「自発的取下げ」あるいは「みなし取下げ」の2つがある。
未だ公開、公告されていない出願について、公開、公告を回避したい場合には、できるだけ早めに自発的に取下げを行うべきである。具体的には、中国では、方式審査合格通知書が発行された後、通常、約3か月で公開され、登録手続を行った後、2~3か月で公告されるため、公開を回避したい場合には遅くとも方式審査合格後すぐに、公告を回避したい場合には遅くとも登録手続後、1か月以内に、取下げ手続を行うべきである。
一方、既に公開になった特許出願を放棄する場合に関しては、審査請求を行わない方法や拒絶理由通知に応答しない等により、みなし取下げの方法を取った方がよいと思われる。みなし取下げは自らの意思表示をしないため、万が一、後で権利化が必要となった場合に、実施細則第6条第1項および第2項に規定される期限を徒過した場合の権利回復が適用される可能性があり、これによって権利回復を果たすことができるからである。また、みなし取下げの場合、出願を放棄する手続を行うわけではないため、現地代理人費用が不要であるというメリットもある。
中国における意匠の優先権主張について
【備考】中国では、2021年6月1日より新たな「専利法」が施行されたが、本稿の作成時点(2021年12月)では、上記専利法に合う新たな「専利実施細則」および「専利審査指南」はまだ発行されていないため、本稿はその意見募集稿の関連する内容を参照している。このため、今後発行される「専利実施細則」および「専利審査指南」の確認が必要である。
【詳細及び留意点】
1.優先権主張(中国語「要求优先权」)の手続
優先権を主張する場合、専利法第29条、第30条、専利法実施細則第31条、第32条、およびパリ条約における関連規定を満たす必要がある(審査指南第1部分第3章5.2)。具体的には以下のとおりである。
(1)外国優先権について、出願人は、発明または実用新案を外国で最初に専利出願した日から12か月以内に、または意匠を外国で最初に専利出願した日から6か月以内に、中国で同一の主題について専利出願するときは、その外国と中国が締結した協定、または共に加盟している国際条約、または優先権の相互承認原則に基づき、優先権を享受することができる(専利法第29条第1項)。
(2)中国国内の優先権について、出願人は発明または実用新案を中国で最初に専利出願した日から12か月以内に、または意匠を中国で最初に意匠出願した日から6か月以内に国務院特許行政部門に同一の主題について専利出願するときは、優先権を享受することができる(専利法第29条第2項)。
(3)出願人が意匠専利の優先権を主張するときは、出願時にその旨の書面を提出し、3か月以内に最初の出願時の専利出願書類の謄本を提出しなければならない。その旨の書面を提出しないか、または期間内に専利出願書類の謄本を提出しないときは、優先権を主張していないものとみなす(専利法第30条)。
(4)優先権を主張する場合、出願人が提出する基礎出願の出願書類の謄本について、元の受理機構の証明を受けなければならない。国務院専利行政部門と当該受理機構とが締結した取り決めに従い、国務院専利行政部門が電子交換などの方法により基礎出願の出願書類の謄本を入手したときは、出願人は当該受理機構が証明した基礎出願の出願書類の謄本を提出したものとみなす。本国優先権を主張する場合、出願人が願書に基礎出願の出願日および出願番号を明記するときは、基礎出願の出願書類の謄本を提出したとみなす(専利法実施細則第31条)。中国では、意匠出願について、デジタルアクセスサービス(DAS)の利用が認められる。つまり、電子交換によって謄本を省略することができる。
(5)優先権を主張する出願人が基礎出願の出願人と一致しない場合、中国出願に係る出願人が基礎出願の承継人であることを証するための証明資料(優先権譲渡証明書(中国語「优先权转让证明」)を提出しなければならない(詳細は「優先権主張の手続き(外国優先権)」参照)(審査指南第1部分第3章5.2.4)。
(6)出願人は1つの意匠出願において、複数の優先権を主張することもできる(実施細則第32条第1項)。
(7)優先権を主張する中国出願の出願日から2か月以内、または受理通知書を受取った日から15日以内(期限の遅いものを基準とする)に、出願費の納付と同時に優先権主張の費用を納付しなければならない(実施細則第95条、審査指南第1部分第1章6.2.5)。
2.意匠の優先権主張成立の要件
(1)意匠優先権の確認は、外国優先権と本国優先権の確認を含む。意匠の同一主題の認定は、後願意匠とその最初の出願に示した内容に基づいて判断する。同一主題に該当する意匠は以下の二つの条件を同時に満たさなければならない。
(a)同一製品における意匠に該当すること。
(b)後願で保護を求める意匠が、その最初の出願に明確に示されていること(審査指南第4部分第5章9.1、9.2)。
例えば、外国基礎意匠出願に斜視図、正面図、背面図、左側面図のみがあり、中国出願に平面図と右側面図を追加した場合、中国出願の正面図、背面図、左側面図および斜視図が外国基礎意匠出願のものと同一であり、かつ平面図および右側面図の形態が外国基礎意匠出願の斜視図に明瞭に表れているのであれば、優先権主張は成立する。
また、外国基礎意匠出願において意匠の簡単な説明(中国語「简要说明」)を備えていない場合でも、中国の専利法実施細則の規定に則して提出した簡単な説明が基礎出願書類における図面または写真に示される範囲を超えていなければ、優先権の主張には影響しない(実施細則第31条)。
(2)2021年6月1日以前は、外国基礎意匠出願が部分意匠であったとしても、中国出願時に当該部分意匠の点線を実線に変更して全体意匠として出願する場合には、優先権を主張できると認めていた。2021年6月1日より、中国では、部分意匠制度が導入され、全体意匠と部分意匠が交差して優先権を主張する場合、優先権を享有できるかどうかという点は出願人に注目されている。現在の「専利法実施細則」および「専利審査指南」の意見募集稿に明確な規定はないが、出願日から2か月以内に行うことが可能な自発補正に関する規定によれば、全体意匠から部分意匠への変更や部分意匠から全体意匠への変更や同一の全体物品のうちの一部に係る部分意匠から別の部分に係る部分意匠への変更が許されている。そのため、これらの変更は新規事項の追加に該当しないと推定できる。したがって、上記3種類の変更について優先権を主張する場合、優先権主張が認められる可能性は高いと思われるが、最終的に認められるかどうかは今後発行される「専利法実施細則」および「専利審査指南」を確認する必要がある。
(3)なお、中国出願と外国基礎意匠出願との意匠の物品名は完全に同一でなくてもよい。例えば、基礎出願が自動車用タイヤである場合、中国出願時に「タイヤ」としてもよい。また、外国基礎意匠出願の意匠がタイヤトレッドの部分意匠である場合、中国出願時に点線を実線に変更して全体意匠として出願し、これに合わせて「タイヤトレッド」という部分の名称を物品全体の名称「タイヤ」に変更することができる。無論、外国基礎意匠出願が部分意匠である場合、中国で部分意匠を出願してもよい。
(4)中国出願と外国基礎意匠出願との図面は、異なる製図方法により作成したものであってもよいが、表現する意匠は全く同一でなければならない。
中国における優先権書類の提出方法―デジタルアクセスサービス(DAS)について
出願人等は所定の手続を行うことにより、外国への特許出願等について優先権主張をする際に、DASを通じて日本国特許庁(第一庁)から優先権書類の電子データを取得するよう、外国特許庁/機関に対して請求することができる。この手続により、出願人等は外国特許庁/機関に対し優先権書類の書面での提出を省略することができる。
(1)DASを利用するには、出願人等は日本国特許庁から「アクセスコード」を入手する。
手続の詳細は以下を参照されたい。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tetuzuki/das_new_teishutsuhouhou.html
(2)中国へ出願する場合、出願人等は中国現地代理事務所に新規出願の依頼時に、CNIPA(第二庁)に対してDASを通じて当該出願に係る優先権書類を取得するよう指示するとともに、下記の情報を提供する。
(i)先願の受理官庁
(ii)先願の出願番号
(iii)先願の出願日
(iv)先願の出願人
(v)先願の発明者
(vi)アクセスコード
(3)中国現地代理事務所は、新規出願を提出する際、または所定の期間内(専利出願(特許・実用新案):出願日から16か月以内に、意匠:出願日から3か月以内)に、DASを利用して優先権書類データを取得するようにCINIPAに請求する。
(4)留意事項
1.適用対象および条件
(a)意匠登録出願については2020年1月1日以降の日本国特許庁への出願が対象である。
(b)優先権の基礎となる出願がPCT国際出願(日本国に対して国内移行手続を行ったPCT国際出願を含む)および国際意匠登録出願の場合は対象外である。
(c)DAS参加庁/機関であっても、他国の優先権書類を、DASを利用して電子的交換を行うことができない場合がある。提供庁(Depositing Office)または取得庁(Accessing office)としてのみ参加している国もあり、また、意匠においては対象外の国もあるので、各国ごとに確認が必要である(WIPO DAS:Participating Offices:https://www.wipo.int/das/en/participating_offices/)(DASへの参加庁/機関(アイウエオ順)※2021年7月5日現在:https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/sanka.html)。
2.先願の出願人と中国の出願人が不一致の場合
先願の出願人と中国の出願人が一致しておらず、例えば、後願の出願人の全部または一部が先願の出願人でない場合、後願の出願人は中国専利法の規定に従って優先権譲渡証明書を提出する必要がある。
3.DASによる優先権書類の提出期限
DASを利用して優先権書類を提出する期限は、優先権書類の副本の提出の期限と同一で、専利(特許・実用新案)出願は出願日から16か月以内、意匠出願は出願日から3か月以内である。
4.DASの取得請求に失敗した場合
上記3.の法定期限内に優先権証明書の謄本または正しいアクセスコードを改めて提出するよう対応(例:「2.アクセスコード付与請求書」による入手(特許出願及び実用新案登録出願)による入手)https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/jpo-tetsuduki.html)する必要がある。期限日までに提出または取得できない場合、当該優先権は主張していないものとみなされる。