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日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

1.日本における意匠出願の新規性喪失の例外
 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下のとおりである。

(1) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(意匠法第4条第1項)または
(2) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(意匠法第4条第2項)

 上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(a) 意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること
(b) 意匠が最初に公開された日から1年(平成30年6月9日以降の出願に適用)以内に意匠登録出願をしていること。ただし、平成29年12月8日までに公開された意匠については、平成30年6月9日以降に出願しても、改正意匠法第4条の規定は適用されないので注意が必要。
 なお、意匠法第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。
(c) 出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(意匠法第4条第3項)。
(d) 出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(意匠法第4条第3項)。

 「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開者、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる(意匠審査基準 新規性喪失の例外)。

条文等根拠:意匠法第4条、意匠審査基準 第Ⅲ部 第3章 新規性喪失の例外(【ソース】参照)

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外
1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。
2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

2.中国における意匠出願の新規性喪失の例外
 2021年6月1日施行の専利法第4次改正により、意匠出願の新規性喪失の例外が規定されている専利法第24条が改正され、第1項第1号が追加されて旧第1~3号が改正後の専利法第24条第1項第2~4号となった。なお、現時点で、専利法実施細則、専利審査指南は、専利法改正に対応した改正はなされていない。

 出願日前に意匠出願の内容が公開された出願人に対する救済措置として、(1) 国家において緊急事態、または非常事態が発生した時の、公共の利益のための初めての公開、(2) 中国政府が主催する、または認める国際展示会での初めての展示、(3) 規定の学術会議、あるいは技術会議上での初めての発表、(4) 出願者の同意を得ない他者によるその内容の漏洩、の四つの場合に限って、6か月の新規性喪失の例外期間が設けられている。

 この新規性喪失の例外期間を利用するには、(2)と(3)の場合には、出願の時に宣誓し、かつ出願日から2か月以内に証明書類を提出しなければならない(専利法実施細則第30条第3項、専利審査指南第1部分第1章6.3.1、6.3.2)。また、(4)の場合には、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを出願人が出願日以前に知っているならば、出願時に宣誓し、かつ出願日から2か月以内に証明資料を提出しなければならず、出願人が出願日以降に知った場合には、当該事情を知った後の2か月以内に新規性喪失の例外期間を要求する声明書を提出し、証明資料を添付しなければならない(専利審査指南第1部分第1章6.3.3)。なお、国務院専利行政部門(中国国家知識産権局)は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することができる(専利法実施細則第30条第4項)。

 条文等根拠:専利法第24条、専利法実施細則30条、専利審査指南第1部分第1章6.3.1、専利審査指南第1部分第1章6.3.2、専利審査指南第1部分第1章6.3.3

※専利法:日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当する。
※実施細則:日本における施行規則に相当する。
※審査指南:日本における審査基準に相当する。

中国専利法 第24条
専利を出願する発明創造について、出願日前6ヶ月以内に以下の状況のいずれかがあった場合、その新規性を喪失しないものとする。
(一)国家において緊急事態又は非常事態が発生し、公共の利益のために初めて公開した場合。
(二)中国政府が主催する又は認める国際展示会で初めて展示された場合。
(三)規定の学術会議、又は技術会議上で初めて発表された場合。
(四)他者が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合。

中国専利法実施細則 第30条
 専利法第二十四条第(一)号に言う中国政府が承認した国際博覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務局に登録したあるいはそれに認められた国際博覧会を指す。

 専利法第二十四条第(二)号に言う学術会議または技術会議とは、国務院の関係主管部門または全国的な学術団体が組織開催する学術会議または技術会議を指す。

 専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(一)号または第(二)号に挙げた事情がある場合、出願人は専利出願の提出時に声明し、かつ出願日より起算して2ヶ月以内に、国際博覧会または学術会議、技術会議の主催者が発行した、関係発明創造が既に展示されまたは発表された事実、並びに展示または発表の期日を証明する書類を提出しなければならない。

 専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(三)号に挙げた事情がある場合、国務院専利行政部門は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することが出来る。

 出願人が本条第3項の規定に基づいて声明と証明書類を提出せず、あるいは本条第4項の規定に基づいて指定期限内に証明書類を提出しなかった場合、その出願は専利法第二十四条の規定を適用しない。

専利審査指南第1部分第1章6.3.1 中国政府が主催し又は承認した国際展覧会における初めての展示

 中国政府が主催する国際展覧会は、国務院・各部委員会が主催するもの、又は国務院が許可し、その他の機構或いは地方政府が開催する国際展覧会を含む。中国政府が承認する国際展覧会とは、国際展覧会条約に規定されたもので、国際展覧局で登録又は認可された国際展覧会を指す。国際展覧会というのは、出展される展示品は主催国の製品のほか、外国からの製品も展示されなければならない。

 専利出願に係わる発明創造は、出願日以前の6ヶ月以内に、中国政府が主催し又は承認した国際展覧会で初めて展示されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

 国際展覧会の証明資料は展覧会の主催機構が発行するものでなければならない。証明資料に、展覧会の出展日、場所、展覧会の名称及び当該発明創造が展示された出展日時、形式と内容を記載して、公印を捺印しなければならない。

専利審査指南第1部分第1章6.3.2 認可された学術会議又は技術会議で初めて発表

 認可された学術会議又は技術会議とは、国務院の関連主管部門又は全国的な学術団体組織が開催する学術会議又は技術会議を指し、省以下、又は国務院の各部委員会若しくは全国的な学術団体から委任を受けて、或いはその名義により召集して開催する学術会議又は技術会議を含まない。後者で言う会議での公開は、新規性の喪失につながるが、これらの会議そのものに守秘の約束がある場合は除く。

 専利出願する発明創造が出願日以前の6ヶ月以内に認可された学術会議又は技術会議で初めて発表されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

 学術会議及び技術会議の証明資料は国務院の関連主管部門又は会議を組織する全国的な学術団体が発行するものでなければならない。証明資料には会議の開催日、場所、会議の名称及び当該発明創造の発表日、形式と内容を明記し、公印を捺印しなければならない。

専利審査指南第1部分第1章6.3.3 他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らした場合

 他人は出願人の許可を得ずに、当該内容を漏らしたことにより公開されたこと

は、他人が明示又は黙認された守秘の約束を守らずに発明創造の内容を公開すること、他人が威嚇、詐欺又はスパイ活動などの手段により発明者、或いは出願人から発明創造の内容を得ることによって発明創造を公開することを含む。

 専利を出願する発明創造について、出願日以前の6ヶ月以内に、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを、出願人が出願日以前に知っているならば、専利出願時に願書で声明し、出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が出願日以降に知っている場合は、当該事情を知った後の2ヶ月以内に新規性を喪失しない猶予期間を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない。審査官は必要であると判断した際に、指定された期限以内に証明資料を提出するよう、出願人に要求して良いとする。

 出願人が提出する他人による出願内容の漏洩に関する証明資料には、漏洩日、漏洩方法、漏洩内容を記載し、証明人が署名又は捺印しなければならない。

 出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求しているが、規定事項に合致しない場合、審査官は、新規性を喪失しない猶予期間を求めていないとみなす通知書を発行しなければならない。

日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本 中国
新規性喪失の例外の有無
意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因する公知行為の限定の有無
(1) 国家において緊急事態又は非常事態が発生し、公共の利益のために初めて公開した場合
(2)中国政府が主催するまたは認める国際展示会での初めての展示
(3)規定の学術会議、あるいは技術会議における初めての発表
例外期間 公開日から1年 公開日から6か月

日本と中国の意匠出願における実体審査制度の有無に関する比較

1.日本における意匠出願の審査

 日本において意匠登録を受けるためには、願書、図面を含む出願書類が所定の書式を満たしているかどうかの形式的な審査(方式審査)が行われた後(意匠法第68条第2項、特許法第17条第3項)、方式審査を通過した出願に対しては、審査官により意匠登録要件を満たしているかどうかの審査(実体審査)が行われる(意匠法第16条)。実体審査において審査される内容は以下の通りである(意匠法第17条)。

物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合、建築物の形状等又は画像であって視覚を通じて美感を起こさせる意匠であること(第2条第1項)
工業上利用できる意匠であること(第3条1項柱書)
新規性を有する意匠であること(第3条第1項各号)
創作非容易性を有すること(第3条第2項)
先願意匠の一部と同一または類似の意匠でないこと(第3条の2)
公序良俗違反でないこと(第5条第1号)
他人の業務に係る物品、建築物又は画像と混同を生じる恐れがないこと(第5条第2号)
物品の機能確保のために不可欠な形状のみからなる意匠でないこと(第5条第3号)
組物の意匠として統一的な美観を生じさせること(第8条)
内装の意匠として統一的な美観を生じさせること(第8条の2)
最先の出願であること(第9条)
関連意匠の要件を満たすこと(第10条)
共同出願の要件を満たすこと(第15条第1項で準用する特許法第38条)
外国人の権利の享有の要件を満たすこと(第68条第3項で準用する特許法第25条)
条約の規定により意匠登録できないものでないこと(第17条第2項)
一意匠一出願の要件を満たすこと(第7条)
出願人が意匠登録を受ける権利を有していること(第17条第4項)

条文等根拠:意匠法第16条、第17条

日本意匠法 第16条 審査官による審査
特許庁長官は、審査官に意匠登録出願を審査させなければならない。

日本意匠法 第17条 拒絶の査定
審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その意匠登録出願に係る意匠が第3条、第3条の2、第5条、第8条、第8条の2、第9条第1項もしくは第2項、第10条第1項、第4項もしくは第6項、第15条第1項において準用する特許法第38条または第68条第3項において準用する同法第25条の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。
二 その意匠登録出願に係る意匠が条約の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。
三 その意匠登録出願が第7条に規定する要件を満たしていないとき。
四 その意匠登録出願人がその意匠について意匠登録を受ける権利を有していないとき。

2.中国における意匠出願の審査

 中国における意匠登録手続においては、新規性や、先行する他人の権利と抵触するか否かに関する審査(実体審査)は行われない。願書や添付書類などが所定の書式を満たしているかどうか、および明らかに不登録事由に該当するかどうかなどの予備審査のみが行われる(専利法第40条)。なお、予備審査において審査される内容は、以下の通りである(専利法実施細則第44条)。

法で定める意匠に該当していること(専利法第2条第4項)
公序良俗に違反しないこと(専利法第5条)
既存の意匠に属さないものであること(専利法第23条第1項)
平面印刷物の模様、色彩又は両者の組み合わせによって作成され、主に表示を機能とする意匠に該当しないこと(専利法第25条第1項第6号)
図面または写真の提出要件を満たしていること(専利法27条第2項、専利法実施細則第27条)
一意匠一出願の要件を満たしていること(専利法第31条第2項)
補正の範囲の要件を満たしていること(専利法第33条)
専利代理機関の義務に違反していないこと(専利法第18条)
手続が書面または定められたその他の形式によって行われていること(専利法実施細則第2条)
書面が中国語で作成されていること(専利法実施細則第3条)
願書の記載要件を満たしていること(専利法実施細則第16条)
意匠の簡単な説明の要件を満たしていること(専利法実施細則第28条)
分割出願の要件を満たしていること(専利法実施細則第43条第1項)

条文等根拠:専利法第40条、専利法実施細則第44条

中国専利法 第40条
 実用新案および意匠の特許出願に対して予備審査を行い、これを却下する理由が存在しない場合、国務院専利行政部門が実用新案特許権または意匠特許権を付与する決定を下し、相応する特許証書を交付する。同時に登記して公告し、実用新案特許権および意匠特許権は公告日から有効となる。

中国専利法実施細則 第44条
 専利法第34条と第40条に言う予備審査とは、特許出願が専利法第26条または第27条に規定する書類とその他の必要な書類を具備しているか、これらの書類が規定の書式に合致しているかを指し、さらに以下の各項を審査する。
((1)発明、(2)実用新案に関する規定は省略)
(3)意匠特許出願が専利法第5条、第25条第1項第(6)号に規定される状況に明らかに属しているか、専利法第18条、第19条第1項または本細則第16条、第27条、第28条の規定に合致しないではないか、専利法第2条第4項、第23条第1項、第27条第2項、第31条第2項、第33条あるいは本細則第43条第1項の規定に明らかに合致していないではないか、専利法第9条の規定に基づいて特許権を取得できないではないか
(4)出願書類が本細則第2条、第3条第1項の規定に合致するか。
国務院特許行政部門は審査意見を出願人に通知し、指定の期限内に意見の陳述または補正をするよう要求しなければならない。期限が満了になっても出願人が補正しない場合は、その出願を取り下げられたものと見なす。出願人が意見を陳述しまたは補正した後、国務院特許行政部門がなお前項の各規定に合致していないと考える場合、却下しなければならない。

 なお、実体審査が行われない中国においては、意匠権の付与決定が公告された後、意匠権者および利害関係者は、侵害訴訟における証拠となる意匠権の評価報告書(中国語「专利权评价报告(専利権評価報告)」)の作成を中国国家知識産権局に請求することが可能である。
 条文等根拠:専利法第61条、専利法実施細則第56条

中国専利法 第61条
 特許権利侵害を巡る紛争が新製品製造方法の発明特許に関連する場合、同様の製品を製造する部門または個人はその製品の製造方法が特許の方法と違うことを証明する証拠を提出しなければならない。
 特許権利侵害を巡る紛争が実用新案特許または意匠特許に関連する場合、人民法院または特許事務管理部門は特許権者または利害関係者に対し、特許権侵害を巡る紛争を審議し、処理するための証拠として、国務院専利行政部門が関連の実用新案または意匠について検索と分析、評価を行ってから作成した評価報告を提出するよう要求することができる。

中国専利法実施細則 第56条
 第五十六条 実用新案または意匠特許権の付与決定が公告された後、専利法第六十条に規定される特許権者または利害関係者は特許権評価報告書の作成を国務院特許行政部門に請求することができる。
 特許権評価報告書の作成を請求する場合は、特許権評価報告請求書を提出し、特許番号を明記しなければならない。一つの請求は一つの特許権に限るものとする。
 特許権評価報告請求書が規定に合致しない場合、国務院特許行政部門は指定の期限内に補正するよう請求人に通知しなければならない。期限が満了になっても請求人が補正を行わない場合、請求が提出されなかったものと見なす。

日本と中国の意匠出願の実体審査の有無に関する比較

日本 中国
実体審査の有無
 願書や添付書類などが所定の書式を満たしているかどうか、および明らかに不登録事由に該当するかどうかなどの予備審査のみが行われる。

 なお、意匠権の付与決定が公告された後に、意匠権者および利害関係者は侵害訴訟における証拠となる意匠権の評価報告書(中国語:「专利权评价报告」)の作成を中国国家知識産権局に請求することができる(専利法第61条、実施細則第56条)。

 ここで、利害関係者とは、裁判所に侵害訴訟を提起する権利を有する原告、例えば、意匠権、専用実施権者、および意匠権者から契約等により訴権を取得した通常実施権者を言う。

日本と中国における意匠権の存続期間およびその維持に関する比較

1.日本における意匠権の存続期間
 関連意匠の意匠権を除く日本における意匠権の存続期間は、出願日から25年をもって終了する(令和元年改正意匠法第21条第1項)。ただし、平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願は、設定登録の日から20年である(平成18年改正意匠法第21条第1項)。また、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録の日から15年間である(平成10年改正意匠法第21条第1項)。

 令和2年4月1日以降に意匠登録出願をした関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の出願日から25年間である(令和元年改正意匠法第21条第2項)。ただし、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、その本意匠の意匠権の設定登録日から20年間である(平成18年改正意匠法第21条第2項)。また、関連意匠が平成19年3月31日以前の出願の場合は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間である(平成10年改正意匠法第21条第2項)。

 なお、権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として2年次から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項)。ただし、意匠登録料は、自動納付制度の対象となっており、納付忘れによる権利失効の防止を図ることができる(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則第41条の5第1項第3号)。

条文等根拠:令和元年改正意匠法第21条および附則第二条、平成18年改正意匠法第21条および附則第二条、平成10年改正意匠法第21条ならびに意匠法第42条第1項および工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則第41条の5第1項第3号

(1)令和元年改正意匠法第21条
(存続期間)
第二十一条 意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録出願の日から25年をもって終了する。
二 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。

(2)令和元年改正意匠法附則第二条
(意匠法の一部改正に伴う経過措置)
第二条 第三条の規定(前条第三号および第四号に掲げる改正規定を除く。)による改正後の意匠法第二条第一項、第三条第二項、第五条第二号および第三号、第六条第一項第三号、第三項、第四項および第七項、第八条、第八条の二、第十条、第十七条第一号、第二十一条、第四十二条第一項第二号、第四十八条第一項第一号、第六十条の六第三項、第六十条の八ならびに第六十条の二十一第二項の規定は、この法律の施行の日(以下この項および次条において「施行日」という。)以後にする意匠登録出願について適用し、施行日前にした意匠登録出願については、なお従前の例による。

(3)平成18年改正意匠法第21条
(存続期間)
第二十一条 意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、設定の登録の日から20年をもって終了する。
二 関連意匠の意匠権の存続期間は、その本意匠の意匠権の設定の登録の日から20年をもって終了する。

(4)平成18年改正意匠法附則第二条
(意匠法の改正に伴う経過措置)
第二条 第一条の規定による改正後の意匠法(以下「新意匠法」という。)第二条第二項、第三条の二、第十条、第十四条、第十七条、第二十一条、第四十二条および第四十八条の規定は、この法律の施行後にする意匠登録出願について適用し、この法律の施行前にした意匠登録出願については、なお従前の例による。

(5)平成10年改正意匠法第21条
(存続期間)
第二十一条 意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、設定の登録の日から15年をもって終了する。
2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その本意匠の意匠権の設定の登録の日から15年をもって終了する。

(6)意匠法第42条第1項
第四十二条 意匠権の設定の登録を受ける者または意匠権者は、登録料として、第二十一条に規定する存続期間の満了までの各年について、一件ごとに、次に掲げる金額を納付しなければならない。
一 第1年から第3年まで 毎年8,500円
二 第4年から第25年まで 毎年16,900円

(7)工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則第41条の5第1項第3号
第四十一条の五 次の各号に掲げる各年分の特許料または登録料に係る法第十五条第一項又は法第十五条の二第一項の規定による特許料または登録料の納付の申出については、あらかじめ特許庁長官に提出した書面(以下「自動納付申出書」という。)を援用してすることができる。
(省略)
三 意匠法第四十二条第一項の規定により納付すべき第二年以後の各年分の登録料
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2.中国における意匠権の存続期間
 中国における意匠権の存続期間は、出願日から15年をもって終了する(専利法第42条第1項)。
 なお権利維持を希望する場合は、出願日を年金納付起算日として、登録決定通知書で登録費用とともに支払うことを指定された年次の翌年次から毎年、年金を支払う必要がある。(専利法第43条、専利指南2010 第五部分 第九章 専利権の付与と終了)

条文等根拠:専利法(日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。以下「専利法」。)第42条、第43条、専利指南2010 第五部分 第九章 専利権の付与と終了 2.2.1 年金

中国専利法 第42条 第1項
発明専利権の期限は20年とし、実用新案専利権の期限は10年、意匠専利権の期限は15年とし、いずれも出願日から起算する。

中国専利法 第43条
専利権者は専利権を付与されたその年から年金を納付しなければならない。

中国専利指南2010 第九章 専利権の付与と終了 2.2.1 年金
専利権付与年の年金は、登記手続と同時に納付しなければならない。以降の年金は前年度の期限満了前に納付しなければならない。費用納付期限の満了日は当該年度における出願日の対応日になる。

日本と中国における意匠権の存続期間および維持に関する比較

日本*1 中国
存続期間 出願日から25年*2、*3 出願日から15年
権利維持 登録日を年金納付起算日として2年次から毎年、年金の支払い要 出願日を年金納付起算日として、登録決定通知書で指定された年次の翌年次から毎年、年金の支払い要。

*1:関連意匠の意匠権を除く
*2:平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願は設定登録の日から20年
*3:平成19年3月31日以前の出願は設定登録の日から15年